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【社会】

同性パートナー在留許可 日本人と同居、台湾籍男性に

日本人パートナー(手前)と会見する台湾籍の男性(同2人目)=22日、東京・霞が関で

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 日本人の同性パートナーと二十年以上連れ添った後、不法滞在で国外退去処分を受けた台湾籍の男性=千葉市在住=について、東京入国管理局は十五日付で処分を取り消し、在留特別許可を出した。男性側が二十二日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、明らかにした。 (奥野斐)=「法的保護の契機に」

 日本人と外国人の異性カップルに対し、事実上の婚姻関係にあるとして在留特別許可が出された例はあるが、法的に結婚できない同性カップルには異例。弁護団は「知る限りでは初めて」と評価している。

 弁護団によると、台湾籍の男性は四十代で、五十代の日本人パートナーと一九九四年から国内で同居。三カ月後に短期滞在ビザが切れ、不法滞在状態に陥った。二〇一六年に逮捕され、国外退去処分となった。

 男性は一七年三月、国に処分の取り消しを求めて東京地裁に提訴。異性間なら在留特別許可が出るケースだとして「性的指向による差別」と訴えた。

 地裁が国側に処分の見直しを打診したところ、国側は二月下旬、在留特別許可を出す意向を示したという。

 男性は会見で「パートナーは私にとって大切な家族。これからも支え合って生きていきたい」と喜んだ。

 今回の在留特別許可について、法務省入国管理局は「在留状況や生活態度などを総合的に勘案したのであり、日本人男性とパートナー関係にあることを特に重視して判断したのではない」とコメントした。

◆「同性パートナー保護の契機に」

 同性カップルの外国人にも、国が在留特別許可を出したことが明らかになった。同性カップルにも家族や夫婦と同等の権利を認める流れが、世界的に強まっている。国外退去処分が撤回された台湾籍の男性側は22日、「日本でも同性パートナーが法的に保護される契機になるといい」と期待した。 (奥野斐)

 「私たちの人生や未来は、色に例えるとグレーだと思っていた。これからは少しでも明るい色になるよう、二人で前向きな気持ちと感謝を忘れずに生きていきたい」。二十年以上連れ添った日本人の男性パートナーは会見に同席し、かみしめるように話した。

 台湾籍の男性は一九九二年、留学ビザで来日。その後、短期滞在ビザでの出入国を重ね、九四年から日本人パートナーと同居を始めた。ビザが切れて不法滞在になった後の九五年、エイズウイルス(HIV)感染が判明。パートナーが仕事を辞め抑うつ的になったときもあったが、互いに支え合ってきた。

 近年、東京都渋谷区などを皮切りに同性カップルを公的に承認する「パートナーシップ制度」が広がり、東京都などLGBT(性的少数者)の差別を禁じる条例を制定する自治体も増えている。同性婚を認める国は欧米を中心に二十六カ国・地域あり、先進七カ国(G7)で法的に婚姻やパートナーシップを認めていない国は日本だけだ。

 台湾籍の男性側は、国外退去処分の取り消しを求める訴訟を起こしており、裁判所が国側に処分の見直しを打診したという。早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「裁判所が見直しを打診した背景には、LGBTを差別してはいけないとの考えが広がっていることがあるはず」と指摘する。

 ただ、法務省は在留を認めた理由について「日本人男性とパートナー関係にあることを特に重視して判断したものではない」とコメントしており、今後、同性間で同様の在留が認められるかは不透明な面も残る。

 台湾籍の男性は「法的に結婚できていれば、自分たちの人生も変わっていたかもしれない。同性婚の実現のために私も役立ちたい」と望んだ。

 

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