共産党がようやく自民党の援助をやめた
2007月10月03日

ここのところ私が注目しているのは、共産党が次期衆院選で「得票率8%以下のところは候補者をたてない」と決定したこと。今回発表された新基準を適用すると、これまで全国300小選挙区のすべてに候補者を立てていたのが、ざっと計算して130前後の選挙区にしか候補者をたてないことになる。

これは私の推測だが、共産党がこの決定を下すことができたのは、今年7月に宮本顕治氏が亡くなったからだと思う。宮本氏が亡くなるまでは、候補者数を削減することは喉から言葉が出掛かっても口にすることはできなかっただろう。

だから、私はこの決定を知ったとき「なぜさっさとやらなかったのか」と感じたものだ。

私はかねてから共産党が全選挙区に候補者をたてることに疑問を持っていて、以前、この問題で赤旗編集部とぶつかったこともある。いままでは選挙のたびに共産党が野党票を分裂させ、結果として共産党は自民党候補者の手助けをしていた。今年2月に行われた愛知県知事選でも、共産党が候補者をたてなければ民主党が勝てたはずだ(※1)。皮肉ではあるが、これでは自民党は共産党に足を向けて寝ることができない。

「民主党も改憲派だから選挙協力ができない」という理屈はわかるが、その理屈を通すたびに自民党が勝っていく。「あなた方共産党は自民と民主を比較したとき、自民の方がいいのか」と言いたくもなるのだ。

さらに、ただでさえ党員は減り、収入が減少しているのに、国政選挙を終えるたびに毎回数億円の供託金が没収され、なおかつ自民党の勝ちをアシストしているという状況は、党としての存在意義が疑われる。

もちろん、候補者数を絞ることは、かつての社会党のように党が崩壊してしまうリスクはある。
だが、北大教授の山口二郎さんも言っているように、共産党は、やりようによっては自民党に対する公明党の役割ができるし、二大政党制のなかでも少数政党なりの存在感を示せるはず。実際、共産党の今回の決定は自民党にとって脅威以外のなにものでもない。200近い選挙区で共産党候補がいなくなると、小さな選挙区でも約5,000票ある共産票は自民党と公明党に流れることはないからだ。

そこで、各地域の共産党候補は民主党の候補者と政策協定をやればいい。共産党が掲げる“改憲反対”のために、民主党候補に「改憲を口にするな、改憲を言うなら候補者をたてるぞ」と言えばいい。そうなると、民主党は改憲を言いにくくなる。

これまで共産党員は、選挙のたびにお祭り騒ぎのように当選できない候補者を応援していたが、今回の決定でようやく政策にも影響力を持てようになるのだ。


※1 
2007年2月の愛知県知事選の結果は以下の通り。単純計算では、共産党票の半分が民主・社民推薦の石田芳弘氏に入れば、野党候補が当選できた。
1,424,761 神田真秋(自民、公明推薦) 当選
1,355,713 石田芳弘(民主、社民推薦)
160,827 阿部精六(共産推薦)


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