自分の好きなことを仕事にし謙虚でいること。そうすれば何でも習得できます

Le Bernardin(ル・ベルナルディン)
Eric Ripert(エリック・リパート)

■シェフになったのは、おいしいものが好きだったから

フランスでの幼少時のお話と、思い出に残っている家庭料理を教えてください。

リパート氏:
私はフランス南部のアンティーブという、イタリア寄りの地中海に面した街で生まれました。漁業が活発で魚介類に恵まれた街で、イタリア料理の影響を受けたフランス料理や地中海料理などが有名です。両親の離婚後、いろんな街を転々としました。アンドラという国にも7年住んだことがあります。フランスとスペイン両方の文化が共存する興味深い場所でした。

母や祖母が作るフランス南部の家庭料理は素朴でおいしかったです。四季折々の新鮮な素材で作られた私にとってのソウルフードです。夏場はとれたての魚のグリル料理やステーキ、野菜たっぷりのラタトゥイユ、冬場は鶏肉や赤ワインなどがグツグツ長時間煮込まれたフランス版シチューが大好きでした。また私は甘いものに目がなかったので、祖母が作るアップルタルトは大好物で、毎日食べていました(笑)。

15歳で家を出て、料理学校に入学したそうですね。シェフになろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

リパート氏:
料理が好きで得意だったというより、おいしいものが大好きだったから、というのが正直なところです。美しい食器やグラス、クロスなどが綺麗にセットアップされたテーブルセッティングにも興味がありました。

どんなことを学びましたか。

リパート氏:
2年間みっちり、料理方法はもちろんのこと、サーバーの仕方やホスピタリティー、オフィスの運営方法など、レストラン事業に関することを全般的に学びました。しかし料理学校というものは基本中の基本、例えばアルファベットを教えるような場所なので、それ以上のことは実践を通して現場で学んで来ました。

料理学校を卒業後は?

リパート氏:
17歳でパリに出て、ラ・トゥール・ダルジャン(La Tour d’Argent)というレストランで働きました。それから2年後に、ジョエル・ロブション氏から声がかかり、彼が経営するジャミン(Jamin)に転職できました。働いてすぐにアシスタント・シェフ・デ・パティー(※2)として昇進し、兵役を経て再びジャミンに戻り、シェフ・パーソニエ(※3)として働きました。

※2:アシスタント・シェフ・デ・パティー(Assistant Chef de Partie)
肉、魚、ソース、ペイストリーなど、カテゴリーによってさまざまなチームで分業されており、アシスタント・シェフ・デ・パティーはその中の一つのチームの担当シェフのアシスタント。

※3:シェフ・パーソニエ(Chef Poissonier)
魚料理担当のシェフ。

■そこに学びがある限り、二つ返事でオファーを受けた

パリの有名店で修業をされていますが、仕事を見つけたり経験を積んだりするのは、わりとスムーズだったのですか。

リパート氏:
決してトントン拍子で進んだわけではありません。ただ若くて未熟だったので、私にとってはとにかく「学ぶ」ことが重要でした。学べる場があるなら二つ返事で承諾しました。でも誰でも最初は知識も経験もないですよね。だからとにかく一生懸命働いて、一つ習得したら今度は違うものにチャレンジしました。そうするとまた知識も経験もない無知の状態からのスタートになります。そこから新たに努力して知識をつけていく、毎日がその繰り返しでした。でもそのようにして知識と経験を積んだら、あとは怖いものはありません。そのころにはどのレストランでも働ける技術が身についていますから。

それぞれのレストランで、どのようなことを学んできましたか。

リパート氏:
ディスシプリン(訓練)です。清掃をきちんとする、時間に遅れない、といった社会人としてのマナーはもちろんのこと、包丁の握り方、基本的な調理の仕方といった料理学校より一歩進んだ内容のものも含めて、総合的に学ばせていただきました。先輩シェフによってスタイルが違うので、それぞれのスタイルを間近で見れたのはよかったことです。いったん身につければ、あとは誰の真似をするでもなく自分スタイルを作りあげていくことができますから、まずは「基礎」が大切なんだと思います。

ということは、一つの職場ではなく複数の職場で経験を積む方がよいということでしょうか。

リパート氏:
そうですね。でも1年ごとに転職を繰り返しても意味がないです。最低2年、3〜4年がんばって働き、転職することをおすすめします。3年ずつ働いて4回転職したら、12年分の豊富な知識が身につきます。同じ職場で12年間働き続けるのとはわけが違います。同じ職場では最初はたくさん学ぶことがあっても、数年経つと学びが少なくなってしまうのは避けられません。でも違う職場の違うシェフの元で修業をすると、学ぶ内容は膨大にあります。

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