すしを食べたい。そう思ったとき、どうする? 「知り合いに聞く」あなたは「昭和」だ。「グルメサイトを調べる」あなたは「平成」である。17日夜。とあるすし屋のカウンターで、行きつけの店があいにく休みだった中村バッテリーコーチと、名古屋に土地勘のないオリックス・山本由伸、榊原翼が隣り合わせた。互いに初めての店で何たる偶然。ところが、聞こえてくる会話から「同業者」なのはわかるのに、20歳の2人は中村コーチを知らず、昨季まで韓国球界にいた中村コーチも2人を知らない。いったい誰なんだ…。先に動いたのはもちろん「平成」だった。
「スマホで検索しました。ドラゴンズの中村さんだとわかったので、すぐにあいさつしたんです」。それ以外の方法ってあるの? 榊原の顔にはそう書いてあった。すし屋ネタをきっかけに、中村コーチと「昭和と平成」の話題になった。首脳陣の期待や厳しい練習の意味は、平成生まれに伝わっているのか。毎日見ている新聞記者としての意見を求められた。
例えば正捕手に向けて前進している加藤は、19日に手痛い捕逸を犯した。「昭和」なら愛のムチだが、愛があろうとも「平成」にムチは許されない。加藤は僕にこう言った。「こんなチャンスは今年だけ。逃せば次はない。そう思っています」。ムチはなくても熱は伝わっていた。
山本もそうだ。昨季はセットアッパーとしてパ・リーグ2位の32ホールドを挙げた右腕は、今季は「人生を懸けています」と言い切り、先発転向に挑む。この日は6イニング2/3を4安打無失点。榊原とともに開幕ローテ入りは当確だ。金子が抜け、西が出ようとも、新鮮で太い芽が伸びている。
150キロ超球を投げまくった山本に、中村コーチは「いやあ、良かったな。うん。速かったわ」と目を丸くした。伝わっていないようでちゃんと伝わっているのが「平成」なら、伝わればちゃんと顔に出るのが「昭和」。さて、あと11日で発表される新元号は、どんな時代になるのやら-。