「理想と戦争」

犬丸芝居小屋第17作目「理想と戦争」になります!
この曲は時計台メンバーの芝居ではなく、8時空間で生きていた老人のおはなしです。
「さじと神様」寄りの曲になっております。
曲のシリーズとしては、子どもの遊びシリーズです!
サビのトリドンシャドウは、トリードオンシャドウ=影を踏め で、影踏みモチーフになっております。
今回の担当はALL丸井となっております。
歌詞解説へ行く前に、ざっとストーリーを載せておきます!

 

 

8時空間のとある惑星の昔話

 

画家を父に持つ少年は、友人に会いに行くという父に連れられて異国を訪れる。
父の友人も画家であり、訪問先にて少年は絵画に対する学びを深めていった。

 

あるとき、父の友人の娘とおつかいに出かけた。
一緒に街を歩いていると物乞いにあった。
与える分はあった。
与えたい気持ちもあったが、少年はくせになられては困ると断った。
半歩後ろを歩いていた娘は手持ちの食料を分け与えた。
それを見た少年は衝撃を受けた。
自分は素通りする通行人に合わせてしまった。
周りの目を気にし、大衆に合わせてしまった。
娘の行動を、常識にとらわれない振る舞い、なんと聖人のようなと思う少年であった。

 

戦争の兆しが見えた。
国同士が敵となり、少年は父とともに船で祖国へ戻ることになった。
船へ乗り込む際、少年は娘へ「また会いましょう」と言うが、娘はそれに対しにこりと笑うだけで返事をしない。
娘はなんとなく、もう自分は生きて会えないだろうということを察知していた。

 

娘は少年へ「敵対した国同士になりますが、あなたと戦う訳ではないのです。私はこの国の空気と戦うのです。」と告げる。

 

船の上で少年は考える。
なぜ「また会いましょう」と返してくれなかったのか。
自分は何か嫌われるようなことをしてしまったのだろうか…
小さくなっていく島国をぼうっと見ながらそんなことを考えていた。

 

月日は流れ、少年は老人となった。
年老いてから彼は、別れ際に娘が言った言葉の意味をやっと理解した。
娘は、戦争しなければ、するべきであるという自国の異様な空気を察知しており、
それに流されまい、と人間ではなく常識という名の空気と戦おうとしていたのだ。

 

それがわかった瞬間から、老人にとって娘は信仰対象となった。
彼にとって娘は尊い存在であり、もはや人間として見ていなかった。
自分も娘のようにありたい、老人にとって娘は「理想」となる。

 

老人は、娘にもう一度会って礼拝したいと思いかつての国を訪れる。
変わってしまった街並みに戸惑いながらも娘を探すが見つからない。
街外れにぽつりとあった石碑に彼女の名前が刻まれているのを見つけ、戦争中に娘が亡くなったことを知った。
生きている娘に会うことはできなかったが、彼女の思想は自分の中でまだ生きている。
自分が彼女のように振る舞おう、これから先の人生は短いかもしれないが、理想は追いかけるものだが、やはり掴みたい。
石碑の前で、老人はそう思った。

 

 

こんな感じです!
「さじと神様」関連で記述すると、この後老人は石碑の近くにあった孤児院で残りひとりとなっていた幼児を引き取ります。
幼児は、性別のない奇怪な体であったので誰も引き取らなかったということでした。
この幼児は老人から「佐治かげん」と名付けられ、育てられます。
老人はレイチェルやレベッカの祖父です。

こんなところでしょうか!
それでは歌詞解説にまいりますね!

 


油絵の色彩、木々の香り
下駄の音、降り注ぐ蝉の声

 

物乞いされて断った、当てにされると考えた
与えるだけ、持っていたのに
貴女は手を差し伸べた、手を出せずにいた私は
どうしようもなく人間だ

 

トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
貴女の影を踏ませてよ ←貴女は娘のこと。「理想」であり物理的に影はないので踏めない。また、実際に娘は亡くなっているため影はない。
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
曽ての面影なき街の中で、現在も尚、探している
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
貴女の声を聞かせてよ ←声=意見のこと。老人は娘から教えを乞いたい。
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
「貴方と戦う訳ではないのです」
理想に影はなし、鳴りやまぬ砲音 ←砲音=①老人の大衆に合わせようとする部分と理想を追う部分の戦い。

                    ②かつての国同士の戦争

 

姿消した囃子、赤とんぼ ←老人がかつての国を訪れたときの風景。以前の姿ではない。
錆びた鉄塔、折れた御神木

 

頭の奥で鳴り響く低い低い船の汽笛
揺れる甲板、遠い昔
「また会いましょう」
に対し、返事のなかった貴女に
今も会えないまま

 

トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
貴女の影を踏ませてよ
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
曽ての面影なき街の中で、現在も尚、探している
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
貴女の声を聞かせてよ
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
「この国の空気と戦うのです」
今になり理解する、理想と戦争

 

トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
肩を並べたいわけでも
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
地に引きずり下ろしたいわけでもないのです ←自分は神になるつもりはない、ましてや神と思う娘を人間の地へ

                      引きずり下そうなどとも思っていない。
街外れ隧道を抜けて ←隧道=①トンネル。老人が石碑のある場所へ出るまでさまよった場所のこと。

              ②棺を埋めるとき、地中を掘り下げて墓穴へ通じる道のこと。
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
手を合わせたいだけなのです ←①信仰対象として礼拝したいだけ。②亡人(娘)を拝むこと
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
忘れられたような場所で見つけた石碑の
貴女の名をなぞる

 

トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
貴女の影がもうなくても ←影は娘の影。亡人なので物理的に影はできない。
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
尊い理想、意思、見解は私の中で生き続けている
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
今度は私が戦おう
トリドンシャドウ
トリドンシャドウ
夕暮れ迎えるまで戦ったなら ←夕暮れ迎えるまで=死ぬまで
その影を踏ませてください、神様 ←少しは理想に近づけていますようにという老人の願い

 


「理想と戦争」というタイトルについても2通りの意味があります。
①娘にとっての理想(空気に流されない自由な社会)と戦争(実際に自国が陥っている状況)
②老人にとっての理想(信仰対象である娘)と戦争(自分大事さに娘のように振る舞えないことへの葛藤、自分との闘い)

 

ついでに、動画内の絵についても解説しますね!
間奏で大きく「理想」と書かれた文字の背景になっている娘の絵ですが、
あれは、娘を信仰対象とした老人が自分で描いた絵になります。
なので実際の娘より若干大人びた顔つきになっています。
老人は自分で描いた絵の娘に対して、毎日祈りを捧げていました。
「さじと神様」第1回目の中にもさりげなく登場していたりする絵でもあります。

 

その間奏からサビに入る直前で「現実」という大きな文字が一瞬うつる箇所があります。
その背景絵になっているのは「娘の名が刻まれている石碑」と「バルトロメオ」と「チェーザレ」です。
老人にとっての「理想」の神様は娘だけれども、
実際に8時空間を動かしている「現実」的な神様的存在は「バルトロメオ」と「チェーザレ」で、娘は亡くなっていて、あるものは名前だけだよ。
という意味でつくっております。

 


今回久しぶりにめっちゃ解説した気がします!!
わかりにくい上に趣味曲ですみません!!!
先月のぐみちゃんに引き続き、V4のミクさんにはじめて歌っていただいた曲になります!!
いつもありがとう歌姫たち!!!!