平成、終われません! 改元で「ひとりシステム担当者」が見る地獄

「IT担当は傍流」の認識を改めよ

「2025年の崖」とは、1970年代から80年代前半に業界に入ったソフト技術者が引退するることに伴い、基幹システムがブラックボックス化し、改修やメンテナンスが不可能になるという予測のことだ。

現在、多くの地方自治体のIT担当部門ではゼロからシステムを設計・開発した経験をもつ人材が少なく、プログラムのソースコードを読むことができない。前回、システムの大幅な改修を実施した2000年問題の対応からも約20年が過ぎ、組織の内部にもITベンダーにも当時のエンジニアは不在。

仕様書や設計書は残っているものの、果たしてこれまで日常的に実施してきたメンテナンスが的確に反映されてきたか疑わしい。結果として、内製したはずのシステムであっても、ブラックボックスになってゆく……。

現に今回の改修でも、「元号を扱うプログラム自体が確認できない」「プログラム改修の影響範囲が確定できない」といった悲鳴が上がっている。2025年を待たずして、平成の終わりが「崖」を顕在化させているのである。

 

IT担当の待遇問題も浮き彫りに

行政機関の中でもとりわけ市区町村のシステムがブラックボックス化しやすいのは、職員の「公平な人事ローテーション」の原則がきっちり守られており、専門職が育ちにくいためだ。特に行政職員にとって、IT部門は率直に言って「非行政職で、部内下請け」という「閑職」のイメージが強い。

元号を用いる業務の洗い出しや新元号のテストくらいなら、窓口職員に手伝ってもらえば負担を大幅に軽減できるのだが、「ITは自分たちの仕事じゃない」とそっぽを向かれることも珍しくない。結果、どこをどう改修するかすら確定できず、「このままでは、外部ベンダーとシステム改修の契約さえできない」という悲痛な声も聞こえてくる。

マイナンバー制度の開始前後には、役場のIT部門の職員が窓口職員や住民に対する説明に駆り出された市区町村があったと聞く。国の制度矛盾やシステムの不具合まで周囲から責められた挙句、非IT部門への異動が叶わないと見て、転職していく若手職員もあとを絶たない。

国が行政手続きのデジタル化に本気で取り組むのなら、制度を作って「あとは現場にお任せ」はやはり無理がある。基盤となる共通システムを用意して市区町村に提供した上で、IT部門のエンジニアの待遇を改善していく必要があるだろう。

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