| 数多くのシリーズが出版された観察絵本キンダーブックから「マンシウ」です。 身近なものを描いたテーマの他にも「新しい支那」といった時節に合わせたものも出版しています。 キンダーブック(キンダーはドイツ語の子供)は、戦前から戦後も多くのシリーズ物を手がけています。 が、どの程度、一般に読まれていたか、につきましてはよくわかりません。 と申しますのも、一般に本は高価なものであったため、児童書を幼児に本を買い与えるという家は、それなりに裕福な家庭でないとなかなか出来ないことでした。 コンビニエンスストアにまで本が溢れている今日では判りにくいことではありますが、例えば戦前の漫画で大いに売れた「のらくろ」も単行本は1円という価格でした。これは当時としては高価で子供の小遣いでは買える価格ではありませんでした(東京で映画3本だてが50銭の頃)。つまり人気のあった、広く読まれていたとされる「のらくろ」でさえ、高価な部類だったわけです。 さらに当時の日本の地方都市では「のらくろ」を売っている店そのものが少なかったと考えられます。実際、書店としても高くて売れるかどうかわからない「のらくろ」を入荷したかどうかもわかりません。実は、当時のことをうかがう機会があった際のお話の中で、子供の時に「のらくろ」を店頭で見たこともない、買ってもらったことも無いという方は珍しくありません。 一方でキンダーブックですが、これは大判で、また全ページカラー刷りです。しかし定価は35銭で、比較的、買い求め安かったかもしれません(東京浅草で、カツ丼が一杯35銭、お稲荷が2個5銭~10銭)。地方では前述しました通り本屋も少ないことからなんともいえませんが、都市部であれば比較的容易に入手できたものと考えます。 キンダーブックは今日においても児童書を多く手がけています。親子三代で幼児期にキンダーブックを楽しんだご家庭も少なくないでしょう。 さて今回、運よく戦前のキンダーブックを入手でき、こちらでご紹介できることとなりました。 ちなみに元の本には濡れによる汚損や腐食があり、発刊当時の発色は残っていませんでした。この度の掲載にあたり、可能な限りの修復を行っておりますが、お見苦しい点につきましては、何卒、ご容赦のほど、宜しくお願いいたします。 | | | |
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| 表紙です。 新しく建国した満州は、可愛らしい少女で描かれています。 | | | |
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| 『汽車で鴨緑江の鉄橋を渡って 船で大連へ 飛行機で大連へ 汽車、船、飛行機、どれでもいけます。』 右上の円内は満州と朝鮮半島の国境 鴨緑江の鉄橋が描かれています。左の円内は大連埠頭の様ですが、実際の大連埠頭は当満州写真館の大連港のページでも紹介しましたとおりビルと一体になった桟橋があり、岸壁に沿って乗客が歩くということは無かったものと思われます。 そして空からはこれも満州航空のページで紹介しておりますフォッカーⅦb型旅客機が描かれています。大連の周水子飛行場は市街地から若干離れたところにあり、市街地の真上を飛んだかどうかはよくわかりません。 柿原輝行・画 | | | |
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| 『満州国の都、新京。ここは新京の大通り、いろいろの店が並んでいます。馬車や人力車なども賑やかに通ります。 道端には子供が大好きな、ナツメに飴をかけたマンシウのお菓子を売っています。』 市川赳夫・画 | | | |
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| 『満州国の車とそり 黒塗り馬車や人力車、田舎道を行くカマボコ馬車と手で押す一輪車。 冬は船の代わりに雪と氷の川の上をついついすべる帆掛けそり。』 耳野卯三郎・画 | | | |
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| 『走れ、きしゃぽっぽ 広い広いマンシウの高粱畑の間を南満州鉄道が世界の旅行者を乗せ満州の物産を載せて走る走る。』 吉澤廉三郎・画 | | | |
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| 『石炭ほり 日本では地の中に深く穴を掘って、そこから石炭を掘り出していますが、満州ではこうして野天で掘って沢山の石炭が出ます。 これは部ジュンというところの石炭堀の一部』 中西義男・画 | | | |
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| 『並んだ羊さん これは公主嶺というところの羊の牧場 満州では沢山に羊を飼ってラシャ、ネルなどの毛織物の原料に外国へ売り出します。』 この絵も当満州写真館の満鉄農事試験場のページに掲載した写真と構図がよく似ています。 石原玉吉 | | | |
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| 『お百姓の家族 皆揃って仕事の後で昼の陽だまり、お花の陰の明るいところで楽しいおやつ』 寺内萬治朗 | | | |
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| 『豆粕運びの力持ち、満州の産物豆粕がヂャンク(ジャンク)波止場に着いたところ、ここから船に積んで外国に輸出いたします。 豆粕運びの苦力さん、とても力持ち。えっさらえっさら運びます。』 こちらの絵は元になる写真があります。真ん中の苦力と左の馬車は当満州写真館の苦力のページに掲載しているものに、遠くに見えるジャンク船は大連港のページに掲載しているものに似ています。 世良田勝 | | | |
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| 満州の人々を服装と合わせて紹介しています。 左から蒙古・支那(中国、漢民族)、そして満州族でしょう。右はロシア人です。 | | | |