中央官庁とその外郭機関、都道府県や政令指定都市などの場合、いわゆる大手ベンダーであるNFH+T(NEC、富士通、日立とNTT)とそのグループ会社が、そして県庁所在都市をはじめとする中枢中核都市は地域の旧計算センター系ITベンダーが、面子をかけてサポートするだろう。
また、中小規模の市町村はまだクラウドに移行して10年も経っていないところが少なくない。マイナンバー制度のスタート直後のように、ちょっとした印字ミスはあるかもしれないが、大きな混乱は起こらないだろう――というのがIT業界の見方だ。しかし、本当に大丈夫だろうか。
ざっくりしたシステム改修のスケジュールは次のようになる。
3月末までにダミーデータでのテスト、本番移行のリハーサルと、ここまで滞りなく終わっていればあとが楽になるのだが、3月・4月はただでさえ年度切り替えに伴う行政手続きが集中し、さらに組織変更や人事に伴うアクセス権限の再設定なども重なる。
今まさに、全国1740市区町村のIT部門職員は大わらわに違いない。しかも、スケジュールとは得てして遅れるものだ。
さらに、システムの洗い出しが進むにつれて、「ひとり情シス」の問題も浮き彫りになってきた。
一般の読者にはなじみの薄い言葉かもしれないが、「ひとり情シス」とは、企業や組織の中でたったひとりのエンジニアや担当者が、システムの管理や回収を一手に担う状況に追い込まれることだ。
特に地方の町村には、IT担当がひとりから良くても数人、また少数の職員がITと総務を兼務しているところが珍しくない。
改元に伴うシステム改修自体は外部のITベンダーに任せられるとしても、テストとなると1人や2人では到底手が回らない。業務ごとのディスプレイの表示、帳票イメージ、プリントアウト、LGWAN(総合行政ネットワーク=地方公共団体が使う内部ネットワーク)、マイナンバーなど、確認しなければならないことは山ほどある。
「ひとり情シス」状態の町村にとって(民間企業もだが)ラッキーなのは、新天皇即位に伴い4月28日から5月6日までが10連休になることだ。システム改修が4月30日に終わらなくても、まだ6日間の猶予がある。
それも間に合わなければ、最悪、現行のシステムを動かし続けてゴム印で訂正すれば一応何とかなる。住民の理解さえ得ることができれば、自治体の規模も限定的である以上、大ごとにはならないだろう。
しかし、今回の改元騒動では、より根深いトラブルも明るみになっている。人口10万~20万人の中規模の都市で、経産省が昨年9月に公表した「2025年の崖」問題が顕在化しているのだ。