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【首都スポ】

[バレーボール]ポーランドリーグで腕磨く柳田 全ては10月W杯で輝くため

2019年3月20日 紙面から

ポーランドリーグのルビンでレベルアップを目指すバレーボール男子日本代表主将の柳田将洋=ポーランド・ルビンで(いずれも平野敬久撮影)

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 2020年東京五輪まで500日を切り、この4月にはバレーボール男子日本代表が始動する。ベスト8を目標に臨んだ昨秋の世界選手権では1次リーグ敗退。主将の柳田将洋(26)=ポーランド・ルビン=は個人のレベルアップだけでなく、日本代表を強くするために、プロ2シーズン目の今季は、念願だったポーランドリーグへの移籍を果たした。練習中に左足首を負傷、シーズン終了を待たずに帰国したが、リハビリは順調。強い日本代表を見せるために、柳田は前を向き、さらなる飛躍を誓う。 (田中夕子)

 ポーランド第4の都市、ウロツワフから車で1時間ほどの場所に位置するルビン。「日本にいるころはここに来るなど思わなかった」と苦笑いを浮かべるように、観光地と呼ぶには程遠い静かな街。決して便利な場所ではないが、プロバレーボール選手としては、この地に来て、確実に階段を上がった。柳田将洋は手応えを感じている。

 プロになった昨季はドイツに渡り、チームの主将も務めた。だが来年に迫る東京五輪に向け、さらなるレベルアップを求め、世界最高峰リーグの1つであるポーランドへ。世界王者であるポーランド代表メンバーはもちろん、世界各国の代表選手が多く在籍するリーグで、合流直後はなかなかレギュラーをつかめずにいたが、武器であるサーブに磨きをかけ、中盤以降は試合出場を重ねた。

 ところが、まさに好事魔多し。2月8日、練習中に選手同士で交錯し、左足首を負傷した。「捻挫だと思っていたので、それほど大変なけがだとは思わなかった」。ところが、精密検査の結果、骨挫傷と判明。治療とリハビリに専念するため、シーズン途中で帰国した。

 決して本意と言える結末でこそなかったが、レベルアップを求めた地での得難い経験は、大きな財産になった。

 「1つのミスに対しても、『ごめん』とまず謝る日本に対し、海外では『ここはこうしてほしかった』と主張します。1人1人が自立して、責任を持っているから、意見し合ってチームをつくる。日本でもこういう環境がノーマルになる時代が来ているんじゃないか、と感じるし、ポーランドに来て、改めて気付かされたことがたくさんありました」

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 サッカーや野球などプロスポーツに限らず、卓球やバドミントンでも海外を拠点とし、スキルアップやメンタル向上に努める選手は増えた。かたやバレーボールはといえば、まだ国内でプレーする選手が圧倒的で、プロ選手も数えるほどしかいない。もちろんその状況でも磨けるもの、得られるものは多い。だが、日本が強くなるためには、もう一段階のステップアップが必要なのではないか、と柳田は言う。

 「この高いレベルの中でプレーし、評価されることがどれだけ難しいか。身をもって感じさせられました。イタリアやポーランドのトップリーグでトップに位置するチームには、その国の代表選手が多くいて、代表チームになったらそんな選手たちと同じ土俵で戦わなければいけない。今は、危機感しかないです」

 プロ選手になる、と覚悟を決めた以上、いかに厳しい環境へ身を置き、個々が成長し、それが束となり日本代表を強くできるか。柳田の発想はいたってシンプルだ。

 「僕は常に日本代表で強くなるために何をすべきか、というのが一番です。そのために自分はプロになる、海外へ行く、と決断して実行してきた。自分がレベルアップして、日本代表としても結果につながるなら、それが最高の結果だと思っています」

 一段ずつ階段を上がり、目指すべき場所へ。まずはけがを治し、リハビリで体を鍛え、さらにたくましくなった心と体で勝負する。今季最大のターゲットは10月に日本で開催されるW杯。4年前、日本代表のエースとして飛躍を遂げた大会で爆発する。今はそのためのレベルアップにつなげる時間だ。

 「個人としては全試合出場。そして日本代表としては勝って、結果を出したいです」

 キャプテンがすべての経験を力に変え、日本は再び世界に挑む。

 <柳田将洋(やなぎだ・まさひろ)>1992(平成4)年7月6日、東京都江戸川区生まれの26歳。ウイングスパイカー。186センチ、79キロ。東京・東洋高2年時に全日本高校選手権(春高)優勝。慶大を経てサントリーに進み、2013年に日本代表選出。15年W杯出場。17年にプロ選手となり、18年世界選手権出場。昨季はドイツのビュールでプレーし、今季ポーランドのルビンに移籍した。

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◆世界各国のトップ選手ずらり

 ポーランドリーグはイタリア、ロシア、トルコと並ぶ欧州4大リーグのひとつ。1部には世界各国のトップ選手が集まる。今季は13チームで昨年9月~今年5月まで。柳田のほか、日本代表のリベロで、Vリーグでは豊田合成所属の古賀太一郎(29)もザビエルツェに在籍。23試合終了時でルビンは12位(7勝16敗)、ザビエルツェは5位(14勝9敗)。

 ポーランドは00年に国内リーグがプロ化されて以後、代表チームも本格的に強化。世界選手権は06年準優勝、14年、18年と連覇している。世界屈指の強豪国へと成長を遂げた代表チームの主将を務めるミハウ・クビアク(31)は、パナソニックに16年から3シーズンプレーしている。

 コートに立てる外国人枠が3人と制限がある中、柳田は中盤以降レギュラーを獲得。攻守のバランスにたけた選手がそろう、ドイツよりも格段にレベルの高いポーランドリーグで経験を積んだ。

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