【大相撲】平成ラストVは白鵬! 全勝締めで3場所ぶり42度目V2019年3月25日 紙面から
◇春場所<千秋楽>(24日・エディオンアリーナ大阪) 横綱白鵬(34)=宮城野=が平成最後の場所を自身15度目の全勝優勝で締めくくった。結びの一番で右腕を痛めながらも、横綱鶴竜を熱戦の末に下手投げで破り昨年秋場所以来、3場所ぶり42度目の優勝を飾った。関脇貴景勝(22)=千賀ノ浦=は大関栃ノ心(31)=春日野=を一気に押し出し10勝目。三役で3場所連続2桁勝利を挙げ、来場所の新大関昇進を確実にした。かど番だった栃ノ心は負け越し、来場所は関脇に陥落する。優勝を争っていた逸ノ城(25)=湊=は14勝目を挙げ、殊勲賞を受賞した。 平成最後の天皇賜杯をつかみ取ったのは、平成に愛され、平成に育てられた白鵬だった。史上1位となる5年連続での全勝優勝達成。白鵬らしく華やかなフィナーレを飾ったが、その代償も大きかった。 勝負を決めたのは右からの下手投げ。最高の瞬間を迎えたはずが、白鵬は右上腕を左手で押さえながら顔をゆがめた。支度部屋へ引き揚げてきた時の第一声は「切れたねえ…」。質問されるより先に、うめくようにつぶやいた。 まげを結い直してもらいながら、何度も「アーッ」と声にならない声でうめいた。「だめですねえ。最初ですね。切れてるなあ、これ」と負傷時の状況を説明した。 サポーターを2枚重ねて臨んだ表彰式。土俵下インタビューで「最後に投げを打ったとき痛めてしまって」とようやく把握できたようだった。あれほど欲しかった天皇賜杯も左腕だけで抱え、審判の親方に支えてもらったほど。ただ、「ちょっと痛いです」とその後は大観衆を笑わせた。 稀勢の里も大胸筋と上腕付近を痛め、本来の力を失った。付け人の手を借りながら紋付きに着替え、パレードのオープンカーへ向かう前にも「無理したね…」とつぶやいた。夏場所以降の出場に不透明感が漂うが、そのときは新たな時代を迎えている。 「平成13年に入門して、平成に育ててもらいました。さまざまな問題がありましたし、(野球賭博問題により天皇賜杯を辞退した)9年前の名古屋場所後に天皇陛下から手紙をいただいたのが一番の思い出です」 その思いを胸に、新時代も引っ張っていく。迫り来る世代交代も「いずれそうならなきゃいけない時期がくる」と話していたが、まだその時期ではないところを見せつけるつもりだ。 元マリナーズのイチローは「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行く唯一の道だということ」という言葉を残した。白鵬もかつてこう話してる。「水滴が集まれば海ができる」と。まずはけがを癒やし、大海を目指す。 (岸本隆)
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