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プロらしさとは? 権藤・野茂両氏が対談(前編)

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2019/3/27 6:30
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野茂 計算してやり出したのはもう(現役の)最後の方です。打者と自分の力量を比べて、こいつの方が断然上と思ったら、まともに勝負にいっても絶対無理です。ここは(ボール球を)振ってくれたらOKとか、四球が多いといわれてもいいや、という感じでやってました。

権藤 野茂は1試合の四球の記録(16個=1994年)を持っているよね。

野茂 西武戦ですね。その試合、完投勝ちしたんです。

「四球を出してもいい、と思っている投手はいくら出してもへばらない」と権藤氏

「四球を出してもいい、と思っている投手はいくら出してもへばらない」と権藤氏

権藤 四球を出してもいい、と思っている投手はいくら出してもへばらない。逆に四球を出したらいかん、と思って投げている投手は四球を出すとへばっちゃう。そこは意識の問題で、たとえば投げ込みにしたって、昔の人は自分で投げ込みたいと思ってやっていたから平気なんだけれど、コーチに言われて200球も300球も投げさせられたら、きついよ。自分の意志じゃないんだから。野茂の場合、あれだけ四球を出しても、次のやつを抑えればいいと思っているから疲れなかったんだ。

「自由にやらせてもらえるのが一番」

野茂 そうですね。そこは社会人野球から学んだことでもあるんです。四球の走者であれ、失策の走者であれ、とにかく都市対抗ではかえしてはいけないわけです。とにかく次の打者を抑えるんだ、と思っていました。

権藤 点をやったら終わりだもんね。

野茂 気を抜いたら終わりです。四球を気にした揚げ句に、スコーンとホームランを打たれたら、これほど会社の人たちに申し訳ないことはありません。せっかくみんなで応援して、盛り上げてくれているんですから。

権藤 日米でやってみて、監督の理想像とは。

野茂 僕は、どちらかというと自由にさせてもらい、任せてもらった方が、よかったですね。細かいことを言ったり、結果で変わったりする監督はやりづらかった。

権藤 米国にもそんな監督がいた?

野茂 米国って「あがり」(登板のない日にベンチから外れること)がないですよね。ずっとベンチで見ていなきゃいけない。それはいいんですが、それをわざわざルールで決める人がいるんです。ときにはこの打者は映像的に後ろから、あるいは前から見たいとか、あるわけです。苦手な打者を他の投手がどうやって抑えているか、違う角度から見たいときもあるわけですよ。それを絶対だめっていう監督はいややな、と。ほんま窮屈でした。

権藤 おれが監督だったら、後ろで寝てようが何してようがいいんだけれどな。

野茂 ボストン(レッドソックス)に行って感じたことなんですけれど、あそこは本当に自由でした。選手が王様なんです。「あなたたちがいないと(野球が)成り立たへんし、ファンはあなたたちを見にきてくれてるんだから、何をしてもいいんだよ」という感じでした。

権藤 普通はそうでなきゃおかしいんだよ。だからおれが監督だったときもね、おれは何もせん、選手がやってナンボなんだからって言っていた。別に謙遜してるわけじゃなくて、本当にそうなんだから。

野茂 先発投手が責任を果たして降りたあと、七回くらいで「ああ、もう勝ちや」って感じで、パーっとビールを飲んでいる。アイシングしながら。

権藤 さすがにおれのときは試合の途中でビールを飲むやつはいなかったけれど、もう一回監督させてもらったら、ビールを置いておいて、あがったやつは飲んでいいぞ、その代わり運転だけはだめだぞって。

野茂 メジャーでも本当にいろいろな監督がいましたけれど、僕は自由にやらせてもらえるのが一番よかったです。

 ごんどう・ひろし 1938年佐賀県生まれ。61年にブリヂストンタイヤから中日に入団し、35勝で最多勝、新人王に。翌年も30勝を挙げた。98年横浜(現DeNA)の監督に就任、38年ぶりのリーグ優勝、日本一に導いた。2017年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で投手コーチを務める。今年、野球殿堂入りが決まった。

 のも・ひでお 1968年大阪府生まれ。8球団が競合するドラフトの末、90年、新日鉄堺から近鉄入団。豪快なトルネード投法でデビューから4年連続最多勝、奪三振王に。95年に米移籍、「ノモマニア」という言葉が生まれるほどの熱狂を巻き起こし、2度の無安打無得点をマークした。日米通算201勝。2014年野球殿堂入り。

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