平成、終われません! 改元で「ひとりシステム担当者」が見る地獄

「IT担当は傍流」の認識を改めよ

全体の8〜9割のシステムが新元号に対応したとしても、どこかでデータが滞留したり異常停止すれば、その影響は全体に広がってゆく。かつてなら、ネットワークにつながっている機器は限られていたが、現在は家電やスマートフォンなど、異なる複数のシステムが相互にリンクする時代だ。

経産省のレポートは、それを承知の上で「90%以上は他組織とのシステム連携を考慮して作業を進めている」「約80%は業務の遂行に特段の支障はない」と書き、“大丈夫”感を強調しているようにも見える。

防衛、エネルギー、運輸・交通、通信、金融、医療などインフラ系システムの元号対応は確認済みだから、中小企業のシステムトラブルが発生してもその影響は特定事業者の経済的損失にとどまると踏んでいるのだろうか。

加えて指摘すると、この調査からスッポリ抜けているものがある。国や地方自治体などの行政機関だ。

 

昭和からの更新もできていない…?

おそらく日本最大の「和暦ユーザー」は、行政文書などを和暦表記でほぼ統一している、霞が関の中央省庁と各都道府県・市区町村である。一種の都市伝説と信じたいが、行政機関の中には「昭和表記のまま使い続けている」システムさえあるといわれるほど、旧態依然の部分が残っている。

もちろん、霞が関の府省は内閣府、地方公共団体は総務省の所管なので、経産省が立ち入らなかった事情は理解できる。しかし、「民間企業よりも、本丸はこっちだろう」と言いたくなってしまう。

民間企業であろうと行政機関であろうと、改修作業は「システムのどこで和暦を使っているか」、「そのシステムがどのような方法で構築されたか(パッケージ製品の単体か、パッケージのカスタマイズか、ゼロからのスクラッチ開発か、内製か外部ベンダーか、外部システムとどのような形で接続しているか)」などを調べることからスタートする。

調査の対象はOS、ミドルウェア、API(Application Program Interface)、Webサイトばかりでなく、プリンターなどの周辺機器、さらにはフォントも要チェックだ。

行政機関の場合、特に注意しなければならないのは「合字」(「㍻」「㍼」のように漢字2文字を1文字分のスペースで表示・印字するもの)の扱いで、これはプログラムとデータの両方を確認する必要がある。また、「平成31年」「XX(新元号)元年」「XX1年」などはいずれも表記は異なるが、データ上は同じ年として扱われる。こうしたポイントをひとつひとつ潰してゆかなければならないのだ。

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