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【社会】

親の体罰禁止条例成立へ 都議会委可決 国に先立ち施行

 東京都議会厚生委員会は二十日、保護者による体罰を禁止する都の子ども虐待防止条例案を全会一致で可決した。二十八日の本会議で成立すれば、四月一日に施行される。政府は十九日に同じ趣旨の児童虐待防止法改正案などを閣議決定し、来年四月一日の施行を目指しており、都の条例が先行する形になる。

 条例案では保護者に対し、しつけの際に子どもに肉体的、精神的な苦痛を与える行為を禁止する。罰則はなく、体罰の具体例は示していない。民法で親権者に子どもを戒める懲戒権が認められているため、禁じる体罰を「子どもの利益に反するもの」とした。

 政府の改正法案では、懲戒権は改正法の施行後二年をめどに検討し必要な措置を取る方針。一方、都の条例案には、妊婦や乳幼児が健康診断を受けるよう促す規定を設けている。条例案は、昨年三月に目黒区で女児が虐待死した事件を受けて検討。保護者の体罰禁止を盛り込んだ条例が成立すれば都道府県で初めてという。

◆「徹底した啓発必要」

 体罰によらない子育てを進めるため、条例案では都の責務として「広報その他の啓発活動を行う」ことを求めている。虐待を未然に防ぐには、保護者の体罰への意識を変える啓発が欠かせないが、具体的な方策は都に委ねている。虐待問題に取り組む団体は、徹底した啓発を求めている。

 公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」によると、子どものおしりをたたく保護者の割合(二〇〇七年)は、法律で体罰を禁止せず啓発のみのフランスとスペインは各50%超。法律で体罰を禁止したドイツとオーストリアは各17%で、法律で禁止して啓発にも取り組んだスウェーデンは4%にとどまった。

 スウェーデンでは、体罰によらない子育てのアドバイスを牛乳パックに印刷。家庭内で目につくよう啓発を工夫したという。同法人の岩井さくらさんは「体罰禁止を法律で規定することで効果はあるが、意識を変えるためには徹底して啓発に取り組む必要がある」と指摘する。

 同法人が一七年に行った調査では、日本での体罰容認派は50%を超えている。啓発方法について、小池百合子知事は二月末の都議会で「早急に検討する」と述べるにとどまった。 (石原真樹)

 

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