平成の「先」の時代を考える

「元号」が21世紀まで続く3つの理由 「元号」「日本年号史大事典」から(1)

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★日本と中国の共通使用年号★(日本年号史大事典から)

・中国が先、日本が後の場合(26)

 大宝 神亀 天平 大同 仁寿 天安 貞観 承平 天禄 貞元 天福 乾元 

 元徳 建武 正平 天授 永和 至徳  文明 弘治 天正 元和 天和 正徳 

 宝暦 天保

・日本が先、中国が後の場合(6)

 天慶 天暦 天徳 永暦 承安 嘉慶 

「帯として時代を理解するのに便利」

 さらに大きな理由は、元号が利用者である国民にとって、使い勝手が良かったからだろう。幕末・維新のリーダーのひとりである岩倉具視は、元号を「一世一元」に定めた。頻繁に元号が変わることで、一般の日常生活に混乱が生じるのを防いだ形だ。「大正」「昭和」を定めた際には、国民が使いやすいよう字画が簡明平易なことも考慮した。それでも、昭和を選んだ際の枢密院議長は「昭」の字はなじみが薄いのではないかと心配したという。

 1950年(昭和25年)に参議院の有力議員が西暦への移行を意図して「元号に関する調査」を進めたとき、大学教授らから元号廃止に反対の声が上がった。その理由のひとつが、歴史・文化と緊密に結合しており、時代呼称としても便利なこと、だった。所教授は「時代を『点』で示すには西暦が便利だろう。しかし『帯』として理解するには、元号が優れている」と指摘する。確かに政治・経済から社会・生活・芸能に至るまで、おびただしい「平成三十年史」が刊行されている現状からも、一目瞭然だ。

 新元号が何になるのかは、誰でも少しは気になるところだ。これまでの元号は、古代中国の漢籍の名文から選択されてきた。これまでの研究によれば、多く引用されてきたのは、「書経」35回、「周易」27回、「後漢書」24回、「漢書」21回などだ。「漢の時代ころまでにできた経書類と史書類が圧倒的に多い」と所教授。

 日本と中国で比較した場合、共通して20回以上使われてきたのは、元、永、天の3文字。日本のみで使われたのが寛(15回)、保(同)、久(9回)、享(8回)などに対し、中国のみの文字は煕(13回)、始(11回)、初(9回)、開(同)、隆(8回)などがある。所教授は「中国では勇ましい積極果敢な意志を表す文字が好まれるのに対して、日本では穏やかな治政の永続和合を示す文字が好まれてきた」とみている。

(松本治人)

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