オーバーロード<落書き集>   作:焼きプリンにキャラメル水
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あるプレイヤーの話です。
試しに書いてみました。

苦手な方は読まないことをおすすめします。


リアル編
とあるプレイヤー・病院にて


2128年、一言で言うなら『世界』は崩壊した。

 

 

かつて存在した『自然』は存在しなかった。

 

 

100年以上前の映像として残された『仮面を被った英雄』はいない。

 

100年以上前の映像で残されている『正義の巨人』はいない。

 

 

人々はあらゆるものを失った。

 

 

『自然』『自由』『正義』『希望』

 

 

あらゆるものを失い、または奪われた。

 

 

だが『秩序』だけは残っていたといえる。

 

秩序と言えば聞こえはいいかもしれない。

 

支配者と奴隷とでも言うべき関係かもしれない。

 

 

 

まるで『雲の上の存在』が

 

「お前たちはこうあるべきだ」

 

そういわんなかりに・・・・

 

 

 

世界は荒廃していた。

 

 

 

だがそんな中でも懸命に生きようとする命があったのだ。

 

 

 

 

 

これは生きようとする『命』を守ろうとした男の話である。

 

 

 

 

 

 

_______________________________

 

 

とある総合病院

 

 

 

 

一人の医師が歩いていた。

 

中肉中背の男。どこにでもいる容姿ではある。

 

「高橋先生!さっきのオペ凄かったですね」そう言って若い看護師の女が医師に声を掛ける。

 

「いやぁ・・あれは若葉(わかば)さんのおかげですよ」

 

「いやいや『神の手(ゴッドハンド)』と呼ばれる先生がいたからこそですよ。まさかあんな難しいオペをあんな早く終わらせるなんて・・」

 

「若葉さんが中を仕切ってくれているからこそ出来たことです」

 

「いやいや・・・・それより仕事が終わったらどうですか?食事でも?」

 

「お気持ちは嬉しいですが、結構です。最後に患者さんの診察を終えたら私は・・・」

 

「あぁ。妹さんの所ですね。いってらっしゃい!」

 

いつも通りのやり取りを済ませる。

 

男は廊下を歩いていた。

 

 

(どうでもいいんだ・・・・あんな女なんて・・・・『あいつ』さえ助けられたら)

 

 

優には何があっても守りたいものは1つだけあった。

 

この世で一番大事なものだ。

 

 

 

 

 

診察室に来たのは男の患者だ。腕の機能がなくなったからオペして治したのだ。

 

「様子はどうですか?荒原(あらはら)さん」荒城はこの国で一番の男性テニスプレイヤーだ。

 

「あっ、先生のおかげで身体バッチリです」

 

「そうですか。それは良かった。腕の機能が回復して良かったです」

 

「先生の腕が良かったです。これで退院したらまたテニスが出来ます」

 

「そうですか・・・・あまりストレスを溜めすぎないで下さいね」

 

「えぇ。『ユグドラシル』でもやってストレス解消しようかなと・・。私ゲームではメイスを振り回すんですよ?」

 

「いいですね。私も時間があったらやってみたいですよ」(ユグドラシルか・・・暇さえあればその手の情報は調べてるからな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個室の部屋に入る。

 

(すぐる)お兄ちゃん!!」

 

何本も点滴を打たれているのは優の妹だ。生まれつき心臓が弱く、人工心肺を定期的に変えなければならなかった。

 

「病院では先生と呼べって何度言ったら分かるんだ紗奈(しゃな)!」

 

個室だからこそ出来るやり取りでもある。

 

「はーい。あっ・・そうそうまた聞いたよ。お兄ちゃん!凄いオペを凄いことして凄く早く終わらせたんだってね」

 

「まぁな。この私に出来ないことは無いからな。お前の自慢の兄だぞ・・・当然だろう」

 

「うん。お兄ちゃんは私の自慢の兄だよ!」

 

そう言って紗奈は笑った。

 

「あぁ」(無理するな・・・・笑うのも激痛が走るはずだ。麻酔で痛みが多少はマシだろうが・・・。だから無理して笑うな)

 

「どうしたの?お兄ちゃん」

 

「気にするな。さっきのオペのことを思い出していた」

 

「ふーん」悪戯っぽく笑った。

 

「それより紗奈、何か欲しいものはあるか?」

 

「ないよ。お兄ちゃんから買ってもらって使わせてもらっているコレがあるから」

 

そう言って紗奈はデータロガーを取り出す。ヘルメットの様な形状のこれは頭部を覆うことで脳内のナノマシンに作用して様々な電子機械を操作することが可能となる。

 

「最近は何をやっているんだ?」

 

「最近は『ユグドラシル』にはまっているの。知ってる?」

 

「いや知らないな。もし良かったら教えてくれないか?」

 

「うん・・・ユグドラシルっていうのはね・・・・」

 

・・・・

 

・・・・

 

・・・・

 

・・・・

 

「へぇー。凄いなぁ。紗奈はそこでは魔法使いなのか?」

 

「うん。ゲームの世界の中じゃ私はどこにでもいる人間だし、好きな恰好も出来るし・・・どこでも自由に動けるの」

 

「へぇ・・・俺もやってみようかな?」

 

「お兄ちゃんは絶対戦士がいいと思う!!」

 

「えっ、何で?」(私はお前と同じ魔法使いになろうと思ったんだが・・)

 

「だってお兄ちゃんはオペ室ではメスを握っているんでしょ?だったら魔法使いより戦士かなって」

 

「えっ・・・そういう理由?でも案外いいかもな」

 

「そうだよ。お兄ちゃんも『ユグドラシル』やろうよ」

 

「いいぞ。やるか」(よっしゃぁー!紗奈とゲーム出来るぞ)

 

「あっ、でも仕事・・・」

 

「大丈夫、俺天才だから。『神の手(ゴッドハンド)』だからな・・・」

 

「わーい!お兄ちゃん大好き」

 

お互い人間で始めた。初期職業は私が戦士で、紗奈が魔法使いだ。

 

凄く楽しかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから半年後・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗奈は息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ・・・紗奈・・・俺、ワールドチャンピオンになったんだ」

 

「自慢の兄だよな?なぁ・・・・・」

 

「何で・・・・みんな私より先にいなくなるんだ」

 

たった一人の家族だった。紗奈さえいれば私は他に何もいらなかった。

 

「・・・・・もうどうでもいい」

 

それから病院を辞め、ユグドラシルに没頭した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せめて自慢の兄でいられるように・・・・誰にも負けないから」課金だってした。

 

 

 

 

 

 

でもそんな気持ちのままだったからなのか、一人のワールドチャンピオンに負けてしまう。

 

 

「あなたには余裕が無い」

 

そう言われた。『正しい』ことを言われた。それが非常に苛立ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は個人の限界を感じた。だから1つのギルドを結成した。

 

 

NPCも作った。蘇る・・・黄泉返る・・・・ヨミだ。

容姿は妹に似せたのだ。

 

 

死から紗奈を助け出せるように、『死』を司る種族に変更した。

 

もっと強く、自慢になれるように。

 

 

 

 

やがて世界を去り、新たな世界にやってきた。

 

そこでは『神』の如く扱われた。

 

 

 

 

 

「おぉ・・感謝致します」

 

「貴方様のお名前をお聞かせ下さい」

 

 

 

「私の名前は・・・・・っ」

 

かつての名前はもう・・・・意味はない。紗奈はいないから。

 

でもせめて少しでも紗奈の存在を感じられるように・・・

 

私が生きていることで紗奈も生きていられるように・・・

 

 

 

(すぐる)紗奈(しゃな)

 

スグルとシャナ・・・

 

 

 

 

だから・・・・

 

 

 

 

「私のことはスルシャーナと呼んでくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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