INTERVIEW

職人図鑑#04 大池 剛(47歳)

takeshi Oike(age47)

Takeshi Oike(age47)

1970年11月13日、岡山市生まれ。2歳から養護施設「新天地育児院」で育つ。高校中退後、さまざまな職を経て、22歳で塗装会社に就職。その後、25歳で一人親方として独立、2003年に有限会社大池塗装を設立、代表取締役に就く。家族は妻と23歳の長女、21歳の次女、19歳の長男

Chapter 1

塗装はボクに向いている。
すぐに直感した

Chapter 1 塗装はボクに向いている。すぐに直感した
取材日の現場は長男、大池克幸さん(19歳/1998年8月30日生まれ/写真右)、 大池塗装の協力親方、池田和弘さん(60歳/1957年8月9日生まれ/写真中央)の 3人体制。池田さんはこの道、30年超のベテラン職人で克幸さんの指導にもあたっている

 若いとき、高校を中退して行くところがないんで、兄貴の家に転がり込んでたんですよね。で、結局そこも半年で家出をして、全国各地で職を転々としてました。

 そんな生活を22歳まで続けて、地元岡山に戻ってきたんです。その時、知り合いの塗装会社の社長に生活費を借りたんですよね。で、「よし、じゃあ返すために働くか!」と職人の見習いから始めました。

 はじめの1年くらいは、養生と下手間の仕事がメインで、ローラー塗装もやらせてもらってました。それでも、本気で仕事に取り組んでみたら仕事がおもしろい。やってるうち、すぐに「これは自分に向いている…」と思うようになりました。

 刷毛を握れるようになったのが25歳で、それから独立しました。法人組織にするように勧められて、

Chapter 2

いくつになっても 現場はおもしろい

Chapter 2 いくつになっても現場はおもしろい
「もともと、職人になりたかったんです。今春、高校の電気科を卒業、 3か月前まで横浜で電気工事をしていました。 ただ、塗装に興味もあったし、父の仕事を継ぐのもいいかなと思って、 岡山に帰ってきました。従兄弟と一緒なのも励みになります」(克幸さん)
 会社経営をしてる立場なので、この4〜5年は、デスクワークが多かったんですけれど、この春に長男と甥っ子が入社したので、自分も現場に出るようにしたんですよ。ボウズ(新人)ばかりだと、親方や職人たちの負担が増えますからね。

 久しぶりに現場に出て、刷毛を握って仕事をしてみると、この仕事の醍醐味を感じますね。光や風を浴びながら、すうっと刷毛を操ると壁に塗料がうまく載ってきれいに伸びる。お、まだまだ自分も塗れるんだな、と嬉しくなってきます。

 昔は新人には掃除や養生など下手間仕事ばかりをさせていたんですが、最近の新人はそれじゃあ辞めてしまうから、刷毛を持たせるようにしてますよ。じっくり教えて下を育てるのも職人の役目です。
Chapter 2 いくつになっても現場はおもしろい
「もともと、職人になりたかったんです。今春、高校の電気科を卒業、 3か月前まで横浜で電気工事をしていました。 ただ、塗装に興味もあったし、父の仕事を継ぐのもいいかなと思って、 岡山に帰ってきました。従兄弟と一緒なのも励みになります」(克幸さん)

Chapter 3

塗装職人の最初の一歩は やっぱり、養生にある

Chapter 3 塗装職人の最初の一歩はやっぱり、養生にある
「いまは昔のように技術は見て盗むのではなく、 教えるようになりましたが、それでも何度も失敗して、 場数を踏んで、自分で考えないとダメなんですよ」(池田さん)
 自分がこの仕事に入った頃は厳しくて、3年間刷毛を握らせてもらえなかったんですよ。毎日毎日が掃除、下手間、養生。すこししてローラーでは塗らせてもらえるようになりましたけど。今から考えると、幸せな修行時代だと思います。

 その頃に、気持ち的にも技術的にも大きなものを身につけました。養生だって誰かがおしえてくれるわけじゃないから、必死で見て盗んで覚えました。一人前に養生ができるまで1年くらいはかかったけど、そこには自分で発見したいろんな工夫があります。

 新人の息子や甥っ子には、今は雨樋など比較的簡単なところの養生をまかせてみてますが、まだまだですね。きちんとマスキングしようと、やたらとテープを使い過ぎると、塗りづらいし、剥がしづらくなる。自分も経験がありますが、よく親方に怒られてます(笑)。

 それに、たとえば玄関ドアなら、施主さんが出入りできるように稼働可能に養生しなければなりません。押し戸、引き戸と形状はさまざまですけど、彼らには、工夫して自分の技術を身につけてほしいですよね。"
Chapter 3 塗装職人の最初の一歩はやっぱり、養生にある
「いまは昔のように技術は見て盗むのではなく、 教えるようになりましたが、それでも何度も失敗して、 場数を踏んで、自分で考えないとダメなんですよ」(池田さん)

Chapter 4

技をどう伝えるか?

 新人の息子と甥っ子にも刷毛を握らせているーーといっても、やっぱり一人前の職人から見ると、スピード、仕上がりともに段違いなんですよ。そういうところはね、親族だからということではなく、うちの会社に入ってくれた人たちには、良いものをしっかりと良いものを伝えていきたい。

 技術はもちろん、でも塗装職人にはもっと大切なことがあると思うんです。あいさつがきちんとできること。朝、事務所で仕事仲間同士で「おはようございます!」とコミュニケーションすることの気持ちよさ。義務だからするんじゃない。仕事でのチームワークができる。そういう雰囲気でないと、新人もわからないことを、先輩に聞けませんからね。施主さんにあいさつすることも、社会人としての基本です。技術は何度も失敗して、じっくり修正していって、身につけていけばいい。社会人、人間としてきちんとして、ちゃとした職人になってほしいんです。

Chapter 4 技をどう伝えるか?
Chapter 4 技をどう伝えるか?

掲載日:2018/05/07

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