トップ > 長野 > 3月26日の記事一覧 > 記事
長野あずみの里事故死、有罪判決 介護関係者から落胆の声
安曇野市の特別養護老人ホーム「あずみの里」で二〇一三年、ドーナツをのどに詰まらせて死亡したとされる利用者の女性(85)への注意義務を怠ったとして、業務上過失致死罪に問われた准看護師山口けさえ被告(58)の判決公判。「有罪なら介護現場が萎縮する」と無罪判決を信じて駆け付けた全国の介護関係者たちからは落胆の声が漏れた。 開廷前の地裁松本支部には、二十一枚の傍聴券を求めて三百二人が抽選の列を作った。山口被告が姿を見せると、拍手が起こった。 求刑通り罰金二十万円の判決後、山口被告を支援する県内外の医療、福祉関係者らでつくる「特養あずみの里業務上過失致死事件裁判で無罪を勝ち取る会」が松本市内で集会を開き、県内のほか近畿や関東地方などから集まった四百人が参加した。 木嶋日出夫弁護団長は、もがくなどの「窒息サイン」がなかったなどとして窒息はなかったとする弁護側の主張を認めなかった判決の概要を説明。「証拠をねじ曲げ、有罪判決にした。これで窒息と認定され、たまたま居合わせた看護師が有罪にされたらたまったものではない」と指摘した。 勝ち取る会の小林作栄会長(80)は「完全無罪を夢見ていたが残念な結果。一瞬、声が出なくなるくらい『どうして』という思いでいっぱいになった」と控訴審での無罪判決に望みを託した。 集会後、県看護協会の松本あつ子会長(65)は「なぜこのような形で職員に罪を科すのか。利用者の全てを把握しておくのは不可能」と判決に疑問を呈し「現場は萎縮してサービスが低下するようなことを考えてはいけない」と話した。 地裁松本支部に駆けつけた大阪市中央区の看護師徳田文さん(47)は「(事件後)介護現場は萎縮していると聞く。これが正当な判決だとしたら誰も介護に携われない」と危機感を募らせた。介護施設で勤務した経験のある兵庫県姫路市の看護師中野啓民さん(53)は「利用者の尊厳を守るため(危険性のある利用者の)全ての食事を流動食にはしたくない。その思いを踏みにじる判決」と涙を流した。 ◆ハンカチ両手に、疲れ切った表情 法廷内の被告
山口被告は、黒のパンツスーツ姿で法廷に現れた。証言台で判決主文を聞いた後、弁護人席に向かう横顔からは疲れ切った表情がうかがえた。 野沢晃一裁判長が判決要旨を読み上げる間、うつむき加減で机に目を落とし、しばらく目を閉じる場面もあった。膝の上で黒と紫色のハンカチを両手で握って聞き入った。 内容が提供するおやつの確認義務に及ぶと、顔を上げて裁判官を見つめた後、うつむいてハンカチを両目に押し当てた。 判決を聞いた弁護団十二人は厳しい表情を浮かべ、裁判官を見上げるなどしながらメモを取った。 (川添智史、安永陽祐、高橋信)
今、あなたにオススメ Recommended by PR情報
| |
Search | 検索