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【社会】

呼吸器事件 再審確定 元看護助手、無罪の公算 最高裁

入院中の父・西山輝男さん(中)に再審確定を報告する美香さん(左)と母・令子さん=19日午前、滋賀県豊郷町で

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 滋賀県東近江市の湖東記念病院で二〇〇三年、入院患者の人工呼吸器のチューブを外して殺害したとして、殺人罪で服役した元看護助手西山美香さん(39)=同県彦根市=が申し立てた第二次再審請求審で、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は検察側の特別抗告を棄却し、裁判のやり直しを認める決定をした。十八日付。再審開始が確定した。大津地裁でやり直される再審公判で、西山さんは無罪になる公算が大きい。 (蜘手美鶴)

 最高裁は、自然死の可能性があるとして再審開始を認めた大阪高裁決定を支持した。裁判官三人全員一致の結論。

 確定判決は、〇三年五月、看護助手の待遇に不満を持った西山さんが病院の宿直中に、患者の男性=当時(72)=に装着されていた人工呼吸器のチューブを抜いて殺害したとした。

 西山さんは〇四年七月に逮捕され、取り調べ段階で「人工呼吸器のチューブを外して殺害した」と自白。公判で否認に転じたが、〇五年十一月の一審大津地裁判決は「自白は自発的で迫真性もある」などと判断。懲役十二年を言い渡し、最高裁で確定した。西山さんは和歌山刑務所で服役し、一七年八月に満期出所した。

 西山さんの再審請求は二度目で、服役中の一二年九月に申し立てた。弁護団は有罪判決の柱となった西山さんの自白は、捜査機関に強要された「うその供述」だと指摘。精神科医による発達・知能検査では、西山さんに軽度知的障害と発達障害の傾向があることが判明し、虚偽自白に追い込まれやすい「供述弱者」であると訴えた。

 再審請求審では、大津地裁が一五年九月に請求を棄却したが、大阪高裁は一七年十二月、自白の信用性について「取り調べを担当した警察官に好意を抱き、関係を維持しようと虚偽の自白をした可能性がある。信用性が高いとは言えない」とした上で、「自然死だった可能性がある。西山さんが犯人であると認めるには合理的な疑いがある」と判断し、再審開始を決定。検察側は決定を不服として特別抗告していた。

 

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