Harry Potter and the Serialist   作:一文
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赤毛はウィーズリーと名乗った。

 

変わった名前だと思ったが、黙っていた。

 

僕の名を言うと、赤毛はひどく驚いた。

 

額の傷を見せてくれと言われたので、額にかかった髪を手で持ち上げた。

 

赤毛は他にも質問を続けたので、それに答えた。

 

一言答えるたびに大袈裟な反応をした。

 

車内販売のカートが来た。

 

珍妙なものばかりだったので、何も買わなかった。

 

赤毛も何も買わなかった。

 

改めて赤毛を見ると、みすぼらしい身なりだった。

 

金がないのだろうと思った。

 

カートが出て行くと、赤毛は黙った。

 

それから学校に着くまで、何人かの新入生が入ってきた。

 

その度に同じことをいちいち答えるのは面倒だったが、赤毛は再び饒舌になった。

 

制服に着替えると、汽車が停まった。

 

トランクを残して、汽車から出た。

 

外は暗かった。明かりは引率の男が持ったランプだけだった。

新入生は学校まで歩くのだという。他の生徒は見たこともない馬に引かれた馬車に乗っていた。

 

学校までの道は獣道のようだった。

地面は湿っていて、よく滑った。

その後、木製のボートに乗った。

しばらくすると、城が見えた。

 

城の前に老婆が立っていた。引率の男と話したあと、男と替わった。

 

これから組み分けの儀式を行う、と老婆は言った。

 

途端に周りの新入生はざわざわと騒ぎ始めた。

 

老婆を先頭に扉を抜けた。

四の長いテーブルの真ん中を通り、部屋の最前列へと移動した。

前には帽子が載った椅子が置いてあった。

 

老婆が生徒の名を呼び、椅子に座って帽子を被る、次々と名前が呼ばれては帽子が叫んでいった。

 

僕の名前が呼ばれた。帽子を被ると、スリザリンと叫んだ。

壁沿いの列のテーブルに座っていた生徒たちが一斉に立ち上がり、拍手をしたので、そのテーブルの席に座った。

 

席の近くに座っていた生徒たちが次々と話しかけてきた。

 

汽車の赤毛と同じことを聞いてきたので、ひどく疲れた。

 

組み分けが終わると、テーブルに食事が現れた。

 

食事が始まると質問は終わったので、目の前にあった料理から食べた。

 

あらかた皿が空き始めると、食事が終わり解散になった。

 

新入生は一列に広間を出て、地下へと向かった。

 

合言葉で寮の扉は開く。

 

壁の一面がガラス張りで、湖が見えた。

 

そこから階段を上がると、寝室があった。

 

四の寝台の前にそれぞれのトランクが置かれていた。

 

誰もが口を開くことなく、眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか再びここに戻ってくるとは思わなかった。

それも、懐かしのスリザリンへと。

これまでの僕は無力な子供であり、愚かなマグルの居候であり、始終監視が付いていた。

あのハロウィンの夜から11年、孤児院の暮らしを連想させるような不快な生活だった。

一体何度あのマグルどもを痛め付けようと思ったかわからない。しかし杖もなく、向かいのスクイブに見張られている状態では成す術がなかった。

恐らくダンブルドアの差し金だろう。

憎きあの教師は、昔から何一つ変わりはしない。

あの眼鏡の奥に見せる温かみはただのフェイクだ。

実態は氷の如く冷静な心で、他者をチェスの駒のように利用する輩だった。

間抜けな連中に尊敬される、そうやって奴は自分の心の渇望を癒そうとしているのだろう。

 

 

この少年の心は壊れていた。

己が壊すまでもなく、日に日に感情が消えていくことが手に取るようにわかった。

あのマグルどものせいだろう。

この少年はもう戻らない。

何に関心を示すことなく、喜びも渇望も生きようとする意思さえも持たない。

ダンブルドアによって人形になった、生き残った少年。

眠っている間も、夢すら見ていなかった。

 

 


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