【大相撲】立ち合い迷った貴景勝 大関の重圧か2019年3月24日 紙面から ◇北の富士評論「はやわざ御免」精神力の強さでは白鵬と双璧だと思われる貴景勝だが、大関を目前にして迷いに迷ったようだ。相手は逸ノ城。いくら勝ち込んでいるといっても、今の力は貴景勝がはるかに上回っている。13日目にも述べたが、目標が大きい分だけ当たれるし、押しやすいと思われたのだが、貴景勝はどういうことか立ち合い寸前まで迷った。「頭で当たろうか」「いや待てよ、相手は立ち合いで変化することもある」。散々考えたのが、手を出して相手の動きを見てから押す作戦だったと見る。 私は、あの場面は「待った」をするべきだったと思っている。それでも立った。踏み込みもないまま両手を出して逸ノ城の出方をうかがい、もろ手で押して出た。その手を逸ノ城が体を開いてはたき落とすと、貴景勝はあっけなく前に落ちた。さすがの貴景勝だが、千々に乱れた気持ちを立て直すことができなかった。これが大関への重圧だ。 それにしても、大関昇進のかかった大一番に中途半端な立ち合いでむざむざ敗れ去ったのはあまりにも惜しい。そして、今場所最悪の相撲内容で審判部の印象も悪くなったことだろう。残念のひと言に尽きる。この上は、千秋楽の栃ノ心に勝つことはもちろん、内容も問われることになった。もし負けたなら、昇進は見送られるだろう。 ところで、1敗を守った逸ノ城は不気味を通り越して本当に怖い存在となってきた。よもや白鵬が鶴竜に敗れるとは思えないが、絶対はない。1敗同士の決定戦になることもあるわけだ。そうなるのが一番面白いのだが、果たしてどうなりますか。千秋楽の土俵が楽しみになってきた。 と、ここまで頑張ってこの原稿を書いているが、14日目の朝から体調が悪く筆が進まない。今日はこのあたりで失礼するとします。 (元横綱)
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