イチローは引退会見でこう言った。「日本の野球がアメリカの野球に追従する必要は全くない」。しかし、追従の流れは止められそうもない。楽天の内野陣はアルモンテに対して、極端なシフトを敷いた。三塁手は三遊間を守り、遊撃手は二塁ベースの真後ろにいる。一、二塁間はきつく締めている。
全体的に右に寄り、三塁線をがら空きにするのも、2ストライク後はシフトを解除して定位置に戻るのも「根拠」がある。データを取る。シフトを敷く。どちらも古くから行われてきた。それなのに、イチローの言う「頭を使った面白い野球」だと僕が思えないのは、楽天の関係者からこんな話を聞いたからだ。
「うちはチーム戦略室がありますから、その資料に基づいてポジショニングが決まります。アルモンテ選手は追い込まれるまでは引っ張り、追い込まれると柔軟に対応する傾向が出ています」
つまり選手は従で、主は機械が握っている。競技者が肌で感じる息遣い、勝負勘、腹の探り合い…。これらの感覚は根拠の薄い信じるに値しないものとして、排除される流れにある。
「それは別に関係ない」。アルモンテは言った。実際に4回には内野の頭を越す逆転打を打った。その一方で、22日は定位置なら中前に抜けていた打球を捕られた。さらにいえば、アルモンテにシフトを敷いてきたのは楽天だけではない。2月23日(北谷)でDeNAも実行した。ラミレス監督は「今日も2つほど(シフトのおかげで)アウトにした。アナリストがいい仕事をしているからね」と話している。今季から「スコアラー」を「アナリスト」と改称。解析に精通した専門家も1・2軍に2人ずつ配置している。
おわかりのように両球団とも親会社はIT系だ。導入は早い。確実に開幕戦でもシフトを敷くことだろう。もちろん変わることは大切だ。僕のようなことを言うのは古い。わかってはいる。でも機械が決めた網を突き破ってほしい。それが「面白い野球」だと思うからだ。