日本の採用面接が人をちゃんと見抜けない理由

あのグーグルも「面接の価値」を否定した

そもそも採用試験とは、求職者が入社後にどれだけ活躍するかを予測するために行われるものです。アメリカでは、その予測がどのくらい妥当なものであったかを解析する研究も進んでいます。そうした研究によれば、「適性検査」「グループディスカッション」「ワークサンプル(実際に仕事をさせてみること)」「面接」といったさまざまな採用選考の結果と、入社後の評価を比較検証したところ、面接の妥当性が最も低いことが明らかになりました。

グーグル社の会長、エリック・シュミットらが著して話題になった『How Google Works――私たちの働き方とマネジメント』(日本経済新聞出版社)にも、それを裏づける話が出てきます。グーグルも以前は難問奇問を出す面接を行っていました。例えば「富士山を動かすにはどうしたらよいと思いますか?」といった奇抜な質問を唐突にぶつけ、それに対する応答で頭の回転のよさを測っていたのです。ところがその面接の得点と入社してからの成果には因果関係がないことがのちに判明し、そのような面接を廃止したそうです。

いちばんワリを食うのは日本の学生たち

現在、グーグルではすべてのタスク(業務、任務)において、人間がなんとなく「いい」と思い込んでいる仮説をそのまま適用するのではなく、「本当にそうなのか?」をデータに基づき検証しているそうです。そして仮説が間違っていたと判明したら、最善の方法を再定義し、トライ&エラーを重ねながら精度を高めています。

その姿勢は採用にも貫かれており、構造化面接を実施したり、従業員に関する膨大なデータを収集・分析して人事や労務に活かす「ピープルアナリティクス」といった手法をいち早く導入したりしています。ところが日本においては、採用に関してここまで合理的に取り組んでいるのは、大企業でもほとんど存在しません。

近年、フリートーク面接については「運用がものすごく難しく、妥当性も精度も低い」ことが明らかになってきているにもかかわらず、「これまで、そうやって採用してきたから」というだけで、とくに改善されることもないまま続けられているのです。

そんな不確実な面接であっても、中途採用ならば前職での実績といった具体的な成果を示すことができます。しかし新卒採用の学生には実績がありません。社会経験のない学生が〝不確実性の渦〞のような面接を乗り越えていくのは、本当に大変なことだと思います。

中でもいちばんワリを食うのは、人見知りであったり、口ベタであったりするせいで他人とコミュニケーションをすることに苦手意識を持つ学生――いわゆる「コミュ障」の学生です。というのも、面接ではえてして外向的で、情緒が安定している(ように見える)人が高い評価を受ける傾向があるからです。このことは『採用面接評価の科学』(今城志保著・白桃書房)といった書籍にも詳しく解説されています。

面接は内向的で情緒が不安定な「コミュ障」にとって、不利な採用選考なのです。確かに企業には営業職など、外交的で情緒が安定している人に向いている職種もありますが、それだけでは組織は成り立ちません。経理や総務などバックオフィス系の職種、クリエイティブ系や企画系、研究系の職種など、内向きでオタク気質の人のほうがむしろ向いているような仕事も数多く存在します。

最近は多くの企業が「ダイバーシティ(多様性)」を掲げ、性別や人種、学歴、性格、価値観などが異なる多様な人材の活用を目指しています。しかしその一方で、面接では同じベクトルを持つ人だけが相も変わらず選ばれてしまう。そこに理想と現実の大きなズレがあるのです。

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  • NO NAME96dbba7f2951
    記事は面接の問題点を的確に言い当てている。
    外交的に自信たっぷりに見える学生に不当に有利という点もうなずける。

    実を言うと最近うちの会社に入る若手は、この手の「自信あふれる」タイプばかりだ。経営陣もこういった若手を優遇し、早期抜擢で幹部候補生に登用している。中高年を外し機動的に動ける「老害外し」の組織を目指しているようだ。

    しかし、問題なのは若手社員が「幹部ばかり」になる点。対策として現場で働く人間を派遣社員に置き換えているが、派遣さんは出入りが激しいので現場にノウハウが蓄積されず空洞化しているし、中高年の経験は無視されている。
    経営幹部は若手を登用して老害を外し、組織の新陳代謝を行ったつもり。現場は派遣で回して人件費削減でご満悦。
    だが、これでいいはずはない。静かな危機なのだが、経営陣は気づかない。

    up585
    down15
    2019/3/17 07:42
  • NO NAMEa0cb41836654
    これはSEやってた時の実体験として分かる。非常に優秀なプログラマーは、一見外見がひ弱そうだったり、凄く暗そうだったり、そういう人が多かった。面接だけなら確実に除外されてしまう人たち。人間は外見ではないのだとその時切に感じた。才能と外見は一致しないよ。人間何事も得手不得手があるように、才能があるのに面接が苦手な人もいると思う。そういう人たちの才能も活かされる採用試験であってほしい。
    up382
    down9
    2019/3/17 09:04
  • NO NAME5d53ce8c8d1e
    総合職なんてくくりで面接してる時点で面接出来ていないだろう。
    そのくくり方がすでに間違えているよ。
    up341
    down12
    2019/3/17 07:06
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