ハリー・ポッターと祈りの聖杯   作:塚山知良
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君は何を選ぶ。君は、どちらを選ぶ。


四章『組み分け帽子』

 ドラコ達のいるコンパ―メントに戻ってきたコレットは、汽車が到着するまでずっとだんまりだった。それを訝しんだドラコは「今更緊張しているのか?」と揶揄うが、それもコレットは無視する。彼女はただ、汽車から見える景色をじっと見つめていた。

 

 「イッチ年生!イッチ年生はこっち!」

 

 汽車の中でローブに着替えたコレット。新入生達が到着した汽車の扉から外に出ると、そこは薄暗いプラットホームだった。やってきた案内人―――ハグリットと名乗った大男は、新入生をホグワーツ城へと案内するために手に持ったランプの光で先導し、ボートへと乗せていく。

 新入生たちがまとまりのない列を成して歩いていく中、コレットは列車の中でセイバーの言葉を反芻していた。

 

 「ルベインアンツの悲願である聖杯を見つけることこそ、お前が生きる意味だ」

 

 その言葉は、コレットにとって一種の呪いのようでもあった。

 まだ、エドワードがコレットの教育に熱を入れていた頃の話である。エドワードは幼いコレットの脳に染み込ませるように何度もその言葉を繰り返し、杖を握らせた。聖杯の探索は、立派な魔女として大成しルベインアンツ家を復興させるのと同じく、コレットに課せられた重要な使命だったのだ。

 だが、エドワードがコレットの才能を見限った日からその言葉が出てくることはなくなり、代わりに罵詈雑言の嵐を受けることになった。

 セイバーはパスによってコレットと繋がっている。魔力を供給するために存在するその繋がりは、時にコレットの過去の記憶をセイバーに視せることがあるらしい。事実セイバーはこの過去を垣間見たことで、コレットに”ホグワーツに聖杯がある”ことを告げるのを良しとしなかったのだ。

 

 『君の学校生活に、泥を塗るような真似はしたくなかったんだ』

 

 エドワードの影をホグワーツで見せたくなかった―――ボートへ乗り込むコレットに、セイバーはそう告げる。その声は、罪を裁かれる罪人の懺悔のような後悔の念を含ませた、暗いものだった。

 

 『・・・セイバー、そんな殊勝な態度もできるのね。成長したんじゃない?』

 『・・・僕、結構真剣に話をしてるんだけど』

 『ふふ―――わたし、聖杯なんて気にしてないわ。だって、わたしはもうあのくそジジイから解放されたんだから』

 

 水面をゆっくりと進むボートの上から、コレットは左手を垂らした。指先から感じられる水はコレットの肌に鳥肌を立てるほど冷たいものだったが、どこか心地良い。それは、あの鬱蒼と樹々が多い茂る薄暗い屋敷から旅立ち、新しい生活に心を高鳴らせるコレットだからこそ感じられるものだった。

 聖杯なんて気にしないし、知らない。余計なものは全てあの屋敷に置いてきたのだとコレットが豪語すると、セイバーはふっと笑い声を漏らした。

 

 『その割には、汽車の中で随分と落ち込んでたみたいだけど?』

 『うっ・・・折り合いをつけるのは難しいのよっ』

 

 霊体化したセイバーの居場所など分かる筈もないのに、コレットは、セイバーから顔を背けるようにぷいと横にやった。

 

 「ちょっと、こっちを見ないでくれる?」

 

 ボートにはパーキンソンも同乗していた。

 

 

 

 

 

 ボートがホグワーツ城のある岸に乗り上げると、ハグリットは新入生の先頭に立って歩いていく。彼の持つランプだけが足元を照らす中、湿った草原を抜けて辿り着いた先には、大きな城門があった。

 ハグリットが門を三回叩くと扉が開き、中から緑のローブを纏った背の高い魔女が現れる。厳格な顔つきが浮足立った新入生たちの顔を見渡すと、すぐに騒めきが静まり返った。

 

 「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」

 「ご苦労様、ハグリット。ここからは私が預かりましょう」

 

 マクゴナガルは扉を大きく開けると、ハグリットに代わって生徒たちを玄関ホールへと誘導する。壁に掲げられた松明の火で照らされたホールはどこかぼんやりとしており、不思議な雰囲気を漂わせていた。

 ホールを横切り、マクゴナガルは新入生をホール横にある空いた小部屋へと連れてくれると、こほんと咳払いをした。

 

 「ホグワーツ入学おめでとう―――新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間に着く前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません」

 「僕はスリザリンに決まってる」

 

 ドラコはコレットに耳打ちすると、にやりと笑ってみせる。

 マクゴナガルの玲瓏とした声が部屋に響き渡り、まだホグワーツを知らぬ新入生たちに心構えをさせていく。コレットは、きっとマクゴナガル先生の授業はとても分かりやすくて怖いのだろうと思った。

 

 「―――まもなく全校列席の前で組み分けの儀式が始まります。待っている間、できるだけ身なりを整えておきなさい」

 

 その言葉と共にマクゴナガルは部屋から出て行った。それを見届けた新入生達は、脱力したように溜め息をつき肩を落とす。

 

 『君、あの先生の授業では何百点減らされるかな?』

 

 既にいつもの調子を取り戻したセイバーの声は、コレットの緊張した心を腹立たしさに変える。他の新入生と同じく、マクゴナガルの雰囲気に圧倒され緊張していたコレットは、凝り固まった肩を回しながら『喧嘩なら買うわよ』と言った。

 すると、コレットの横にいたドラコから、珍しいものを目にしたような声が聞こえてきた。

 

 「おや、君はハリー・ポッターじゃないかい?」

 「え?」

 

 そのドラコの声に、コレットは思わず反応を示した。ハリー・ポッター―――それは汽車の中でセドリック達が話していた人物の名前であった。その人物がここにいるのだと知ったコレットは、興味を引かれドラコの視線の先を見る。

 

 「あ、あなたっ!」

 「あ、君は!」

 

 そこにいたのは、オリバンダー杖店で出会った少年だった。コレットが驚きのあまり目を見開いていると、「何だ、知り合いだったのか」とドラコは面白くなさそうに呟いた。彼はコレットが世間知らずなことを良いことに、”生き残った男の子”であるハリーを自分の知り合いだと紹介し、自慢しようと企てていたのである。

 

 「ポッター君、こいつはコレット・ルベインアンツだ。こんななりでも純血の魔法使いでね、一応僕の幼馴染さ」

 「あっ!」

 

 なんで私の自己紹介をドラコがするのよ!コレットはドラコにそう言い募ろうとするも、ドラコの横にいたパーキンソンがぎろりと睨みつけてきたためそれは出来なかった。彼女はドラコの口から「僕の幼馴染」だとコレットが紹介されたことが気に食わないらしい。

 ドラコは取り巻きのクラッブ、ゴイルを紹介すると、最期に「僕はドラコ・マルフォイだ」と勿体ぶったように名乗った。

 すると、ハリーの後ろからくすくすと笑い声が聞こえてくる。コレットが目をやると、そこには笑ったことを誤魔化すように咳払いをする赤毛の少年の姿があった。

 

 「僕の名前が変だとでも言うのかい?君が誰だかなんて聞く必要もないね。父上が言っていたよ。ウィーズリー家はみんな赤毛で、そばかすで、育てきれないほどたくさんの子供がいるってね」

 

 ドラコはそう言うとロンの姿を蔑んだ。彼の纏っているローブは新品というより着古したもののようで、彼の兄弟のおさがりであることが伺える。

 

 「ポッター君、そのうち家柄の良い魔法使いとそうでないのが分かってくるよ。間違ったのとは付き合わないことだね。その辺は僕が教えてあげよう」

 「ちょ、ドラコ、」

 

 ドラコの物言いにコレットが咎めようとしたものの、それはするまでもない行為だった。

 ハリーはドラコを一瞥すると、

 

 「間違ったかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。ご親切さま」

 

 と、冷たく言い放ったのだ。

 これまで同年代の子供にコケにされたことがなかったドラコの青白い顔は、羞恥心のあまりピンク色が差している。プライドの高い彼はこのやり取りが衆目に晒されていたことが我慢ならなかったのか、ハリーに負けじと噛みついた。

 

 「僕ならもう少し言動に気を付けるけどね。もう少し礼儀を弁えないと、君の両親と同じ道を辿ることになるぞ。君の両親も何が自分の身のためになるかを知らなかったようだ。ウィーズリー家やハグリットみたいな下等な連中と一緒にいると、君も同類になるだろうよ」

 「ドラコ!」

 「もっぺん言ってみろ!」

 

 ドラコの心ない言葉に今度はロンが噛みつく。何とかドラコの減らず口を止めロンを制止したいと思う反面、どういう対応を取ればいいのか分からないコレットは、両者の間であたふたと慌てふためいていた。

 このままでは殴り合いの喧嘩になるのではないか―――そんなコレットの心配は杞憂に終わった。マクゴナガルが部屋に戻ってきたのである。

 

 「皆さん静粛に!組み分けの儀式がまもなく開始されます。一列に並んで付いてきてください」

 

 ロンの闘志ははマクゴナガルの一声で冷水を浴びた蝋燭の火のように鎮火し、振り上げそうになった拳を即座に下していた。ドラコもマクゴナガルに叱責されるのは避けたいらしく、ハリー達に向かって鼻を鳴らすとクラッブ達を連れてマクゴナガルの後を付いていった。

 

 「あ、あの・・・ポッター君」

 

 ドラコの後に続かなかったコレットは、ドラコの誹りを止められなかったことに罪悪感を覚え、弁解しようする。

 

 「ハリー、あいつの取り巻きなんて関わらない方がいいぜ」

 

 しかし、ドラコとのやり取りのせいで、彼の隣にいたコレットにも敵対心を持っていたロンは、コレットの弁解を聞くよりも先にハリーに注意を促したのである。

 

 「・・・うん」

 

 ドラコと共にいたコレットより、既に仲間意識を持っているロンの方が信用に値するのだろう。ハリーは少しだけコレットの方へ視線を彷徨わせたものの、ロンに同意しそのままコレットの横を過ぎ去っていった。

 

 「・・・嘘」

 『これは・・・ご愁傷様としか言いようがないね』

 

 取り残されたコレットの声は、空しく小部屋に響いていた。

 

 

 

 

 

 ドラコやハリー達よりも後列にいたコレットは、呆然自失とした表情でとぼとぼと大広間を歩いていた。

 彼女の落ち込みようは凄まじいものだった。多くの新入生が大広間の天井に映る美しい夜空や、浮かび上がる蝋燭の火に心奪われているというのに、顔を俯けたコレットにはそれが目に入ることはなかった。

 もしあの男の子と出会えたらちゃんと自己紹介しよう。そう意気込んでいたコレットにとって、先ほどのやり取りはあまりにも最悪の結果だったのだ。あれでは杖店で出会った時の印象よりさらに悪くなっているに違いない。コレットは隣から聞こえてくる少女の声が朧げに聞こえるほど沈み込み、意識を遠のかせていた。

 

「この大広間の天井は、本当の空に見えるように魔法がかけられているのよ。”ホグワーツの歴史”に書いてあったわ」

 「・・・」

 「ちょっと!あなた聞いてるの?」

 「へ・・・何ですか・・・?」

 「あなた、さっきハリー達と一緒にいた子よね?あなた気が弱そうだし、あんなやり取りをした後じゃ落ち込むのも無理はないけど、そんなことも言ってられないわ。ホグワーツに入学するなら、もっと学校について興味を持つべきよ」

 「めんぼくしだいもございません・・・」

 「しゃんとしなさい!」

 

 隣ではきはきと喋る女の子は、落ち込んだコレットを奮い立たせるように一喝する。『確かにその通りだ、君は一々気にしすぎなんだよ』とセイバーが便乗した。

 少女の言葉とセイバーの嫌味で少しだけ気分を持ち直したコレットは、落ち込んだ気分を払拭するように両頬をかるく叩くと、隣の少女に感謝の言葉を述べた。

 

 「話を聞いてなくてごめんね。あと、ありがとう」

 「・・・同じ寮になれるといいわね」

 

 少女は少しだけ顔を赤らめると、そう言葉を零しきびきびと先を歩いて行った。コレットもその後に続くように大広間の奥へと進んでいくと、その途中で長テーブルに座っているセドリックが此方に視線を向けていることに気が付いた。おめでとうと言うように微笑むセドリックに、若干コレットは気恥ずかしくなったが、それはすぐに苦笑いに変わることになった。彼の周囲にいる女の子たちが、セドリックの微笑みに黄色い声を上げていたからだ。双子の言っていた通り、どうやらセドリックは本当に女泣かせのようだとコレットは思った。

 新入生の長い長蛇の列が歩を止める。彼らの前には、椅子に乗せられたボロボロの帽子が鎮座していた。

 広間が水を打ったように静まり返る。帽子はぴくぴくと動き出し、つばのへりの破れ目が口のように動き出すと、高らかな声で歌いだした。

 

 「(勇気あるものはグリフィンドール

   努力を惜しまぬハッフルパフ

   知識を求めるレイブンクロー

   狡猾なるはスリザリン―――)」

 

 帽子の歌を要約すると、そういう歌詞であった。どうやらそれぞれの寮の気風と新入生の性格を合致させて選別していくらしい。歌い終わった帽子へ送られる拍手喝采を聞きながら、コレットは自分がどこの寮に入れられるのか漠然と考えていた。

 

 「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子を被って椅子に座り、組み分けを受けてください―――アボット・ハンナ!」

 

 長い羊皮紙の巻物から名前を呼び上げたマクゴナガル。その声に反応して、金髪のおさげの少女が転がるように前に出てきたことで組み分けの儀式は始まった。

 帽子は円滑に新入生の組み分けを進め、マクゴナガルはつらつらと生徒の名前を呼び上げていく。先ほどコレットの隣で話していた少女は、ハーマイオニー・グレンジャーと言うらしい。彼女の話しぶりからレイブンクローだろうかと予想していたコレットだったが、組み分け帽子は彼女をグリフィンドール寮へと振り分けた。

 ドラコは予想通りスリザリンだった。彼は帽子を被る間もなくスリザリンに組み分けられると、後列に残っていたコレットに見せつけるように自慢げに笑い、スリザリンのテーブルへと歩いて行った。

 ハリーの組み分けにかかる時間は長く、何やら帽子と話し込んでいたようだった。帽子は高らかに「グリフィンドール」と告げると、グリフィンドールのテーブルに座っていた生徒たちは歓声を上げ、ハリーを快く迎え入れていた。

 名前の頭文字のアルファベットがQからRへと移り変わった時、コレットの名前は呼ばれた。

 

 「ルベインアンツ・コレット!」

 

 コレットは帽子の元へ駆け出した。緊張した表情を浮かべながら椅子に座ると、マクゴナガルは手に持っていた帽子をコレットの頭の上へと乗せる。

 

 「―――ふうむ、ルベインアンツ家の子だね。君の一族に生まれた女の子は、いつも見定めるのが難しい」

 「難しい?」

 「と思ったが、どうやら君はそれに当て嵌まらないらしい。とても単純で分かりやすい」

 「え、何、馬鹿にしてるの?」

 

 歌を口遊むような調子で話しかけてくる帽子は、コレットのふつりと湧いた苛立ちを察し「そんなことはない」と返答した。コレットからすれば、あまりにも信用ならない言葉である。

 

 「ルベインアンツ家の中でも、君の祖母と母はとても難しくてね、流石の私でも唸ってしまったよ。何せ彼女たちは、あまりにもどの寮の気質も持ち合わせていなかった」

 「持ち合わせていない・・・?」

 「その才能は目を見張るものがありながら、グリフィンドールのように勇気に満ち溢れているわけでもない。ハッフルパフのように優しさを兼ね備えているわけでもなく、レイブンクローのように知識を探求しようという勤勉さもなければ、スリザリンのように野心に燃え狡猾なわけでもない―――彼女達は、どこの寮にも入れる資格を持たなかったし、それ故にどこの寮にも入ることができた」

 

 帽子は懐かしそうにその過去を語るが、当のコレットからすればその話は初耳だった。まず、自分の祖母や母がこの学校に通っていたことさえ知らなかったのだ。祖母はコレットが生まれる前に既に他界し、母はコレットが赤ん坊の頃に事故に遭って死んでしまった―――エドワードはコレットにそれだけしか話さなかったのである。

 

 「それに比べれば、君は何とも分かりやすい・・・が、迷うものがある」

 「迷うって、何をですか?」

 「君は、大切なものを守るためなら振り絞れる勇気がある。それはグリフィンドールに値するが、守るためならどんな手段を辞さないという狡猾さはスリザリンに向いている。まるでコインの表と裏のようだ」

 「わたしに、勇気・・・?狡猾さ・・・?」

 

 

 その評価はあまりにも的外れだとコレットは考えた。自分に勇気があればエドワードに反抗してあの生活を打破できたはずだし、狡猾さがあればあの屋敷の中でもっと上手く立ち回ることができていたはずだと思ったからだ。

 何より、無力でしかない自分に守れるものなどありはしないし、守るべきものもない。コレットはそう思わずにはいられなかった。

 

 「君は勘違いしているね?私は全てを見通す帽子。私は君の頭の中を覗き、君の中に眠る性質を見極めるのだよ」

 「・・・見極めようとしている割には、二つも候補があるみたいだけど?」

 「おぉ手厳しい。今年の新入生は難しい子ばかりのようだ。―――さて、物は相談なんだが、君はどちらの寮を望むかね?」

 「え、選んでいいの?!」

 

 コレットは迷う他なかった。グリフィンドールに行けば、汽車で知り合えたフレッドやジョージに会えるだろうし、先ほど少しだけ言葉を交わしたハーマイオニーとも同じ生活が送れるだろう。また、スリザリンならばドラコが組み分けされているため気兼ねせずには済みそうではあると思える。

 うんうんと腕を組みながら考え込む中、帽子は再びへりの破れ目を動かし言葉を紡いだ。

 

 「悩むのもいいが、これだけは言わせてほしい。もし君がグリフィンドールを選ぶなら、君はこの学び舎で多くの友を得て守るべきものを見つけられるが、スリザリンを選ぶなら、君は真に欲するものを知ることができるだろう」

 「え、それってどういう意味なん」

 「だが、君は既に恵まれているようだ。ならば―――”スリザリン”!」

 

 聞いた意味あったの?!わたし少しだけグリフィンドールに入りたいなあと思ったんだけど?!

 あたかも狙ったようにスリザリンと告げた帽子に抗議しようとするコレット。だが、まだ組み分け出来ていない生徒が閊えていることを鋭い眼光で訴えかけてくるマクゴナガルに怖気づき、コレットはそそくさとスリザリンのテーブルへ向かう他なかった。

 

 「良かったじゃないかコレット。ポッター達よりはマシだということが証明されたぞ」

 

 既にスリザリンのテーブルで新しい取り巻きに囲まれていたドラコは、ふんぞり返った態度でコレットを迎えた。対してドラコの隣に座っていたパーキンソンは、「ハッフルパフに行けばよかったじゃない。あそこの男子に色目を使ってたくせに」と悪態をついてくる。

 居心地が悪くなる中、ドラコの向かい側が開いていたのでそこにコレットは座った。

 

 「(やっぱりグリフィンドールが良かったんじゃ・・・)」

 

 そう思いつつグリフィンドールのテーブルへと視線を向けると、此方へ視線を向けていたハリーと目が合った。ハリーは「やっぱりか・・・」と言わんばかりの視線をコレットに向けながら眉を顰めると、そのまま顔を背けてしまう。それ以後、大広間にいる間コレットはハリーと視線が合うことはなかった。

 

 『これは確実に仲良くなれそうにないね』

 「もう死にたい・・・」

 

 淡々と事実を口にしたセイバーの言葉は、コレットの胸を深く抉った。

 その後コレットは、ホグワーツ校長であるダンブルドアの話を聞き逃した挙句、テーブルに置かれたたくさんの御馳走にあまり手を付けられないまま夕食を終えることになり、スリザリン寮の女子室へと向かうことになった。

 

 「うわ最悪、あなたと同じ部屋なんて」

 

 顔を歪めたパーキンソンを目の前にして、コレットは叫び声を上げたくなった。

 コレットの明日はどっちだ。



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