最初
【天国から】外資系企業に勤めてたけど今日クビになった【地獄へ】


110以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/20(金) 02:49:03.07 ID:B85GI6DO
PS.>>1の母校には>>1のような人がどれ位いると思いますか?

もし良ければ、レスをお願いいたしますm(__)m


>>110
私のいた学部では、研究職になりたい人はスムーズに院に進学し、
就職したい人はそれなりのところに就職していると思うので、
私のように八方塞がりでなし崩し的に進路を決める人は極少数と言ってよいでしょう。











125 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/20(金) 23:52:46.34 ID:YsvtVX60
「・・・悪かったよ、ごめんな。」

彼が謝る。ごめんで済むか。
もう今日はゴネまくってやろうと思って私は泣きに泣いた。
ここが六本木じゃないのが残念だ。通行人のみなさん、この鈍感ヤローに冷たい視線を浴びせてください。
作戦は奏功し、彼は何もできずに立ち尽くしている。ざまーみろ。
化粧が落ちようと、コートの襟が涙でぬれようと知ったことか。

彼「な、なあ、お前、今好きな人とかいるのか?」

(こんなときになんば言うとーとね、こいつは)






127 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/20(金) 23:53:24.39 ID:YsvtVX60
1「おるわけなかろ!忙しかったんじゃから!」
彼「じゃあ、お、俺と付き合ってみないか?」
1「。。。は?」
彼「だって、俺達、一緒にいて楽しかったじゃないか、学生時代。
  まあ付き合ったからって今までと何が変わるってわけでも無いけど、でも楽しそうだろ!?」
1「。。。やだ」
彼「は?」
1「やだ!」
彼「なんでだよ!?」
1「頭沸いとーと!?告白しておいて『何も変わらん』って、なんば言いよるんね!」
彼「いや、それは言葉のあやってやつで」
1「とにかく嫌!出直せ!髪も切れ、服も買え!それと風俗やめろ!話はそれから!」

私は走ってタクシーを拾った。別れ際に「ばかやろー!」と叫んでおいた。






128 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/20(金) 23:53:51.40 ID:YsvtVX60
タクシーの中で、学生時代のことを思い出していた。

彼と初めて会ったのは入学前のオリエンテーション合宿のときだった。
行きのバスではみなが入試問題を話題に盛り上がる中、彼は後ろのほうで花札をやっていた。
行き先に着いて、バスを降りるとき、彼の顔は真っ赤だった。こっそり酒盛りをしていたらしい。
バス酔いも手伝ったのか、彼は降車すると草むらに走っていてリバース。

(なんねあの人。。。)

と衝撃を覚えた。良くも悪くも、彼ははみ出していた。
そしてその夜、1学年上の先輩とのコンパが予定されていたが、彼と彼の友達は景気付けのための0次会でダウン。
一同酔い潰れているのが部屋で発見され、介抱役として私を初めとした何人かがその任に当たった。

翌日、彼が代表して私にお礼を言いに来たときに話したのが、最初の会話だった。
それからは試験があるたびに、、、今思い返しても本当に試験の度に彼は連絡してきては、私に勉強を教わった。
そうして私たちは仲良くなっていった。






130 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/20(金) 23:56:17.25 ID:YsvtVX60
もう少し彼の話をさせて欲しい。懐かしさがこみ上げてきてしまった。

まだ二人が二十歳になるかならないかの頃、
彼は酔っ払って終電を無くすと、よくうちに泊まりに来ては部屋を荒らして帰った。
置いてある食べ物は勝手に食べてしまうし、貸したCDの盤面は常にズタズタになって帰ってきた。
休日に朝ごはんを作っておくと、好きなものだけ食べて、どこかに行ってしまう。残りは私が食べた。
忙しいのだなと思って、勉強をしようと大学の図書館に向かうべく最寄り駅まで歩くと、
パチンコ屋の前で雑誌を熱心に読む彼がいた。勉強するときもあれくらい熱心に読めばいいのに。
勉強を終えて、夜に帰ってくると、彼がベッドで寝ている。
そんなとき私はごはんを作っておき、こたつに突っ伏して寝た。
そうして、毎日が過ぎていった。

私は彼のことを好きだった。おそらく恋をしていたと思う。
大学の教官以外にまともに話したことのある男性は、彼くらいのものだった。
それでも私たちの間には何も無かった。
彼には常に彼女がいたし、風俗好きだった。私はいつも彼の良い友達であろうと努めて振舞った。
同級生の多くは私たちが付き合っていると思っていたようで、
私は彼の彼女から彼につきまとうのはやめてくれとまで言われたことがある。
それでも、私たちの間には、何も無かったのだ。






138以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/21(土) 00:04:03.79 ID:OGP/Qsso
>まだ二人が二十歳になるかならないかの頃、彼は酔っ払って

※このスレはフィクションです
※実在の人物企業団体等とは関係ないとかなんとか云々かんぬん




でもちょっとうるっとしてるおれがいるわけでwwww


>>138
あ!やばww
でも大学生になったら、みんな未成年でも浴びるように飲んでいたよ
当時はおおらかで、学生証を見せたら許してくれたし、人に迷惑をかけながら何か言われることも無かった






132 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/20(金) 23:59:05.71 ID:YsvtVX60
タクシーの中で私は涙を流し続けた。嬉しいけれど、やはり悲しい。

(今さら言われても、もう遅いっちゃ)

今でも思うが、彼と学生時代に付き合っていれば、
私は彼のお嫁さんになろうと思い、就職も考えなかったことだろう。
しかし彼がそういう話をしてくれたことは一度も無かったし、
私は私で、自分の気持ちと彼の気持ちに自信が持てないでいた。
勉強はそれら現実からの逃避であった。皮肉なことに、私は現実から逃避して没頭できるだけの才能があった。
それが大学院の進学を諦めたときに、私は現実と向き合わなければいけなくなった。
卒業試験の勉強を彼に教えていたときに彼が語った夢は、
そのまま私の手の届かないところに彼が行くことを意味していた。
私は砂を噛むように、人生で初めての絶望の味を知ったのだった。

彼ともう一度ここで会えると思ったことで、私の心は救われた。
しかし、会っていきなり付き合おうだなんて、虫が良すぎるではないか。
私は足掛け7年間片思いをしてきたのだ。
せめてもう少し素敵な告白をしてくれたっていいのに、とここまで考えて、私は自分の気持ちに気づいてしまっていた。
タクシーに、拾った場所に戻ってくれ、と告げた。






133 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/21(土) 00:02:12.65 ID:dU5mdIg0
私の勘と経験によれば、彼はまだあそこにいる。案外子供っぽく打たれ弱い奴なのだ。
きっと石でも蹴りながらいじけているはずだ。

タクシーが着いた。彼の姿は見えない。私は運転手に「待っていてくれ」と言って、10ドル札を渡して橋の方へ走る。
なんと、いない。彼のアルゴリズムはこの3年で書き換わっているのだろうか。
いや、そんなはずは無い、と思って探すが、見つからない。ああ、もう会えない。
涙が目にたまる。もう帰ろうと、諦めかけたとき、後ろから声がした。

「戻ってくるって、思ってたぜ」

私は振り向く、涙がこぼれ落ちて画像が鮮明になる。みすぼらしい男が立っていた。

「お前、素直じゃないっていうのも、よく知ってるからな」






134以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/21(土) 00:02:45.69 ID:RrC9ucgo
何故ラムちゃんで再生されるんだぜ?







150以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/21(土) 00:22:05.44 ID:9XKCkeso
>>1
『~っちゃね』はよく使うよ@北九州


>>150
うん
普段は恥ずかしいから、私は絶対標準語で喋るようにしてる
東京に来て初めに驚いたのはどこの出身の人でもキレイな標準語を喋っていたこと
私は方言丸出しだったので、彼に馬鹿にされながら一生懸命矯正したよ







157以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/21(土) 00:31:23.38 ID:Ah1eSUDO
女の人ってすぐ自分の方言消しちゃうな
器用だと思う反面悲しいわ


>>157
他の人がみんな垢抜けた喋り方しているのに、自分だけ田舎っ気丸出しなのはとても恥ずかしかった






159以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/21 (土) 00:32:54.36 ID:XMZTICwo
東京人から言わせてもらうと女の方言は可愛い
男はどうでも良いwwwwww






161以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/21(土) 00:34:38.23 ID:9XKCkeso
>>1
方言しゃべる女の子は男ウケいいんだぜww

ってか同じ北九州出身かぁ~なんか親近感湧いてきた!
高校は東○か○倉出身?
たぶんご想像にお任せしますと答えるだろうけどwwww


>>159-161
そういう意見をよく聞く。そして二言目には言うのだ。
「そのままでいいのにな」
それは失礼を承知で言えば、読み違えている。
女の子の多くは、「いかに男性によく思われるか」よりも「いかに女子的なカワイイ基準に近づくか」を重視する。
男性にとって、方言が萌えようが、薄化粧が好ましかろうが、
女性にとっては、「女子から見てどうなのか」ということの方が優先されるのだ。
少なくとも私は、自分の素を残すことの素晴らしさより、恥ずかしさの方が勝った。

出身高校は、ご期待通り、ご想像にお任せします。







135 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/21(土) 00:02:52.68 ID:dU5mdIg0
また目に涙が充填され、姿が見えなくなる。下を向き、顔を手で覆ってしまう。
どんな表情になってしまうか分からない。寒いから鼻水も出ている。言葉は出ない。ただ立ち尽くす。

彼が腕を取って、顔を隠していた私の手を顔から離す。私は顔を見られたくなくて、顔を背ける。
ふと頬に手があたる。とても冷たい。手は私の顔を彼の顔の正面に持っていった。

「俺には、隠そうとしなくたっていいだろ。今まで、ごめんな」

私はそのまままた泣き出してしまった。この言葉をどれほど待っていたことだろう。
贖罪の言葉が、私の心を開放する。私はこれまでの辛さを吐き出すようにただ泣いていた。
彼が私の背中に手を回して優しく抱いてくれた。
私も彼の背中に手を回して、泣き続けた。ずっと泣いていようかと思った。

パッパーーーーーー!!

停めていたタクシーのクラクションが鳴った。







136以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/21(土) 00:03:25.61 ID:dU5mdIg0
(なんでもう少しこのままでいさせてくれんね!?)

と思ったが、運ちゃんにはあっち行けこっち行けと言った上に小金を掴ませて待たせていたので、
申し訳なく思って、二人でタクシーに戻った。
メーターはしっかり倒されていて、30ドルほどになっていたが、そのまま私の家に向かってもらう。
私の家に行く間、私は彼の手を握り、肩に頭を預ける。このまま時間が続けばいい。
そんな思いも虚しく、タクシーはすぐに目的地に到着した。ブルックリンからロウアー・マンハッタンは近い。
左側に座っていた私が財布を取り出すと、
右側に座っていた彼がポケットからくしゃくしゃの50ドル札を取り出し、運転手に手渡す。
彼はそのまま、私の手を引いて外に出ようとする。

「ちょ、ちょっと!あなたの家はここじゃないでしょ!?」

彼がおもむろに振り向いて言った。

「飲みに行こうぜ。店、知ってるんだろ?」

またも彼が変わってないことを確認しつつ、私は一呼吸を置いて、返事をした。

「このへんには無いわよ。焼酎なら、家にあるけどね」

彼は微笑み、私の手を取り、家に向かった。焼酎は、飲まなかった。







147以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/21(土) 00:16:07.95 ID:ySN2xhQ0
オリ合宿ですね、わかりますww

しかも俺と似たような感じでわろたwwww
そしてちょっと泣いてる俺もいるwwwwwwっうぇwwwwww


>>147
うんそう。
シケタイとかやって、仲良くなって付き合う人もいたよね。懐かしいね。






139以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/21(土) 00:04:57.20 ID:kUVN6.so
堤真一と深津絵里で脳内再生しとくわ


>>139
私は深津絵里より大分のっぽなのでちょっと恐縮です







140以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/21(土) 00:05:52.84 ID:ythv9T2o
ドラマっておこるんですね


>>140
人生のうちでただ一度、神様が私にご褒美をくれたと思いました







152以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/21 (土) 00:23:48.32 ID:IcBGhCko
>>1に聞くが、東大経済から学部で海外院に留学する人はそんな多かったの?
今は全然いない気がするが・・・


>>152
マスターでいきなり行く人は極稀。普通はドクターから行く
なぜなら、実績のある教授陣の多くは大学院の教育に力を入れているので、
学部生の身分では彼らの期待を獲得して推薦状を書いてもらうことは非常に難しい。
私は、4年生の頃に大学院併設科目を取るなどしていたけれど、
まずは院にそのまま上がりなさいと言われることが多かった
いきなり行こうとしたのは、経済的な事情のためです







163
◆RWwEbHEhig[]:2009/02/21(土) 00:35:32.40 ID:dU5mdIg0
それからの一年間、私は幸せだった。
平日は忙しかったが、毎週末、どこへ行くにも二人で出かけた。
英語とニューヨークに不慣れな彼にとって、私は有能なガイドだったし、
私一人で行きにくいハーレムなどに行くとき、彼はみすぼらしくも頼りがいのあるナイトだった。

PIAでは従業員の管理も行き届いており、5日間の連続休暇を取ることが出来た。
私たちは少し足を伸ばしてワシントンに行き、赴任している彼の先輩と食事をしたり、
カナダ側からナイアガラの滝を見に行ったりした。
今から思えば、これが人生で初めての「海外旅行」だった。

仕事は大きな波乱も無く、私は多くの友人を作ることができ、
素晴らしい経験を積むことができた。
特筆すべきは、PIAはSSGとの連携により、
単に事業への投資だけではなく資産への投資も可能であったため、
相当規模の会社を丸ごと買収した上で我々が経営関与を行い、
キャッシュフローを改善するという積極的な展開が可能だったことで、
私は、それら業務についての知識やスキルを貪欲に吸収していった。
しかし、この仕事を東京で従事しようとは思わなかった。
話は少々長くなるが、その動機をここで話しておきたい。







164 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/21(土) 00:37:55.33 ID:dU5mdIg0
そう、PIAがやっていることは、
日本では伝統的に総合商社が展開してきたビジネスモデルであったことは既に述べた。
三菱化学、三井金属、住友倉庫…。
日本に無数に存在する財閥名を冠した企業は、
ほぼ全てが旧財閥によるM&Aと自己資本投資によって生まれた企業である。
戦前は、これら全てが各財閥の子会社として組織され、グループ会社という位置付けにあった。
かつてGHQが日本に進駐したとき、財閥解体を断行したのは、
裏を返せばそれほど財閥の経済支配が圧倒的だったからに他ならない。
このように、投資銀行が日本で根付かなかった理由は、
その経済的使命の多くを財閥直系の子孫である総合商社が担っていたからだ。

もちろん、より厳密な話をすれば、投資銀行はアドバイザーであり、
総合商社はプレイヤーであるので、両者を同じ基準で評価することはできない。
つまりゴルフに例えれば、投資銀行が顧客のキャディーであるのに対し、
総合商社はゴルファーそのものなのである。
投資銀行の中でも私のいた会社は、伝統的に、
顧客との利益相反を防ぐためにキャディーに徹するばかりか、
敵対的な買収ですら「社格が落ちる」として一切手をつけなかったことで知られていた。
それが90年代に大きな転換を迎え、その象徴として生み出されたのがPIAだった。
PIAの存在は、投資銀行が単にキャディーであるのに飽き足らず、
ゴルファーへの転身を望んだ紛れも無い証であり、
暴走するマネーへの欲望が生んだ、資本主義の鬼胎でもあった。






165 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/21(土) 00:39:13.92 ID:dU5mdIg0
私は、この鬼の子を死産にしようと決めた。
このビジネスは日本に必要無いと思ったからだ。
総合商社と違い、米系投資銀行に代表される独立系証券会社のバランス・シートは小さい。
お財布の大きさが違うのだ。
もし、成長性を見込む企業などがあり、
PIAの裁量でそれを買収して会社全体のバランス・シートに載せても、
フローの世界で生きる我々には体力が無いためにすぐに売却せざるを得ない。
それは必ずしもその企業のためにはならないばかりか、
我々の顧客の利益機会を奪うことになる。

ここで勉強したことを活かして、顧客の利益に資する提案を行い、黒子に徹する。
それこそが、投資銀行の美学だ。金融の本質だ。
東京に戻ったら、やはり法人営業部への配属を希望しよう。

そう考えるようになった頃、季節は冬になっていた。
夏ですらスーツを着て通勤するニューヨークの冬は厳しいが、
年末はみな休みをとってオフィスは閑散としていた。
デスクの電話がなる。私はヘッドセットをつけて出る。

「少し話があるから、僕のデスクまで来て欲しい」

ボブに呼び出された。







166以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/21(土) 00:46:02.60 ID:ucVSEbYP
ボブキターww







169以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/21(土) 00:54:12.20 ID:Ah1eSUDO
世界の凄い所でバリバリ活躍する人、何もない片田舎でちまちま小銭を稼いで唯一の楽しみが2chな自分
なんか凄いと思うと同時に自分が情けなくなってくる


>>169
私も今ニートで、ここで昔話をするのが楽しみだよ







181 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/21(土) 01:33:35.96 ID:dU5mdIg0
(???電話で何で済ませんと?)

私は不思議に思いながら、彼のデスクまで行く。途中、
ライブラリにあったクッキーを掴む。アメリカはクッキーだけは美味しい。
ボブは連日の徹夜が続き、憔悴しているように見えた。
それもそのはず。その上司も、彼を自分の案件に組み込みたがった。
彼はそれらを部下に分配しながら、殆どの案件を自分がチェックし、こなしていた。

1 「疲れてるわね?」
ボブ「ああ、クタクタだよ。でもこんなのへっちゃらさ」
1 「よくそんなに頑張れるわね?」
ボブ「実は、家族が出来たんだ」






182 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/21(土) 01:33:53.97 ID:dU5mdIg0
私は驚いた。いつそんな時間があったと言うのだろう。
朝、私が出社してデスクに座るとき、ボブは常にデスクにいた。帰るときも、彼はいた。
休日ですら、彼がいなかったことを見たことは無かった。

1 「わあ、おめでとう!でもそれをわざわざ言いたかったの?」
ボブ「いや、違う。少し確かめたいことがあってね。」
1 「何?人の夫に手を出すモチベーションは無いわよ」
ボブ「研修のとき、僕は君のことが好きだった。
   僕は君もそうだと思ってキスをしたけれど、君はあれから冷たくなった。
   あのことを謝りたくて」

私は更に驚いた。目の前にいる男は、鉄人(Tuffy)の二つ名を持つスーパー・アソシエイトである。
それが3年も前の人の気持ちを、さも少年のような初々しさを見せている。






187以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/21(土) 01:37:48.85 ID:IdSjT5U0
>「何?人の夫に手を出すモチベーションは無いわよ」

このかわし方、アメリカンな感じがするなwwwwww


>>187
本当の会話は英語なので、そのまま日本語にすると違和感がある箇所が多い中で、
ここだけは原文そのままなんです
あっちの人はそういうジョークを言うのがとても好きなので、少し伝染っちゃいました





193以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/21(土) 01:52:35.98 ID:IdSjT5U0
最初から見てて、会話の部分がアメリカンっぽかったのはそのせいかwwwwwwwwww

おkおk、まぁ気楽に書いてってくれよ


>>193
最初は英文で全部書こうかと思った
ありがとう、気長に書かせてもらいたい

なんか、最初はこんなに長く書くと思ってなかったけど、結構な量になってしまった






183 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/21(土) 01:36:36.34 ID:dU5mdIg0
1 「。。。なぜそんなことを?」
ボブ「実は、妻の、いや、妻になる女性だけど、彼女のおなかには僕の子供がいるんだ」
1 「ワオ!いいこと続きね!」
ボブ「ありがとう。それで、彼女とよく自分の子供の育て方とか、色々話すんだ
   彼女は『人の痛みが分かるような人になって欲しいわ。
   男の子であれば、女の子を泣かさないような子に。女の子であれば、
   傷ついた男の子を慰めてあげられるような子にね』と言うんだ。
   それで僕は、君を泣かせてしまったことを思い出した。
   あのときのことを解決しておかないと、僕は自分のジュニアに偉そうなことを言えないからね」

少し黙って視線を上方に逸らして考える。
あのときは本当に恐ろしかったが、もう何年も経っているし、私は今ではとても幸せだ。
ボブについても、並々ならぬ努力と研鑽を積んでいる姿を目の当たりにして、尊敬すら覚えてきていた。
正直、どうでもいい問題だったが、それでは3年前の自分がかわいそうだとも思った。

(ちょっと懲らしめてやらんね。。。)






184 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/21(土) 01:36:51.56 ID:dU5mdIg0
ボブ「本当にすまない。
   あれから僕は反省して、常に行動に出る前に冷静な気持ちになるようにした。
   そのおかげで、正しい判断を下せた場面はいくつもあった。
   君のおかげだ。ありがとう。」
1 「それは研修の最終日にでも、私に言うべきセリフじゃなかったのかな?」
ボブ「その通りだ。とても反省しているよ。僕が出来ることなら何でもするから、遠慮なく言って欲しい」
1 「あら、本当?」
ボブ「本当さ」
1 「何でも?」
ボブ「何でもさ」
1 「じゃあ、東京に送る私のレビュー(評価)をあなたが書いてちょうだい。
   『1はニューヨークPIAのアソシエイトとして、素晴らしいパフォーマンスを挙げた。
    Mobilityが一年であることを残念に思う。
    ついては、聡明な彼女のリソースは東京オフィス全体の収益向上に資するべく、
    法人営業部に配属されるよう期待する。
    これはこちらのグローバル・コミッティの決定事項であるため、
    異論がある場合は期末のグローバル・カンファレンスにて諮られたい』
    ってね」







185 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/21(土) 01:37:05.80 ID:dU5mdIg0
かくして、私は東京のM&A部を敵に回すことなく、法人営業部への切符を手に入れることができた。
これが無ければ、私は東京でPIAに準ずる業務に当たらされていただろう。
驚いたことに、ボブは本当にグローバル・コミッティの了解を取り付けてきた。
どうやったかは敢えて聞かなかった。
私は、お礼にキスマークがプリントされたオムツを5ダースほどオーダーし、彼のレジデンスに送りつけておいた。
彼にとってはブラックジョークだろうが、奥さんにはありがたいプレゼントになっただろう。

東京に戻る前日の朝、私はチーズケーキを買って、セントラル・パークに向かった。
3年前の夏に過ごした至福の時間を再現しようとしたのだ。
一齧り、また一齧り。もう食べられない。

(バリ重か、、、あの頃は若かったってことっちゃね)

「ずいぶん、重たいもの食べてんな」






188以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/21(土) 01:41:05.24 ID:XMZTICwo
キスマークがプリントされたオムツwwwwww
さすがアメリカ
そんなデザインがあるとはwwwwww
しかし笑えねぇwwwwww


>>188
もちろん、特注です
顧客だった某消費財メーカーに頼んで作ってもらいました







194以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/21(土) 01:52:40.51 ID:XMZTICwo
特注wwwwww
理由を知らなきゃキスしたいほど可愛い赤ちゃんって解釈なのかな
生まれてくれてありがとう みたいな
しかし奥さん、後でそれが特注と知ったら(市販品で見つけられなかったら)
何か意味があるのかと勘ぐらないのだろうかwwwwww

まあボブがごまかすかww


>>194
そのへんを想像するのが楽しみで、送りました笑
年末のグリーティングカードでは二人目も生まれたとあったので、夫婦仲は良好なようです






186 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/21(土) 01:37:19.01 ID:dU5mdIg0
泰司が来た。約束の時間通りだ。珍しい。

1「もう無理。お茶に大福が恋しいよ」
泰「すぐ食べれるだろ。そのケーキ、食べないならくれよ」

まったく、こいつの食い意地はどうにかならないものかと思う。手がかかってしょうがない。

1「連絡してね」
泰「あ?おお。まあお盆には帰るよ」
1「学校は?」
泰「俺がいなくても地球は回る。学校なんてなおさらさ」

この人、留学してるって自覚あるのかしらと呆れるが、まあそれも彼の愛嬌だ。







189 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/21(土) 01:41:58.12 ID:dU5mdIg0
1「帰ってきたら、チーズケーキを焼いておくよ」
泰「本当か?焦がすなよ」
1「バカ、ちょっとくらい焦げ目があった方が美味しいわよ」

そんな会話をしながら、しばらく会えないのだなと思う。東京に帰るというのに、心が浮かない。

泰「そんな顔するなよ。ケーキくらい、またいくらでも買えるだろ。高給取りなんだから」
1「・・・」
泰「何だよ?」
1「何でも無い!しっかり勉強しなさいよ!」
泰「へーへー」

私は立ち上がり、お尻についていた草を払い、
最後の片付けをすべく、オフィスに向かうメトロの入り口に足を運ぶ。
初春のセントラル・パークを吹く凍てつく風は、私の気持ちを引き締めた。
さあ、東京に帰ろう。


ニューヨーク編 その2 終わり







192 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/21(土) 01:49:34.85 ID:dU5mdIg0
今日はこれで終わりです。明日早朝から出かけるので、
今日はそろそろ休みたいと思います。
グダグダ長くなってすみませんが、
思い出しながら書いていると書きたいことがたくさん出てきてしまって。。。
コツコツ投下していくので、これからも宜しくお願い致します。






201以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]:2009/02/21(土) 02:03:59.78 ID:ySN2xhQ0
>>1は日本語と英語どっちが得意なの??
頭で考えるときはどっち?


>>201
あちらにいた時は英語で考えてましたが、今は日本語です。
元々英語はまったく喋れませんでした。





203以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/21(土) 02:04:30.35 ID:n7AFUfgo
そして新入奴隷さんのウェルカム調教物語だワーイ

何日見てると思ってるんだよビッチ・・・・


>>203
それを書くならアゴ外伝が適当かと、、、
彼が相当しごいたせいで、私が帰ってきた頃の2年生は優秀な狼から従順な羊へと調教されていました。





215以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[]:2009/02/21(土) 09:02:14.79 ID:BQ5EokDO
ボブかっけーな
なかなか出来る事じゃないだろ
それを利用してる>>1にスイーツ(笑)を見たww






224以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/21(土) 15:12:25.00 ID:UrKOXRA0
NYのおすすめ和食レストラン教えてくれ!


>>224
まだあるかどうか分からないけど、グリニッチ・ビレッジのネロの隣にあるTen-Junっていうところによく言ってました。
その他にはテリヤキ・ボーイっていうエセ和食ファストフードによく行ってました。安いしすぐ食べれるので。
でも、自炊に適う日本食はありませんでした(すし含む






234以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/22(日) 00:37:03.41 ID:chd6eewo
>>1がきれい過ぎてなんか途中から読めなくなってしまった
これ釣りじゃないんなら、できたら>>1みたいな人はvipとかには来ないでほしい
こういう人が来ちゃだめなんだよ






235以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/22(日) 00:40:51.96 ID:YtapSDQo
>>234
いいんだよ。
おまえみたいに、自分の勝手な価値観を他人に押し付けるような頭の弱い子だってVIPにいていいんだ。


>>234-235
昔から自分の出来事を語るスレを見るたびに、自分も書いてみたいと思っていました。
ブログには書けないし、誰かに言うこともできない。
vipみたいなところがあってよかったと思っています。









252
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/23(月) 00:16:09.44 ID:vA7YipA0
やっぱり>>1のような人は無職になっても忙しいんだろうな
書くのに飽きたのでなければいいが・・・


>>252
旅行中も移動時間使って書いたりしてたんだぜ





255以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/23(月) 04:32:50.06 ID:aG7bZsDO
今、最初のスレを読んできたけど、>>1は週末から旅行に行ってるんでしょ?

旅行楽しんで、無事に帰ってきて欲しいな☆

続き、楽しみにしてます。






261 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/23(月) 23:48:43.71 ID:/isx2e20
みなさん、ご無沙汰しておりましたが、帰ってまいりました。
ご指摘の通り、旅行に行っていました。色々な人が保守してくれて嬉しいです。
いくつか質問してくださった人がいるので、それに答えてから投下していきたいと思います。

それでは宜しくお願いします。






265以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24 (火) 00:03:43.50 ID:urADPsEo
お帰り
ここパー速は保守しないでも落ちないから
のんびり書いてくれ


ただいま!
温泉めぐりしてました。肌がトゥルットゥルになりまんた(〃ー〃)







266 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 00:04:50.69 ID:EttwVf60
気長に書けと応援してくれた方、どうもありがとうございます。
あ、みなさん、断り無く旅行してしまってすみませんでした。ではでは






268
◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 00:19:05.35 ID:EttwVf60
最近お笑い番組よく見るんですけど、世の中には面白い人がたくさんいるんですね。
では本編投下したいと思います。






269 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 00:20:45.33 ID:EttwVf60
2007年3月下旬、私は東京に戻った。
空港の駐車場では、ボンネットの上の陽だまりで猫が体を丸めて目を細めており、
まだ寒さの残る風が春の訪れを告げていた。
帰朝後すぐは、新しい部屋に移るまでは、
会社が六本木の某エリア内に借り上げていたレジデンスに住むことになった。
私は久々の東京の生活を満喫した。部屋を探し、家財道具を購入し、毎日がピクニックだった。

会社は2004年に赤坂から六本木へと移っていたため、私は同じ日比谷線沿線の広尾に新居を構えた。
勤め始めた頃は、六本木の小さな部屋にただ眠りに帰るだけの生活を送っていたが、
ニューヨーク勤務を終えて若干の経済的・精神的余裕があったこともあり、
彼が帰ってきたときのことも考えて少し広めのファミリータイプの部屋を借りた。
寝室にキングサイズのベッドを置き、しばらく私はその3分の1くらいを使って寝ていた。
広いベッドで寝たことが無かったため、ずっと身を縮めて寝るようにしていた。
今でもその癖は抜けない。

二人の生活を想像しながら家周りのものを取り揃えた。
お揃いの食器、カウンターに置くペアのスツール、大きな冷蔵庫にワイン・キャビネット。
もちろん、キャビネットには焼酎しか入れなかった。
私はとても幸せな気分で毎日の買い物に出かけていた。






271 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 00:26:30.81 ID:EttwVf60
4月になり、帰任後初の仕事は、新人研修の教育係であった。
これにはいくつかの理由があったように思う。
1つは、入社直後の新人にニューヨークでの経験を伝えることで刺激を与えること。
もう1つは、女性新人に対する配慮である。ある事情から、弊社の新卒は約6割が女性だった。
最後の1つが最も重要で、プロパーのアソシエイトのうち、私だけが暇だったのだ。
東京オフィスにおける私の扱いはまだ定まっていなかったため、仕事が無かった。
これには若干の説明が必要だろう。






272 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 00:30:31.77 ID:EttwVf60
当初、東京では私を
不動産自己資本投資部(Real Estate Principal Investment Area; REPIA)に配属する予定だった。
しかし、ボブの尽力により、配属は事業法人部(GIG)へと変更された。
ところが、私は東京にいた間は金融機関法人部(Financial Institution Group; FIG)や
バイアウト・ファンドなどを顧客とするスポンサー部(Sponsor)と仕事をすることが多かったため、
自分の顧客を全く持っていなかった。
また、外資系の証券会社では、顧客の担当範囲は、そのままバンカーの縄張りを意味する。
例えば、東芝担当のバンカーに断りも無く東芝に面会を申し込んだり提案を行うことはタブーなのである。
つまり、私は各バンカーがまだ手を出していない顧客を自分で開拓していくしかなかったため、
始動直後は相当暇になることは明らかだった。

私としても、東京のマーケット観を取り戻すとともに、
新人とのコミュニケーションを取るなどして助走期間を設けた方が良いと思った。
かくして、私は4月の多くの時間を新人研修に割くことになった。







273以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 00:31:07.63 ID:LNoBSIDO
この流れなら言える
おそらくその新人女性の中の一人は俺の知り合いだ


>>273
誰だろう。。。あの代の子はみんなとてもいい子だったよ。
お友達に宜しくね






275 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 00:39:17.67 ID:EttwVf60
4月3日の朝、私は会社に向かった。ニューヨークにいた頃の癖で、タクシーではなく電車に乗ってしまう。
会社に着き、IDカードを作り、PCのセットアップをITに依頼して私は新人研修の部屋に向かった。
研修用の部屋に自分が読み終わったFinancial TimesやHerald Tribune、参考書籍などを置くなどするためである。

リード夫妻の「The Art of M&A」シリーズ、ジョン・ハルの「Financial Engineering」、
ファボッツィの「The handbook of Fixed Income」などの金融書籍から、
「ウォール街」、「虚栄の篝火」など、ウォール街を描いた映画のDVDなどだ。

私の就職が半ばなし崩し的に決まったことは既に述べた。
通常、投資銀行に来る若者は学生時代からこれらの書籍や映画に親しみ、万感の期待を胸に入社してくる(ものらしい)。
私はそもそも投資銀行がどのような職業なのか分からなかったので、
睡眠時間を削ってこれらに接し、足りない予備知識を補った。
もちろん、いずれも実務的にはそぐわないが、これらはいずれも世界中の大学やビジネス・スクールで親しまれている。
弊社の新卒の多くは日本の大学を卒業しているため、英語に慣れるためにも、
時間のある研修期間中に消化しておけば、ニューヨークでの研修が楽になる。

と、読者の大半にとってはどうでもいい前置きを書いたのは、
私がこうして自分のお古を大量に搬入した背景を説明したかったからである。
私は両手いっぱいに本やDVDを持って、部屋に向かった。







276以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 00:43:42.87 ID:SitiKKko
おかえりー
また楽しく読ませてもらうよ






277 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 00:48:09.37 ID:EttwVf60
研修部屋のドアの前まで来たとき、ドアが突然開き、ノブにかけようと思っていた私の手は空を切った。
ドアを開けた本人との視線が交錯する。黒ぶちのおしゃれメガネと3つボタンの黒スーツが初々しい。
と思った次の瞬間、私は研修部屋に大量の書籍とDVDとともに鮮やかなヘッド・スライディングを決めた。

(いった・・・何なのよもー・・・)

私は急いで立ち上がり、あたりを見回すと、みなこちらを見ている。どうやらガイダンス中だったようだ。

1 「あ、あの、今日から新人研修をお手伝いさせて頂きます1と言います。みなさん宜しく。
   今日は本とDVDを持ってきたので、みなさん興味があればご自由に持っていってください」
人事「(何なのこの子・・・?HR(人事部)の新人かしら?)
   1さん、どうもありがとうございます。コーヒーが無くなったみたいだから、ポットに入れてきてくれる?」
1 「あ、はい、分かりました!ではみなさん、またランチのときに」
人事「はい、よろしくね。それと、あなた、靴脱げてるわよ」
1 「・・・!! あはは・・・」







278 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 00:54:06.34 ID:EttwVf60
床に散らばった本とDVDをまとめて、コーヒーポットを抱えて部屋を出た。
後で知ったことだが、人事には私がIBDから研修の手伝い要員として派遣されることが伝わっていなかった。
この人事のことを遠藤さんと呼ぼう。

私は入社5年目にして、初めてお茶汲みというものをすることになった。
というのも、外資系の証券会社では、フロントと呼ばれる我々が雑用をすることは一切無いからだ。
1年生から秘書がつき、身の回りのことの殆どは秘書が取り仕切ってくれるので、我々は仕事にさえ集中していれば良い。
私がコーヒーを入れ終えて、ランチのサンドイッチのデリバリーを終えて部屋に戻ると
遠藤さんは血相を変えて先ほどの態度を詫びてきた。

私はてっきり雑用もやらせろと言われたのだなと思っていたので、別に気にしていない旨を伝えた。
そこで私は、一計を案じた。
私が講師として登場するまで、人事部のお姉さんになりすますことにしてはどうか?
幸い、彼らの面接に私は関わっていないので、私が投資銀行部門所属であることを知る者はいない。
バック・オフィスに扮した私への接し方を通じて、彼らの人間性を観察することは非常に面白く思えた。
遠藤さんは先ほどの件の申し訳なさも手伝って、しぶしぶではあるが承諾してくれた。







279以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 00:54:45.99 ID:hMBZfwYo
ドジっ子wwwwww
年上ドジっ子かわいいなwwww


>>279
私としたことが動揺してしまったのです
いつもはそんなこと無いよっ!






280以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/24(火) 00:59:07.43 ID:BspLNrMo
俺の中で1にアホ毛が生えた






281 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 01:01:35.11 ID:EttwVf60
それから私は、時間の許す限り研修部屋に行くようになった。
幸か不幸か、仕事はまったく降ってこなかった。人事部の新人に扮するには十分な時間が私にはあった。
この間に温めていたビジネス・プランについては、後々紹介していきたい。

それから毎日、いつもよりカジュアルなスーツを着て、いそいそと研修部屋に向かった。

(うちもまだ若か。大学院卒くらいには見えるとよ、きっと)

実際、当時はまだ27にもなっていなかった。
見た目も韓国から輸入していた化粧品で完全装備、、、していたつもりだったが、
後で女性新人に聞いたところ、新人でないのは明らかだったらしい。

「大学入りたての新人は、あんなに身なりにお金はかけられません」

これは誤算だったが、女子以外には隠し通せたのだから良しとしたい。






282以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 01:05:11.28 ID:W4WgRaUo
スカートに戻ってるの?


>>282
基本スカートです。
パンツはかわいくないからあんまり好きじゃない







283 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 01:07:15.94 ID:EttwVf60
私は新人と一緒に講師の講義を聞き、熱心にメモを取り、時に居眠りをし、新人と一緒に遠藤さんに叱られたりした。
新人達が丸の内のbloombergに行った研修で、お菓子を食べすぎて苦情が来たときは、
遠藤さんと一緒に新人を叱りもした。
いつも遠藤さんに叱られてばかりだったので、このときばかりはとても気分が良かったが、後で新人達にずるいと怒られた。
新人達に「研修に行ったらお菓子たくさん持ってきてね」と指示をし、バナナを持ってこさせたのは私だった。
私は「これが投資銀行。上司のために泥を被ったあなた達は、部下の鑑ね」と言い、バナナは私の朝食になった。

休憩時間にはクッキーを食べ、コーヒーを飲みながら、談笑した。
女子とは恋の話(9割は私の妄想だが)で盛り上がり、
男子とは仕事の壮絶エピソード(9割は私の実話だが)で盛り下がった。

新人の飲み会にも参加した。
あるとき、西麻布のミューズというクラブに連れて行かれたときなどは、同じビルに入っている某社1年生にナンパをされてしまった。
私はこれも一興と、話に乗っかってみた。名前を勝也としよう。






286以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 01:23:55.30 ID:hMBZfwYo
お菓子ひでぇwww
お前がやらせたんじゃねえかwwwwwwww

でもドジっ子は正義だから


>>286
遠藤さんが
「私は本当に悲しいです。みなさんはしっかり研修を受けてきたと思ってたのに」
で始まり15分も説教してる間、私は誰かが私をチクらないかどうか不安だった
投資銀行は、みんな年も若いし近いから、ちょっと学校のような雰囲気があります
入社1年目とは言わずに、1年生って言うしね







289 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 01:26:35.49 ID:EttwVf60
勝「飲み物おごるから俺と踊らない?」
1「えー、本当?」
勝「うん、ジントニック二つ!」
1「(クラブでジントニックってことは、こん人下戸や無かろうね?)
  ありがとー♪」
勝「俺このへんに住んでるんだ、西麻布」
1「(分かる分かる、うちもそうやったと)
  えーかっこいいー」
勝「良かったらこの後遊びに来ない?」
1「(チャラチャラやがー、この新人)
  どうしよっかなー」
勝「お酒もあるからさー」
1「どんなお酒?」
勝「森・・・森なんだったかな?」
1「・・・! ・・・森伊蔵?」
勝「あーそれそれ!一緒に飲もうよ」






290以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 01:31:33.15 ID:urADPsEo
らめぇぇぇ
森伊蔵逃げてぇぇぇ
空にされちゃうーーーwwwwww


>>290
空にはできなかったのさ。。。





291以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 01:33:56.93 ID:LNoBSIDO
ジントニックは酒とは言えないな


>>291
でもそこがバーなら通かと構える。
バーで最初にマティーニかジンを頼む人は、ベースの味を確かめる人。
クラブでジントニックを頼む人は、決定力の無い人。







298以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 01:42:50.21 ID:urADPsEo
何でクラブでジントニックは決定力の無い人なんだろ?
バーだとまずはそこの空気を読むのに簡単に作れるジントニックは判るのだが


>>298
もてる人はすぐ女捕まるから、テキーラやジン、ウォッカとかのすぐ酔える酒をショットで飲んでる。
ジントニックを飲んでいる人は、酔おうと思っていないか、長期戦を強いられている人、という判断です。







299以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 01:43:26.07 ID:SitiKKko
酒の強さじゃ、1>>>>>>勝也なんじゃね?ww
九州男児よりも女のが強かとよ、、、


>>299
残念ながら、私は酒強くないです。いっぱい飲むけど。







308以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 01:56:13.89 ID:urADPsEo
いっぱい飲める時点でそこそこ強いと思う…
弱い人はそもそも日常的に酒を飲む習慣を持たない
持つと酔いつぶれて二日酔いとかリバースして大変だから


>>308
二日酔いするのはチェイサーをちゃんと飲まないからだよー
ちゃんと水を飲んでいればほろ酔いトロトロな気分を味わって、翌日はスッキリしてます






314以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 02:13:13.86 ID:urADPsEo
いや、チェイサー以前に体質的な問題として
酒を分解する能力が極端に低い人間もこの世には居るんです…


>>314
あ、酵素の数が少ない、とかだよね?うちの両親もそうだよ。一杯飲んだらまっかっか






296 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 01:39:06.17 ID:EttwVf60
森伊蔵は私も飲んだことが無い。鹿児島の酒蔵の芋ものだったはず。こ、こんな若造が何故?
勝也くんをテキーラでベロベロになるまで酔わせてからお家にお邪魔して焼酎だけ持って来れないものか。
そんなことを考えていたら、横槍が入った。株式部の新人である。彼を達也としよう。
彼は研修の初日に私がずっこける原因を作った、ドアを引いた人その人である。

達「おい勝也、うちの人事に手出すなよ」
勝「おお、お前の会社の人なのか?じゃあ同業じゃん。
  お前も人にちょっかい出す前に相手見つけろよ」
達「いいのか?美波に言いつけるぞ?」
勝「なんだよ、やぼな奴だなー。いいよ、じゃあ帰るよ。1ちゃん、またね」

ああ、森伊蔵が去って行く・・・(T□T) 達也くん、野暮すぎ。

達也と勝也は就職活動中からの知り合いなのだと言う。
2007年、時代は変わり、外資系金融への就職は全就活生にとって羨望の的となっており、
内定した学生は各種交流会を通して知り合い、同じ業界であればだいたいの人間が顔見知りになるのだと言う。
誰一人知り合いも無く、寂しさいっぱいで入社した私とは大違いである。






297以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 01:39:55.10 ID:LNoBSIDO
【教訓】

学歴のある女性が以下の言葉を使っていたら、気をつけろ!

・えー本当?
・カッコイイ
・わーありがと♪
・どうしようかなぁ


>>297
学歴関係あるの?







311以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24 (火) 02:02:31.78 ID:LNoBSIDO
学歴に関して

A.駆け引きにかかる時間と手間が違う。

好きな酒について

A.すいません、テキーラ好きです。本当に(ry


>>311
それは偏見ではなかろうか。ためしに凄くモテそうな女子大出身の子を口説いてみて欲しい。
高学歴、と言うと気が引けるけど、私の友達は自分からはっきり言う人が多かったから、
駆け引きはむしろ少なくて済む気がするよ
テキーラの飲み方を社会人まで知らなくて恥をかいたのを思い出した。。。







320以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 02:27:37.11 ID:LNoBSIDO
学歴に関してを訂正。

学歴のある人は
態度や発言は可愛らしくても、軸(YesかNoか)ぶれていない事が多い

しかも、そうだと気付かれないようにするからたちが悪いwwwwww



と過去を振り返って思ったまでです


>>320
おかしいなあ、私の友人は軸ぶれまくりなんだけども。
まあ>>320の出会った女性が素晴らしかったのだよ、きっと。うん。







315以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/24(火) 02:16:39.68 ID:gkNV4Ngo
テキーラの飲み方ってどんなの?
私はテキーラショットで飲む時、塩とレモンを頼みます
ベロッグイッカプッと


>>315
それを知らなくて、レモンを先に食べたら
「お前、テキーラの飲み方も知らないのかよ」
って言われて凄く恥ずかしかった。
(だって、、、テキーラなんて洒落たもん、高いからって泰司は買ってくれんちゃもん)
と思ったのはまた別の話だ。






306 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 01:54:13.71 ID:EttwVf60
達「1さん、ごめん。あいつ学生時代から軽い奴で」
1「ふーん、そうなんだ。知ってるってことは、達也くんも彼と一緒によく遊んでたんだね」
達「え!?いや、そういうわけじゃなくて」
1「(なんで焦ると?)
  どうしたの?」
達「俺はこんなとこあんまり来なかったよ。軽いやつ好きじゃないし」
1「(なんばかっこつけとーと?)
  じゃあなんでここにいるの?」
達「それは・・・みんな行くって言うし、1さんも来るって言うから」
1「じゃあ私も軽い女ってわけだ」
達「いや!そんなつもりで言ったわけじゃ」
1「冗談よ、冗談。いつも来ないなら、今日は楽しみなよ。私はもう帰るからさ」
達「え?あ、はい・・・おやすみなさい」
1「はい、おやすみ」






307以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 01:56:03.78 ID:W4WgRaUo
>>306
お姉さんだなー


>>307
お姉さんですもの。伊達に年は取っていない






309以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/24(火) 01:57:12.86 ID:.dyn9ago
あしらい方がカッコイイ





310以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 02:01:11.06 ID:SitiKKko
年上にそんなあしらわれ方したら逆に燃えるわwwwwww
どうやったら落とせるんかなって思ってしまうww


>>309-310
素直が一番。何事も正攻法です。






313 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 02:10:35.79 ID:EttwVf60
今思えば、彼はこのとき私と飲みたかったのかもしれないが、なんとなく気乗りしなかった。
自分は軽くないと言うなら、それなりの戦略があるだろう。
クラブに来て友達の獲物を横取りしているようでは、チャラ男以下である。
リスクを取らずにリターンを期待してはいけない。森伊蔵返せ。
私は行きつけのバー、アンバーに向かった。魔王のキープボトルで森伊蔵への想いを慰めようとした。

その後、何かと達也は私に話しかけてくるようになった。
ある日、コーヒーを買いにトレーディング・フロアに行ったとき、
帰りのタバコ部屋で彼と会ったときのことである。
彼が話しかけてきた。






316 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 02:17:50.89 ID:EttwVf60
達「1さんは、結婚とか考えないんですか?」
1「どうして?」
達「いや、HRだったら、いつかは結婚しなくちゃいけないでしょう?」
1「どうして?」
達「え、フロントと違って給料も低いし、キャリアだって・・・」
1「あのね、達也くん」
達「あ、はい」
1「お金が無くたって、キャリアが無くたって、二世を誓う恋人がいなくたって、人は生きていけるでしょ?」
達「それはそうですが・・・そんな人生悲しいじゃないですか」
1「案外楽しいわよ」
達「それは嘘でしょう」
1「何が言いたいの?」
達「いや、別に・・・」

いつもこんな感じの話をする子だった。
その後、私が講師として新人の前に現れてから、彼は私に話しかけてこなくなってしまった。
他の新人もかなり驚いていた。それもそのはず。
ただの人事と思って色々な話をしていたのが、人によっては直属の上司だったのだから。
少しバツの悪い思いをしたが、研修が終わると、私は彼とタバコ部屋でよく会うようになった。
そのエンカウント率を訝しみながら、私は彼に先輩として、色々な話をした。
何も意図は無かったが、泰司の話は、しなかった。







318以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 02:21:14.85 ID:hMBZfwYo
てか>>1たばこ吸うのか
エロスww


>>318
お客さんとの話題づくりのために、営業になってから吸うようになりました







325以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 02:38:23.86 ID:W4WgRaUo
>>321
営業でなくなった今も吸ってる?


>>325
ごはんがまずくなるから吸ってません






322 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 02:28:46.76 ID:EttwVf60
研修が終わり、私の仕事の方も本格的に始動した。
上司らの担当顧客には営業をかけられない私は、
彼らが担当していない業界、企業を開拓することにした。
ニッチな産業の業界のトップ企業や、やや小さめの企業にアポイントメントを取って訪問していった。
幸い、会社の名前を出せば、どんな企業にもアポイントメントは入った。
通常、M&Aであれば、時価総額が300億以下の企業は顧客対象にはならない
手数料の額と人件費が見合わないからだ。
しかし、資金調達、特に株式発行を伴う資金調達については話が別だ。
手がける金額が同じでも、手数料は10倍になる。

時代は、ジョブレス・リカバリーと呼ばれる時期に突入していた。
国民の一人当たり平均所得は横ばいだったが、企業業績は堅調な伸びを見せ、
企業は設備投資や企業買収のための資金を欲していた。
前年はアゴが所属する資本市場部が獅子奮迅の活躍を見せ、
弊社東京オフィスはM&A及び資金調達で史上最高益を達成していた。
そのレピュテーションを背景に、私は株式資本市場部(Equity Capital Market)と連携して
企業に資金調達の提案を行っていくことにした。
グローバルに強靭な販売網を持つ我々は、ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)やヘッジファンド(HF)などの
海外投資家の資金力を背景に、
国内のリテールと法人の基盤を中心とする日系他社を圧倒することができた。
また、アゴは私がニューヨークにいる間に新人たちをしっかりと教育しており、
私は多くの優秀な部下と働くことができた。







331以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 02:49:32.56 ID:W4WgRaUo
>>322の1段落目の最終行が何を言いたいのか誰か噛み砕いて口移しplz


>>331
営業としては、色々なことを提案して収益機会を増やしたい。
だからM&Aと資金調達両方を提案できる企業を顧客にするのが普通。
でも私は、資金調達に絞って顧客を開拓した。
それは、M&Aに比べて資金調達の方が鞘(取り分)が厚かったからできた。
ということが言いたかったのです。







327 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 02:42:14.94 ID:EttwVf60
仕事は順調だった。
また、私はカバレッジ・バンカーとなったことで、勤務時間にはかなりの余裕が出るようになっていたため、
リクルーティング・チームにも加わった。
私が入社した頃と違い、弊社は日本の学生にも名前を知られる企業へと成長しており、
夏のインターン・シップのための応募だけで、倍率は100倍を超えていた。

私は満足していた。
仕事は順調であったし、景気も良かった。
説明会で学生たちの前に出れば、(誤解を恐れずに言えば)私はとてもちやほやされた。
彼らには私が日本のトップ・エリートに見えたことだろう。
急転直下の私の就職活動の話をすると、彼らはやや驚いたような反応を見せた後、羨ましがるのが常だった。
東京オフィスの採用活動は良く組織されており、
かつてのようにお偉い方の気まぐれで採用を決めるということは有り得なくなっていた。
学生達は、日本のトップ校のライバルを相手に1000倍を超える倍率の採用プロセスを勝ち抜かなければ、
弊社の社員になることが出来なかった。








328 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 02:43:01.43 ID:EttwVf60
ところが、1年生たちを研修に送り出した8月上旬、不吉な事件が起こる。
仏銀大手、BNPパリバ傘下のファンドが資産を凍結した。
ここから先、何が起こったかは、下記サイトに詳しいので、興味がある方は参照されたい。


やる夫で学ぶサブプライム問題
http://vipvipblogblog.blog119.fc2.com/blog-entry-148.html

やる夫で学ぶサブプライム問題についてちょいとツッコミ
http://blogpal.seesaa.net/article/80629520.html


この頃から、債券を組成しての資金調達(Levaledged Finance)案件は激減していく。
自分の庭で起こった事件では無いこととは言え、
提案できるメニューが減ったことで私の仕事は俄かに暇になった。

季節が秋になりかけた頃、泰司から連絡があった。







336 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 02:54:57.30 ID:EttwVf60
1「もしもし?」
泰「おー生きてるか?」
1「生きてるに決まってるじゃない!半年ぶりの電話がそれ?」
泰「なんだよ・・・お前の3年ぶりの電話だって、褒められたもんじゃなかったぞ」
1「可愛かったでしょ?で、最近どうしてるの?ちゃんと食べてるの?」
泰「ああ、最近ウマいラーメン屋が・・・いや、そんな話をしたいんじゃないんだけど」
1「何よ。まさか風俗じゃないでしょうね?」
泰「俺、帰朝することになったんだ」
1「え!?留学は2年でしょ?」
泰「その予定だったんだけど、ちょっと事情があって、帰らなくちゃいけなくなった。
  専攻はIR(International Relation)に変えてたから、
  ドクターコース1年修了ってことで、マスターはなんとか取れた。」
1「そ、そう。。。いつ帰ってくるの?」
泰「実は明後日なんだ。土曜だから、お前仕事無いよな?うちの実家に飯食いに来いよ」
1「あ、明後日!?なんでもっと早う言わんと!?いや、ていうか、実家って、、、」
泰「どうせお前忙しいから、前もって言っても直前に言っても同じだろ?
  だったら意外性がある方がいいかなと思って」






341以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[]:2009/02/24(火) 02:58:47.35 ID:Rs/xAlI0
ってか>>1が仕事に没頭してたのって3年くらいだったのか
ってきり8年くらい彼氏も作らず頑張ってたのかと思ったwwww

でも3年でも見違えるように成長したんだろうな


>>341
根性無しですいません
実際は、8年もいるような人は男性とっかえひっかえです。仕事が出来る人は恋愛も達者です






348以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/24(火) 03:09:26.35 ID:Rs/xAlI0
いや、根性無しとかなじゃなくて
>>1が院卒なの忘れてたのと帰ってきたのが30手前と勘違いしてたのとで
8年くらいかなぁとゴニョゴニョ・・・


>>348
あたし学部卒だよ?
ま、何歳でもいいです。年齢は話の筋とは関係無いので。







347 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 03:06:09.94 ID:EttwVf60
もうどこから突っ込んだら良いか分からないが、時間が無い。
分かったとしか言えない。学生時代からいつもそうだ。

1「分かったよ。。。じゃあ着いたら電話してね」
泰「おう、迎えに来てくれよ。成田に13時着だから。じゃあな」

電話を切ってから思わずため息をついてしまう。迎えに行くなら、明日は禁酒か。。。
いや、それよりも、彼の実家に行って何を話せばいいのか?
息子さんをくださいって?何か違う気がする。
あーあ、なんでいつもこうなるんだか。






357 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 03:16:33.98 ID:EttwVf60
土曜の朝、9時に起きて、お風呂に入って化粧をして車に乗り、成田に向かう。
道は空いていたが、駐車場をすぐには見つけることができず、1
2時半に到着。国際線のゲートの前で彼を待つ。

彼が来るまで私は色々なことを考える。
ちゃんと食べていただろうか。向こうにいる間は私がずっと料理をしていた。やせたりしてはいないだろうか。
勉強もきちんとしていたのだろうか。国費で行っているのだから、何がしかを学んできていて欲しい。
学生生活は楽しめただろうか。英語があまり得意でなかったから、友達が作れていたのかどうか心配だ。
そして風俗に行ったりしてはいないだろうか。
アメリカでは風俗は法規制が厳しいからとかそういうのはどうでも良くてもし行っていたら泣きたいけれど
せめて私には内緒にしていて欲しいけどたぶん行っていたら楽しそうに喋るんだろうなあ。
そして私はいつも反応に困るのだ。

そうこうしているうちに彼が現れた・・・となんと!
彼はでっぷり太って、ヒッピーのような格好をし、トランクには種々の落書きが書き込まれていた。

(こん人が悪食でだらしなかことば忘れとったっちゃ。。。)







358 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 03:16:52.98 ID:EttwVf60
帰りの車で色々なことを聞いた。
風俗以外は私の想像を見事に裏切って、楽しい生活をしていたようだ。彼が楽しそうに話す。

1「ずいぶん楽しんでたのねー、私が働いている間にー」
泰「でも、俺お前が怒ると思ったから、ナタリーとは寝なかったんだぜ」
1「。。。!? ナタリーって誰?」
泰「! いや、あの、ネロの女の子だよ、ほら」
1「それはリズでしょおおおおがあああああ!!この浮気者!!!」

高速で私は左手で運転しながら裏拳を見舞おうとしたが、彼まで届かない。
また殴ろうとすると彼がくすぐってきて、運転が乱れる。
私はしばし運転に集中し、彼の実家の家の前まで着てから腰の入ったビンタをくれた。







361以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[]:2009/02/24(火) 03:26:33.44 ID:gkNV4Ngo
車何乗ってるの?


>>361
黒のカブトムシです。






368以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24 (火) 03:34:11.84 ID:ObzPnMDO
なんだ付き合ってたのか


>>368
あ、そうです。一応ステーキを食べに行った日の晩に付き合いました。







375以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 03:41:46.71 ID:ObzPnMDO
ステーキの日に付き合い、そして突き合いステキな夜を過ごしたと
そういう事か


>>375
なんとでも言え






373以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 03:40:19.61 ID:ySj3BIAO
ドジっこだなぁ
右ハンドルで左手で運転しながら殴る姿は滑稽wwww


>>373
あ、そっか







371 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 03:39:10.29 ID:EttwVf60
彼の実家は東京の奥地の方だった。
学生時代の彼の実家は、都内のマンションだったが、親が退職して家を買ったらしい。
家に入ると、彼の寮の部屋とは打って変わって、キレイな家だった。
玄関の靴はきちんと並べられ、檜の香りが鼻をくすぐり、リビングには彼によく似たお母さんがいた。
お母さんがお父さんと弟を呼びに行く。お母さんと会うのは5年ぶりだが、
お父さんは初めてで、弟くんは一度顔を会わせた程度だった。

一同集まり、おでんをつつくことになった。
彼の家族らしい。私一人が加わったところで、普段通りの食卓を変えることは無いらしい。
私としては、もう少し緊張した場を想像していたのに。






381以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 03:48:09.82 ID:unKmd0Eo
やっと追いついたwwwwww
つか>>1の会社に何度か出入りしたが、みんなバナナばっかり食べてたの思い出した


>>381
トレーディング・フロアの外人はバナナ大好き






384以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[]:2009/02/24(火) 03:52:06.47 ID:Rs/xAlI0
>>381
え、>>1の会社書いてあった??






385以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 03:53:07.78 ID:urADPsEo
>>384
判る人には判るって事だろ
FAKEに釣られてるんでなければなww


>>385, >>391
読む人が読めば色々と突っ込みたくなる仕掛けも入れています






388 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 03:54:47.93 ID:EttwVf60
父「で、今日は泊まっていくのか?あ、1さん、そこのガンモ取ってください」
1「あ、は、はい(取り分ける」
泰「あ、1に寮まで送ってもらうよ」
1「(は!?北区までこれから送るわけ!?)」
母「あなた図々しいんじゃないの?1さんだって忙しいわよね?」
1「(ここで忙しいなんて言えないじゃない。。。)
  いえ、明日はオフですので。」
父「ふむ。じゃあうちに送りつけた教科書とか、持って帰れよ」
弟「あと俺に送ってきたHな本もな。大学生なんだからあんなのいらねーよ」
1「(そんなの買ってたの?ていうかなんで弟に送っとーとー。。。)」
泰「分かったよー。あ、1、そこの卵確保な」
1「はいはい」
弟「1さん、俺にもちょうだい」
1「はいはいはい!」






389 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 03:55:24.68 ID:EttwVf60
そうして、私に対する質問などは特に無く、
2時間を溶かし、お母さんと後片付けをしてお茶をしたらもう10時を回っていた。
お母さん以外は泰司が3人いるような家だった。
姑しか味方がいない家に嫁いでもいいのだろうか。
彼はさっさとスニーカーを履き、外に出る。

泰「1、車で待ってるから鍵貸してくれ!」
1「はいはい」
母「1さん、ちょっとちょっと」
1「はい?」
母「あの子、あんなにだらしないけど、宜しくお願いします。
  学生のときから、よくあなたの話をしていたの。
  夫もあなたの話を聞いて、とても良く思っているみたい。
  あの人も不器用だから、許してちょうだいね。
  あなたのようなお嫁さんが来てくれたら私も嬉しいわ。
  ずっと女の子が欲しいと思っていたの。一緒に買い物とか行きましょうね」

彼の父の厳しさはよく知っている。昔、彼が背の低い女の子と付き合っていた頃、
「孫の体格が悪くなるから別れろ」とまで言った人だ。
その人に私のどこが気に入られたのだろう。身長だろうか。
ともあれ、家族には気に入られたようだ。
お母さんに挨拶をして家を出ようとした頃、弟くんが私を追っかけてきた。







390 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 03:55:35.00 ID:EttwVf60
弟「1さん、ちょっとちょっと!」
1「なあに、弟くん?」
弟「あいつ、ああ見えて、1さんにぞっこんなんだぜ」
1「どうして分かるの?」
弟「だって、エロ本送ってきたとき、『1に罪悪感沸くから使えないわ』って言って送ってきたんだぜ
  太った黒人しか載ってない不気味なのだったから、俺はすぐに捨てたけどね。
  あと、俺も1さんみたいな姉さんできたら嬉しいよ。俺キャリア・ウーマン大好きだからたくさん合コンやってくれよ!」

罪悪感の種類が、私に対する想いなのか、太った黒人と私を比べることのそれなのかは、判然としなかったが、
何となく人並みの貞操観が彼に身に付きあることを確認できて安心した。
そうして私は弟くんのヒモ根性が心配になりつつも、彼を寮まで送っていった。







396 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 04:06:37.07 ID:EttwVf60
1「で、今度はどこで働くの?」
泰「分からない。最初は主税か主計の原課かと思ってたけど、税務署になるかも。」
1「なんでそんなにイレギュラーなのよ。普通は1年勤務でしょ?」
泰「・・・先輩が亡くなったんだ。秘書課が穴を埋めるのに困ってる」
1「!! 。。。そう」

彼の職場は人がよく死ぬ。その昔は「自殺の@@」と呼ばれたほどだ。
職場の中庭には、鉄格子がはまっている。飛び降り自殺があまりにも多かったからだ。
仮眠室の俗称は「霊安室」。帰宅できずに休んでいる人が、
まるで死んでいるように見えるからだと言う。
彼らは文字通り闘っていた。同級生の誰よりも低い給料で、
誰よりも長い時間を働き、明日の日本を支えていた。






397 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 04:07:13.88 ID:EttwVf60
1「。。。転職とかは考えないの?」
泰「なんでだよ?」
1「あんな仕事続けてもらいたくないのよ!」
泰「俺は大丈夫だよ」
1「どこがよ!?これで貴方から同僚が死んだって話聞くの、三度目よ!?」
泰「大丈夫だって俺が言ってるのに、信じられないのか?」
1「そんなカッコつけたってダメよ!」
泰「なあ1。確かに大丈夫じゃないかもしれないよ。
  でもお前は、毎日つまらなそうに帰ってくる俺と、楽しく過ごせるか?飲みに行けるか?」
1「、、、それは。。。」
泰「俺達はまだ若い。燃えるように生きてみたっていいんじゃないか?
  俺だってお前に仕事を辞めろなんて言う気は無いし、俺も仕事を辞める気は無い。
  子供をお前が産むなら、俺が育休を取る。家事も折半にしよう。俺の料理もなかなかイケると思うぜ」
1「(その自称イケる料理がとんでもないから、毎日私が作ってたんじゃないの!)
  。。。体には気をつけてよ」
泰「ああ、分かってるさ」

いつもは強引なくせに、彼は俺について来いとは言ってくれないのだ。
正直、彼の妻に、子供の母になれるのなら、仕事なんて今この瞬間放り出したって構わないとすら思っていた。
しかし、私のその気持ちだけは、彼はついぞ気づくことは無かった。
そして、寮に着いた。






399 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 04:09:36.26 ID:EttwVf60
寮は築ウン十年で、現在の事務次官もその昔住んでいたという伝統溢れる、いや溢れすぎてもう倒れそうな寮だ。
大学の寮が老朽化を理由に私たちの在学中に取り壊されたが、この寮はそれを一枚も二枚も上回る崖っぷちっぷりだ。

1「これは、、、毎度思うけど、いつ見てもすごいわね」
泰「まー眠りに帰るだけだからな。それでも風呂がキレイならまだ我慢できるんだが」
1「どういうこと?」
泰「時間帯を見誤ると、垢が浮いてて入れたもんじゃない」
1「汚いわねー。。。それならうちに泊まりに来ればいいじゃない?」
泰「そりゃダメだ」
1「なんでよ?」
泰「お前、マスコミにでも見つかってみろよ?何て書かれるか分からないよ。
  それに、お前が住んでるようなところで暮らしたら、『国民の目線』とか言えなくなるからな。
  今この清貧に耐えることが、俺の将来をより価値あるものにするのさ」
1「。。。」
泰「なんだよ?惚れ直したか?」
1「私、チーズケーキを焼いて待ってるって言ったじゃない。。。」
泰「まあそれは結婚して、世田谷の宿舎に移ったときにでも食わせてくれよ」
1「。。。うわーーーーーーーーーん!!!」

その後、私はまたひとしきり泣いて暴れて彼を困らせた後、スッキリして愛車を自宅に走らせた。
その夜は、よく眠れた。







401 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 04:12:51.16 ID:EttwVf60
今日はこのへんで失礼して、明日また投下します。

読んでくれた人、レスしてくれた人、どうもありがとう!
気長にとりとめもなくタラタラ書いていきます






402以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 04:14:13.51 ID:hMBZfwYo
お疲れー
あんまり無理なさんな






403以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 04:15:48.38 ID:urADPsEo
あそこの寮は左の人のすくつだったって話だが・・・
にしても中央官庁の役人は給料と労働条件が釣り合ってないよね
天下りして退職金もらいまくらないと元が取れないって思う人が多いのは納得
優秀な人材を引きつける給与形態にしないとなぁ・・・


>>403
それに触れると話が長くなると思ったので「老朽化」ということにしました
日本の大学における左の人の活動は、「学問の自治」という概念と分かちがたく結びついていたので、
どこの大学寮も似たような状況に陥ったことがあります。例外は慶応大学くらいのものです。







406以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 04:18:54.28 ID:VeUw4hwo
お疲れ。次回も楽しみにしてるよ






411以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 15:11:24.17 ID:8hg8KJc0
泰司みたいな友達欲しいわwwwwww


>>411
ありがとう。彼も喜ぶと思う





412
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 17:20:23.81 ID:ObzPnMDO
風俗禁止してたのに風俗行っておまけに浮気してたのか
よく修羅場にならなかったな


>>412
風俗じゃなくて同級生だったみたい
向こうは風俗無いからね、たぶん





413以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 17:24:21.34 ID:hMBZfwYo
1は泰司にベタボレと思われる

泰司の職場が大丈夫でないことがやばいな


>>413
大丈夫。霞ヶ関の意向で省内の人事が左右されることは無い。





414以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 17:48:19.96 ID:vzWQXkDO
泰司墓穴掘るなww


>>414
そういう人なんです










































427
◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 22:42:28.69 ID:EttwVf60
みなさん、お待たせ致しました。
今日は会社と色々交渉してきました。会社を辞めるって大変なんですね。
それでは今日も投下していきたいと思います。








429以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 22:49:15.05 ID:hMBZfwYo
おかえりなさいませ、お嬢様






432 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 23:09:09.01 ID:EttwVf60
秋も深まる頃、彼の配属が決まった。秋田の税務署長である。
またしばらく会えないなとも思ったが、
昔は3年も待ったのだ。1年やそこら、すぐに経つ。そう思っていた。

時を同じくして、採用活動が本格化し、市況も若干上向いてきた。
仕事も忙しくなり、合間を縫って私は説明会に参加していた。
毎回、多くの学生が参加しており、私はただ自分の就職活動のときと比べて驚いていた。
当時、夏を過ぎた時点で既に内定を持っているという学生が何人もいた。3年生の夏の時点で、である。
その内定先には同業の会社も含まれていたばかりか、日本の会社も含まれていた。
同業者は青田買いをするためにどれだけ早く採用を決定していても驚かないのだが、
日本の会社まで就職協定を破ってくるとは。
それほどに、2007年の採用活動は熾烈を極めていた。
優秀な学生の確保は、採用担当者として至上命題であった。

私は投資銀行部門に所属していたので、基本的には投資銀行部門のことしか話せない。
と言うのも、知識として知ってはいても、実務としては知ってない部分もあれば、
私が話すということが職務責任上好ましくないということもあった。
そこで、私は、株式部について詳しく話を聞きたいという学生がいると、達也を紹介することで対応していた。
彼はいつも、快く対応してくれた。






434以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[]:2009/02/24(火) 23:16:35.21 ID:Rs/xAlI0
あのさー、全然話と関係なくてほんと申し訳ないんだけどさ
就職活動中外資の面接とかで
「今100万円あります。5年間でできるだけ増やすのならあなたはどうしますか?」
って質問結構あったんだけどさ、>>1ならなんて答える??


>>434
「おたくに入って莫大なボーナスがもらえるパフォーマンスが出せるように、自分に投資します」って答える。
そこで株が云々とか答えさせようとは思ってないと思うよ。基本的に素直に答えるしかない。







447以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/25(水) 00:00:07.05 ID:Lo/KdmU0
>「おたくに入って莫大なボーナスがもらえるパフォーマンスが出せるように、自分に投資します」

そんなかっこいい事言えないよwwwwそれに社員から見たらそういう高飛車な発言嫌われるかなーって。
でもそんぐらい自信持ってないとやってけないのかな??


>>447
あ、高飛車かな?でもそれで落とされたら仕方ないさ。
自信は別に要らないと思うけど、、、っていうか、こういう人が欲しい!っていうイメージは明確には無いよ。
本当に、あくまで印象で決めてるから、素直に受けるのが大事。落とすときって最初の30秒くらいで決めてるから。








453以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]:2009/02/25(水) 00:17:56.59 ID:VgyX92U0
>>447
俺は一応技術系なんだが、今なら>>1みたいに応えるなあ。
まあ「自分のスキルアップに投資します」
って一言いうのがせいぜいだがww。

学生当時だったら、、、定期預金しますって応えそうww


>>453
私も学生だったらそう言うww
学生のときに100万なんて持ったこと無いんだから、使い道聞くのもナンセンスだよね。
人間は自分の身の丈に合った事しか考えられないものだし、無駄な背伸びは危ういよ。


で、学部を経済にしたのはその昔高校の先生に
「日本の経済学の水準は低い。ノーベル経済学賞もまだ出ていない」
と聞いたので、じゃあ自分がやってみようか、と思ったのれす アホですいません






454以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/25(水) 00:19:20.66 ID:dfvjYnUo
>>1はこれから何か希望の職種とかあるの?
余談だが、部門から考えて弁護士資格さえあれば、>>1は企業弁護士として物凄く需要ある人材だよな。
それとなんで学部は、法じゃなく経済なの?

簡単でいいから答えてもらえるとうれしい


>>454
質問ありがとう。
今はまだはっきりとは考えられてない。
弁護士資格は持っていないので、ロー・スクールに行かないといけない。
でも年も行き過ぎてるから、出ても就職先があるかどうか。
大手の渉外事務所は、学部東大でストレート東大ローの人ばかりで、早慶ローだとかなり珍しい感じがする。







435 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 23:17:47.37 ID:EttwVf60
そんな経緯から、私は彼とやり取りをすることが増えていった。
最初の頃は、他の新人と一緒に飲みに行ったりすることが多かったが、
あるとき彼に相談があると言われて乃木坂のバーに行くと彼は一人で飲んでいた。大分、酔っていた。

1「遅れてごめんね」
達「いえ、今来たところです」
1「(嘘ばつくの下手やんねー)
  そう、それで、悩みって、どうしたの? アゴがうるさいの?」

アゴは投資銀行部内の株式資本市場部に所属していたので、常に株式部と連携して仕事をしていた。
そして達也はアゴが見所があると認めたのか、大分可愛がられているようだった。
誰しも通る道だが、先輩のしごきについて、好悪の感情を判別することは新人にはとても難しい。
余談だが、アゴは私がニューヨークに行っていた1年間に、某大手企業の上場主幹事案件を取りまとめたり
大規模な資金調達をまとめるなどして頭角を現しており、この頃には上司の密命を受けて、
某元政府系機関の上場に向けて様々なシミュレーションを行っていた。そのシミュレーションに達也は駆り出されていた。
今でもこの上司のことを思うと、アゴが気の毒でたまらない。
彼がこの密命のために、輝かしいキャリアを棒に振ったことは既に述べた。






438 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/24(火) 23:24:33.53 ID:EttwVf60
達「いえ、そんなことじゃないです。あの人は凄く論理的ですし、たくさん勉強させてもらってます」
1「へえ、人気あるのね、あいつ」
達「性格は少し変わってますけど、優秀ですし、面倒見良いですから」
1「ふうん。それなら何なの?」
達「実は好きな人が出来たんですけど・・・」
1「げ、まさか学生じゃないよね?」
達「違います。1さんが紹介された学生さんにはきちんと対応してますけど、別に何も無いです」
1「良かった。もしやるにしても、問題が起きないようにちゃんと付き合って、かつバレないようにしてね。
  で、どんな人なの?」
達「同業です」
1「へえ、、、どこの人?」
達「うちの人です」
1「あー、、、そうなんだ。じゃあちょっと相談には乗れないかな」
達「! 何でですか!?」
1「私、知らなくていいことは聞かないようにしてるんだ。聞けば聞くだけ、リスクを抱えるからね。
  聞かなかったことにするから、社内の人とは隠密裏に付き合いなさい。いい?」
達「・・・分かりました」






440以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 23:26:01.16 ID:urADPsEo
達の好きな相手=>>1ですね 判ります><


>>440
あれがそうだとしたら彼は相当女に慣れてない





441以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/24(火) 23:29:57.29 ID:hMBZfwYo
やさしい+鈍感=罪


>>441
なんとでもおっしゃい






443 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/24(火) 23:37:07.92 ID:EttwVf60
なんだか歯切れの悪い言い方。いつもこの子はそうだ。
他の人にとっての彼の印象は、自信家で快活だと聞いているのだが、こと私にとってはその逆だ。
なんだか心配になってしまう。

1「まー良かろう。話してみんしゃい」
達「良いんですか? ・・・ていうか、なんですかその訛り?」
1「細かいことはいいから、話してみなさい。私も今日限りで忘れるから」
達「えっとですね・・・」

おもむろに彼は話し始めた。私は彼と酔いのペースを合わせる為に、
シェリー酒を2本ほど横に置きながら話を聞いた。
彼の弁によれば、意中の人は他部門の上司で、面倒見が良く、
快活に良く笑う人なのだが、どこか抜けているのだと言う。
私は、後輩を相手にガハガハ笑っているアゴを思い浮かべて、
こりゃ聞かない方が良かったかなと後悔し始めた。
相手の予想がついたところで、話を聞く必要はもう無いと思った私は、
シェリー酒を終えてキャビアとウォッカを注文した。
彼はなおも話す。







445以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/24(火) 23:42:00.83 ID:ObzPnMDO
同級生と浮気してたのかよ。いいの?


>>445
どうせ大したことしてないからいい






448以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/25(水) 00:03:05.79 ID:yW9M1L20
達也のとった戦略はあながち間違いとも言えないな。






450 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/25(水) 00:07:15.31 ID:424vGWM0
達「あの、1さんは付き合ってる人とかいるんですか?」
1「んーまあ、手間のかかるのを一匹飼ってるよ。いっつもフラっと家出しちゃって、帰ってこないけど」
達「それって、犬か何かですか?」
1「そんなとこだね」

決して嘘は言っていない。私はプライベートを明かさないのがポリシーだ。

達「そうですか・・・」

私の受け答えに彼は不満だったようで、更に酒をあおる。私は私で、キャビアのコクとウォッカのキツさを楽しむ。
20分ほど、私たちは無言で飲んでいた。キャビアうめー
と、隣で彼がイスから落ちた。下に目をやると、顔を真っ赤にして眉根をひそめる彼の姿が。

(こりゃまずったな・・・)






455以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/25(水) 00:21:38.64 ID:iUFXdwDO
浮気で違う女とセックスされるぐらいじゃ動じないの?


>>455
まあ、したいならすれば?って感じ





458 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/25(水) 00:32:46.52 ID:424vGWM0
時間は朝5時で、店はもう閉まる。会計を済ませて、彼の持ち物をまさぐる。家の場所を知るためだ。
免許証を見つけた。住所は大阪。ダメだ、実家だ。
携帯電話の電源を入れようとする。電源切れてる。ちゃんと充電しとけ。
家の場所は分からなかった。

起こそうとするが、起きない。そのまま置き去りはさすがにかわいそうだが、どうしようか。

(しょうがない、私の家に搬入するか。)

幸い、彼は小柄だったので、店の人に手伝ってもらって彼を背負う。
めちゃめちゃ重たい。私の靴は脱いで、かばんに入れた。
タクシーを止めてもらい、家まで走った。こっちも酔いが回っているので、非常に辛い。
家の前まで着くと、タクシーの運転手さんに手伝ってもらって、彼を家の中に入れ、リビングに寝かせた。
水をグラスに入れて、飲ませようとする。だが、飲まない。私は彼をそのままにしてシャワーを浴びることにした。







465 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/25(水) 00:52:49.13 ID:424vGWM0
水を大量に飲んでトイレで用を足し、シャワーを浴び、浴槽に入る。
たくさん飲んだときのいつもの作業をして、パックをして、ヘアパックもして、ゆっくり半身浴をする。
時事放談を見る。休日の朝早くからこんな時間に出演するなんて、政治家も大変だなと思う。
全てを終えて浴室から出る頃には、酔いは大方冷めている。むしろ血行が良くなった気がする。

タオルで髪をまとめ、バスローブを着、化粧水で顔をマッサージしながら、達也の様子を見に行く。
水は空になっていたから、飲んだのだろう。
秋の朝は冷える。私はブラケットを取り出し、ソファの前で膝をつき、彼にささやいた。

(シャワーを浴びるなら、タオル使ったあと洗濯機に入れておいてね)

ブラケットをかけ、彼が頷いたのを視認した後、
私は寝室に向かおうとしたが、いきなり視界がフローリングに支配された。
達也が上に乗っている。






466以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/25(水) 00:56:39.77 ID:ilUxWZUo
ああ、やっぱりこの展開






467以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/25(水) 00:57:23.73 ID:yW9M1L20
達也は全て計算してた!?






472以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[]:2009/02/25(水) 01:04:14.15 ID:VbRTZiIo
これが孔明ってやつか






471以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/25(水) 01:02:53.84 ID:Kkk1VsAO
達也!策士だゎ
重いけど1さん頑張ってね
ここ見てたら自分のスキルアップがんばろとおもた
英語の勉強もっかいしよとおもたよ


>>471
そう言ってくれると嬉しい。勉強、頑張ってね。







473 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/25(水) 01:04:36.66 ID:424vGWM0
1「ちょっと、何すんのよ!」
達「・・・」

達也の息遣いが聞こえる。まずい、私は風呂上りで裸だ。
酔っ払いと床に挟まれ、暑い。床暖房強すぎたな。圧迫されて胸痛いよう。
などといつもの癖で本題と関係無いことを考えてしまう。ちょっと待て、それどころではない。

1「ねえ、聞いてるの!?どきなさいってば!」
達「・・・やっぱり彼氏いないんですね。この部屋、全然男がいる感じがしない」
1「そんなのあなたに関係な。。。!! あなた酔い冷めてたのね!酔った振りなんてして、何のつもりよ!」
達「1さん、今付き合ってる人いないんでしょ?だったら僕と付き合ってくださいよ!」

達也はまだどかない。まずいまずいまずい






477以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/25(水) 01:07:39.11 ID:iUFXdwDO
てか襲われすぎだな。襲いやすそうなのかな


>>477
なんか昔からやたらとチカンとかに会うたちだった







478以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/25(水) 01:07:55.15 ID:ES/Dd3Uo
なんつーか、そういう告白の仕方でおkしてもらえると思える神経がわからん。


>>478
強引な奴は結構多い





481 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/25(水) 01:16:23.21 ID:424vGWM0
バスローブを死守しようと両手でガードしていたら、私は体を転がされ、仰向けになってしまった。
完全なマウント・ポジションになってしまった。これは絶望的だ。
酒がまだ完全に抜けていない。力が入らない。頭もボーっとする。
ふと、1年生の頃にボブとのやり取りを思い出してしまった。
涙がこぼれた。顔を見られたくないので、顔を両手で隠す。

1「ひっく、、、ひっく」
達「1さん?」
1「いいわよ、そんなにしたいならしなさいよ。でも一生許さないから。
  訴えたり、嫌がらせしたり、、、会社にいられなくしてやるわ」
達「そんな・・・僕の気持ちは分かってたでしょう!?」
1「知るもんですか、この卑怯者!女の腐ったようなこと言ってんじゃないわよ!
  なんで勝手に脳内で私の気持ち補完してんのよ!
  本人にしっかり確かめないでこんなことしてるのは、自信が無い証拠よ!」
達「!!!」
1「だいたい、なんなのあなた!?酔ってないなら、ちゃんと歩いて帰りなさいよ!
  会計はいいとして、私あなたをおぶってここまで運んで、
  大変だったのよ!?タクシーの運転手さんにも謝りなさいよ!
  靴脱いだから、足だってボロボロよ!お手入れ大変なんだから!あなたが角質取ってくれるのかしら!?
  くぁww背drftgyふじこあwwせdrftyふじこ!!」

口だけは酔いが奏功して、滑らかだった。しかし敵はなおも侵攻の手を緩めない。







484 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 01:19:22.54 ID:yW9M1L20
行動といい、言動といい、第二のボブだなこりゃwwwwww






487以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/25(水) 01:21:25.87 ID:VgyX92Uo
達也氏ね。
今日のところは氏ねで勘弁してやる。






493以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[]:2009/02/25(水) 01:29:43.88 ID:Lo/KdmU0
達也の気持は分かるが・・・・・
男だったら酒の力なんか借りずに黙って告白だよな!!






495 ◆RWwEbHEhig[]:2009/02/25(水) 01:31:51.11 ID:424vGWM0
彼は手際よく自分の荷物をまとめ、脱いだスーツを着、玄関から出て行った。
私は何が起こったのか分からなかったが、とにかく危機が去ったことだけは理解した。
恐ろしさがぶり返してきて、少し泣きそうになったが、
こんなことになったのも一緒に住んでくれないあいつのせいだと思うと怒りがこみ上げてきた。
いや、同居していても、気づかず寝ているかもしれない。怒りのエネルギーが増す。

電話をかける。出ない。留守電になる。

「あんたがチンタラやってるから今日犯されかけたわよ!この甲斐性無しが!早う東京戻って来んかい!」

絶叫して、迎え酒にチューハイを一気飲みして、私は寝た。

翌日、昼ごろ起きると、着信14件。私は、しばらく放置しておくことにした。だって、たまには心配させたいし。
晩になってお母さんから電話がかかってきて、さすがに出た。お母さんポイントが減点されたと思って、軽く後悔した。







500以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/25(水) 01:43:28.16 ID:ilUxWZUo
達也がそこで帰ったのはいやがらせが怖かったのかそれとも・・・






502 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/25(水) 01:46:17.58 ID:424vGWM0
また、達也からも謝罪のメールが入っているのをブラック・ベリーで確認した。
まったく、とんでもないヤローだったと思って、返信はしなかった。しばらく苦しむがいいわ!

その後、叙々苑でばったり出くわした勝也くんから話を聞いたところでは、
昔達也くんの彼女を彼が寝取ったときに、ひどく落ち込んでうつ病のようになってしまったとか。
私にかつての自分の彼女を重ねたのだろうか。が、違いは彼女は拒まず、私は拒んだ。私GJ。
つくづく、最近の若者は自分勝手だと、自分と自分の相方を棚に上げて思った私であった。







505以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/25(水) 01:54:55.54 ID:Lo/KdmU0
>>502
ブラックベリーが分からなくて「肉眼」なのかと思ってしまったwwww
それと達也と勝屋はそんなことがあったのに仲いいの?


>>505
さあ?どうなんだろ
仲良さそうには見えないけど、腐れ縁ってやつなのかな








507以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/25(水) 01:56:13.87 ID:ES/Dd3Uo
投資銀行の男は強引に押し倒したり人の女寝取ったり人の手柄自分のものにしたり、こんなんばっかかww






514 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/25(水) 02:11:15.17 ID:424vGWM0
季節は冬になり、私は2007年のバジェット(目標収益)を無事達成していた。
パリバショック以降、投資家の購買意欲は冷え込んでいたが、
依然として邦銀大手や農林中金、大手生損保等の投資家郡の資金余力は底堅く、
発行株式は毎回必ず売り切ることができたので、
私は資金を必要として企業に当たりをつけてアゴに執行を頼むだけで収益をあげることができた。
当時の日本の業界関係者は、一部を除き、米国で起きつつあった信用収縮については対岸の火事と考えていた。

アゴは2007年いっぱいをかけてある大規模新規株式公開の案件に取り組んでおり、弊社は彼の尽力により、
IR(Investor Relation)ミーティングのアレンジャーに指名された。
IRミーティングとは、世界中の投資家に
「今度うちの株式を公開するから買って頂戴ね。
 何か質問があったら答えるし、注文があったら検討して今後の事業に反映させます。よろしくね」
と言って回るイベントのことを指す。
ドメスティックな日本企業にとっては、これは非常にハードルが高い。
英語で世界の百戦錬磨の投資家と渡り合わなければならない。
そこで、外資系の証券会社の出番である。我々は彼らに付き添い、
アドバイスをしながら、時には代わりに応答し、来る株式公開の成功率を高める。

アゴはほぼ一人でこの案件を回していた。誰にも手は出させなかった。
それが彼自身の意思だったのか、上司の指令だったのかは分からない。
いや、おそらくは両方だろう。
アゴは優秀だったし、仕事熱心だった。ただ、惜しむらくは社内に味方がいなかった。
全てのお膳立てをして、3日後にIRミーティングのために渡米することになっていた日の夕方、彼は解雇された。
それがどのような事情によるものだったのかは、既に述べた。ミーティングにはこの上司が一人で同行した。
弊社は、この案件の米国での発行株式売出を独占することができた。上司には莫大なボーナスが支払われた。







517 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/25(水) 02:14:50.86 ID:424vGWM0
私は少なからずショックを受けた。ジュニア達の動揺も激しかった。
私にとってアゴは同期だったし、ジュニア達にとっては恐ろしくも頼りになる調教師であった。
それがあっさりクビを刎ねられたことで、資本市場部に在籍することのリスクが飛躍的に高まった。
あの上司に目をつけられると、飼い殺しになる。そんな雰囲気がオフィスを支配した。

この上司を修造と呼ぼう。
修造は、アゴの尽力により、既にMDにまで上り詰めていた。
上層部ともある関係を持っていたので、政権の足固めは順調だった。
今から思えば、修造は景気の先行きについてかなり悲観的な見通しを持っていたのだろう。
もし、部署が解散に近い整理解雇の波を受けるなら、
経営陣としては、給料も高く実務能力に欠ける修造をまず解雇するだろう。
そしてアゴのような、給料も安く、若くて何でもやるような便利な人間を残すだろう。
しかしそのような人材が枯渇していればどうか。
会社としては修造を残し、若者を実働部隊として機能させることを選択させるだろう。
彼は自らの生き残りをかけて、保険のためにアゴを自分の部署に置いていたのだろうか。
実際は、修造の予想は正しかったが、思い通りにはいかなかった。
修造が思っていたよりも、景気の下振れは大きかったのだ。







521 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/25(水) 02:25:52.18 ID:424vGWM0
ここで少し時計の針を戻そう。12月の上旬になり、国内の新卒採用も大詰めを迎えていた。
私のいた部門の採用は、Webでのエントリーシート提出に始まり、
Webテスト、グループ・ディスカッション、グループ面接を経て、
数日間のワークショップを行い、個人面接を重ね、
最後は個人面接の担当者全員と1日で面接をし、採否が決定される。
幾千もの履歴書が集まる中、個人面接の段階にまで進める人間はたったの20人ほどである。
しっかりと評価をしてもらえる段階に進むまでに数百倍の倍率があるために、採用には運が大きく絡む。

そのため、学生は生き残りをかけて必死になる。
ある学生は手紙を書き、ある学生は社員と恋仲になり、
またある者は本選に漏れたあと、
ボストンで行われるキャリア・フォーラムに参加すべく渡米するなどした。

しかし、こちらとてふんぞり返って待っているわけではない。
優秀な学生を確保すべく、文字通り東西南北の大学やセミナーに参加し、
学生の雰囲気やニーズを掴む。
特に優秀と認められた学生については、選考途中であっても、
頻繁に食事などに誘い、囲い込みを行う。
一部の学生はそれを私情によるものと勘違いして面倒なことになったりするのだが、
そうしたことにも会社は一切関知しない。
私は、忙しかった。






522以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/25(水) 02:27:08.53 ID:zC.n6aoo
1が入社した時に言われた言葉通りじゃないか
金に溺れた奴って事でしょ

こんな仕事一生食っていける仕事じゃないし
後は野となれ山となれ
人は未来があるから頑張れる


>>522
実際はそんなドラマティックじゃない。
金に溺れるっていうよりは、現状維持に必死になるんだよ






523以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/25(水) 02:30:13.01 ID:dfvjYnUo
つか>>1はかなり顔良いんだろうと思うが間違ってる?
日本だと投資銀行は女の採用が異常に多いし、ほとんど容姿の勝負になってるからねwwwwww
まぁ>>1は特殊なケースかとは思うから自信ないが


>>523
上の方で出てる女優に似てるとよく言われますが、彼女ほどキリっとした顔してません







524以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/25(水) 02:30:53.27 ID:TKTL4bIo
>文字通り東西南北の大学やセミナーに参加し

おそらく旧帝+東工一橋+早慶上智くらいだろ?


>>524
いえ、女子大とかも行きます。
フロントではそのへんがターゲット校ですが、他部門では特に学校にこだわりませんし、
宣伝活動も兼ねていました






535 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/25(水) 02:57:49.32 ID:424vGWM0
秋田に行こう行こうと思っているうちに、クリスマスが近づいてきてしまった。
2007年のイブは週明けだった。私は、その前の週末を使って、秋田に顔を出そうと思っていた。
木曜日の夜、私はメールを送った。

件名;おっつー☆
本文;今週末遊びに行くよ!何か買ってきて欲しいものある?
   土曜日のお昼に駅に着くから、迎えに着てねん(^o^)/

いつもは電話だが、来るなと言われても面倒なので、メールを投げ込んで突撃するつもりでいた。
私は会社の帰りに銀座まで出て、「ぶどうの木」で籠盛りチーズケーキの白々を買った。
メールは、返ってこなかった。






536 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/25(水) 02:58:45.90 ID:424vGWM0
今日はこのへんで失礼します。。。

一応、明日で完結させるつもりなので、みなさん最後まで宜しくお願い致します。






538以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/25(水) 03:00:48.65 ID:a7p4CRYo
>>1は幸せになる義務がある






540以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/25(水) 03:02:19.70 ID:JSuuVMDO
明日で最後か…
なんか寂しいな

とにかく乙でした





548以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/25(水) 03:17:51.14 ID:iUFXdwDO
秋田か・・・秋田はなあ
これほど人の恋愛を応援したことはない










































615
◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:35:10.01 ID:mTsCmgo0
スレを立ててから、一週間、とうとうこのことに触れるときが来た。
今までずっと、誰かに聞いてもらいたいと思いながら、誰にも言えずにいた話を。
私はコーヒーを入れた。まだ熱くて飲めなかった。私は猫舌なのだ。

何度か、今までのように小説仕立てに書こうとしたが、あのときのことを思い出そうとすると、とても辛く、
タイプする指が止まったまま、時間が過ぎていく。
リビングは広くて寒い。ソファに座って、虚空を見つめる。
涙は出ないが、なんとも言えない後ろ向きの感情に心が支配される。
コーヒーは、いつの間にか冷めている。






616 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:35:21.80 ID:mTsCmgo0
金曜日の夜、私は祭壇の上で笑う彼と対峙していた。

その日の朝、私は実家に電話をして、結納の日取りについて相談をしたところだった。
お母さんから連絡を貰ったのは午後のことだった。
羽田までタクシーを走らせ、飛行機に乗り、秋田空港からタクシーで彼の家に向かう。
その間、私は何も考えられずにいた。現実が受け止められなかった。

畳の匂いがする部屋で、私はしばらく彼の遺影を見つめる。お母さんが話しかけてきた。

母「1さん、これ、明日使う喪服ね」
1「。。。あ、はい。どうもすみません」
母「ごめんなさいね、こんなことになっちゃって・・・
  今まで入院もしたこと無いような子だったのに、心臓が原因だなんて」

心臓突然死という症名は初めて聞いた。






617 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:36:05.52 ID:mTsCmgo0
彼の部下が尋ねてくる。部下といっても、10以上は年上だろうか。
忙しい生活なのか、髪にも白髪が混じっている。
お父さんが応対する。

部下「この度はどうも・・・非常に残念です」
父 「不出来な息子の面倒を見てくださってありがとうございました」
部下「いえ、そんなことは・・・木曜日は課のみんなで飲んでおったんですが、まさかこんなことに・・・」

通夜は、粛々と進んだ。この日のことはよく覚えていない。

翌日、お父さんとお母さんが葬儀屋と、遺体を東京に持ち帰るか、
ここで荼毘に付して遺骨を持ち帰るかの相談をしていた。
色々事情があって、東京ではお骨だけの葬儀を挙げる事になった。

日曜日、葬儀が開かれた。
集まったみんなは泣いていた。色々な人が来ていたようだったが、よく覚えていない。
ずっと心がどこかに行ってしまったようだった。
納骨も全て終えて、家に帰った。






618 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:36:17.65 ID:mTsCmgo0
テレビをつける。バラエティー番組ではみんなが笑っている。
楽しそうだ。そういえば、あの人もよく笑っていた。

木曜日までは、今日を指折り指折り数えて待っていた。
会ったら結納の話をし、婚約指輪をねだろうと思っていた。
銀座にお土産を買いに行ったときには、ティファニーを覗いてきた。
浴びるように焼酎を飲んで、土曜の夜と日曜の朝の彼を独り占めしようと思っていた。
一緒に住むなら、今の家のテレビや家具は大きすぎるので、いくつか処分しなくてはと、後輩に譲る算段もしていた。

ふと気づくと目の前のテレビでは、昔の歌謡曲特集をしていた。こんな曲が流れていた。








619 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:36:27.67 ID:mTsCmgo0
二人で暮らすことを夢見て借りた今の部屋。
一人では大き過ぎるベッドにソファ、テレビ。ファミリーサイズの冷蔵庫に洗濯機。
食器棚には使ったことの無い夫婦茶碗と、お揃いの食器。
ワイングラスは赤白シャンパン用全てをペアで揃えた。
ビール派の彼のためにビールグラスも買った。もちろん、焼酎用の焼き物もある。
その全てが、彼に使われることはもう永遠に無い。

ビールグラスにビールを注いで、テーブルに置く。もう1つ、焼酎のお湯割りを作る。
席に着いて、ビールグラスと焼酎のグラスをぶつけて乾杯をしてみた。
カチンと音がして、ビールの泡が、少しずつ消えていった。

(チーズケーキを、、、焼いて待ってるって、、、言ったじゃない。。。)

やっと、涙が出てきた。緊張が解けると、尋常ではない悲しさが襲ってきた。
その晩は一晩中泣いて、私は27歳のクリスマス・イブを迎え、初恋に別れを告げた。
焼酎は、やはり飲まなかった。






620 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:36:40.68 ID:mTsCmgo0
それから年末までは、視界がセピア色になったかのようだった。
顧客も年末休みに入っていたため、仕事も無い。無駄に後輩を年越しピッチでしごく気力も余裕も無い。
私は欠勤がちのまま、長州小力がゲストになっていた会社のYear End Partyも欠席して年末に突入した。

年末に親に一連のことを伝えると、まずは帰って来いと言われた。
おそらく、私が思いつめるのではないかと心配していたのだろう。
しかし私は帰らなかった。
帰ったら、もうこちらには戻って来れないような気がしたからだ。
それでもいいかもしれないが、このまま戻ったって、何もやることなど無い。
もちろん、こちらにいたって、やることなど無い。
ただ、仕事はいつも私のそばにあった。それだけが唯一の救いだった。
仕事をしている間は、余計なことは考えずに済んだからだ。






621 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:36:52.69 ID:mTsCmgo0
この頃からしばらくの間、私たちの主な関心事は、主要な外資系投資銀行の決算になった。
と言うのも、サブプライムバブルが弾けた直後、
最も評価損が大きかったのはメリル・リンチとシティだったのだが、
これは我々の実感とかけ離れていたためだ。
例えば、リーマン・ブラザーズはボンド・ハウスで知られ、
高翌利回りの仕組み債などで大きな収益を上げていたし、
モルガン・スタンレーの証券化商品部(Securitization Products Group)は
東京オフィスだけで100人を超える部隊を擁していた。
したがって、私たちはこれらの企業の決算に際し、近く、大きな火種が暴発すると見ていた。

経営陣は、各社のカウンター・パーティ・リスクが増大すると判断し、
即座にデリバティブやスワップなどの入れ替えを指示した。
また、これは推測に過ぎないが、オフバランスした傘下ファンドに買い戻し条項付きで
CDO(Collateralized Bond Obligation)を買い取らせ、
評価損の表出を遅らせていたのではないかと思う。
結果、弊社は2007年もレコード・イヤーの業績を達成した。
しかし、3月中旬、パリバ・ショックを遥かに上回る衝撃が業界を襲った。
米証券大手、ベアー・スターンズの破綻である。








622 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:37:05.54 ID:mTsCmgo0
以降、市況は坂を転げ落ちるように悪化していった。
このへんは新聞でも頻繁に報じられていたので、読者諸氏もご存知だろう。
駆け足で書いていきたい。

3月下旬、深夜会社にいると、モニターの株価が急降下している。
リーマン・ブラザーズの株価が最大80%も下げた。
4月になり、株価急落によって資本が毀損された銀行に資本調達の提案を行おうとするも、反応は厳しい。
夏に向けて原油価格が急上昇し始めたため、原油に関するデリバティブ・ヘッジの提案を行うも、
原油価格が140ドルまで上がったところで、誰も先行きを予想できなくなった。
フェア・バリューは60~70ドルだったのだから。

リーマン・ブラザーズの破綻が決まった月曜日、東京は休日だった。
私は二日酔いだったが、メリル・リンチの友人からの電話で飛び起き、
泊まりに来ていた他社の友人とともに着の身着のままで出社した。
誰もが、メリルの破綻と、バンカメによるリーマンの買収を信じていた。
友人は、もう会社が潰れるからと、飲みに来ていたのだ。

すぐ、リーマンをカウンター・パートナーとしている取引の解消を進めたが、金融庁の対応が先行し、
リーマンの財産は保全手続きが行われ、民事再生法が適用され、
先のデリバティブ・ヘッジの案件もロスを蒙った。







623 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:37:22.14 ID:mTsCmgo0
秋に入ると、モルガン・スタンレーのCDS(Credit Default Swap)が1400bpsまで上昇。
CDSとは、企業が潰れたときの保険みたいなものだ。
上がれば上がるほど、潰れそうと思われているということになる。
リーマンは600bpsで破綻した。市場がどこに向かっているのか、誰にも判断できなかった。
あのとき、MUFJが1兆円を注入しなければ、確実に世界経済は崩壊していただろう。

幹が太い木ほど、大地に深く根を張り、枝を周りの木々に絡ませる。
モルガン・スタンレーの幹は太い。
その根や枝の数も、リーマンやベア・スターンズの比ではない。
金融市場は、これまでに無いほど急速に病んでいった。

冬に入り、社内でも大規模なレイオフが断行された。
為替の水準、株価の動き、全てが異常事態だった。
その直前期に、私の最後の仕事が幕を開けた。






624 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:37:37.61 ID:mTsCmgo0
仕事は、政策保有株、つまり持ち合い株の解消の提案であった。
2000年に入ってから、企業経営者にとって、敵対的な買収に対する防衛策は重要な課題であり続けた。
ライブドアによる日本放送買収、スティール・パートナーズによるブルドック・ソースの買収、
TCIによる日本空港ビルデングの買収。
これらはいずれも失敗した案件だが、そのどれもがセンセーショナルな響きを持っていた。
そのため、多くの企業経営者は、メイン・バンクだけでなく、関係の近い事業会社とも株を持ち合うことで、
浮動株数を減らし、第三者による不意打ち的な買い占めを防ぐ戦略を採っていた。

もちろん、上場した以上は、自社の株式をどこの誰が買おうが口を出す権利は無いのだが、
日本の司法も、行政も、各企業の経営者も、グローバルな資本主義に晒されるには未熟に過ぎた。
日本は経済の水準は世界トップクラスだが、市場の成熟度で言うと、未開の原野のようなものだった。

株の持ち合いは、当初は非常に良く機能していた。
しかし、市場の急速な悪化は別のところから、企業の経営者の悩みの種を生み出したのだった。







625 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:37:51.88 ID:mTsCmgo0
それは、保有株式の評価損であった。ここから先は会計的な話になるので、
興味のある方だけ読んで欲しいと思う。

通常、1年以上保有される有価証券は、貸借対照表内の固定資産の部の「投資有価証券」に計上される。
持ち合い株は、「お互いに株を長期間持ち合って関係を強め、かつ買収も防ぐ」というその性質上、
この部分に国債や社債などとともに繰り入れられる。
しかし、国債や社債の異なり、持ち合い株は債券と同じデフォルト・リスクに加えて、
価格下落のリスクをも秘めている。
投資有価証券内の株式について、
価格が大きく下落して半年以内に回復の見込みが無いと公認会計士が判断した場合、
企業はその損失部分を「特別損失」として、損益計算書に計上しなければならない。
BSからPLに損失がヒットすることになる。

その結果、キャッシュフロー(CF)に打撃が与えられる。
不況時は、証券発行による資金調達が厳しくなる一方で銀行からの借り入れも難しくなるため、
CFへのネガティブな影響は何としても避けたいところである。
なぜなら、本業が厳しくなる一方で、好況時に発行した社債の償還や、
銀行借入の返済が迫ってくるからである。

例えば、不動産業など、数年がかりで作るものを売るようなビジネスの場合、
銀行に借りたお金でモノを作り、それを売るまでは儲けが出ないのだが、
債券の償還は決まった年月が来れば返さなければならないし、
銀行借入は毎月手形を落とさなければならない。

そこで、持ち合い株の解消により、株式評価損のダメージを軽減することを検討してはどうかと閃いた。






626 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:38:03.87 ID:mTsCmgo0
これに気づいたのは、週刊ダイヤモンドで不動産崩壊という特集を見たときのことだ。
ダイヤモンドの分析は、会計的に甘い気がしたので、
自分でモデルを組んで少し調べてみると面白いことが分かった。

破綻している企業の殆どが、
営業CF(Operating Cash Flow; OCF)が財務CF(Financing Cash Flow; FCF)を下回っており、
その結果銀行借入を返せなくなって融資基準に抵触していた。
そこで私はまだ破綻していない企業の中で、この条件に合致する企業を探した。
つまり、2008年末に破綻する見込みが強い企業を探すのだ。
そうした企業に、提案を行う。手数料は極小で良い。
これは次年度への布石になるし、
何より苦しんでいる優秀な経営者にお金を貸すことこそが、金融の重要な役割だ。
幸い、私は2008年もバジェットを達成していたから、人件費は0と考えて良い。
これが上層部にバレると、妨害を受けるだろう。こんな儲からない仕事はするなと言われてしまう。
部下も上司も使ってはいけない。私は徹夜で極秘のオペレーションに取り掛かった。






627 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:38:16.00 ID:mTsCmgo0
資料はすぐ出来たが、いまいち自信が無い。
と言うのも、こんな会計のからくりは、
ちゃんとした企業の財務部であれば認識しているはずだったからだ。
では、なぜ彼らは持ち合い株を解消しないのか。
私はそのへんが分からないまま、ある企業にこの提案書を持っていった。
3年ぶりに、自分でコピーセンターに提案書の印刷と製本を依頼し、
自分でカバンに入れ、いそいそと出かけた。

結果は、お話にならなかった。
だが、持ち合い株を解消しない理由が分かった。あまりにも素朴で、
自分の発想の貧困さを私は恥じた。

担当者「いやー、昔からお世話になっているところの株でしょう?そんな簡単に売ったりできませんよ。
    それに先方にも株を持って頂いているのに、うちだけ売るっていうのは、
    そうは問屋が下ろさんでしょう」

困った。株式を売ったりはできないらしい。どうしよう。私は煮詰まってしまった。
帰社して途方に暮れていると、目の前の電話が鳴った。

「おー久しぶり!」

同業他社に転職していたアゴだった。






628 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:38:34.44 ID:mTsCmgo0
1 「久しぶり。よく転職できたね」
アゴ「腐ってもなんとやらだよ。達也は元気にやってる?」
1 「(元気も何も。。。)
   あー、元気なんじゃない?」
アゴ「なんだよ、相変わらず冷たいな」

アゴは転職したことを伝えるために電話をかけてきたのだ。
おそらく修造がまだ社内に残っているかどうかも確認したかったのだろう。
ひとしきり話をして、私はふと思いついた。

(待てよ。。。そういや、こいつ、株式資金調達のスペシャリストだったな。。。
 何かいいアイデアを持ってないだろうか)

私は携帯でかけなおし、ことのあらましを話して、アゴにアイデアを求めた。






629 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:38:48.87 ID:mTsCmgo0
「あー、、それだったら、持ち合い株の価格をデリバティブ・ヘッジして担保するか、
 株自体の信託受益権を証券化すれば、
 株売らなくても資金調達できるよ」

さすが資本市場部生え抜きのエリートである。3分でアイデアを提示してみせた。

1 「でもそれでお金を貸してくれる銀行があるの?」
アゴ「ある」
1 「どこよ?邦銀だって今はガタガタよ」
アゴ「おいおい、僕の今の会社がどこか忘れたのか?」
1 「あ・・・」

アゴの転職先は、銀行系証券会社だった。
確かに、デリバティブの組成を私の会社でやってアゴの会社をカウンター・パートナーにしてもいいし、
アゴの会社で組成したシンプルな証券化商品なら、格付けも高いから私の会社で買ってもいいだろう。
これは日系他社にはできない。彼と私の会社でしか出来ない。
思いつきで始まった提案が、魔法のからくりになった瞬間だった。







630 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:39:03.34 ID:mTsCmgo0
それから私は、提案書を作り直し、色々な企業を回ったが、
その殆どが私の提案を是非検討したいと言ってきた。

(これは・・・いける!)

私は会社として本案件を執行すべく、会議に諮った。ここでOKを貰えなければ、会社として動くことができない。
しかし、これは完全な勝ち戦だった。
なぜなら、これから使う人件費(Resource)は私とデリバティブを組成する人間だけで良かったし、
青写真も既に出来上がっており、収益も期待できたからだ。
アゴのアイデアにより、本案件は十分な利益を出せるストラクチャーになっていた。
これが好況時なら、もっと稼げる仕事をやれと言われる可能性もあっただろうが、
他のバンカーはまったく仕事をしていなかったので、私にそれを言える人は誰もいなかった。

私は、デリバティブの組成担当に達也を指名した。
どうせ、カウンター・パートナーにする会社の担当者はアゴである。
利益相反の心配も無いのだから、師弟の併せ技と行こうと思ったのである。
私たちは年末までにあらかたの案件を終え、
あとは会社に振り込まれる手数料をモニタリングするだけになっていた。

そして年の瀬が迫り、一周忌がやってきた。






631 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:39:18.45 ID:mTsCmgo0
私は喪服を着て、お寺に向かう。足取りが重い。
これから毎年、年末が来るたびに私はあの日を思い出すのだろう。
だがそれはいい。それくらいはしてやらないと、彼がさびしがるだろう。

法事を終え、食事を広間で取る。お酒も入る。さすがに私は飲めない。
昨年はみんなが泣いていたが、今はみんなが白い歯を見せて笑っている。
葬式も、一年経てば同窓会なのである。いや、時期柄から言えば忘年会か。
個人の思い出話をしている人など誰もいない。

「1さん!」

弟君だ。就職が決まり、次の春から新社会人だ。少し会っていない間に大人っぽくなった気がする。
彼は私のことを「姉さん」と読んでくれていた。しかしなぜ今日は名前で呼ぶのだろう?

「元気無さそうだね」
「あのさ、俺、もう1さんのこと『姉さん』って呼ぶの止めるよ」







632 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:39:33.27 ID:mTsCmgo0
なんでそんな悲しいことを言うのだ、と思ったが、彼は更に続けた。

「最近、母さんも父さんも、兄貴の話あんまりしなくなったんだ。俺、それが最初は嫌でさ」

それはそうだろう。彼は弟と仲が良かった。弟の心の傷も深かっただろう。
だからこそ、私のことを姉と呼んだのだろうし。

「でも、それって悲しいって思うんだ」
「ここにいる人を見てごらんよ。去年は泣いてたけど、今年は楽しそうにしてるだろ?」
「人生、悲しんでばっかじゃ不幸だよ。幸せになるためなら、忘れていことだってあると思うんだ。」
「みんなそうやって生きていくんだよ、きっと。」
「だから、1さん。もう兄ちゃんのこと忘れてくれよ。まだ人生、長いんだから・・・」






633 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:39:48.35 ID:mTsCmgo0
弟は喋りながら泣いてしまって、最後まで話せなかった。
私は彼をそっと抱きしめ、自分の陰鬱とした表情がこの心優しい家族を如何に苦しめていたかを知った。

(もう法事に出るのはやめよう。その代わり毎年手紙を書こう)

彼は気恥ずかしかったのか、私を引き剥がし、兄にそっくりな笑顔で私の顔を見て言った。

「きっと、兄貴もそう思ってるよ。うちの兄ちゃんを好きになってくれてありがとう」

涙で弟の顔がぼやける。すぐ、涙をハンカチで拭い、弟の顔を見ようとする。
しかし眼球は像を結ぶことは無く、私はそのまま静かに泣いた。
弟は、そのまま泣いている私の前で正座をして、膝の上に手を置き、畳を見つめていた。

(泰ちゃん、私どうしたらいいと?そんなにすぐ忘れられんっちゃ。。。)






634 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:40:01.09 ID:mTsCmgo0
法事が終わり、年末に突入した頃、修造が突然私を呼び出した。
用件は分かっていた。私のやっている案件が、株式に関係しているのにも関わらず、
株式資本市場部長である自分が埒外に置かれているのが気に入らないのだ。

修造「君、例の案件だが、次のミーティングからは私も同行する」
1 「お断りします」
修造「何?君、自分の言っていることが分かっているのかね?」
1 「ええ、もちろん。私の案件の人員はもう十分に足りています。修造さんにご足労頂く必要はありません」

修造は、アゴをクビにしてしまったために、実働部隊になる手駒を持っておらず、
2008年はバジェット未達のまま終えることが明らかだった。
そこで、収益を上げている本案件に噛むことで、生き残りを図ろうとしていたのだ。
しかし手口はアゴの一件で分かりきっている。その手には乗らない。
彼はもう稼げない。遅かれ早かれクビになる。ここを乗り切れば私の勝ちだ。








635 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:40:16.36 ID:mTsCmgo0
修造「私にそんな態度を取って済むと思っているのかね!?」
1 「おや、おかしいですね。修造さんはあんなに従順に働いたアゴをあっさり切られたではありませんか。
   私がどういう態度を取ろうと、いずれクビにするおつもりでしょう?
   どんな態度を取ろうが同じのように思うのですが」
修造「・・・次のレイオフを楽しみにしておくんだな」
1 「失礼致します」
修造「1くん!」
1 「なんでしょうか?」
修造「後悔するなよ」
1 「ご心配なく」

私は完全に勝った気でいた。それが誤解だったと気が付いたのは、年明けになってからだった。






636 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:40:31.80 ID:mTsCmgo0
年末は一人で年越しそばを作って、新年を祝った。
一人でそばをすすり、テレビの「あけましておめでとうございます」というナレーションに一人反応する

「明けましておめでとうございます」

学生時代は初詣はいつも泰司と明治神宮に行ったものだった。彼に彼女がいたときは、弟くんと4人で行った。
弟くんは当時高校生であり、話に下ネタが多くて困ったのがつい昨日のように思い出される。
私のおみくじはいつも小吉か凶で、泰司はいつも中吉か大吉だった。

「お前早死にするんじゃね?wwwwwwwwwwww」

やめよう。思い出すと辛い。







637 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:40:49.06 ID:mTsCmgo0
年が明けて、2月も半ばを過ぎたある日の夕方、達也から電話がかかってきた。

達也「1さん・・・」
1 「どうしたの、突然?」
達也「僕クビになっちゃうんで・・・あの案件もうできません・・・引き継ぐ人もいません。
   どこか別の会社にお願いしないと、契約不履行になりますし・・・お客さんもアウトです」
1 「なんですって!?」

迂闊だった。修造は株式資本市場部長。部分的にではあるが、株式部の人間にも人事権を行使できる。
彼は私に直接手出しを出来なかったので、達也に照準を定めてきたのだった。

達也「短い間でしたけど・・・1さんとアゴさんと仕事ができて良かったです」
1 「待ちなさい!何諦めてんのよ!お客のために最後まで頑張りなさい!ちょっと今そこまで行くわ!」

私は投資銀行部門のドアを開けて、階段を走り降り、株式部があるデスクまで走る。







638 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:41:04.39 ID:mTsCmgo0
1 「達也いる!?」
新人「あ、1さんチョリーーッスwwwwwwww」
1 「達也はどこだって言ってんの!」
新人「あ、あっちです・・・」

達也のところまで行くと、デスク周りの荷物を片付けている。
デスクの上には封筒が。おそらく中身は解雇通告書だ。これはまずい。

1 「人事に呼び出されたのはいつ!?」
達也「さっきです」
1 「書類見せて!」

Your employment date shall be no later than this weekend...

(ひどい、、、こんなの見たこと無い)

達也の解雇条件は即日であり、退職金は数日分しか出ないと書いてあった。








639 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:41:18.94 ID:mTsCmgo0
1 「ちょっと待ってなさい!あなたは今まで作った全部のファイルを私に送って。
  Ccにアゴを入れておいてね!」
達也「どこに行くんですか?」
1 「性悪親父をとっちめにいくのよ!」

私は急いでデスクに戻って座席表から修造の携帯電話の番号を確認し、呼び出す。

~お客様のおかけになった電話は、電波の・・・~

「Shit!」

修造の秘書に電話をかける。

1 「修造は今どこに出てるの!?」
秘書「は、はい。丸の内のグラン・ノース・タワーです」
1 「3分後にロータリーに日本交通の車回して!大至急よ!」
秘書「はい、分かりました」






640 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:41:32.63 ID:mTsCmgo0
超特急で身だしなみを整え、エレベーターに飛び乗る。もちろん、靴は脱いでカバンの中だ。
タクシーの車内でアゴに電話する。

1 「もしもしアゴ!?かくかくしかじか」
アゴ「なんですと!?」
1 「だからこれから直談判よ!」
アゴ「バカ!お前、何を話すつもりだよ!何のカードも無いだろうが!」
1 「そんなのクビ締めてでも撤回させるのに決まってんでしょうが!」
アゴ「そんなことしたら相手の(ry」

アゴは頼りにならない。俺も一緒に行って一本背負いかましてやるくらい言ってくれるかと思ったのに。
目的地に着いた。タクシーにチケットを放って、ロータリーで仁王立ちする。
程無くして、修造が中から出てきた。








641 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:41:47.88 ID:mTsCmgo0
彼は私を見て一瞬驚いたように見えた。

1 「卑怯じゃないですか!彼は他部門の新人ですよ!?
   今こんな時期にクビになったら、どこにも行けないのに、あなたは何をやったか分かってるんですか!」
修造「何のことかね?」
1 「撤回してください。。。彼の解雇を!」
修造「ふむ・・・」
1 「早く!」
修造「言ったじゃないか、後悔するなよって」
1 「!」
修造「でもまあ、そうだな。君があの案件から手を引くなら、考えてやってもいい」







642 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:42:03.58 ID:mTsCmgo0
やられた。
達也に履歴書に書けるような経験を積ませようと思ってこんな隠密作戦に関わらせたのが仇になってしまった。

1 「しかしあれはGIGの案件で!」
修造「プロダクトはECM(株式資本市場部)だろう!なぜ私を通さない!」
1 「何を考えているんですか。。。あれが不履行になれば、倒産する企業だって出てくるんですよ!?
   人が不幸になるばかりか、弊社の評判だって落ちる。。。何もいいこと無いじゃないですか!」
修造「構うもんかね。どうせその頃私はいないんだから」
1 「そんな。。。」
修造「君、何か勘違いしてるんじゃないの?
   いつからお前は慈善事業家になったんだ?俺達は金貸し屋だし、株屋なんだよ。公務員でも無けりゃ牧師でもない。
   私がいなくなった後、くず会社がどうなろうか知ったこっちゃないね」
1 「。。。どうすればいいんですか?」
修造「言っただろう?案件から手を引けと。そしてメールを書け。『本案件はECMの管轄下に入ります』とね」






643 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:42:19.58 ID:mTsCmgo0
私は呆然としていた。横を修造が通り過ぎる。

「急げよ?解雇の取り消しは、オフィスを出たら、もう手遅れだ。もう時間が無いぞ?」

修造がタクシーに乗った後、私は急いでタクシーに乗って追いかけながら、ブラック・ベリーで、文面を作成する。

~Due to our business justification...~

修造に言われた通りに文章を書き、送信した。これで終わりか。
しかし達也に迷惑はかけられない。今回はしょうがない。また新しいストラクチャーを考え出せばいい。

私は意気消沈して、オフィスに戻った。
すると、ビルに設けられた会社の専用出口から、紙袋をさげてとぼとぼと出てくる青年がいる。達也だ。







644 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:42:39.22 ID:mTsCmgo0
「あんたなんで出てくるのよ!?」

手遅れだったのか?修造が約束を守らなかったのか?こいつが間抜けで出てきてしまったのか?
事実はその全てだった。

「いや、あの・・・とりあえず明日また書類を交付するから出社しろってことで・・・あ、ファイル送っておいたので宜しくお願いします」

だめだ、もう目が虚ろになってる。
話が違う。これは問い詰めなくては!
オフィスに駆け戻ると、修造の部屋に行き、ドアを閉める。
部屋の外面はセクハラ防止のためガラス張りなので、外からは我々がもめているのが丸見えだ。

1 「話が違うじゃないの。。。」
修造「は?何のことだ?」
1 「約束を破ったなって言ってるのよ!」







645 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:42:53.01 ID:mTsCmgo0
怒声とともに机を叩くが、修造は表情をぴくりとも変えない。さすがにこの業界で10年以上働いてきただけのことはある。

「君さあ、甘すぎだよ。僕だってこの業界長いんだよ?あんな風にこけにされて、そのまま引き下がると思う?」

つくづく自分の浅はかさが情けない。まさかここまでやってくるとは思わなかったのだ。

1 「これ以上、何をしろって言うんですか。。。」
修造「何、君の誠意を見せてくれればいいんだよ」
1 「誠意って。。。」
修造「今晩9時、リッツの4712で待っている。せいぜいめかし込んで来るんだな」
1 「。。。げすやろう」
修造「口の利き方に気をつけろ!さあどうするんだ?」

ここでひるめば、確実に達也のクビは飛ぶ。返事は1つしか有り得なかった。

1 「。。。10時にしてください、、、今から美容院を予約します。そのかわり!」
修造「なんだね?」
1 「今この場で人事を呼んで、達也のレターの破棄と、最低3年以上の勤務ギャランティをつけたオファー・レターを作成してください。
   今すぐにです!」






646 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:43:10.19 ID:mTsCmgo0
(うち、なんしよるんやろ。。。)

広尾の美容院で髪をセットし、赤坂にタクシーを走らせる。これからパーティですか?と聞かれたが、答える余裕は無かった。
ニューヨークで着て以来2年間クローゼットの住人だったドレスとアーム・ウォーマー。まさかこんな使いことをすることになるとは。

途中の六本木の人通りはまばらだった。景気が悪いからだろうか。最近は週末でも人の少なさが目立つ。
私の心の荒みっぷりを表しているようで、奇妙な親近感が沸く。
思えば、大学を卒業してから、何をするにもこの街で過ごした。他の街は知らない。広尾はまだ他所の街という気がする。

(うちがちょっと我慢すれば、全部丸く収まる。。。)

車はすぐに着いてしまった。もう少し時間が欲しかった
私はミッドタウンにすら一度も来た事が無かった。初めての来訪がこんな形になろうとは夢にも思わなかった。
43階に上がり、ロビーで名前を告げると案内された。

(絶対、デリヘル嬢か何かと思われとーよ)

なんだか泣きたくなってきた。







647 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:43:32.79 ID:mTsCmgo0
部屋に入ると、修造がきちんとしたスーツ姿で椅子に腰掛けて待っていた。

「来ないと思っていたが、ずいぶん派手な格好で来たもんだな。まあ飲めよ」

自分で言ったくせにと思う私をよそに、グラスにワインが注がれる。あれを飲んだら、もう後には引けないだろう。

一瞬の間に色々なことが頭をよぎる。いくら部下のクビを守るためとは言え、自分の体を売ってもいいものだろうか。
泰司ならきっとこう言っただろう。

「女の格が下がるようなことしてんじゃねーぞ」

私は床に三つ指をついて土下座をした。







648 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:43:48.17 ID:mTsCmgo0
修造「どういうつもりだね?」
1 「すみません、、、なんでもしますから、今日は私の土下座に免じて勘弁してください」
修造「は!君はどれほど偉くなったつもりなのかね?君の土下座にどれほどの価値があるんだね?
   思い上がるのもほどほどにしたまえ!」
1 「!」
修造「まあいい。なんでもすると言ったね?」
1 「、、、はい」
修造「では君、ここで辞表を書きたまえ。今すぐにだ!」
1 「、、、あなたは、あなたは恥ずかしくないのですか!
   そんなことをして、人の恨みを背負って何があなたに残るって言うんですか!?」
修造「君にそれが関係あるのかね?ごたごた言わずに書きたまえ」
1 「。。。私がここで社内のER(Emergency Reporting)にあなたのしたことを密告するという手もあるのですよ?」
修造「バカかね、君は?」
1 「どういうことです?」
修造「君の案件は、アゴが噛んでいるんだろう?法人関係情報の漏洩を金融庁に垂れ込めば、君は証券界にいられなくなる。
   かつての同僚に手心を加えるとは、君も甘いな」
1 「そんなことをすれば、弊社も、あなたの未来も危うくなるじゃないですか!?」
修造「だから何度も言っているだろう。構いやしないんだよ、そんなことは!さっさと辞表を書け!」







649 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:44:04.12 ID:mTsCmgo0
私はその場で、一身上の都合により職を辞するという文言を書いた。
自己都合退職は、会社都合退職と違って、様々な面で不利になる。
失業保険の給付、退職金、転職の際のレファレンス・チェック。その全てに、
「自己都合」の4文字が付きまとう。
私は泣きながら、自分の死刑執行文を作成し、二度、涙がこぼれたために書き直した。
それを三つ折りにして差し出すと、修造はおもむろにそれを内ポケットに収めた。

「ブラックベリーも今ここで預かっておく。IDカードもだ。アメックスのコーポレート・カードも出せ」

その場で私は、入社以来6年間お世話になってきたものを差し出し、
投資銀行員としての生活に別れを告げた。
修造は表情を変えずに、部屋を出て行き、私はしばし虚空を見つめた。

望んだ仕事では無かったが、採用されてから6年間、一生懸命に働き、色々なことを教えてもらった。
せめて最後は、みんなに「ありがとう」と伝えてから職場を去りたかった。
しかし、それも所詮、自分の信条を曲げてまでしたいことでもなかった。
そう思うと、自分はなかなかにしっかりした人のように思えた。

(泰ちゃん、私、一生懸命やったよね)

不思議と、悔しさよりも達成感が残った。






650 ◆RWwEbHEhig[]: 2009/02/27(金) 05:45:47.24 ID:mTsCmgo0
以上が、私がクビになるまでの顛末である。
会社のコンプライアンス部門には、事の一部始終を報告したが、
退職金の額が3か月分上乗せされただけだった。
それを見て、憤りよりも感心を覚えた。さすが私が勤めていた会社。手抜かりは無い。

さて、そんな話はどうでもいいだろう。これから手短に総括をしたいと思う。

時間をずらして投稿をしたことをまず謝りたい。一人ひっそりと、このスレの幕引きを行いたかったのだ。
しかし、私の心はとても晴れやかだ。
まだ私は、30にもなっていない若造なのだ。人生はまだ、半分も過ぎていない。

先日、ある映画を見た。老人で生まれた男が若返っていく、というフィッツジェラルド原作の映画だ。
あの映画のテーマがどういうものなのかは私は知らないが、
私には「人生とはかくも素晴らしい」というものに思えた。
老人で生まれた男は、人を愛し、素晴らしい人生を生きた。誰が彼の人生を笑えようか。
人間、どう生きようが、いつかは死ぬ。人は、その限られた時間を咲く徒花なのだ。
皆々様のお花も、精一杯に咲き乱れるがいいさ。
そう思えば、私のこの6年間も、その限られた時間のほんの一部に過ぎない。まだ花のつぼみは閉じているはずだ。

そのときそのときは、悲しいと思え、嬉しいと思えた事どもも、
死ぬ間際に色鮮やかに思い出せるかどうかは分からない。
また、今は忘れているようなことも、死ぬ間際に思い出していることもあるかもしれない。
ただ1つはっきりしているのは、いつかは「死ぬ間際」というタイミングがやってくるということだけ。
人生の最後に、「我かくありき」と思えれば、それでいい。他には何も望まない。
残りの人生も、喜び怒り、哀しみ楽しみながら、生きていきたいと思う。

最後まで、私の独り言に付き合ってくれてありがとう。パソコンの前のあなたに、幸多からんことを!


~あるvipperの思い出話~






652以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/27(金) 05:57:16.81 ID:5BH1u7.o
お疲れさまでした。






653以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/27(金) 05:59:43.46 ID:yuAnvkEo
お疲れ様






654以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/27(金) 06:10:03.57 ID:LcQf30co
おつかれさまでした






655以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/27(金) 07:19:44.37 ID:PJhJntwo
どうもありがとう






656以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/27(金) 07:27:46.19 ID:GRL.ykQo
>>1さんお疲れ様でした。

この先、>>1とみんなに光あれ






658以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/27(金) 08:08:14.95 ID:Sg3hx120
よく最後まで書いてくれたな
お疲れさん、そしてありがとう

God Bless You






659以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/27(金) 08:20:40.66 ID:QsLM.Yk0
よくやった。自慢のおなごだ。いつでも助けるぞ。ここへこい






660以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/27(金) 08:30:55.65 ID:v4btfWoo
>>1乙!仕事探しがんがれ!






651以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]: 2009/02/27(金) 05:54:41.21 ID:dK3KnCko
主は甘ちゃんだな、ほんとに甘ちゃんのヒロイストだ。
失ったものが多すぎる。

しかし人間は代わりになる物、新しい価値のある物を手にいれる事も出来る。

これから先の主がまったく新しい世界に出会える事を願っている。






661以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[]:2009/02/27(金) 08:32:43.67 ID:BRmileI0
1さんお疲れ様でした。

結局1さんは、大学では教官に反発して進路を断たれ、
会社では権力者に逆らい仕事を失い・・・
その真っ直ぐな性格は人として美徳で素晴らしいけれども、
大人としては成長できてないみたいに思いました。

再就職活動しているようだけど、そんな不器用で素敵な人には
金融や保険・証券よりも、メーカーや大手商社のような業界の方が
向いているんじゃないかな。
そういう業界は、割と理想論や甘い正義感が通用するしね。

お節介かつ駄文失礼






673以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/27(金) 11:14:28.13 ID:L8rTSb60
>>1
おつかれ!よく嫌なことも最後まで書ききったね!
人として大切なもの。
おそらく>>1がもっとも大切にしてたものを守ることが出来たんだよね?
これからの活躍をvipの片隅から応援してるよ!

お願いがある!
もし、またどの分野の仕事でもいい。少しでも形になったら後日談として
ガンバった>>1の話を聞かせて欲しい。期限は3年以内ね!( ´∀`)ノ






674以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/27(金) 11:36:23.10 ID:NpNK2YY0
>>1さんおつかれ様
貴方が考えている以上に励まされた人が多かったと思います
20代で貴方のような経験や文章を書ける人をみると人それぞれの
能力があるにせよ、自分もまだやれる!と勇気づけられたよ









687以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]:2009/02/27(金) 15:37:42.90 ID:ko7xmgDO
お疲れさまでした
ばか正直なくらいの真っすぐさが素敵です
このスレに会えて良かった
ありがとう






688以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]: 2009/02/27(金) 15:47:29.15 ID:YfpEGq20
>>1お疲れ様でした
クビではないのが痛いな・・・
けど人望はあるようだし、米国でも働いてるから
時間を空けずにコンタクトをとって来年度大学院留学したらどうだ?
有能な人からの推薦状を頼むのくらいはたやすいだろう。

資産も頭脳も学歴もあるんだから、HarvardのMBAいけるかもな。
今年度からかなり倍率上がるだろうが・・・
それが>>1にとって一番良い気がする






691以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/27 (金) 19:04:51.25 ID:3s02AUDO
>>1
最後まで書いてくれてありがとう
辛くても自分を曲げなかった>>1えらい
結果がすべての業界かもしれないけど、
その過程を見てたまわりのみんなは
>>1の人間性をちゃんとわかってるよ
会社の人たちも、もちろんこのスレのみんなも
それと、修造もね


このスレを最後まで読んでよかった
>>1がこんなに全力で生きてきたのに
私はやりたいことに色々理由をこじつけて
ぬるま湯に浸かったままのんべんだらりと働いてるのが恥ずかしくなった
もし>>1ぐらい頑張ったって胸を張って言えることができたら
その時はスレでも立ててみようかな

ぬるま湯からあがったらきっと寒いけど
あがる決心をさせてくれた>>1本当にありがとう






678以下、VIP にかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2009/02/27(金) 12:25:49.61 ID:XxsniKEo
>>1本当にお疲れ様です
途中読んでて心が凍りそうだった
これを実際に体験した>>1の心中を思うだけで・・・
色々辛い経験しても何とかぎりぎり乗り越えた>>1に最大の敬意を送ります
心のもやもやを吐き出して少しはすっきりしたと思う
ちなみに>>1のキャリアなら普通の会社の財務経理とか経営企画とか
いくらでも有ると思う
いっそ独立起業でも面白いかも
良かったらたまにはここに来て雑談でもしてくれると嬉しいんだぜ!!

では>>1の幸せを祈って

                          ,. -‐==、、
             ,. ===、、 o   ○o.  i       :::ト、    乾杯!!
           _,/      `ヾ´´`ヽ、 ゚ .l       :::ト、\
           //      .::::/  :::::!===l      :::|ス. ',
             /./       .::::/   ::::l    |  __ ..... _::::|} ヽ l-、
.           ,ィク ,'..__    .::::/    ::::l    :l '´    `)'`ヽ ヾ;\
       /::{゙ ヽ、 ``丶、;/‐‐- 、::::l     `'::┬‐--<_   } ./;:::::\
     /::::::::!   ,>---‐'゙ー- ...__)イ ,. -‐‐-、ト、   |l::ヽ /;';';';';::::\
.     /|::::::;';';'\/} (ヽ、  _/|   (´    _,.ィ!::ヽ.  ヾー'´;';';';';';';';';:: /ヽ、
   / ,ノ:::;';';';';';';';';'/  /ヽ、二ニ-イ   ヾT ¨´ ,/;';';::`、. \';';';';';';';';';';〈::...
. /  i::;';';';';';';';';';'/ ,イ.:::::::::::::::::: !   ヽ`ー‐'";';';';';';';ヽ   \';';';';';';';';';!:::::