日本の人類共同体思想と西洋の排外主義思想
日本の移民革命思想は西洋の借りものではない。日本の精神土壌で生まれ育った日本オリジナルのものである。日本とは精神風土が異なる西洋人には書けない代物である。
移民先発国の外国人処遇の歴史を概観すると、決して道理にかなったものばかりだったというわけではない。人種差別意識とイスラム教徒に対する恐怖心が国民の心にきざまれている欧米諸国では移民の同化はあまり進んでいないようだ。それどころか、いま現在、反移民を主張する極右勢力の台頭が見られる。高度文明を誇る欧米社会で起きている移民排斥運動に驚きを禁じ得ない。
わたしは、日本は既存の移民国家の轍を踏んではならないと肝に銘じ、日本独自の移民国家の理念を打ち立てた。「万人は平等」と「人類は一つ」の日本的思想を移民国家の理念に体現し、全人類が和の心で結ばれる共同体社会の実現を国家目標にすえる。懐が深い日本型移民国家思想は世界最高レベルの移民国家理論に発展する可能性を秘めている。
人種、民族、宗教を問わず、すべての人類に開かれた日本の移民革命思想は、白人至上主義とキリスト教という一神教の考えが根本にある西洋精神の対極をなすものだ。人間・動物・植物のあらゆるものに神の存在を認める日本人の汎神論的世界観がその根底にある。日本では神道と仏教が平和共存(神仏習合)している。日本人の心の奥には文明社会では極めてユニークな宗教心、すなわち自然界に存在する万物を崇拝するアニミズム(精霊信仰)の世界がある。動植物の仏心を描いた江戸時代の画家・伊藤若冲の絵をこよなく愛する民族である。
人種・民族・宗教に対する偏見が西洋人と比較して非常に少ない日本人は、世界の民族の誰よりも早く人類共同体社会をつくる知恵と能力を兼ね備えた稀有の民族である。様々な民族の心を一つにする同化力の強い日本社会の特色に照らすと、日本が地球時代の移民政策に新風を吹き込み、世界の移民国家のモデル国として屹立するのも夢ではないと、私は考えている。