漆黒の英雄譚 作:焼きプリンにキャラメル水
<< 前の話 次の話 >>
モモンがミスリル級冒険者たちと依頼を受けて旅立った翌日の明朝のことであった。
エ・ランテル 正門前
門番であるセロハン=ガムテプは不審な人物たちを発見した。
「おい。そこのお前!」
そう言って男を止める。
ボサボサの青い髪、放置された髭。この辺りでは非常に珍しい武器を持つ男。
「何だ?」男は衛兵を睨みつける。
「お前、何者だ!?」衛兵は怯えながらも尋ねる。
「俺は・・・・いや名乗る程の男じゃない」
「いいから名乗れ!」
「はぁ・・・俺のことはアングとでも呼んでくれ」
(
「では聞くぞ。アング!お前の後ろにいる二人の女は何だ?お前が抱えてる血塗れの女は何だ?」
「安心しろ。こいつは血塗れなだけで傷はほとんど無い」
「そんなの信じられるか!?お前がやったのか?」
「違う・・・俺はこいつらを拾っただけだ」
「そんなの信じられるか?」
「信じないか・・・・それなら」
そう言ってアングは自分の腰にかけられた武器に手を掛けた。
それを抜こうとした瞬間、アングの表情が崩れていく。
「あっ・・・・あ・・・」
まるで武器の抜き方を忘れたかの様子であり身体が揺れ始めた。それを見た衛兵の一人が声を出す。
「捕らえろ!」
その一言で男や女たちは捕らわれた。彼が抱えていた女は首からぶら下げていたものから身元が判明した。鉄級冒険者であるブリタだ。
ブリタの身元が判明したことで『死を撒く剣団』に関して何かがあったことが判明した。
だがアングなる男や女二人が何も言わないことで捜査は難航していた。
ブリタの身元が判明したのはモモンたちミスリル級冒険者が帰ってきた翌日であった。
____________________________________
モモンたちが正式にアダマンタイト級に昇格するための授与式が終わるとモモンはパナソレイとアインザックから頼まれたことがある。
「モモン君。後でいいからアングなる男に会ってくれないか?」
モモンは二人から聞いた話で色々なことが聞いた
「そのアングなる男がどうかしたんですか?」
「鉄級冒険者のブリタ、謎の女二人、そしてアングという男・・・・全てを繋ぐのは『死を撒く剣団』という盗賊だ。ブリタは『死を撒く剣団』をパーティで討伐しに行って全滅したのだろう。今は組合で眠っており未だに意識が戻らない。女二人は衛兵に対する『異常な怯え』から話が出来ない。唯一会話できそうなのはアングなる男だけだ」
「このアングという男に会って何があったか聞いて欲しい」
「でも何故私が?」
「私たちの予想が正しければこのアングと呼ばれる男はブレイン=アングラウスだ」
「成程・・・王国戦士長と唯一対等に張り合った男ですか・・」
「そういうことだ。この男と会話できそうなのは君くらいでね」
「分かりました。早速会ってみましょう」
そう言うとモモンはその場を後にした。