身柄拘束後の処置に問題があったとして国の対応の違法性を指摘した妥当な判決だ。

 新基地建設に反対する抗議活動を巡り、米軍と海上保安庁に不当に拘束・逮捕されたとして、芥川賞作家の目取真俊さんが国に損害賠償を求めた訴訟で、那覇地裁は逮捕を違法と認めた。

 海保側が米軍から身柄を引き受けるのが遅れたことは合理的理由がない、と国に計8万円の支払いを命じた。

 2016年4月1日、目取真さんは仲間数人とともにキャンプ・シュワブ周辺海域にカヌーでこぎ出し、臨時制限区域に入ったとして、米軍側に身柄を拘束された。

 ウエットスーツのまま、弁護士との接見も許されず、銃を持った米兵監視の下での拘束は約8時間に及んだ。

 その後、海上保安官に引き渡され、日米地位協定に伴う刑事特別法(刑特法)違反容疑で緊急逮捕された。

 日米合意では、米軍に裁判権のない人を米側が拘束した場合、直ちに日本側に引き渡すことになっている。米軍は今回、拘束から3分後に海保に通知した。

 海保側は権限の確認などに時間を要したと主張するが、通常、引き渡しまでにかかる時間は2時間程度とされる。 判決は、緊急逮捕について「それに先立つ身柄の引き受けも直ちに行われていることが必要不可欠」と指摘する。

 日本の捜査機関に、身柄を引き受ける「高度の注意義務」があるとしたのは、拘束を最小限にとどめるべきだという観点に立ったもので評価できる。

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 ただ、那覇地裁は米軍による身柄拘束については「違法行為があったとは認められない」と訴えを退けた。

 刑特法に基づいて裁判所が令状なしで緊急逮捕することは、令状主義を規定する憲法33条との関連で以前から問題視されている。

 だが判決は「現行犯的身柄拘束に当たる」として刑特法の違憲性を認めなかった。

 目取真さんが米軍警備員に拘束された臨時制限区域は、反対派住民を閉め出そうと14年に大幅に拡大された。国会の承認も関係自治体の意見も聞かず、日米合同委員会という「密室」で、立ち入り禁止区域が広げられたのだ。

 拘束時、警備員は目取真さんを本名で呼んだという。

 キャンプ・シュワブゲート前で抗議活動を引っ張る沖縄平和運動センター議長の山城博治さんが拘束された時もそうだが、反対派の中心人物を「狙い撃ち」した疑いが消えない。

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 十分な環境保全策が講じられているかどうかを確かめるため県は以前、臨時制限区域への立ち入りを求めたことがある。

 しかし要請は半年余りも認められず、現況調査に支障が生じた。

 目取真さんは、こういう異常なことが起きる「沖縄の置かれている状況をもっと考えてほしい」と訴える。

 憲法で保障された住民の権利や地方自治法に基づく自治権の行使が大きな制約を受けている沖縄の現実は、理不尽極まりない。