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2006-03-01
■[K子][押川剛][せ] セックス依存症だった私 
- 作者: K子,押川剛
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/09/29
- メディア: 単行本
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この本が発売された頃に平積みで見かけたのですが、さすがにこのタイトルでは手に取るのが恥かしかったので図書館で借りて読むことにしました。(図書館で借りても恥かしいですけど。) マイケル・ダグラスもそうだった*1という「セックス依存症」とは如何なるものかと興味深々で読み始めたのですが、「セックス依存症」に関して書かれている本ではなく、セックス依存症でもある女の子の話が載っている本だったのでした。キャッチーなタイトルで客引きしているのです。全くマイケル・ダグラスも吃驚だよ……。
それで感想はと言うと、本の内容の面白さとは全く別の意味で物凄く面白かったです。
まず第一に面白かったのが、この本の構成者である押川さんと自分の過去について赤裸々に語っているK子さんとの間の温度差の違いでした。もうこの違いは次元が違うぐらいのレベルに達してます。「病識のない精神疾患患者を対面説得により精神医療につなげる日本初の『精神障害者移送サービス』」を行い、移送サービスの他に「私塾『本気塾』の塾長として、薬物依存や家庭内暴力、非行等の問題を抱えた子供が社会復帰するまでの更正サポート」を行っているこの本の構成者である押川さん。対するテクノが大好きで盗み万引きは当たり前でドラッグをキメてセックスするのが最高に楽しいと熱く楽しそうに語るK子。最初の押川さんの重々しい序文で『ああ、これは無軌道な若者が押川さんによって更正する重い告白が始まるんだな』と心のチャンネルをそちらの方に合わせたのですが、実際に始まった告白は悪気のない無自覚なサブカル系女子の昔語りなので本当に面食らいました。いや、本当に自分を客観視できていない雨宮処凛みたいな文章なんですよ。本人が「現在―私の本音―」として語っていますが、更正したいと言ったことも嘘だし、その場を誤魔化すための嘘をいうことを悪いと全く思っていない彼女と、その彼女に対してやや投げやりになりつつも面倒見ることから逃げられない押川さん。普段は交わらない2つの線が何故か交わってしまい、でも別にそれが幸福な出会いにもならず、ただ今は便宜上交わっているだけという結果に終わっているのでした。あ、でもこれ彼女の実名で出版しなかったのは押川さんの英断だと思います。これ実名で出してたら彼女はかなり増長しちゃってたと私も思うもん。
第二に面白かったのが、このK子さんが大好きで教祖と崇めていたテクノのDJが石野卓球だったことでした。いや名前伏せられてるけど一発で分かるよ…。テクノが好きでクラブ通いをしてラブパレードに行って……というくだりを読んでいた時からもう『もしかして卓球のファンかなー』とか思っていたのですが、まさかそうだとは思っても見なかったので目が点になりました。ドラッグ決め決めだの弟子のDJのT(田中フミヤ?)とヤったとか教祖に誘われたけど断った(後で後悔してしたいと言いに行ったけど断られた)とか赤裸々に語りまくり。その話が余りに面白かったのでセックス依存症の話なんて全部吹っ飛んで「あれー、これって宝島出版の本かい?」と思ったほどでした。(ちなみにこの本は新潮社から出てます) 本当にこんな本じゃなくて、もっと真面目にセックスのことを語っている本だと思っていたので吃驚なんですよ。本文の下に載っているK子の写真も更正する気ゼロに見えるし、ぼかしてあるけど卓球にしか見えない写真に「教祖との対面を果たしK子至福の時。右が教祖」なんてコメントがついてるのなんて『これはもしかして物凄く高度なギャグなんだろうか?』と真剣に悩みたくなったし。
この押川さんが昭和43年生まれでK子が昭和53年、それで読んだ私が昭和48年とちょうど二人の真ん中に位置する世代だったのもこの本を物凄く面白く思った理由のひとつなのかも。
■[日記] 
- 作者: ドニーイェン,谷垣健治,Yen Donnie,浦川とめ
- 出版社/メーカー: キネマ旬報社
- 発売日: 2005/10/01
- メディア: 単行本
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うわー、欲しい欲しい欲しい!
*1:訂正:マイケル・ダグラスはセックス依存症じゃなくてセックス中毒でした。