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マーケティング

BOXIL(ボクシル)は、なぜITトレンドのシェアを急激に奪えたのか?
村上 薫

BOXIL(ボクシル)は、なぜITトレンドのシェアを急激に奪えたのか?

10年以上の運営歴を持つ、老舗の法人向けIT製品の比較サイト『ITトレンド』。しかし近年では競合である『ボクシル』に押されているようです。SEOエキスパートである村上薫氏が、ここ数年の検索エンジンのトレンドからその理由をひも解きます。

 

ITトレンドの検索順位はなぜ落ちたのか?

2016年に上場した株式会社イノベーション。

 

リクルート出身の富田 直人氏が2000年に設立した企業ですが、上場を牽引したのは『ITトレンド』という、BtoBサービスの10年を超える運営歴のある老舗ウェブメディアです。

 

 

同社の上場時の利益の大半は、このITトレンドによって生まれていました。

 

 

しかしIR資料によると、近年はSEOトラフィックの減少によって、収益性が悪化しているようです。

 

http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS03901/4f01dfcc/e6f9/4d29/b0c6/55d0954d88af/140120180514437762.pdf

 

一方、古橋 智史氏が創業したスマートキャンプ社が運営する『ボクシル』(https://boxil.jp/)の伸びが近年著しいです。

 

『ahrefs』というツールでボクシルのSEOトラフィックを見ると、右肩上がりで伸びているのがわかります。

 

 

一方、ITトレンドのトラフィックを見てみると、

 

 

ここ最近は減少しているように見えます。

 

スマートキャンプ自体は2014年創業で、ボクシルは2015年に生まれた新興サービスです。
ITトレンドの検索順位が落ちている背景には、

 

 

という要因があるように思えます。

 

ここ数年の検索エンジンのトレンドとあわせて、整理をしましょう。

 

ITトレンドにおける勝ちパターン

ITトレンドのビジネスモデルは、資料請求課金です。

 

例えば勤怠管理ソフトを探している企業がITトレンド内で資料をダウンロードすると、その都度掲載企業がイノベーション社に成果報酬を支払う流れになっています。

 

https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu0000021nj3-att/12Innovation-1s.pdf

 

ITトレンド内でどういった製品に対して集客をしたいのかは、広告を出しているキーワードである程度推測ができます。

 

ahrefsでリスティングワードを調査できるので、見てみました。

 

# Keyword
1 タイムカード
2 グループウェア
3 勤怠管理
4 顧客管理
5 タイムカード アプリ
6 タイムレコーダー
7 勤怠管理システム
8 itトレンド
9 sfa
10 顧客管理ソフト
11 給与ソフト 比較
12 ビジネスチャット
13 メール配信ソフト
14 社内sns
15 タイムカード フリーソフト
16 web会議
17 在庫管理ソフト
18 グループウエア
19 erp パッケージ
20 営業支援システム

 

あくまでも外部ツールのため完全に取得することはできないのですが、ビジネスモデル上重要なキーワードの一つであることは間違いないでしょう。

 

そして利益率の観点から、これらのキーワードは本来であれば広告ではなく、SEO経由で集客をしたいはずです。

 

これらのキーワードのSEOにおける検索結果が、どのようになっているのかを見てみましょう。

 

現状の検索結果のパフォーマンス比較

# Keyword itトレンド ボクシル
1 タイムカード 84 4
2 グループウェア 36 1
3 勤怠管理 37 6
4 顧客管理 19 5
5 タイムカード アプリ 75 1
6 タイムレコーダー 21
7 勤怠管理システム 14 2
8 採用管理 27 4
9 sfa 12 6
10 顧客管理ソフト 13
11 給与ソフト 比較 23 1
12 ビジネスチャット 51 1
13 メール配信ソフト 11 1
14 社内sns 9 1
15 タイムカード フリーソフト 2
16 web会議 43 5
17 在庫管理ソフト 11 10
18 グループウエア 24 1
19 erp パッケージ 11 1
20 営業支援システム 36 4
       
  10位以内率 2% 90%

 

見て頂くと明らかですが、スマートキャンプのボクシルが相当なシェアをとっていることがわかります。

 

イノベーション社のITトレンドの売上が年間で約10億円前後で、利益率がここ数年落ちているので、粗利が2~3億円/年ぐらいでしょうか。

 

このSEOのパフォーマンスを見ると数年以内にスマートキャンプもこの水準に行くでしょうし、ひょっとしたらすでにかなり近い水準まできているかもしれません。

 

そしてなぜボクシルはここまで急激に成長できているのでしょうか。

 

なぜこのようなことになっているのか

リクルートのリボン型ビジネスモデルにおけるウェブサービスのインタフェースといえば、以前はトップページに地図が鎮座するような検索型が主流でした。

 

ただしここ数年はDeNAパレットが運営していたキュレーションメディアのような記事型のメディアが、検索エンジンのトラフィックの恩恵を受けやすくなっているという背景があります。

 

例えばエリア×グルメで検索をかけると、数年前は食べログ、ぐるなび、ホットペッパーグルメが軒を連ねていましたが、今はキュレーションメディアが運営するような記事が表示されます。

 

 

 

グルメや旅行などtoCの領域では、様々なプレイヤーが記事型のメディアを立ち上げて検索サービスのトラフィックシェアを奪っていましたが、BtoBの領域ではそういったプレイヤーはいませんでした。

 

そこでスマートキャンプ社のボクシルが、この流れを掴んで成長したように見えます。

 

こちらを見ると、ボクシルがコンテンツマーケティング・コンサルティング会社などに依頼をしてサービスを改善していった様子がわかります。



3カ月でリード総数を4000件へ倍増させた『ボクシルマガジン』のコンテンツグロースの軌跡
https://moltsinc.co.jp/project/873

 

もちろん、ITトレンドはこういった流れを把握していなかったわけではないでしょう。

 

ITトレンドを見ると、サイト内にこのような記事型コンテンツがいくつもあるのがわかります。

 

が、記事をボクシルと比較すると質量ともに劣っているように見えます。

 

そしてわれわれとしては、こういった状況から得られる学びはあるのでしょうか。

 

得られる学び

ITトレンドはほぼ出来上がっているサービスだったため、検索エンジンの流れが記事有利となっていたとしても、検索型のメディアを変えることはできなかったのでは、と感じます。

 

なんというか、「偉くなりすぎて転職しづらくなってしまった」みたいな話に近い気がします。

 

なので思うことは

 

 

という感じですね。

 

自社がまくられているような立場から、社内でなんとかしていくのは構造的に相当難しいと思うので

 

 

のが良いと思います。

 

というものの社内で立て直すとなると、サイボウズ青野社長のコメントが参考になるのですが、これを見るとちょっと難易度が高いなと思うんですよね。

 

 

今うまくいってるというシーンでは、まくってくる、まくろうとしているプレイヤーがいることを前提に立ち回りたいものですね。

 

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村上 薫

大学在学中、ITベンチャーを起業。自ら経営者として様々なウェブサービスの運営を行いつつ、コンサルタントとして様々なサービスの改善を行ってきた経験を持つ。 このコラムでは経営者としての目線を元に、“実利になるマーケティングとならないマーケティング”というテーマで情報を発信していく。

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