中腰のまま腰を下ろそうとしない高安に、白鵬は微動だにせず対峙(たいじ)した。長い長い無言の40秒。こうなれば、経験豊富な白鵬のペースとなる。
「ちょっと合わなかったすねえ。合わそうと思ったけどね」。それでも、集中の切れない白鵬は立ち合いすぐにもろ差しとなり、小手に振りにきた高安を浴びせ倒した。
逸ノ城が勝ったことでこの日の優勝とはならなかったが、42回目の優勝はもう待ったなし。自身の記録を更新する15回目の全勝も見えている。
昨年10月に右膝などを手術し、直後の九州場所を全休。今年の初場所は初日から10連勝したが、膝を痛めたことが原因で3連敗し、途中休場に追い込まれた。もがいてもがいて、ようやくここまでたどりついた。
今は疲労もない。「まだ10日いけるね」というほどの余力を残す。いよいよ、平成最後の大一番だ。「それ、言わないでよ」と苦笑いした白鵬だが、「今日は今日で。また明日」。言いたいことは、全勝で締めてから言うつもりだ。 (岸本隆)