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【暮らし】学童でも待機児童問題 増える利用者、施設追いつかず小学生が放課後、家に保護者がいないなどの理由で通う学童保育(学童)の利用が年々、増加している。しかし、希望に対応できる施設ばかりではない。首都圏では、新一年が新たに入ることに伴い、利用していた新二年が別の学童に通わざるを得ない事態も生じている。保育園の待機児童の問題と同じ構図ともいえ、早急な公的支援の必要性を指摘する識者もいる。 (寺本康弘) 東京都杉並区の会社員女性(38)は一月、小学一年の長女が通う学童保育の職員に「新年度は九十人の一年生が申し込む。この学童を利用できない可能性が高い」と言われ、がくぜんとした。 学童は校内にあり、定員六十人。毎年、利用を希望する全児童が審査対象となるが、条件が同じなら学年が低いほど審査で有利なので、学年が上がるほど入りづらくなる。 結局、長女は新年度から、学校から歩いて十分の距離にある別の学童に通うことにした。女性は夫婦共働き。「小学二年とはいえ、校外の学童まで歩いて通うのは心配。せっかく慣れてきた学童なのに、小二にも壁があるとは思わなかった」と話している。 杉並区では二〇一八年四月時点で、学童保育を利用する児童は四千三百二十四人で、待機児童は二百五十五人だった。一九年度は定員を二百六十人増やして待機児童を解消しようとするが、「希望の多い場所と空きのある場所とでばらつきがある」と話し、希望通りにいかない現状がある。 学童保育は一九九七年の児童福祉法改正で、初めて法的に位置付けられた。児童福祉法に最初から位置付けられていた保育所に比べると歴史は浅い。加えて学童保育の設備や運営に関して国が基準を示したのは二〇一四年が初めて。子ども・子育て支援法は市町村に対し、学童保育などの事業を実施することについて「責務を有する」と規定している。施設整備や職員確保などに力を入れる自治体もあるが、状況にばらつきがある。また利用者を決める審査や調整の方法もまちまちだ。 利用者は全国的に増加している。厚生労働省の調査では、学童保育を利用する児童数は一八年五月時点で百二十三万四千三百六十六人。十年前の一・五倍に増えている。また待機児童は一万七千二百七十九人で、こちらも十年前の一・三倍に増えている。 ◆自治体ごとに整備にばらつき関東では東京都の待機児童が最も多く三千八百二十一人、埼玉千六百五十七人、千葉千六百二人、神奈川六百五十四人、茨城三百九十五人、群馬六十六人、栃木五十六人となっている。全国的にも首都圏の待機児童は多い。児童数と共働き世帯数が多い上に、祖父母が遠距離に住んでいて支援が受けられないケースが多いとみられる。 ただ全国学童保育連絡協議会(東京)によると、公営や公設民営以外の学童では、運営者や施設に直接申し込むことが多いため、市町村が待機児童を正確に把握できていないのではないかという。また、自治体が口頭で断ったものは待機児童として数えていないところもある。このため、実際の待機児童数はもっと多いのではないかという。 学童保育に詳しい静岡大教授の石原剛志さん(50)は「共働き世帯が増え、保育所と同じようにニーズが高まっているのに、保育所に比べて施設整備が進んでいない。学童保育の施設整備に対しても公的財源による補助を抜本的に拡充すべきだ」と話す。
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