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【社会】

障害者の逸失利益認める、東京地裁判決 19歳までの健常者と同基準2200万円

知的障害のあった息子の逸失利益が認められ、「今後のためにもよかった」と話す松沢正美さん(右)と妻の敬子さん=22日、東京・霞が関の司法記者クラブで

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 二〇一五年に東京都八王子市の福祉施設から行方不明となり遺体で見つかった松沢和真さん=当時(15)=の両親が、原因は安全管理を怠った施設側にあるとして施設を運営する社会福祉法人藤倉学園(東京)に約一億一千四百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は二十二日、知的障害のあった松沢さんが将来得たはずの収入「逸失利益」約二千二百万円を含む計約五千二百万円の支払いを施設側に命じた。 (蜘手美鶴)=社説<5>面

 判決は、健常者の男女の十九歳までの平均賃金を根拠に逸失利益を算出。両親が求めた男性の全年齢の平均賃金ではなかったため、請求額の約七千四百万円には及ばなかったが、弁護団は「障害者の逸失利益が平均賃金の十割で算出されたのは初めてとみられ、画期的な判決だ」と評価した。

 施設側は行方不明になったことへの責任は認めていたが、知的障害を理由に逸失利益は「ゼロ」としていた。

 田中秀幸裁判長は、健常者と同様の逸失利益の算出を認めた点について「(松沢さんは)特定の分野や範囲に限っては、高い集中力をもって健常者よりも優れた能力を発揮する可能性があり、一般就労を前提とした平均賃金を得る蓋然(がいぜん)性はあった」と説明。

 一方で、「(障害者と健常者の間に)現存する就労格差や賃金格差は無視できない」として、男性の全年齢の平均賃金は基準としなかった。

 判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した父の正美さん(62)は「私たちの思いをくみ取ってくれた判決」と評価。母敬子さんは「今後裁判をする同じ境遇の人がいるなら、少しは道を切り開けたのかなと思う」と話した。弁護団の清水建夫弁護士は「和真君の可能性を高く評価してくれ、非常に温かみのある判決だ」と語った。

 藤倉学園の橋本進常務理事は「松沢和真さんのご冥福をお祈りするばかりです」とコメントを発表した。

 

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