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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 ズボンの中に、オウムを忍ばせて上陸したオランダ人がいたという。鎖国時代の貿易地、長崎の出島での出来事である。検査中に鳥がしゃべりだしてばれたそうだ。スウェーデンの植物学者ツュンベリーが『江戸参府随行記』に書き残している

▼パンツに硬貨を入れたり、髪の毛の中に隠したり。外国人の不正な持ち込み、持ち出しが、横行した結果、日本側の監視も強化される。<ギリシア神話のアルゴス[体に多くの眼(め)をもつ巨人]の眼が使われているといえるほど>、細かく、厳しくなった。水際での激しい攻防が繰り返されていたようだ

▼国内経済を混乱させる密輸とともに、幕府が恐れたのは、取り返しがつかない損害を生む恐れのある禁制品の国外流出だった。地図を持ち出そうとした「シーボルト事件」がその後、実際に起きている

▼神話の巨人の厳しい眼を、思い出す時ではないか。和牛の受精卵などが、中国に不正に持ち出された事件である。持ち出した男は、過去にも繰り返したと話しているようだ

▼長年の研究、改良でつくりあげた財産が和牛だろう。国外での人気が高まる一方なのに、その「遺伝資源」を保護する制度が整っていないという。日本が誇る財産に取り返せないほどの損失が生じる恐れがあるだろう

▼安価な和牛が輸入されるような事態は悪夢であるはずだ。水際の眼と保護の仕組みが待たれる。

 

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