「キツネ、雨傘物語」

犬丸芝居小屋第19作目「キツネ、雨傘物語」です。
配役バランスとにらめっこしながら時計台の皆さんにお芝居していただいたのですが、見事に野郎だらけになりました。
キツネと人間の子どもと雨傘のおはなしです。
曲のシリーズとしては、その他ですね…最近はその他だらけですね!
担当は、キャラデザ→梅吉、その他→丸井です!
歌詞書きながら丸井は思いました。
これ、歌詞だけだとキツネってわかんねーーーよ!!!!と。
なのでタイトルに「キツネ」と入っています。はい、余談でした。
歌詞へ行く前に、簡単にストーリー載せておきますね!

 


帰り道、最寄りの無人駅で電車を降りた小学生は夕立に降られる。
幸い小学校へあがった頃から使用していた傘を親に持たされていたのでそれを広げて帰ろうとする。
すると自分よりも幼い、低学年くらいの子どもが無人駅に駆け込んでくる。
みると子どもはずぶ濡れで辺りをみまわしている。
そして小学生と目が合うとぎょっとした表情をして駆け出していこうとした。
小学生は子どもを呼び止めた。
「ねえねえ待ってよ、待ってよ、風邪ひくよ、これ差しな」
小学生は持っていた傘を差し出した。
泥だらけで雨水で汚れ、お世辞にもきれいとは言えないものだったがないよりはましだろう。
子どもは遠慮がちに顔をしかめた。
それを見て自分よりもちいさな子を濡れて帰らすわけにはいかないと小学生は思った。
小学生は、自分は家が近いからこれを差さなくても帰れると嘘をついた。
子どもは傘を受け取り、「必ず返します」と言い去っていった。

 

2年の月日が経ち小学生は中学生となった。
ある秋の日、中学生は雨に降られた。
天気予報では伝えられなかった予想外の雨に中学生は戸惑った。
最寄りの無人駅で鞄をあさったが折り畳み傘もない。
「しょうがない、走って帰ろう」と決め込んだとき、後ろから「あの」と声がした。
振り返ると蛇の目傘を差した美しい人が立っていた。
その人は中学生へ傘を差しだし、「風邪をひいてはならぬ、送ります、参りましょう」と言う。
中学生は自分しかいなかったはずのこの場に突然人が現れたことと、その人があまりにも美しすぎたため恥ずかしくなり目をふせた。
「家が遠いのでいいです……」
中学生が断ると、その人はしばし黙っていたが、
「嘘つきですね」
と言い、中学生の腕を掴んで歩き出した。
しとしと降る秋雨の中、中学生はまるで子どもの様に手を繋がれ帰路を歩いた。
家の玄関まで来ると、その人は差していた蛇の目傘を中学生へ渡し雨の中去っていこうとした。
和傘を受け取った中学生が「え」と戸惑っていると、その美しい人は
「それはあなたのものです」
と言う。
驚いて手元の和傘を見ると、手にあるのはいつか自分が子どもに貸した児童用の傘であった。
つけられていたネームプレートにあるひらがなの自分の名前は、月日が経ったせいか滲んで読めなくなっている。
またもや驚き中学生が顔をあげると、そこには誰もいなかった。

 

 

※人間の子ども:12歳→14歳
 狐:5か月(人間年齢8歳)→2.5歳(人間年齢36歳)

 


「キツネ、雨傘物語」

 

(空が曇り、どーんと鳴った)

 

夕立が降る
ざあざあと
無人駅
帰り道

 

パシャパシャ水を駆ける足音
年端も行かぬ子飛び込んだ
ずぶ濡れたまま辺り見回し
走り出そうとする腕掴んだ
(鉄砲はきらい、こわい、人間はこわい、こわい)

 

「ねえねえ待ってよ、待ってよ、風邪ひくよ、これ差しな」
差し出した自分の傘、ああ
泥が跳ねて雨で滲みひらがなのネームプレート
綺麗だなんて言えないが
遠慮がちに睫毛を伏せたから
「家が近い」と嘘をついた
「必ず返す」と言い子は去ってった

 

雨雨降るな傘を渡した
あの夏から2年が過ぎた
雨雨降るな傘を忘れた
天気予報的が外れた
雨雨降るな傘を探した
無人駅で途方に暮れた
雨雨降るな傘を忘れた
「あの」と下駄の音近付いた
(人間はこわい、こわい)
(貴方はこわい、じゃない)

 

「風邪をひいてはならぬ、送ります、参りましょう」
差し出された蛇の目傘、ああ
和服に外套襟巻引っ掛け下駄をカランコロン鳴らす
美しい人がいた
遠慮がちに睫毛を伏せた
「家が遠いから」と断った
「嘘つき」手を引かれて

 

「さあさ、転ばぬように、送ります、参りましょう」
いつの間に唐傘の中、ああ
細く降る秋雨の中子どもの様に手を繋がれ
無言で歩いた
家の前蛇の目渡された
戸惑うと「あなたのものです」と
手にあるのはいつか貸した傘
驚き顔あげれば誰もいなかった

 

(あなたはだあれ、だあれ、だあれ、やっとで化けをおぼえたの)
(あなたはだあれ、だあれ、だあれ、本当はかえしたくはないの)
(あなたはだあれ、だあれ、だあれ、せっかくひらがなおぼえたの)
(あなたはだあれ、だあれ、だあれ、名札がにじんでよめないの)

 

 

秋イベのためにボーキサイトを貯蓄している丸井です!
梅きっちゃんにキャラデザお願いする際に僕は尋ねてみました。
「この学生とキツネ、性別どう思いました?」と。

A:女子高生とお姉さん
B:男子高生とお姉さん
C:女子高生とお兄さん
D:男子高生とお兄さん

実は歌詞はどれでもいけるように作ってあります…一応……
というのも僕の頭の中で、歌詞をつくる前、ストーリーを考えていたときはA:女子高生とお姉さんでした。
綺麗なお姉さんと女子高生で物語をつくっていました。
帰路奇譚の猫と女子高生みたいなイメージでした。

しかし次に僕は思いました。
B:男子高生とお姉さん、これもいいんじゃなかろうかと。
美しすぎるお姉さんを恥ずかしすぎて直視できない男子高生……いいんじゃなかろうか。

いやいや、それもいいがこれもいいのではと浮かんだのがC:女子高生とお兄さんです。
幼い男の子が二年後には美しい男性になってるんですよ。いいじゃないですか。

で、いざ歌詞を書いているときのイメージはD:男子高生とお兄さんですね。
僕の中ではこれでファイナルアンサー、やっと定着しました。

ちなみにこの人間の子ども、傘のネームプレートを出す関係で丸井にしては珍しく名前をつけました。
「滝沢代市(たきざわよいち)」くんです。よろしくお願いします。
現場からは以上です。

 


現在、親知らずの抜歯をしてめちゃくちゃ黙っている梅吉です。
キャラデザをするにあたって、丸井っちに上のように性別について問われましたが、梅吉的にはキツネの性別がどれも思い浮かびませんでした。
ですので、キャラデザするときに、狐だけ男にでも女にでも見えるようなデザインを目指しました。中性的な感じです。
というか初めて曲を聞いたときに丸井っちの鏡音V4調教が最高すぎてしばらくループしてました…ちなみに自分は鏡音V4使いこなせていないので
頑張って仲良くなろうと思いました…最近は鏡音でぽちぽち曲を作っているのですが、ACT2と仲良くなりつつある梅吉です。