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【大相撲】

白鵬見せつけた 強さと頭脳的な取り口

2019年3月21日 紙面から

◇北の富士評論「はやわざ御免」

 11日目の土俵は、10日目にも増して熱戦、激戦の連続で、私も興奮しまくりだった。本日は、順番通りに1敗同士の碧山と逸ノ城戦から始めよう。でかい、とにかく大きい。2人合わせると430キロに近い。巨体がぶつかる様は、まさに大相撲である。この押し合いは、逸ノ城の方が勝って、正面土俵際まで攻め、碧山が頭を下げて押し返そうとしたところを逸ノ城がタイミング良くはたき込んだ。逸ノ城は実に落ち着いて、一歩も退かず、前に出て余裕の勝利だった。1敗を守り、白鵬にピタリと食い下がっている。不気味な存在だ。にやりと笑う表情も不気味で怖い。

 高安も栃ノ心を左四つに組み止め、万全の相撲で2敗を守った。今場所はよく前に出る相撲が多く、安定感が増したようだ。こうなると、前日の逸ノ城戦が悔やまれるが、まだチャンスを残している。打倒白鵬に燃えてもらいたい。

 豪栄道も館内の大声援を受け、やや苦手にしている千代大龍の突っ張りも、引き技も気にすることなく一気に出て万全の相撲。2敗は優勝に届かないかもしれないが、近来にないほどの充実ぶりから考えると、全くチャンスがない訳ではない。豪栄道も打倒白鵬に全力を挙げてもらいたい。

 結びの大一番を前にした玉鷲と鶴竜の一番は、鶴竜に軍配が上がったが、同体と見て物言いとなる。ここまではよくあること。おかしかったのは、その後の審判部長の場内説明。誰の耳にも取り直しと思わせておき、軍配通り鶴竜の勝ちと発表したのだから、私も藤井アナも場内も、キツネにだまされたよう。場内も一瞬、きょとんとしたが、後は拍手と笑い。いい味を出しているな、阿武松親方。人間だから審判部長だって間違いはある。緊張の大一番を前に、ホッと一息、肩の力が抜けて良かったではないか。私は好きだね。ヨッ、かみかみの阿武松!また、話が横道にそれた。

 こんなバカをいっている時じゃない。白鵬はこの3日で2度、相手に背を向ける失態を犯している。辛うじて勝ってはいるが、不安が生じている。対する貴景勝は、2敗はしているが、内容は申し分ない。藤井アナに予想を聞かれ、少し迷ったが、貴景勝に分がありと答えたものだ。しかし、すぐに白鵬の強さと頭脳的な取り口を見せつけられることになった。

 張り差しに出ると思った白鵬だが、右でかち上げ気味に立って、貴景勝の突きに応戦する。いや、応戦というより右足を踏み出し、自分から攻めない。先場所に食らった左からの突き落としを徹底的に警戒する。貴景勝は、さかんに押し合いに誘いをかけるが、白鵬は冷静で、その手は食わない。押しても引いてもこない白鵬に、貴景勝の攻め手が止まる。それを待っていたかのように、白鵬が左から引っ張り込み、とうとう捕まえた。

 これで貴景勝は万事休す。ギブアップ状態で白鵬の上手投げに、もんどり打って横転した。白鵬は強かった。貴景勝有利とみた私は、相撲を語る資格はないのか。しかし、予想は予想である。そう固いことはいわないことである。11日目で優勝の行方はだいぶわかってきたようだ。1敗は逸ノ城だけで後続は2敗組が5人。先場所の白鵬の3連敗ということもあるので、軽々しいことはいえないが、今場所は大丈夫だろう。もつれたら、それはそれで面白くなって良いではありませんか。いい相撲が見られたので、体は思ったほど疲れていない。本日は京都の舞妓(まいこ)さんがちらほら来ていたが、なかなか良いものだ。場所が終わったら一日、京都で息抜きをして帰ろうかな。それでは「本日はおおきにどっせ」。変な京都弁。 (元横綱)

 

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