常温亜鉛めっき塗装がプラスチックの保護に有用なことを以前書いた。亜鉛は金属なので劣化の原因となる紫外線を通さない。錆びて酸化亜鉛になってもUVスキンローションに使われているように紫外線を散乱してくれる。
亜鉛めっき塗料はローバルが老舗。最近ではホームセンターでも入手できる。ローバルで塗装した躯体の耐用年数は同社サイトによると75~90年[1]。これはあらゆる有機系塗料を上回る。
しかもこれは錆止め効果の話で、プラスチックの場合は酸化亜鉛でもOKなことを考慮すると紫外線カットの耐用年数はそれ以上が期待できる。亜鉛メッキ塗装はプラスチック保護のために作られたような理想的な塗料ではないだろうか。
ローバルの成分は90%以上亜鉛なので寿命の考え方が塗料とは異なる。塗料はバインダーで寿命が決まるが、亜鉛めっきの塗料の場合は亜鉛の粉末が酸化結合するためバインダーによって寿命が左右されない。金属亜鉛メッキ同様に長持ちするとみられる。
予備実験
亜鉛メッキ塗料がプラスチックやゴムの保護に効果があるのか。それを確かめるためアメゴム(無着色天然ゴム)を使って予備実験をしてみた。
写真はアメゴムを使った簡易耐候実験の様子。左のように縛った状態で屋外の日当たりのよい場所に晒す。ごく短期間で紫外線やオゾンに対する保護の「見込み」を知ることができる。
右は2Week後、縛りを解いたときの様子。両者は明らかに異なる。亜鉛めっき塗料を塗ったほうは少しの永久変形の他異常は見られない。未対策のものはひび割れと強い永久変形が見られる。
ビニールに塗装して透かしてみると完全に光を遮るには相当厚い皮膜が必要なことがわかる。スプレー塗装程度の薄い皮膜でどの程度の効果があるか、今後検証を続けていきたい。
施工例
施工は簡単。プラスチックの部分にジンク塗料を塗ったりスプレーするだけ。厚塗りしても塗りムラが目立たない。施工直後はシルバーの金属光沢だが、時間が経つと落ち着いたグレーになる。途中汚く見える期間があるが心配ない。
原液のまま使うのがポイントで希釈はほとんどできない。揮発した溶剤成分を補うくらい。希釈しすぎるとかえってうまく塗れない。広範囲のうす塗りはスプレー缶のほうが便利。以下施工例。
ベランダ手すり、カーポートなど造作部材はモデルチェンジのサイクルが短い。品番が廃止されてから破損すると思わぬ出費になることも。使われているプラスチックの耐用年数は15~30年。亜鉛めっき塗装でこの部分の寿命を本体と同等まで引き上げる。
造作部材に限らず外壁、ドア、壁紙、床なども昔からあるロングラン商品を選ぶことがポイント。新築のときご注意。
ベランダのシート防水(塩化ビニール)に施工。これで将来の張替えは不要。劣化しやすいベランダスリッパ(EVA)にも塗装できる。
サッシのプラスチック部品は複雑なのでマスキングで範囲を限定し一括塗装。
右の排水弁は外して塗装できる。痛みやすい部分なので外すとき破損したら寿命。消耗品[1]なので交換も可能。
ガラスモールやドアストッパーなどのゴム部分にも濡れるが、伸縮する部分は塗膜が追従せず剥がれやすい。
水洗用品もこれでバッチリ。もう使い捨ての消耗品ではない。
屋外のエアーポンプはカバーをすると長持ちする。100均の整理BOX(PP製)の内側にテープを貼ってカバーを自作。風で飛ばないようステンレスの針金で固定。屋外コンセントも常に日のあたる場所はこれで安心。
屋内用のパラソルハンガーも屋外OKに。省スペースで使い勝手のよいハンガーの完成[1]。
住宅を建てるときは外壁や屋根を同色系のガルバで統一し、コーキング目地ごとローバルで全塗装してしまえば100年ノーメンテも夢ではなさそうだ。
カーポートはプラスチックの隅部品とドレインパイプがネックなのでここに施工。カーポートは普通コンクリート土間に支柱を埋め込むためリプレースになると大工事だがこれで住宅の寿命と同じくらい持つだろう。
エンビパイプの裏はスプレーが届かないので筆であらかじめ塗っておく。
カ バーやステー、ポールなどに施工。これで厳しい環境にあるアンテナの寿命も建物と同じに。アンテナ本体(アルミ)は塗らない。
塗料が余ったら以前紹介したように不乾性パテ(ネオシールB-3)をノズル出口に付けておく。これでいつでも調子よく使えるようになる。
その後の経過
(2016/12 追記)
亜鉛めっき塗装は腐食するので定期的なメンテ(補修)が必要だが、上からリボスの自然塗料などを塗っておくと亜鉛メッキ自体の腐食を遅らせてさらに長持ちさせることが出来るかもしれない。
(2017/5/4 追記)
ローバルの亜鉛めっき塗料は数年たつと、本物の金属亜鉛の塊のように堅牢な仕上がりになることがわかった。亜鉛含有量が高い(顔料が少ない)特徴によるものとみられる。
(2018/1/8 追記)
ローバル塗料を塗ったところが剥げてきた。PPやPEなど元々塗料が乗りにくい樹脂や、ゴムで顕著。ローバルは時間が経つと固まって弾性が失われ、下地の伸縮に塗膜が追従できなくなった為と見られる。
今回の用途では防錆が目的でないので、亜鉛が高濃度である必要はない。一般的な亜鉛メッキ補修塗料の方が剥がれにくいようだ。現在はニッペのジンクスプレーをメインに使用。
PPやPEなど元々塗料が乗りにくい樹脂については、新品の時に塗らず、ある程度劣化して表面がザラザラになってから塗った方が剥がれにくくなるようだ。
(2018/10/8追記) 4年後の様子
真っ先にボロボロになるはずのPP製ケース。4年間、日当たりの良い南側のベランダに放置したにかかわらず何ともない。触ると弾力があり、強度も低下していない。
コンクリートブロックは風で飛ぶのを防ぐ重し。
同じベランダに4年間放置しておいた未処理のバケツ。触っただけでボロボロ崩れる。このような結果になるのが普通。
樹脂製の洗濯用品。これも通常、1年くらいでバキ、といってしまうものだが、全く問題なし。現役で活用。
最も過酷な環境にあるベランダの手すり。だいぶ塗装が無くなってきた。高濃度の亜鉛メッキ塗料は減りが早い模様。
現在はニッペのジンクスプレーをメインに使用。こちらの方が持ちが良いようだ。
塗膜が無くなったらまた塗らないといけない。この部分はこのあと再塗装して、上塗りに自然塗料(エシャ クラフトオイル)を塗ってみた[2]。
以上の結果から、メンテナンス周期は4年程度であることがわかった。塗料の補修は上から重ね塗りするだけでよい。
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注:本記事の無断商用利用はご遠慮願います。本記事の公開日以降に出願された特許はすべて無効です。商用利用をご希望の方はこちらをご参照ください。
<参考文献>
1.ローバルの性能について
https://www.roval.co.jp/qa/index.php?faq04#y308e524