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【大相撲】

白鵬、唯一無傷の11連勝 大関昇進目指す貴景勝に完勝

2019年3月21日 紙面から

白鵬(右)は貴景勝を上手投げで下す=エディオンアリーナ大阪で(北村彰撮影)

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◇春場所<11日目>

(20日・エディオン アリーナ大阪)

 横綱白鵬(34)=宮城野=が激しい攻めで関脇貴景勝(22)=千賀ノ浦=を下し、無傷の11連勝。大関昇進を狙う貴景勝は3敗目。鶴竜は、物言いがついた玉鷲との一番をものにして連敗を免れ、栃ノ心を突き落とした高安、豪栄道とともに2敗を守った。かど番の栃ノ心は5敗目。平幕の1敗同士の対戦は、逸ノ城(25)=湊=が碧山をはたき込んだ。

 貴景勝を認めているからこそ、白鵬は封印を解いた。立ち合いで右からかち上げ。右、左と張り手も浴びせた。右四つに組み止め、とどめは左からの上手投げ。「若いころ、あんな稽古ようやってましたから。激しいとは思わない」と笑い飛ばしたが、白鵬の胸板に残る無数の生々しい引っかき傷が激戦を物語っていた。

 粋な伏線があった。場所前に貴景勝について聞かれた白鵬はこう答えていた。「多少、邪魔してやろうかという気持ちはあります」。1991年夏場所初日に貴花田との対戦が組まれた千代の富士の言葉だった。

 その映像を見たことのある白鵬が「こういう言葉の返しもあるのかと大変気に入りました。『ちょっと邪魔してやろうかな』って」とまねしたものだった。

 千代の富士は貴花田に敗れ、3日目の取組を最後に引退。白鵬は見事に邪魔をして「場所前の有言実行」と笑みを浮かべた。

 貴景勝が初優勝を飾る前から「彼が大相撲を引っ張っていくのは間違いない」とすでに認めていた男の前に、壁として立ちはだかった。

 今場所の白鵬は相手がスローモーションで見えている。貴景勝のまげに指がかかろうとしたらサッと抜いた。8日目、10日目と背後を取られても負けなかった。「じっくり見ていった」。この日も貴景勝の動きを見切っていた。

 「大学の論文にもあるでしょ。交通事故に遭った車にいた人は、まわりがスローモーションで見えるって。それと同じような感じなのかな」

 横綱の黒星は「死を意味する」と話す。死と隣り合わせの覚悟が、白鵬を異次元へと導いているのかもしれない。 (岸本隆)

 

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