復刻ブームが依然として止まないファッション業界。80年代、90年代のスニーカーが次々と掘り起こされては世に送り出され、“旧ロゴ”と銘打たれたロゴを載せたTシャツやバッグが完売騒ぎになったりしている。ファッションの周期がひと回りし、数十年前のデザインが今また新鮮に感じられるようになったことも一因かもしれないが、やはりリアルタイムで憧れながらも当時それらを手に入れられなかった大人たちの懐古的な感情も大きく影響していることだろう。そこに多少の現代的なアップデートこそあれど、当時そのままのロゴやデザイン、もしかしたらあえての前時代的な機能に心躍り、物欲を刺激されるのである。
だが、腕時計においてはその限りではない。腕時計は時間を確認するためのツールであり、1秒のさらに向こうにある精度を突き詰めてきた背景がある以上、過去の製品をそのままリバイバルすることは実は難しい。ことムーブメントと素材の成長は日進月歩であり、そこを無視してモノ作りを行っても現代のユーザーのニーズを満たせない場合が多いのだ。その点、今回「シチズン」が発表した限定モデルは、実に理にかなっている。デザインは1967年の名品、ケースと機構は実にモダン。「シチズン」の最高峰ライン『ザ・シチズン』の「年差エコ・ドライブ チタニウム 限定モデル」は、復刻好きならチェックしておいて損はない。
スイスの時計業界に大打撃を与えた、日本ブランドによるクォーツショックの前夜である1967年。日本国内ではスイスブランドに続けと機械式ムーブメントの精度向上に全力を注がれていたタイミングであり、当時の機械式腕時計として高精度とされた今作のデザインベースとされる「シチズン クロノマスター」もそんな時代のなかで生まれた。文字盤下部と裏蓋には高精度を表すイーグルマークをレイアウトし、ケースなど外装部品の加工精度にもこだわり抜いた同モデルは、当時の物を識る大人たちに広く受け入れられたものである。この「シチズン クロノマスター」こそが確かに当時の最先端を示す、1つの答えだった。
それから約50年を経た2018年。「シチズン」はその間に、多くの“世界初”となる技術を獲得し、成長を続けてきた。加工が難しくも、軽量性・耐久性においてステンレススチールを遙かにしのぐ「スーパーチタニウム」。室内のわずかな光でも発電し、年差±5秒という驚異の高精度を実現した「光発電エコ・ドライブ」ムーブメント。それらの最先端技術を載せて「シチズン クロノマスター」が長い眠りから復活を遂げると考えると、胸が熱くならないだろうか。
なお、今作は「シチズン」のなかの最高峰とされるブランド『ザ・シチズン』からリリースされる。1995年のブランド発足当時から変わらない同ブランドのテーマは、「正確な時刻を刻み続けること。時刻を見やすく伝えること。その使命を長く維持すること」。古き良き時代のデザインを踏襲しつつも、ただの復刻にとどまらず“正確な時を刻み続けること”を追求する真摯な姿勢は、この限定モデルにおいても確かに息づいている。
腕時計・アクセサリー
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ニュース
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腕時計・アクセサリー
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黒野 一刻
2018.08.03
腕時計・アクセサリー
国産時計の雄『セイコー』が1960年に生み出したハイエンドコレクションが『グランドセイコー』です。スイス時計を超越する高精度のジャパンブランドに迫ります。
黒野 一刻
2018.04.05
腕時計・アクセサリー
腕時計の本場といえば、スイス。それは否定できない事実です。しかし、実用性では日本が世界一。その理由と、日本が誇る腕時計ブランドを語り尽くします。
黒野 一刻
2017.01.10