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原子力基礎工学研究センター長
岡嶋 成晃
19世紀末から20世紀前半にかけて、自然科学分野では原子核に関する研究が精力的に行われ、大きな進歩を遂げました。そして、20世紀後半には、原子核の反応によって得られるエネルギーを利用する技術の開発が進められました。この原子核によって得られるエネルギーが原子力です。原子力の利用とは、たとえば、原子核の反応によって得られるエネルギーを熱に換えて発電に利用することや、原子核から発せられるエネルギー粒子線、すなわち放射線の物質を透過する能力を利用して、物質の内部を探ることなどです。
原子力基礎工学研究センターでは、この原子力利用を支えるために、核反応の起こりやすさに関するデータベースや粒子の物質中での移動を予測する計算コードの開発、核エネルギーを熱として効率よく取り出す研究、核燃料やこれを収納する材料の特性を評価する研究、核燃料や放射性物質を化学的に取り扱ったり分析したりする技術の研究、環境中での放射性核種の移動などに関する研究、放射線が人体などへ及ぼす影響を評価する技術の開発などの様々な分野に於いて研究開発を進めています。
このように、私たちは、原子力利用を支える基礎基盤的技術の水準の維持・強化に努め、原子力分野の科学的知見や技術などの基本分野の研究に軸足をおいて、基盤的データベースや計算コード、先進技術等の研究開発を進めています。東京電力福島第一原子力発電所事故以降は、①当該事故の対処(事故を受けた原子炉施設の廃炉推進、環境の回復等)、②軽水炉の安全性能のさらなる向上、③放射性廃棄物の処理・処分の着実な遂行が、現在の原子力利用における重要な課題であると考え、これらの課題を解決するのに必要な基礎基盤的技術の研究開発に注力しています。
これらの研究開発では、透明性のある質の高い成果の創出に努めています。また、得られる成果をいち早く公開することこそ、わたしたちの責務であると考え、学術的、社会的、経済的にインパクトのある研究開発成果を数多く創出するように努力を続けています。さらに、これらの成果を礎に、産学と連携して、原子力利用の新たな産業技術や革新的事業を生み出すことに努めています。それには、原子力の革新的技術を開発するための産業界との共同研究、技術移転、技術協力等を目的として設立された「原子力エネルギー基盤連携センター」を中核として、民間企業と連携して様々な研究開発にも取り組んでいます。
私たちは、これらの成果を最大化して、我が国唯一の原子力研究開発総合機関の中で、中央研究所的役割である原子力科学研究部門における中心的役割を担っていきたいと考えています。
2017年4月