筆者も40年以上をソ連・ロシアとのおつきあいの中で過ごしてきたが、自分が日本人であることに起因する嫌な思いには一度も遭遇したことがない。
2000年代の日本食ブームの頃は、日本というブランドは極めて日常的に使いこなされ、またそれなりのステータスを感じる言葉であった。
モスクワの街でタクシーに乗ると、ドライバーから国籍を聞かれることはよくある。
その時、「日本」と答えたが最後、日本車の優秀さから始まり、最近購入したテレビから、奥さんの愛用する炊飯器まで、日本製品を褒めちぎられて、多めにチップをはずんでしまったという駐在員も多いのではないだろうか。
もっとも、最近日本大使館前で繰り広げられるロシア領土割譲阻止のデモを見ると、残念なことに、そんな時代はひと昔前になってしまったのかと感じるが・・・。
しかし、こんなソ連・ロシアにもどうしても克服できない意識が残っている。
それが黒人への違和感だ。差別とか偏見とかいう言葉は実態を表していないと思うので、改めて社会に残る違和感と表現しよう。
ソ連時代、モスクワの繁華街アルバート通りには、我々日本人が「地球座」と呼ぶ、モスクワ最大のレストランシアターがあった。
ここでは毎晩、食事とショーが楽しめて、娯楽の少ないソ連における貴重な憩いの場となっていた。
そこでは、ロシアの民族衣装を着飾った美人ダンサーによるロシア舞踊ショーから、今では見ることもないジプシーによる歌と踊りのショーなど、次々に珍しい出し物が繰り出された。