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【社会】

「両親や支援者のおかげ」 呼吸器事件 再審確定

再審確定を受け、支援者に祝福される西山美香さん(中央)=19日、大津市内で

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 父母と、仲間と、再審開始の扉をこじ開けた。滋賀県東近江市の湖東記念病院で二〇〇三年に死亡した患者の呼吸器を外したとして殺人罪で十二年間服役し、出所後も無罪を訴え続けてきた元看護助手の西山美香さん(39)=同県彦根市=は十九日、最高裁の再審決定を伝えられた。父の病床に、祖父母のお墓に朗報を報告。夕方には会見に臨んだ。「支えてくれた両親や弁護団、支援者のおかげ」。感謝の言葉がはじけた。

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 「美香、再審開始決定出たで」。西山さんはこの日午前、彦根市にある勤め先のリサイクル工場で、「再審開始確定」の知らせを母親の令子さん(68)から電話で受けた。すぐさま工場を早退し、長年、娘の無実を訴えて署名活動に駆け回ってくれた父の輝男さん(77)が入院する病院に令子さんと駆け付け、三人で喜びを分かち合った。

 病院から帰宅すると、郵便配達員から再審開始の決定文を受け取り「めっちゃうれしい」と笑顔を浮かべた。家の近くにある父方、母方の両方の墓に出向き、見守ってくれた亡き祖母らに手を合わせ、「喜んでいると思う」と話した。

 朗報を受けて、数分おきに携帯電話が鳴った。そのたびに丁寧に応対し、感謝の気持ちを込めて「ありがとう」と答え続けた。

 殺人犯として、二十代、三十代の多くを刑務所で過ごした。出所後、仕事に就こうと履歴書を書いても、過去の経歴が埋まらない。同年代は結婚し、子育て中の人もいる。「何で私だけ…」。自暴自棄になることも多々あった。

 そんな西山さんを、両親をはじめたくさんの人が支えた。「美香は何も悪いことをしていないから、上を向いていこうや」「刑務所は大変だったね。よく辛抱したね」。経緯を理解し、自分に寄り添ってくれた言葉が、再審開始に向けて訴える原動力になった。

 西山さんの無罪を信じる署名は、出所前も含めて二万筆を超えた。自分自身で街頭に立っても振り向く人は少なかったと感じていただけに、支援者の存在の大きさを感じる。

 西山さんは一八年春から働いていたコンビニを辞め、今年一月から今のリサイクル工場で働き始めた。西山さんは「早く無罪になって、マイカーを買って、いろんなところに両親を連れていきたい」と夢を抱いている。

 

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