2019年春は、全国1740市区町村のIT部門職員にとって、システムの改修に忙殺される「悪夢の季節」になりそうだ。その理由はもちろん、4月1日に発表される新元号への対応である。実際に作業が始まって見えてきた、笑えない現実とは――。
3月14日、経済産業省があるレポートを発表した。「改元に伴う企業等の情報システム改修等への対応状況に関するアンケートの集計結果」という長々しいタイトルだが、要するに民間企業に対する「あなたの会社は、新元号にどうやって対応するつもりですか」というアンケートである。
和暦、つまり元号の使用状況と対応に関して回答した企業は2797社(うち中小企業は2058社で73.6%)。回答の内訳は、「和暦は使っていない(西暦のみ)ので改修は不要」が899社(32.1%)、「和暦使用部分の調査・確認が完了している」が877社(31.4%)、「調査・確認中」が458社(16.4%)、「これから」が563社(20.1%)だった。
そもそも和暦を使っていない企業が3割にのぼるのは、経済のグローバル化を考えれば頷ける。むしろ今でも7割近くの企業が西暦と和暦を併用しているとは、ちょっと驚きだ。国内取引で事業が完結するのだろう。ちなみに、中小企業の構成比(7割)と和暦併用の企業がほぼ一致しているように見えるのは偶然で、「和暦を使っていない」という回答は中小企業のほうが多かった。
要点は、5月1日に迫った改元に間に合うかだ。回答した663社のうち「間に合わない」は5社(0.8%)だった。また「取引先などとの連携テスト」については、回答した508社のうち「テストは不要」と答えたのが97社(19.1%)だった。約2割が連携テストを行わないまま改元に突入するのは、いかにもあぶなっかしい。
さらにいえば、実はこのアンケート、正しい実態の把握に役立っているか疑わしい。というのも、今回経産省は900を超える業界団体にアンケートの協力を依頼したにもかかわらず、回答数は3000社足らず。
つまり多くの企業は、元号が変わったあとに、「平成31年」とディスプレーに表示されたり受領書に印字されても、実務にたいした支障が出ることはないだろう――とふんでいるということだ。
この状況を放置すると、「とんでもないことが起こるかもしれない」と警鐘を鳴らすのは、経産省の外郭機関である情報処理推進機構(IPA)だ。同機構によると、「新元号への対応済みシステムで作成された日付データが、まだ対応できていないシステム上で正しく認識されなくなる」という。「不正なデータ」とみなされ、自動的にリジェクトされてしまうのだ。