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「社会学講座」


12月31日(月)/1月1日(火・祝) 犯罪社会学
「田原成貴(元)調教師・覚せい剤所持&使用で逮捕・シリーズ完結編」
 
 え~と、諸事情有りまして、この講義は2001年最後の講義であり、2002年最初の講義ということに相成りま
した。せめてボリュームだけは2日分に相応しいものとしたいと思いますので、ご了承を。

 さて、そんな講師の不徳の限りを尽くしたような"2日合併"講義は、せめていかにも仁川経済大学の社会学
講座らしい題材を……というわけで、競馬関連の社会学を講義したいと思います。
 今年の競馬界は、馬やレースといった"表舞台"に関しての話題には良いものが多かったのですが、所謂"舞
台裏"の話には暗いものが多かったような気がします。地方競馬場の相次ぐ閉鎖決定や、野平祐二元調教師の
死去、さらに安藤勝己騎手のJRA騎手試験不合格事件etc……。
 しかし、その中でも飛びぬけて印象的な出来事だったのが、田原成貴調教師(当時)の起こした不祥事に関
する話題でした。
 覚せい剤取締法違反で逮捕、起訴という衝撃的なその不祥事の内容は、当然、ワタクシ駒木にも強烈なイン
パクトを与えました。当時は『最後の楽園』というサイトをプライベートで運営していた駒木は、その中の
「今日の特集」というコンテンツの中で、計6回にわたって採り上げ、記事にしました。(現在、アーカイブ
にて公開中。未読の方は、こちら《正編》とこちら《後日談》を先にご覧下さい)
 ただし、この時はまだ公判が始まる前ということもあり、残念ながら未完の形でまとめざるを得ない状況で
した。
 ですが、先日ついに判決公判があり、この事件が決着の時を迎えました。
 そこで今日はシリーズ完結編。この事件の顛末と、そして田原成貴のこれからについて語ってみたいと思い
ます。

 田原成貴の初公判が行われたのは12月10日の事でした。
 捜査段階で、物的証拠が揃っているのに、およそ1ヶ月間黙秘権を行使、ダンマリを決め込んだ田原は、警
察・検察に対する心証が最悪でした。普通、覚せい剤犯罪の初犯では、実刑判決が下る事は稀なのですが、"
ひょっとしたら危ない"というところまで事態は悪化していました。
 そのためでしょう、起訴されてからというもの、田原サイドは(恐らく弁護士のアドバイスに従って)態度
を一変させます。これまでとは手のひらを返したように素直に罪を認め、反省のポーズを取り始めました。も
っとも、これは反省したり謝ったりするのが死ぬより嫌いな田原のやることですから、本心からとった行動と
はとても思えません。しかし、競馬のケの字も知らないエリート育ちの裁判官の目くらいは誤魔化せるとは思
っていたのでしょう。確かにこれは有効な手段でありました。ですがまぁ、駒木は、保護司の前だけでは素直
な態度をとる高校中退の非行少年を見ている元担任、みたいな心境になってしまうのですが。
 話がややズレました。初公判です。
 その初公判、田原は判決後の身元引受人・本宮ひろ志氏や妻を証言台に立たせるなど、執行猶予を"勝ち取
る"ためにあの手この手を使います。この辺り、三田佳子の次男が、唐十郎氏を身元引受人にしたことで、再
犯にも関わらず執行猶予判決を受けた事を研究しての行動なのでしょうか。
 では、その証人2人がどのような証言をしたのかを検証してゆきましょう。
 まず、身元引受人でマンガ家の本宮ひろ志氏の証言から。彼は、田原を自分のマンガ原作者として"雇用"
し、原作・田原成貴作品の連載も立ち上げると明言しています。

「やったことは仕方ない。彼にはこれからはゆっくり歩いてゆっくり考えてゆっくり生きていこうと諭しまし
た」
 

 「やったことは仕方ない」で済むのなら、モンテスキューも三権分立を訴えなくて済んだ気がしますが、そ
こんトコ、どうよ? ……いや、失礼。しかし思わず2ちゃんねる用語を使いたくなるような証言ですなあ。
 それに、「ゆっくり歩いてゆっくり考えてゆっくり生きていこう」ですか。何だか往年の標語「ゆっくり走
ろう・東京都」を思い出させるフレーズですが。そういえば、昔、ビートたけしさんが作ったギャグで、「眠
くなったら車を停めて、頭スッキリ覚せい剤」なんてニセ標語がありましたね。まぁ、さしずめ田原は「辛く
なったら仕事を捨てて、頭スッキリ覚せい剤」てなところでしょうが。
 それに、ゆっくり生きるならば、締め切りに追われるマンガ原作者生活よりも、禅寺かどこかへ出家した方
が余程効果的だと思いますが。……あ、本宮氏の信仰を考えると禅寺はまず無理ですか。鎌倉時代からの因縁
がありますものね。…今からでも遅くないですから、禅寺はナシにしても身元引受人を瀬戸内寂聴さんに切り
替えたらどうでしょうかね? 関係諸氏にはご検討願いたいと思います。

 さて、次に妻・裕子さんの証言です。本来なら、完全な"シロウトさん"をイジる槍玉に挙げるのは本意では
無いのですが、今回は心を鬼にして採り上げたいと思います。

「元々スポーツマンらしい人。調教師の仕事は過酷で精神的に追い込まれたのだと思う」
 

 記者を呼び出して、しかもムチの柄で不意打ちして前歯を叩き折るチンピラのどこがスポーツマンらしい人
なのか、『朝まで生テレビ』で討論したい気持ちで一杯になりました。まぁマイク・タイソンあたりを基準に
すれば、そう言えなくもありませんけど、それはそれで裁判の証言としては最悪だと思います。
 また、中央競馬では、200人以上の調教師さんたちが日夜頑張って仕事に励んでいらっしゃいます。辛いこ
とがあっても、せいぜいカンチューハイを呑んで気を紛らわす位で頑張ってるんです。ですから調教師の皆さ
んも、シャブチューハイやった奴にそんな事言われたくはないでしょう。
 しかし、こんな証言でも情状酌量の材料になるんですから、さすがは法治国家日本でございますね。いやは
や、感動の余り鼻水が出ます。

 …と、以上が弁護側証人の証言でした。ただ、これはあくまでも証人の話。肝心なのはやはり、被告人本人
の証言です。それでは、報道された田原成貴の法廷での証言を検証しましょう。 

★覚せい剤所持・使用の動機について
「調教馬の耳に発信機をつけたことで、JRAから理由の説明のないまま罰金50万円の処分を受けてむしゃく
しゃしており、スカッとしたかった」
 

 この他に、「この事件のため、来年度以降の入厩予定馬が相次いでキャンセルされ、厩舎の存続は無理だろ
うと思っていた」との証言もありました。そりゃそうです。例えば、保護者や担任に内緒で、校長が生徒のカ
バンに発信機を着けるような学校に誰が子どもを学ばせたいと思いますか。
 …それに、理由の説明ってアンタ、そりゃ「危ない」からに決まってるでしょうが。そんなもん、「中に出
したら妊娠するかもしれない」くらい明白な事だと思いますよ。
 と、「むしゃくしゃしており、スカッとしたかった」ですか。なんかジャイアンがのび太を殴る理由と同じ
ですね。脳ミソは小学5年生並なんでしょうか。知能テストを実施して、結果を提出したら刑が軽減されるか
もしれませんぞ。  

★覚せい剤の使用に関して
「2度とも針は刺したが液は注入していない。陽性反応が出たのは2回目にどんな味がするかなめてみたから
だ」
 

 講義が長引いて冗長になるのを避けるため、多くは申し上げませんが、
 「俺はその場にいたが、レイプには参加してない。観てただけ」
 と、いうチーマー時代の東幹久の証言と肩を並べる"迷言"だと思います。

★常用を裏付けるとされた注射痕について
「10年前に落馬で入院。1カ月以上点滴を打っていたのでその跡です」
 

 まぁ、確かに彼は長期入院してましたので、この証言は信ずるに足りるでしょう。ただ、1つ付け加えます
と、覚せい剤の常用者は、注射痕を残さないように爪の間に針を刺し込んで注射します。

 …だから、どうというわけではありませんが。

★逮捕時に覚せい剤と注射器を所持していた事について
「捨てるつもりだったがどこに捨てていいか分からず持っていた」
 

 そりゃあ「ゴミはゴミ箱に」でしょうが。バカボンパパは植木屋、くらいの常識です。
 また、「資源ごみはリサイクルに」ですので、覚せい剤の水溶液を入れていた容器は、水洗いの上、リサイ
クル用のゴミ箱に入れるべきでしょう。
 …って、そんな幼稚園児でも分かるような事をいちいち言わせないで頂きたいですね。ここは大学なのです
ぞ、一応は。

 圧巻はナイフ所持に関する証言でした。

「やくざビデオを見ていて友人から借り、北海道の友人に見せに行くつもりだった」
 

 こんなバカがいるから、ゲームやマンガを葬り去ろうと考える辻本清美チックなオバハンPTAのご婦人方が
現れ出でるんですよ、まったく。
 しかし、今はそんな事を言ってる場合ではありません。それに続く証言が大変なことになっているのです。

「7日にJRAから(労使関係で)責められたことでむしゃくしゃしていたし、キリをつけたかった。男らし
く捕まるつもりでゲートに向かった」
 

 「友人に見せに行くつもり」と「男らしく捕まるつもり」……証言内容が全然一致してません。支離滅裂で
す。この際、裁判を中断してもう一度薬物検査をした方がいいと思います。

 で、証言の最後には突如号泣しまして、

「私の罪は許されるものではない。二度と罪を犯さないし今後、待ち受けるいばらの人生を妻と子供を守りし
っかり生きていくことを誓います」
 

 などと締めました。これまでの証言とその検証を踏まえてこの発言を読むと、行間に込められた真実が浮か
び上がってくるようで感慨深いものがありますね。我が仁川経済大学の、国語の入試問題にしたいくらいで
す。

 ……と、いうわけで初公判は終わり、即日結審。残るは27日の判決公判のみということになりました。
 そんな中、田原成貴が調教師として在籍していたJRAが、判決を待たずして彼の調教師免許を取り消しま
す。これは、田原自身が自らの罪状を認めたことなどが決め手となり、調教師免許取り消しの要件を満たした
ためです。これにより、田原は即日失職。選挙に落ちた自由連合の候補者のような状態となりました。
 そして、運命の判決公判。文字通り"墜ちた英雄"となった田原に下された判決は、

 被告人田原成貴を懲役2年に処す。ただし、その刑の執行を3年の間猶予する。

 …でした。俗に言う「執行猶予3年」というものです。執行猶予は実質、無罪に等しい判決ですので、田原
成貴はこれで自由の身となりました。
 執行猶予の理由としては、「反省しているし、社会的制裁(調教師免許取り消し)も受けている」という月
並みなもの。どうして裁判長は、駒木の拙文をチェックしていただけなかったのか、それこそ吉野家で小一時
間問い詰めたい心境なのですが、終わってしまった事です。仕方ありません。

 さて、最後にこれからの田原成貴について、少々述べて今日の講義を終わりたいと思います。

 田原成貴はこれからマンガ原作者、つまり作家としての道を歩み始めるわけですが、果たして展望は開ける
のでしょうか?
 と、いいますのも、彼の著作の中でも名作の誉れ高いエッセー集「競馬場の風来坊」シリーズは、ゴースト
ライターを使った著作であることが、出版業界の常識となっています(後にガクンとクオリティが落ちてから
は本人の著作だとのことですが)。文才そのものが疑わしいと言うわけです。それに、競馬界を追放された人
間の書いた競馬エッセーなど誰が有り難がるでしょうか?
 また、マンガの原作も既に数作手がけていますが、これも競馬の専門的知識については、さすがに舌を巻き
ますが、やはり肝心のストーリーテリングに関しては凡百の作家を超えるまでのレヴェルには達していない、
というのが現実です。作品が競馬に関するものに限られるというのも大きなハンデですし、限りのあるネタを
どう使い回ししてゆくか、という悲しい現実に近い将来ぶち当たる事にもなるでしょう。
 結局のところ、彼は騎手なのです。それ以外の何ものでもありません。その天職を捨ててしまったこれから
の彼の前途は、奇しくも彼自身が初公判で語った通り、いばらの人生となるでしょう。それだけは間違いあり
ません。そんないばらの人生を、人一倍プライドだけ高い彼がどうやって生き抜いていこうとするのか……?
 
 また、ひょっとしたらこの講義で田原成貴を扱う事になるかもしれませんね。その時、彼がどのような肩書
きで呼ばれているか、その辺も含めて注目してみたいと思います。それでは、今日の講義を終わります。(こ
の項終わり)。

 ……

 えーと、明日の講義ですが、明日は本来ならゼミ(演習)ですが、1日ずらして、別の講義をやりますの
で、よろしく。
 

 


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12月30日(日) 集中講義・競馬学特論
「2001年中央競馬総括」
 
 2001年の中央競馬は、先週の有馬記念をもって閉幕しました。地方競馬でも、昨日の29日に年内最後の重賞
レースである東京大賞典が行われ、こちらも事実上閉幕しています。よって、今週の競馬学特論は、これを受
けて今年の競馬、特に中央競馬の総括を行いたいと思います。
 本日の講義は二部構成。
 まず前半で、年度代表馬などのJRA賞の私家版を発表したいと思います。後日発表される公式版と見比べ
てもらえれば一興かと思います。
 そして後半では、当講座を担当する講師・駒木ハヤトの、今年・2001年における馬券収支の詳細を公開しま
す。普段はなかなか窺い知る事の出来ない他人の馬券戦線の顛末を見る絶好の機会ですので、どうぞお見逃し
無く。

 それでは早速、前半の「2001年度JRA賞・私家版」の選定に移りましょう。
 「JRA賞」ですので、対象は中央競馬所属馬のみとなります。審査の対象となるレースも、原則として中
央競馬開催のレースに限りますが、海外の重賞レースや地方ダートグレード競走(=中央・地方統一重賞)
は、審査対象として考慮するものとします。
 それでは、一覧表からご覧頂きましょう。当講座選定のJRA賞・私家版はこうなりました。

2001年JRA賞・私家版(駒木ハヤト選定)
 
年度代表馬 ジャングルポケット 
最優秀4歳以上牡馬 ステイゴールド 
最優秀4歳以上牝馬 トゥザヴィクトリー 
最優秀3歳牡馬 ジャングルポケット 
最優秀3歳牝馬 テイエムオーシャン 
最優秀2歳牡馬 アドマイヤドン 
最優秀2歳牝馬 タムロチェリー 
最優秀父内国産馬 (該当馬無し) 
最優秀短距離馬 トロットスター 
最優秀ダート馬 クロフネ 
最優秀障害馬 ゴーカイ 
ベストレース(私家版のみ) ジャパンカップダート 

 それでは、順番に選定理由を述べてゆきたいと思います。
 年度代表馬は一番最後に。
 というわけで、最優秀4歳以上牡馬部門から。候補に挙げたのはステイゴールド、アグネスデジタル、トロ
ットスター、レギュラーメンバー、テイエムオペラオー、メイショウドトウの6頭でした。
 まず、トロットスターはG1を2勝しているのですが、共に国内G1、しかも例年に比べて若干レヴェルの
低い短距離戦線でのものですので、脱落。レギュラーメンバーもG1を2勝していますが、2つともG1の中
では"格下"の地方競馬でのG1ですので、こちらも脱落としました。オペラオーとドトウは、実力は認められ
るものの、今年に限っては強調できる実績に欠け、こちらも脱落としました。
 で、残るは2頭。G1勝ち数で言うと、アグネスデジタルが3勝(香港国際C、天皇賞・秋、南部杯)に対
し、ステイゴールドは香港国際ヴァーズの1勝のみ。しかもアグネスデジタルは、ダートから芝まで、しかも
国際競走を含む活躍を見せており、強調できる点も多くありました。しかし、ステイゴールドはグレードこそ
国際G2ながら、実質はブリーダーズCターフに勝るとも劣らないレヴェルだったドバイシーマクラシックに
勝っており、これは国内G1に換算すると2勝分以上の価値があると判断、年間通じての活躍という点も加味
し、こちらを受賞としました。
 最優秀3歳牡馬は、G1を2勝したジャングルポケット、マンハッタンカフェ、クロフネの3頭による争い
となりました。クロフネは、ジャパンCダートの圧勝が高い評価を得ていますが、もう1つのG1勝ちが、中
央競馬G1の中でも屈指の低レヴェルとされるNHKマイルCであること、そしてダービーでジャングルポケ
ットに5着完敗を喫していることなどから脱落としました。
 残る2頭は、3冠レースと古馬混合のチャンピオン決定戦的なG1競走を1つずつ勝っており、実績面では
甲乙つけ難い状況です。しかし、ダービーやジャパンCといった、王道中の王道を歩んできたジャングルポケ
ットに敬意を表して、こちらを受賞としました。
 残りの部門は順当でしょうから、理由は割愛します。父内国産馬部門は、受賞するならナリタトップロード
なのですが、中途半端な成績で受賞させるくらいなら、ここは心を鬼にして「該当馬無し」とすべきだと判断
しました。
 また、ベストレースは、「何度でも観てみたい中央競馬のレース」を基準にして選定しました。"好勝負"と
いう点ならエリザベス女王杯も捨て難いのですが、レース後の爽快感という点を考慮すると、こういった結果
になりました。
 そして最後に年度代表馬。ジャングルポケットとステイゴールドの一騎討ちになったのですが、秋シーズン
の3歳馬VS古馬の勢力関係を考えると3歳馬が優勢ですし、「年度"最優秀"馬」ではなく、「年度"代表"馬」
であることを考えると、日本競馬界の花形であるダービーを勝ち、今年の重要テーマの1つであった世代交代
を成し遂げた急先鋒ということで、ジャングルポケットを選出した次第です。
 恐らく、本家のJRA賞とは食い違う点も出てくるでしょうし、受講生の皆さんとも意見が異なることもある
でしょうが、これも1つの見方であるとの認識をしてもらえれば、と思います。

 ……

 では、続きまして後半戦です。
 この「競馬学特論」は、中央競馬のG1レース開催週に予想や観戦記を掲載してきました。講義の開講の時期
が遅かった事もあり、今年に関してはあまり充実した講義とはなりませんでしたが、それでもある程度密度の
濃い講義が実現できたのではないかと思っております。
 しかし、受講生の中には、
 「そんなに偉そうに能書きを垂れているアナタは、どれほどのモンなのか?」
 と、思われている方も多いと思われます。
 そこで、今年の駒木ハヤトの馬券収支決算を公開して、皆さんに判断してもらおうかな、と、そういうわけ
です。
 で、以下はその収支決算表になるのですが、多くの方は馬券の購入金額の少なさに驚かれるかもしれませ
ん。しかし、これは駒木が「1点100円、3点買い」を基本戦術にしているからです。(ただし、G1レースは
この限りではありません)
 競馬というギャンブルは、25%という高い控除率のために、長期的な観点で言えば負けて当たり前の設定に
なっています。それを考えると、賭け金を増やす事は自殺行為に他なりません。また、巷に蔓延る「馬券購入
額が大きいものほど偉い」という根拠不明の認識に対するアンチテーゼの意味合いも含めて、駒木は100円馬
券のスタンスを貫いています。
 というわけで、その点を認識した上で、収支決算表をご覧下さい。

 ★表1・月別収支決算表(単位・円) 

月 投資
金額 回収
金額 月別
収支 累計
収支 
1月
 3600 5760 +2160 ─ 
2月 2200 910 -1290 +870 
3月 4500 2540 -1960 -1090 
4月 4800 7160 +2360 +1270 
5月 5300 4840 -460 +810 
6月 3600 840 -2710 -1900 
7月 2800 0 -2800 -4700 
8月 8月は全休 
9月 2600 6280 +3680 -1020 
10月 4600 4650 +50 -970 
11月 5400 5300 -100 -1070 
12月 5700 4330 -1370 -2440 
総合 45100 42660 回収率94.59% 

 ★表2・G1と他のレースの収支対比(単位・円) 

種別 投資
金額 回収
金額 種別
収支 回収率 
G1 11100 7360 -3750 66.31% 
その他 34000 35310 +1310 103.85% 

 ★表3・月別馬券的中率(単位・レース、カッコ内はG1レース) 

月 購入
回数 的中
回数 的中率 
1月
 12 4 33.33% 
2月 6(1) 2(0) 33.33% 
3月 13(1) 5(1) 38.46% 
4月 14(3) 5(2) 35.71% 
5月 15(3) 5(1) 33.33% 
6月 10(2) 3(1) 30.00% 
7月 9 0 0% 
8月 全休 
9月 13 5 38.46% 
10月 13(3) 5(1) 38.46% 
11月 16(4) 7(3) 43.75% 
12月 16(3) 6(1) 37.50% 
総合 124(20) 47(10) 37.90% 

 では、簡単に解説などを。
 総合的な観点から見ると、7月のスランプが全てだったかな、という気がします。他の月は安定して30%台
後半~40%台前半といった、3点買いとしてはハイアベレージといえる数字を叩き出しているのに、この月だ
けはいかにも酷すぎますね。
 また、的中率の割に金額の収支がバラついているのは、的中した馬券の配当(倍率)が違うからです。配当
金が3ケタ(倍率一ケタ)の堅い馬券しか的中しなかった月は赤字ですし、中穴馬券がゲットできた月は黒字
になっています。ギャンブル社会学の世界では、「本命党とは、緩やかにそして必ず負ける人たちのことを言
う」というのが常識なのですが、この収支を見ると、それが間違っていない事がよく分かると思います。特
に、G1レースは的中率50%なのに、買い目が多いのと、エリザベス女王杯(20.5倍)以外は全て3ケタ配当だ
ったことで期待値(約75%)割れの惨劇に。G1だけはどうしても当てにいってしまうので、こういう事態も覚
悟の上なのですが、やはり数字と言うのは冷酷なものですね。
 と、いうわけで、今年は回収率約95%の"大健闘の末惜敗"となりました。来年のこの時間で、高らかに勝利
宣言ができるように頑張りたいと思います。
 この競馬学特論は、来年の中央競馬G1レース開幕までしばらくお休みとなります。その間は「競馬学概論」
として、別企画を立ち上げますので、これからも毎週土曜日をお楽しみに。それでは、今日の講義を終わりま
す。(この項終わり)
 

 


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12月28日(金)マーケティング概論
「駒木博士、冬の思い出」
 
 使い尽くされて鬱陶しい言葉ですが、年の瀬です。師走とも言います。世の先生方も走るほど忙しいという
ことなんでしょう。
 ところで、一応ワタクシも世間的に"先生"と呼ばれる身分であるのですが、自分が走る時と言えば、「締め
切り1分前です」の声を聞いて馬券・車券売り場に駆け込む時くらいなもので、もっぱらお馬さんや自転車に
乗った人たちが走るのを眺めていることの方が多い始末です。どうやら、師走という言葉が間違っているか、
ワタクシが先生の資格が無いかどちらかのような気がしますね。

 しかし、自分がここ数年間、"師走"をどう過ごしたかを振り返ってみますと、去年は高校の仕事が無くなっ
てフテ寝、一昨年はマンガ喫茶のバイトで『じゃりん子チエ』全巻読破中と、今年同様全然走ってない師走も
多いのですが、本当に"師走"していた冬もあったことを思い出したりしました。
 それは今から3年前、ワタクシが甲南大学の文学部に籍を置きつつ、学習塾の非常勤講師で馬券資金稼ぎを
していた頃の話になります。

 学習塾の"かきいれ時"というのは、何と言っても夏・冬・春の長期休暇であります。"集中講座"の名の下
に、普段学校に行っている時間帯に子どもを塾に集めることで、出来るだけ多くの授業料を回収しようと言う
わけです。
 教室のキャパシティギリギリまで生徒を詰め込み、講師・職員を過労死寸前まで酷使して"売上げ"を伸ばそ
うとするわけですから、当たり前のように授業のクオリティは下がり(その反面、嫌なテンションだけ上がり
ますが)、生徒もいつもより息苦しい思いをする事になります。ですが、んな事関係ありません。塾だって慈
善事業じゃなくて商売でやってるわけですから、稼げる時に稼げるのは当然の事。母の日前後にカーネーショ
ン相場が上がるが如く、正月前後はボーリング場の料金が跳ね上がるが如く、コミケ当日は秋葉原周辺とヤフ
ーオークションが熱く燃え上がるが如く、世の中全ての営利団体は、稼ぎ時には手段を選ばないものなので
す。学習塾も例外ではないわけです。
 とはいえ、学習塾業界というものは、同じ地域に同業者が複数巣食っているのが普通であります。ですから
自然と、"金の成る木"である普段塾に通っていない子どもを、複数の塾が激しく争奪することになります。言
わば新宿歌舞伎町の裏通りと同じ状態ですね。
 そこで、学習塾はあの手この手を使って"営業"をします。塾生から紹介された友人の授業料を割り引くとい
った、風俗店で言うところの「『サンスポ見たヨ』で1000円引」にあたるサービスや、DM・テレアポといった
お馴染みの手段などが良く使われる手段ですが、ワタクシが所属していた塾では、古典的なチラシのポスティ
ング(団地・マンションのポストにチラシを放り込んでゆく)が行われていました。
 しかしコレ、ただのポスティングではありません。
 余計なコストの発生を避けるため、ポスティングをするのは塾の"先生"方です。普段は教室で授業をしてい
る人たちが、下はバイト君から上は教室長に至るまで、全員でチラシを撒きに行くのです。一般企業で言え
ば、課長さんが暴走族上がりのバイトと混じってティッシュを配ってる、みたいなものでしょうか。
 普段は身分不相応に偉そうぶっている"先生"方ですから、これがチラシを撒くために走り回っていると言う
のは滑稽であることこの上ない話ですので、作業の"決行"は、自然と夜中になります。塾の正規業務が終わっ
た午後11時30分頃、約10人の職員が10000枚のチラシを分配して、「散!」とばかりに近所中へちらばってゆ
くことになるのです。
 この真夜中のポスティング作業、夏はまだいいのですが、冬期講習の募集チラシを撒く時は12月、つまり今
頃です。ハッキリ言ってアホほど寒いんです。
 しかももっと寒い事に、この作業、バイトの時給は本来の授業時給ではなく、雑用等に適用される事務時給
が適用されるのです。その時給額、実際に金額を書くと生々しいので、ボカして書きますが、松屋でカレギュ
ウ+生野菜+玉子を食ったら綺麗サッパリ無くなる額でした。「時給750円以上」で不平不満が絶えなかっ
た、今から3年前の話です。
 こんな時給で、しかも厳寒の中ですから、出来るだけ作業を早く終えようと皆、夜の町を駆け巡ります。新
聞配達の少年のようにチラシの束を抱えてひた走る塾のセンセイ。そう、この頃、まさにワタクシは「師走」
の中にいたのです。

 ……気が付けば、思い出話で講義に代えてしまいました。なんて手抜きなんでしょうか。申し訳ございませ
ん(高嶋弟風に)。

 しかし、最後にもう一言言わせてください。

 このポスティング作業、何が一番辛いか。
 この作業では、大の大人が10人がかりで10000枚のチラシを撒くわけです。これで文字通り"千客万来"にな
れば、苦労も報われる、本部から臨時ボーナスも出る、というわけなのですが……。
 結論を言う前に、まずこちらをご覧下さい。出会い系サイトの管理人が、10000人分のアドレス名簿を購入
してDMを送り、その結果をレポートしたものです。
 10000人にDMを送ってみたものの、実際に獲得できた会員は僅かに5件。しかもその約8倍のウィルスメー
ルが届くという悲惨な事態に、管理人の無念と痛さが伝わってくる思いです。
 塾で行ったポスティングも似たような結果でした。このチラシの反映率──実際に契約に結びついた率──
は0.1%。つまり、新入生の獲得はわずか10人にとどまったということです。この結果を知った途端、職員一
同が脱力したのは言うまでもありません。

 現在、その塾ではポスティング作業はほとんど行われなくなったそうです。コスト削減に勤しむこのご時
世、それも当たり前の話なのですが、そんな話を聞いた時、ワタクシは何やら複雑な心境になるのです。(こ
の項終わり)
 

 


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12月27日(木)映像文化論
「してはいけない"2本立て"についての考察」(3)
 
 いきなり余談です。
 どうも昨日、今日あたりから一部の検索エンジンで当講座がヒットするようになったみたいで、講義記録
(アクセス解析)にも報告が載るようになりました。
 しかし、その中で「矢井田瞳のCD売上げ」でヒットしていたのが気になります。
 …気になる、というか、謝っときます。ごめんなさい。

 ……

 さて、気を取り直して講義へ移りましょう。
 前回は、最もやってはいけない『2本立て』である、混ぜてはいけない"洗剤化学反応"パターンの前フリを
したところで終わったのでした。今回は、その解説から始めます。前回までの講義内容は、こちら(第1回)
とこちら(第2回)を参照のこと。

 この"洗剤化学反応"パターン、いきなり比喩から入ってしまったために、イマイチ全体像が見えて来ない人
がいるかもしれませんので、そこから解説しておきましょう。
 元来『2本立て』というものは、その1本だけではインパクトが弱くて集客能力の乏しい映画作品を、2本
同時上映することでその弱点を補強するために行われます。ですから、同時上映される2本の映画はインパク
トが強すぎてはいけないわけです。
 例えば、理科教師が原発からウランを盗んできて原爆を作り、警察・国を脅迫する話の『太陽を盗んだ男』
や、ヴェトナム戦争帰りで不眠症のタクシードライバーが、惚れた女性をポルノ映画に連れて行ったり、選挙
演説中の候補者を撃ち殺そうとしたり、少女売春を取り仕切るマフィアと殺し合いをしたりする『タクシード
ライバー』などは、絶対ダメなわけです。西村知美が大写しになったポスターに「ダメ、ゼッタイ」とでも書
いて、貼り出さにゃならんほどです。
 これでもまだピンと来ない人のために、ごく最近の映画を例に取りますと、『ハリーポッターと賢者の石』
と『シベリア超特急2』を同時上映してはイケナイ、ということです。お分かりでしょうか?

 ですが、その禁忌を破り、"混ぜたら危険"の洗剤を混ぜた主婦が風呂場でもがき苦しむように、客席中の
客、特に子どもをもがき苦しませてしまった事例があるのです。しかも、あのスタジオジブリです。あの宮崎
駿と高畑勲なんです。
 ……時を遡る事13年前、スタジオジブリが、子どもをターゲットにしたほのぼのファンタジー・ストーリー
『となりのトトロ』を製作し、東宝の配給により上映する事になりました。ユーモア溢れるキャラクター、牧
歌的でギスギスした雰囲気など皆無のストーリー。『トトロ』の魅力は、瞬く間に日本中の子どもたちを魅了
し、多くの家族連れが映画館に足を運びました。子どもは「トトロ、トトロ♪」などと口ずさみながら、館内
に吸い込まれていきました。

 しかし、それは巧妙な罠だったのです。

 館内の子どもたちが『となりのトトロ』のエンディングを観終わり、とても幸せな気分に浸っていたその
時、終戦直後の駅構内で衰弱死する少年の姿が大写しになったのです。
 『火垂るの墓』の上映が始まった瞬間でした。

 90分後──

 館内のドアが開け放たれ、子どもたちが出てきました。しかし、そこにはもう「トトロ」の「ト」の字もあ
りません。
 聞こえてくるのは、嗚咽、号泣、すすり泣き。まるで自分の学校に宅間守がやって来たかのような阿鼻叫喚
の情景がそこにありました。
 これ以降、スタジオジブリが同時上映を避けるようになったのは言うまでもありません。『となりの山田く
ん』の時も、"単品"で勝負したところを考えると、子どもたちだけではなく、スタジオジブリの上層部にも、
『トトロ』→『火垂るの墓』コンボは、相当なダメージとトラウマを残してしまったようです。

 …これが、日本映画史上に残る悲劇の顛末だったのですが、これと似た状況が起きようとした事もありまし
た。まさに日本映画史の"キューバ危機"とも言うべき出来事でした。
 それは、かの畑"ムツゴロウ"正憲氏がプロデュースした動物映画・『子猫物語』。PTAなどの受けも良く、"
子どもに見せたい映画"として高い評価を得た映画だったのですが、これも一歩間違えると『トトロ』→『火
垂る』と同じ道を歩むところでした。
 と、いいますのも、この映画にはメイキング版が存在していまして、一歩間違えると──敢えてこの表現を
使いましょう──『子猫物語』本編と同時上映されて、とんでもないことになるところだったのです。
 この『子猫物語』、主役はチャトランという名の子猫です。何故チャトランか、というと茶色のトラ猫だか
らで、何故茶色のトラ猫が主役になったかというと、茶色のトラ猫は猫の中でも非常に数が多いからなので
す。……察しの良い方は、もうお分かりですね?

 撮影当時のエピソードを一部紹介しましょう。
 チャトランが脚を引きずるシーンが上手く撮影できなかった時、ムツゴロウさんがおもむろにチャトランを
抱き上げ、「よし、皆、後ろ向いてろ」と、言う。訝しげにスタッフが後ろを向いて数十秒、今度は、「もう
いいぞ」という声がする。で、前を振り返ると、そこにはリアルに脚を引きずるチャトランの姿があった……
などといった風景。
 あるいは、チャトランが小さな木箱か何かに乗せられて川を漂流。最後には、滝に飲み込まれてチャトラン
大ピンチ! というシーンの撮影。チャトランは本当に滝に飲み込まれてしまい、その後何のフォローも無い
まま、「次いってみようか」……などといった風景。

 ……こんなのを同時上映した日には、文部省推薦どころか、グリーンピースが動物王国を襲撃すること請け
合いです。よかったですね、やらなくて。

 とまあ、こんな感じで、アクの強い作品を同時上映してしまうと、いくらもう片方の映画がほのぼのしてよ
うが、教育的配慮に富んでようが、全てが台無しになってしまうわけです。
 しかし、映画業界の偉いさんもバカじゃありませんから、こんな"悲劇"はそう起きるものでもありません。
大抵は、『子猫物語』のように、事前に危機は回避されるものなのです。

 ところが。
 『トトロ』の悲劇から13年、またも東宝がやってしまいました。まずは、同時上映される2本の映画のタ
イトルをご覧下さい。

 『とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』
 『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』

 ……『とっとこハム太郎』についての説明はあまり必要でないと思います。小学館の児童雑誌に連載されて
いるマンガのアニメ映画化で、主題歌はミニモニ。が担当しています。典型的な子供向け癒し系アニメです
ね。
 もう一方の『ゴジラ──』。今作は、これまで『ガメラ』シリーズのメガホンを取ってきた金子修介監督
が、念願の『ゴジラ』シリーズの監督に就任しての第一作になります。今作の中での大きな狙いの1つとして
挙げられるのが、"怪獣に殺される人々の痛みがリアルに伝わるような演出"で、観ている人の胸を締め付ける
ようなシーンが続出します。
 もう、余計な説明は不要でしょう。まさに『トトロ』→『火垂る』コンボの再現です。あの生き地獄のよう
な風景が、デ・ジャヴのように蘇るのです! 
 事実、試写会において、『ゴジラ』の上映中に、ハム太郎目当ての幼い子どもたちは悲鳴をあげ、泣き叫ん
でいたそうです。可哀想に。

 この講座を受講されている方の中で、将来は映画に携わる仕事がしたい、と考えている人がいるかもしれま
せん。そんな方はお願いですから、この悲劇を繰り返さないようにして下さい。後生です。

 さて、例によってとりとめが無くなってしまいましたが、時間です。これで「映像文化論」の講義を終わり
たいと思います。(この項終わり)
 

 


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12月26日(水)演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(12月第5週分)
 
 さぁ、今週もゼミの時間となりました。今週は先週と逆で、「週刊少年ジャンプ」がお休み(翌週分が今週
金曜に繰り上げ発売)のため、「週刊少年サンデー」を対象としたゼミとなります。
 しかし、それだけでは余りにも内容が乏しいので、先週できなかった「週刊少年ジャンプ」の次回打ち切り
予想を実施したいと思います。

 ……

☆「週刊少年サンデー」2002年新年4.5合併号☆

 ◎新連載「焼きたて!! ジャぱん」(作画・橋口たかし)

 形式上は新連載ですが、今年に短期集中連載されていた同名作品の再開です。
 「週刊少年ジャンプ」では、中堅作家の新連載を立ち上げる際には、まず同じ設定の読み切り作品を描か
せ、そのアンケート結果を検討した上で話を進めることがありますよね。その「サンデー」バージョンが、こ
の"短期集中連載→アンケート次第で連載再開"なのです。アンケート内容が良ければ、晴れて週刊連載です
が、もしも逆の結果となった場合は月刊サンデーに"左遷"され、それも半年ほどで打ち切られる、という悲劇
が待っています。「ジャンプ」の10週打ち切りシステムばかりが目立っていますが、エゲつないシステムは
「サンデー」にもあるのです。
 と、いうわけで、この作品は"勝ち組"になるわけなのですが、個人的な意見を言わせてもらうと、まさかこ
の作品が"勝ち組"に入るとは思いませんでした。自分の見識の無さを深く恥じる次第ですが、それでも言いた
いことはあります。
 この作品、ハッキリ言ってしまうと、「ミスター味っ子」のアニメ版を、題材をパンに特化して再現しただ
けなのです。
 演出過多、分かり易すぎる予定調和の展開。確かに「ミスター味っ子」連載&放映当時には、その手の作品
が受け入れられる余地があったと思うのですが、この21世紀ではどんなものでしょうか? ……まぁ、短期集
中連載のアンケートが良かったわけですから、受け入れられていると判断できるのですが、それにしても……
(汗)。確かに絵は綺麗ですし、とびきりつまらないわけではないのですが……。
 そういえば、今週「マガジン」で始まった作品は、「北斗の拳」の世界観で「西遊記」をやるような設定で
した。そういうのが流行りなんでしょうか? 新人マンガ賞ではオリジナリティを求めているはずの編集サイ
ドが、実際に連載を起こす段階で、既存の作品の焼き直しをしていたんでは……(汗)。
 7段階評価は、とりあえず私情を抜いてBに。それにしても、先週開始の『疾風の橘』もそうですが、イタい
主人公のマンガが多いですねえ、「サンデー」って(苦笑)。

 ……

 新連載&読み切りレビューは以上。次に「週刊少年ジャンプ」の次回打ち切り予想へ移ります。
 さて、この予想なんですが、これは、あくまでも駒木ハヤト個人の予想です。考え方は人それぞれであるこ
とは当たり前ですので、ご自分の好きな作品が打ち切り予想だったとしても、気を悪くしないように。

「週刊少年ジャンプ」次回打ち切りダービー
("枠順"は、新年第3号掲載順)
 
駒 作品名 作者 
  ROOKIES 森田まさのり 
  遊☆戯☆王 高橋和希 
  NARUTO 岸本斉史 
  ONE PIECE 尾田栄一郎 
  シャーマンキング 武井宏之 
  テニスの王子様 許斐剛 
▲ もののけ!ニャンタロー 小栗かずまた 
  BLEACH 久保帯人 
  ヒカルの碁 ほったゆみ/小畑健 
○ ソワカ 東直輝 
△ サクラテツ対話篇 藤崎竜 
  Mr.FULLSWING 鈴木信也 
  ライジングインパクト 鈴木央 
  BLACK CAT 矢吹健太朗 
× ボーボボボ・ボーボボ 澤井啓夫 
注 HUNTER×HUNTER 冨樫義博 
  ストーンオーシャン 荒木飛呂彦 
  こちら葛飾区亀有公園前派出所 秋本治 
◎ 世紀末リーダー伝たけし! 島袋光年 
  ピューと吹く!ジャガー うすた京介 
  ホイッスル! 樋口大輔 

 ★駒木ハヤトの見解★

 次回打ち切り開始は、恐らく2~3ヵ月後。打ち切り該当作は、あと8~10回程度の"命"となる。
 現連載陣のストーリーマンガ部門は、話に区切りがつくまでに時間がかかりそうな作品が多い。また、人気
下位の作品には、打ち切り話を持ち出し難いベテラン作家がズラリと並んでいるため、どうやら"受難"は新連
載作品とギャグマンガ部門に絞られそうだ。
 本命は、現連載陣から『世紀末リーダー伝たけし!』とした。最近人気低迷が顕著だし、内容のテコ入れが
頻繁に起こり始めている。残念ながら、そろそろ連載終了のタイミングが見えてきた。
 新連載の3作品も有力候補。それぞれの作品に問題点がある上、現連載陣の層が厚く、前回の打ち切り戦線
同様、新連載作品が全滅、ということも考えられる。
 伏兵としては、ここ数週間でアンケート順位がガタンと落ちた『ボーボボボ・ボーボボ』や、最早掲載され
ている方が珍しい『HUNTER×HUNTER』など。

 ……

 と、いうわけで、賛否両論ありそうな今日のゼミでしたが、いかがでしょうか? 感想・異論などありまし
たら、BBSやメールなどでよろしくお願いします。
 それでは、今日の講義を終わります。
 

 


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12月25日(火)映像文化論
「してはいけない『2本立て』についての考察(2)」
 
 さて、綱渡り的に連日講義を実施できていますが、なんだか最近、"1人で閉店寸前の日焼けサロンを切り
盛りして過労死寸前"なこの人と自分がダブるような気になって来ました。
 おそらく、年内に1~2度、休講をさせて頂く事になるかと思いますが、どうかよろしく。

 ……さて、そんな世迷言はさておき、昨日の講義の続きです。
 「不思議の海のナディア・劇場版」と「電影少女・実写版」の同時上映・『2本立て』の命運は如何に? 
というところからですね。
 如何に? …などと、1日引っ張って、いろいろな表現を考えてみたものの、この映画を劇場で実際に観た
時の印象が一番的確だと思いますので、それを採用させてもらいます。
 ↓

 

 ウワァ・・・・・・

 

 ……そもそも、TV版全39話で、完膚なきまでに完結させてしまったお話を、もう一度中途半端なところで蒸
し返す事に無理があったのです。いや、そんな事だけでは語りきれないものがありました。
 別の作品に喩えてみれば、こうなります。

 ……

 レトロブームに乗って、『巨人の星』の続編、しかも劇場オリジナル版の製作が決定。『巨人の星・マスタ
ーズリーグ編』と題して話を作り始める。
 しかし、よく考えてみたら、どう考えても星一徹は死んでいる年齢、明子ねえさんも更年期障害が出て来る
ような年齢で、共に登場不可。
 ライバルたちも持病の腰痛や中年太りで精彩を欠く。弟妹たちが立派になって稼ぐ必要がなくなった左門に
至っては、性格まで陽気に変わってしまってて世界観台無し。仕方ないので新しくライバルを登場させるが、
結局は引退したロートルなので盛り上がらず。
 そもそもマスターズリーグは各チーム16試合しかないので、あっという間にお話が終わってしまう。映画は
90分あるのに、このままだと50分くらいでまとまってしまいそう。どうしようもないので、TV版の映像をつな
ぎ合わせて回顧シーンを作り、それで30分以上誤魔化して一件落着(と思い込もうとした)。
 こんな感じなので、企画書段階で既にTV版やオリジナル版の作家・スタッフは「やってられん」と自主的に
降板。その降板した人たちのアシスタントや弟子にお鉢が回ってきて、尻拭いをさせられる羽目に。
 その上、ギリギリになって「今更、『巨人の星』で客が集まるか?」という上層部の鶴の一声で、急遽同時
上映作品を作る事が決定。「どうせグダグダになるんだから、知名度高い作品でお茶を濁そう」ということに
なり、『ああっ女神さまっ』の映画版、しかも時間がないので、素人をオーディションで集めて実写で撮る事
にする。
 と、いった裏事情を全てオフレコにして劇場公開。そして夜逃げ同然に撤収。

 ……

 こんな感じです。

 まあそんなわけですから、映画の出来は酷かったです。どのくらい酷かったかというと、尻拭いをさせられ
た映画版の主要スタッフの方々は、それ以来ガイナックスの作品に名を連ねる事が無かった、と言えばお分か
り頂けるでしょうか?
 もっと端的に言いますと、同時上映の『電影少女・実写版』は全然ストーリーもキャストも覚えていないけ
れども、『ナディア・劇場版』よりまだマシだった事だけは明確に覚えているのです。
 さらに分かりやすく言いますと、クソ不味いラーメン屋で食った、味のしない餃子……いや、これ以上は止
めておきましょう。武士の情けです。

 ……話の本筋から大幅に脱線しましたが、このように、"合わせ技一本"型の『2本立て』は、えてして失敗
に終わる事が多いのです。
 が、この『ナディア』&『電影少女』のように、"警告2つで反則負け退場"ならば、まだ物笑いの種になる
だけで済むのですが、それだけでは済まない場合もあります。
 それは"洗剤化学反応"パターン。混ぜちゃいけない2つの作品を混ぜてしまったがために、両方の作品が台
無しになってしまう、という悲しいパターンです。次回、最終回はこのパターンによって巻き起こされた悲劇
について語りたいと思います。
 明日はゼミ(演習)ですので、続きは木曜日に。それでは今日の講義を終わります。(この項続く)
 

 


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12月24日(月・休)映像文化論
「してはいけない『2本立て』についての考察」(1)
 
 時間と体調が煮詰まっておりまして、今日も短縮授業になります。ご了承ください。

 ……

 最近は減りましたが、映画業界には『同時上映』、つまり『2本立て』というものがあります。

 『2本立て』の類型としてまず挙げられるのは、メインの作品に付属する形で、その作品に関連した短編~
中編映画が同時上映されるパターン。
 その一例としては──若干古い話で恐縮ですが──「機動戦士ガンダム・逆襲のシャア」のロードショー公
開時に、短編の「SDガンダム」が同時上映された、ということが挙げられます。同じ「ガンダム」関連のギ
ャグ作品で客を掴んでおいて、メインの「逆襲のシャア」に繋いでゆく、という好連携でした。
 また、春恒例の映画「ドラえもん」も、このパターンの『2本立て』または『3本立て』を実施するのが常
です。しかも同時上映には、"単独では商売にならないが、それでも是非映画にしてみたい作品"が用意された
りするので、年季の入った"20年選手"のドラえもん・藤子不二雄愛好家をも唸らせる事が多々あります。 

 『2本立て』の類型で次に挙げられるのが、単独では今少しボリューム・インパクトに欠けると思われる作
品2つを"抱き合わせ"して、"合わせ技一本"を狙う『2本立て』です。
 この場合、同時上映される2本の映画には直接関連が無いことが多いというのが特徴です。傾向の異なる2
作品を上映する事により、それぞれのファン層を映画館に集結させようという考えがあるのでしょう。
 ただしこの類型の場合、プロデュース側は「2作品共に、少なくとも"技あり"級の出来にはあるだろう」と
考えていても、実は"有効"や"効果"がせいぜいで、結局は2作品の固定ファン、しかも大きなお友達しか映画
館に来なかった、なんてケースが多々見られます。「東映まんが祭り」のように、「ハナから"有効"3つで判
定勝ち狙い」な企画物は別として、目論見が外れて大失敗に終わる事が多いのが、この類型です。
 ですので、この類型は、無神経にホイホイと実例を挙げてしまうと、痛々しい上に少ない固定ファンの怒り
を買ってしまうため、おいそれと作品名を挙げる事が出来ないのが辛いところです。
 しかし、玉虫色のまま話題を先に進めるのもアレですので、ここは晒し上げても支障の無い、"技あり2つ
どころか警告2つで退場"だった実例を紹介しておきましょう。
 作品名を挙げますと、「ふしぎの海のナディア・映画版」と「実写版・電影少女」。ああ、受講生の皆さん
の「ウウウゥ……」と呻吟する声が聞こえてくる気がします。
 「ふしぎの海のナディア」は、ガイナックスとNHKエンタープライズによって製作され、年間(39回)に
わたって放映されたアニメーションで、今もって名作との賞賛の声が絶えない作品です。今年2001年にはDV
Dで復刻されるなど未だに注目度も高く、また、ディズニーの最新作『アトランティス』の事実上の原作とし
ても有名な作品ですね。
 これらのことを考えると、「ナディア・映画版」は外しようの無い名作となるはず…でした。しかし、映画
版製作の決定が遅かったことに加えて、TV版の製作も遅れに遅れていましたし、作ってるのがそもそもがガ
イナックス、ということもありまして、現場はたちまち修羅場と化してしまいました。その影響もあったので
しょう、制作サイドは「ナディア」単品での上映を断念、"抱き合わせ"形式の同時上映となったようです。し
かし、その「電影少女」も急な話だったせいでしょう、早々とアニメでの製作を諦め、時間のかからない実写
版ということになりました。
 と、このように、マンガ「MAJOR」の聖秀学園野球部のような様相となったこの2作品、公開されるや
否や、ドえらいことになってしまうのです。

 ……と、どうドえらいことになってしまったかはまた明日に。今日はここまでにしておきましょう。(この
項続く)
 

 


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12月23日(日・祝)経済学(一般教養)
「マクドナルド『平日半額』終了の波紋」
 
 今日は諸事情ありまして、短縮授業となります。ボリューム的に多少問題ありかもしれませんが、ご理解下
さい。

 ……

 さて、我々が有馬記念に浮かれている最中、とんでもないニュースが配信されました。
 デフレ時代の象徴とされた、マクドナルドの平日半額キャンペーンが今年一杯で終了する、というもので
す。
 ハンバーガー65円、チーズバーガー80円、フィレオフィッシュ120円。その、それまでの固定観念を大いに
揺さぶるような価格設定は、全国中の人々を大いに沸かせました。「半額に出来るんなら、どうして今までや
らなかったんだ。お前ら、ボッタクリか?」とか、「それって、ある意味『休日倍額』ってことだよね?」…
などといった、ごもっともな指摘心無い声を浴びせる人もいましたが、大多数の人たちには快く受け入れられ
たのでした。中には、喜びの余り「ハンバーガー100個食ってやる!」と、マクドナルドへ押しかけるグルー
プが続出。その自爆テロにも似た行為は、全国のマネージャートレーニーを恐怖のどん底へ陥れたりしたもの
でした。
 しかし、それももう終わりなのです。
 もっとも、キャンペーンが終了するからといって、値段がそのまま倍額になるというわけではなく、例えば
ハンバーガーは80~100円近辺で平日・休日関わりなく販売される事になるそうです。
 どうでもいい話ですが、アスキーの株価がその辺りに下がって来てますね。ハンバーガー1個の価値しかな
い株価の会社……。アスキーの関係者の心情、お察し申し上げます。

 ですが、よく考えてみれば、マクドナルドが「バリューセット」などの値下げ戦術に出た頃の価格設定は、
「ハンバーガー100円、チーズバーガー120円」でした。この時はこの時で大盛況となり、特に競馬場・ウイン
ズ近辺のマクドナルドには、午前中で複数の福沢諭吉とお別れしたお父さん方が殺到。本来、垢抜けているは
ずの店内の雰囲気をハローワークのように変えてしまった、という笑えない微笑ましいエピソードもあったり
しました。
 そして、この大盛況を受けて、マクドナルドは更なる値下げ戦術に踏みきった、という経緯がありました。
一説によると、この時、藤田田社長(当時)は初めて、「安くすれば物はたくさん売れるんだ」と気付いたそ
うです。いやはや、偉い人の心理構造は分かりませんな。
 ちなみに、このたびのキャンペーン終了の際に経営陣から出た言葉は「安いだけで売れる時代は終わった」
だそうです。そりゃそうかもしれませんが、そういう事は、一度モスバーガーに行ってから言って貰いたいと
思います。

 まぁ、ハンバーガー65円という設定が、利益を出すためにはかなり厳しかったというのは否定しません。
 原価や人件費などを考慮すると、ハンバーガー1個あたりの純利益は2円とか3円とかといったレヴェルであ
ったと聞きます。それが、先般の狂牛病騒動や、円安による仕入れコスト増大などが積み重なって、キャンペ
ーンの存続を断念させたのかもしれませんね。
 とりあえず月並みな言葉ではありますが、マクドナルドさんには頑張って欲しいものです。

 余談ですが、マクドナルドと同様に薄利多売でデフレ社会を生き抜いてきた企業の代表格が、100円ショッ
プのダイソーを経営している大創産業です。
 この会社のコンセプトは、「原価1円の物を100円で1個売るよりも、原価99円の物を100円で100個売るほ
うが簡単」というものです。
 そのためには、本来原価100円を超えるような商品を、常識から外れたような大量発注・大量仕入れでコス
トダウンを図るのだとか。
 一例を挙げますと、ダイソーでは「ことわざ事典」のような小冊子を販売してますが、この小冊子、9億
5000万円分仕入れたそうです。9億ですよ、9億。9円置くんとちゃいまっせ……などと、トミーズ雅も狼狽
するような額であります。
 仕入れ単価が95円とすると、なんと1000万部。数家庭に1冊置いてある計算になる、空前の大ベストセラー
になります。○○の○○や、○○○○の信者が、教祖の本を書店でビックリマンチョコのような大人買いを炸
裂させても、せいぜい数十万部。その格差たるや甚大であります。

 大創産業様、新たに本を出版する時には、どうぞ当駒木研究室にご相談を。9億5000万円分、何でも書かせ
てもらいますゆえ。

……などと、いったところで今日の講義は終わりたいと思います。本当に中身が無くて、自分でも呆れかえる
次第ですが、文句は、冒頭で述べた「諸事情」を作った、アメリカンボスと江田照男騎手にお願いします。
(この項終わり)
 

 


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12月22日(土)集中講義・競馬学特論
「G1予想・有馬記念編」
 
駒木:「さあ、いよいよ有馬記念だね。香港国際競走が盛んになったり、地方競馬の東京大賞典に"1年で最
後のG1レース"の地位を奪われたりで、以前に比べたら少々影は薄くなったけれども、それでもやっぱり、競
馬ファンにとって有馬記念は特別なレースなんだよね」
珠美:「そうですね。でも博士、競馬関係者の皆さんは、『特別なのはダービーだ』って、よくおっしゃいま
すけど…?」
駒木:「関係者はね。でも、競馬ファンにとっては、やっぱり有馬記念だよ。全部の馬が全力投球で臨んで来
るし、何より印象的なレースが多い」
珠美:「そういえば、オグリキャップのラスト・ランとか、トウカイテイオーの復活とか、色々ありますね」
駒木:「僕が生まれたばかりの頃の話だけど、テンポイントとトウショウボーイの壮絶な一騎打ち、なんての
もあった。今でも『日本競馬史上、最高の名勝負』と言われているレースだよ。そう言えば、去年の有馬記念
も凄かった」
珠美:「今年も出走している、テイエムオペラオーとメイショウドトウが鼻差の接戦を演じたレースでした
ね」
駒木:「直線半ばでは、九分九厘オペラオーが惨敗すると思ったんだけどねぇ。"名馬"と呼ばれる馬たちが突
発的に大負けする典型的なパターンにハマったんだけど、馬群を割るようにしてオペラオーが突き抜けて来た
時は、本当にシビれたよ」
珠美:「私はその頃、卒業論文の準備に追われてて、テレビで観るのがやっとだったんですけど、それでもよ
く覚えてます。今年はどうなんでしょうね?」
駒木:「それは後々…ということで。さぁ珠美ちゃん、出馬表を皆さんにお見せして」
珠美:「ハイ、分かりました。それでは、有馬記念の出馬表です」

有馬記念 中山・2500・芝
 
駒 珠 枠 馬 馬  名
 騎手
 
    1 1 アメリカンボス 江田照 
  × 2 2 トゥザヴィクトリー 武豊 
    3 3 ホットシークレット 横山典 
▲   4 4 マンハッタンカフェ 蛯名 
注 △ 4 5 ナリタトップロード 渡辺 
    5 6 ダイワテキサス 柴田善 
    5 7 メイショウオウドウ 飯田 
    6 8 テイエムオーシャン 本田 
    6 9 シンコウカリド 田中勝 
  ▲ 7 10 トウカイオーザ デムーロ 
注   7 11 イブキガバメント 河内 
◎ ◎ 8 12 テイエムオペラオー 和田 
○ ○ 8 13 メイショウドトウ 安田康 

珠美:「有馬記念は、中山競馬場の芝コース・2500mで争われます。コーナー6つとゴール前の急な坂を2回
通過するという、特徴のあるコース設定ですね」
駒木:「そう。だから追い込み馬が不利なんだよ。後ろから行く馬は、少なくとも4コーナーから仕掛けてい
かないと間に合わない。純粋に直線だけの競馬で先頭に届いたのは、それこそ去年のオペラオーぐらいだね。
そういう意味でも、去年は凄いレースだったんだ」
珠美:「なるほど、分かりました。…さて、いよいよ本題に入るんですが、今日は特別に、出走馬13頭を1
頭ずつ詳しく検討してゆきたいと思います。それでは博士、よろしくお願いします」
駒木「うん、よろしく。じゃあ、枠順の通りに行こうか。その方が最後が締まる気がするし」
珠美「ハイ。それでは、まずは1枠1番のアメリカンボスですね。アメリカンボスは、これまで32戦8勝、う
ち重賞を4勝しています。特に今年は、年明けからAJC杯と中山記念のG2レースを連勝して好スタートを切っ
たんですが、その後どうしたことか7戦連続着外と調子を落としています。ちなみに、去年の有馬記念は6着
です」
駒木:「7戦連続着外はね、G1レース以外はそれほど悲観する負け方ばかりじゃない。元々、1着か着外か
って傾向のある馬だからね、それほど気にしなくていいでしょう。でもね、結局のところ、この馬の地力じゃ
G1レースに勝つのは難しいんじゃないかと思うんだ。典型的なG2クラスという気がする。だから、今回は相
当苦戦させられるんじゃないかな」
珠美:「…分かりました。次は2枠2番、トゥザヴィクトリーです。戦績は18戦6勝で、重賞は今年のエリザ
ベス女王杯など4勝しています。それと、今年春のドバイワールドカップで2着に健闘したのは記憶に新しい
ところですね」
駒木:「そう、ドバイワールドカップ2着。それを考えたら、このメンバーでも見劣りすることは全く無い。
前走は折り合いを欠いて暴走してしまったけれど、今度は主戦の武豊JKに戻るから、そんなことは無いと思う
んだ。ただ、この馬ね、最後の最後に末脚が甘くなるんだよね。もしも、ゴール200m前までで強さを競うん
なら、この馬は世界最強クラス。100mでも相当なもの。でも、ゴールする時には……ということだね(苦
笑)。牝馬相手にはそれでも凌ぎきれるだろうけど、このメンバーに入ったら、どうだろう? ちょっと微妙
かな」
珠美:「次、いきますね。3枠3番はホットシークレット。25戦6勝で、重賞2勝です。最近では宝塚記念
で、2着のオペラオーに鼻差3着と大健闘したことが記憶に新しいですね」
駒木:「うん。その宝塚記念は、阪神競馬場で生観戦していたんだけど、本当に驚いたよ。いくらスローペー
スといっても、相手が相手だからねぇ。少なくとも、ただ逃げるだけの逃げ馬じゃない。しっかりした地力を
持っている馬だよ。けれど、今回は放牧明け、しかも調子がイマイチときてる。残念だけど、今回はペースメ
ーカー役で終わってしまいそうだね」
珠美:「4枠から1つの枠に2頭ずつになりますね。まずは4番のマンハッタンカフェから。キャリアこそ8
戦と少ないんですが、今年の菊花賞を勝った、現3歳世代の頂点に立つ馬の1頭です」
駒木:「菊花賞でアッサリ差し切り勝ちを収めたかと思ったら、その前のトライアルは、伸びあぐねて4着な
んだよ。どうもラストスパートを仕掛けるタイミングが難しいみたいだね。こういうのを"異議申し立ての激
しい馬"って言うのかな。まぁ、そういう意味では、これまでの4勝したレースの全てに跨っている蛯名JKが
乗ってくれるのは有り難いね。今回の有馬記念でも、有力馬のうちの1頭だよ」
珠美:「ついに博士から『有力馬』という言葉が出ましたね。次もそうなんでしょうか? 同じく4枠の5
番、ナリタトップロードです。22戦5勝で、一昨年の菊花賞など、重賞4勝をあげています。テイエムオペラ
オーとは12回も対戦していて、まさにライバルというところでしょうか?」
駒木:「それなんだけど、対オペラオーとの12戦で先着は僅か2回、しかもオペラオーが本格化する以前の
3歳時のものなんだよね。4歳になってからは、いくら頑張っても全然歯が立たない。もう完全に勝負付けが
済んでしまっている感があるんだ。確かに、日本を代表する馬の1頭ではあるんだけど、未知の魅力が無い
分、旨みには欠けるね。唯一、一泡吹かせるとすれば、マイペースで大逃げした時だろうけど、今回はホット
シークレットがいるからねえ。まぁ、オペラオーやドトウに、何かアクシデントがあった時の2着候補かな」
珠美:「…ハイ。それでは次は5枠の2頭ですね。6番のダイワテキサスは、これが引退レースになる8歳
馬。52戦11勝で重賞を5勝しています。昨年の有馬記念で3着に入って、みんなを驚かせました。7番のメイ
ショウオウドウは26戦6勝、重賞2勝。前走、鳴尾記念を逃げ切って、アッと言わせたばかりですね。何だ
か、みんなを驚かせるのが得意なお馬さん2頭ですね(笑)」
駒木:「ダイワテキサス、頑張ってるよねえ。あんまり馬券に絡まない範囲で頑張ってるから、余計に好感度
が高い(笑)。去年の有馬記念3着は別にして、地力そのものはG2、G3なら勝ち負け出来るけど、G1だと
若干、力不足。残念だけど勝ち目は薄いね。メイショウオウドウは、もともとグラスワンダー(有馬記念2連
覇など、G1レース4勝の名馬)相手に鼻差の2着とか、ここ一番での実力は評価されてきた馬なんだけど、
とにかく成績にムラがある。距離適性に問題があるし、強い馬1頭だけマークすればいいG2と違って、強い
馬だらけのG1だと、やはり苦戦は免れないだろうね。前走のような奇襲戦法は通用しないだろうし……」
珠美:「これで勝ったら、本当にビックリってことですね(笑)。それでは次は6枠。こちらも2頭いっぺん
にいきましょう。8番はテイエムオーシャン。桜花賞、秋華賞を制した、今年の3歳2冠牝馬です。それらを
含め成績は、9戦6勝、重賞4勝。ただし、これは全て牝馬限定の重賞ですね。これをどう解釈するか、博士
にお聞きしたいところですね。そして9番がシンコウカリド。7戦3勝、重賞1勝と、ちょっと寂しい成績な
んですけど、その重賞はマンハッタンカフェを破ったセントライト記念ですね。これもどう評価すればいいか
お聞きしたいと思います」
駒木:「牝馬のチャンピオンっていうのは、格付けが難しいんだよね。ヒシアマゾン(牝馬チャンピオンにし
て、有馬記念2着、ジャパンC2着など)とかエアグルーヴ(牝馬にして天皇賞・秋を制覇した名牝)みたい
に、牡馬真っ青の強い牝馬がいる一方で、同じ桜花賞馬やオークス馬でも、牡馬に混じったらローカルG3が
精一杯の馬がいる。本当、難しいんだよね。テイエムオーシャンの場合、今のところは判断が難しいね。で
も、馬鹿正直なレースしか出来ないんで、それを考えると不利は不利だね。シンコウカリドはねえ…。勝った
相手がどうであれ、やっぱりG2はG2なんだよね。今年の春でも、マックロウとかトウホードリームとか、G
2で大金星をあげた馬はいたけど、G1には届かなかったでしょ? 競馬は走ってみないと分からないけど、
えてしてそういうものなんだよね」
珠美:「6枠の2頭はやや苦戦、というところでしょうか。さて、7枠も2頭まとめて、ということで。10番
のトウカイオーザは13戦6勝。前走のアルゼンチン共和国杯で嬉しい重賞初制覇を果たしています。また、あ
のトウカイテイオーの弟ということでも注目されていますね。そして11番はイブキガバメントです。30戦7勝
で、重賞はG3を1勝しただけなんですが、最近地力強化が顕著な"昇り馬"ですね」
駒木:「2頭とも差し・追い込み馬なんだけど、タイプは全然違うね。まずトウカイオーザは、瞬発力に限界
がある代わりに、競り合いとか泥仕合に強いタイプ。一方、イブキガバメントはスローペースからの切れ味勝
負で能力を発揮する、典型的なスピードタイプだね」
珠美:「同じ差し馬でも、色々個性があるんですね」
駒木:「うん。だから、予想を立てる時は、そういう点まで気を配らないといけないんだよ。で、この2頭の
能力なんだけどね、まずトウカイオーザは、勝ったアルゼンチン共和国杯というのがまずクセモノでね。ハン
デ戦の上、G1級の馬が全然出てこないので、勝っても有り難味が無いんだよねぇ。また、この馬の場合、モ
ノサシ代わりになる馬がアドマイヤボスなんだけど、この馬がG1では5着以内に入るのがやっとなんだよ。
それを考えると、ちょっと力が足りないかなぁ、という気がもする。イブキガバメントは、道中のペースがど
れだけ緩くなるかにかかっているね。ペースが遅くなって、馬群が密集すればするほど有利になる。常識的に
考えるとG1では厳しいんだけど、ホットシークレットが出遅れたりして、変な展開になったりすると出番が
あるかもしれない。そういう点では、人気薄だけど、トウカイオーザよりこの馬の方に妙味があるね」
珠美:「何だか、私が不安になっちゃうような分析でした(苦笑)。それでは、最後に8枠の2頭。こちらは
敬意を表して1頭ずつ紹介しましょう。まずは12番テイエムオペラオー。25戦14勝、G1レース7勝を含む重
賞12勝は、もちろん出走馬中、最高の実績です。いよいよオペラオーのラスト・ランですね」
駒木:「うん。まず、これはメイショウドトウにも言えることなんだけど、現役生活の間、一度も大きな怪我
も無く競走生活を全うさせてくれた厩舎スタッフの皆さんに最大限の敬意を表したいね。レースでよく走る馬
というのは、脚にかかる負担も大きいんだ。ここまで走る馬で骨折や屈腱炎にならないのは奇跡に近いことな
んだよ。それから、もう一つお礼を言いたいのは、何一つメリットも無いのに、オペラオーの現役生活を1年
間延長してくれた竹園オーナーだね」
珠美:「あれ、そうなんですか? レースの賞金とか考えると、メリットも大きいと思うんですけど……?」
駒木:「何言ってるの! 金銭的なメリットを考えたら、さっさと種牡馬にしてしまった方がどれだけ得か。
どうして外国の名馬が3歳や4歳で引退するか分かるかい? 競走馬やってるより、種牡馬やってる方が金銭
的にメリットがあるからなんだよ。例えば、オペラオークラスだと、種牡馬としての価値は少なくとも十数億
円にもなるはずなんだよ」
珠美:「十数億円……。それは凄いですね…」
駒木:「だろ? それこそG1レースを10勝したって追いつかないんだよ。金銭的なメリットだけを考えた
ら、オペラオーは去年の有馬記念を勝って、年間8戦8勝を達成した時点でスパっと辞めちゃえば良かった。
そうすれば、金銭的にも最高の評価をしてもらえたはずなんだ。それをだね、レースに負けて金銭的な評価が
目減りするリスク、もっと言えば、レース中や調教中の事故で命を失うリスクを背負ってまで、現役生活を続
行させたんだ。これは普通、出来ない事なんだよ」
珠美:「…分かりました。軽はずみな発言は以後慎みますね(苦笑)。さて、もう言うまでもないんですが、
オペラオーの能力や、このレースでの展望はどうでしょう?」
駒木:「前にもこの講義で話したけれど、ここ2戦の惜敗は、『負けてなお強し』の内容。連勝を続けていた
時に、かなり危なっかしいレースをしていた事を考えると、逆に頼もしいくらいだ。もちろん今回も優勝の最
有力候補。それこそ去年の有馬記念のような最悪の展開にならない限り、2着は外さないと思うよ」
珠美:「…だ、そうです。そしていよいよ最後、大外13番のメイショウドトウです。28戦10勝で、G1勝ちこ
そ、今年の宝塚記念だけなんですが、G1レースにおいて、1着オペラオー、2着ドトウ、というケースが5
回、しかも連続でありました。まさにオペラオーの宿敵という存在だと思います。そして、この馬もこれがラ
スト・ランになります」
駒木:「この秋は天皇賞が3着にジャパンCが5着か。でも、天皇賞は休み明けの上に、ペースメーカー役を
強いられるという酷な展開。ジャパンCは前半で大きな不利と、実力負けじゃないのは確か。むしろ、大崩れ
していないのを褒めてあげたくらいだ。当然、この馬もオペラオーと同じく、このレースの最有力候補の1頭
だね。強いよ、やっぱり」
珠美:「…ハイ、ありがとうございました。以上で各馬のレビューが終わりまして、いよいよ予想に移りたい
と思います。ここで皆さんには、もう一度出馬表を見ていただいて、博士と私の予想印をチェックして頂きた
いと思います。では、まず博士からなんですが、ちょっと変わった印がありますね。"注"って何ですか?」
駒木:「馬券は絶対買わないけど、来るかもしれないってこと(苦笑)。今回に関してはね、私情だけで言う
なら、オペラオーとドトウの2頭で思う存分マッチレースをさせてあげたいんだよ。オペラオーとドトウのワ
ン・ツーで決めないといけないレースだと思う。あ、当然、実力が抜けていると判断したから印を打ったんだ
けどね。この2頭に割って入ろうなんて、野暮な事この上ないんだけど、それでもマンハッタンカフェあたり
がいかにも野暮ったい存在なんだよねえ(笑)。6年前のマヤノトップガンに勝たれた時が思い出されて仕方
が無い。ちょうど、あの時のトップガンも、今のマンハッタンカフェと似たような存在だったからね」
珠美:「と、いうことは馬券的には4、12、13のボックスですか?」
駒木:「一応はね。でも、事実上は12-13の一点。4-12は、配当が低くて手を出す気にはなれないね」
珠美:「分かりました。でも、いつになく博士は張り切ってらっしゃいますね」
駒木:「実は、このレースに年間トータル黒字がかかってるんだよ(笑)。1年を締めくくる大勝負だから
ね。そりゃ気合も入るってもんさ」
珠美:「(笑) さて、私は◎、○は同じなんですが、▲にはトウカイオーザを抜擢しました。出来の良さと
デムーロJKの腕を信じます。後は押さえでナリタとトゥザヴィクトリーを。マンハッタンカフェは、菊花賞
の結果が実力勝負じゃなかったと判断して消しちゃいました。馬券の買い目は、12から13、10、5、2と、あ
とタテ目の10-13ですね」
駒木:「おや、大分予定をオーバーしてしまったね。それじゃソロソロ講義を終わりましょう」
珠美:「皆さんも、頑張ってくださいね♪」


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有馬記念 結果(5着まで) 
1着 4 マンハッタンカフェ 
2着 1 アメリカンボス 
3着 2 トゥザヴィクトリー 
4着 13 メイショウドトウ 
5着 12 テイエムオペラオー 

 ※駒木博士の"敗戦の弁"
 完敗です。ま、どうやったって獲れない馬券なんで、悔しいという感情すら湧きませんが(笑)。有馬記念
の馬券と同時に、今年の年間トータル黒字も失敗に終わったけど、まぁ、勝負事だからこういうこともあるよ
ね。実力をつけて、また来年再挑戦。
 マンハッタンカフェは、予想以上の野暮ったさを見せ付けてくれました(苦笑)。これは、まぁいい。誤算
は、オペラオーが去年と同じ展開にハマった事と、メイショウドトウまで後手後手になっちゃったこと。もう
少し前で競馬出来たはずなのに、それが出来なかったあたり、広義の意味で衰えがきていたのかもね。
 アメリカンボスは…。まぁ、展開利と8枠2頭の凡走に助けられたってことで。でも、2着に来るくらいな
ら勝っちゃった方がスッキリしたのにねえ。

 ※栗藤珠美の"反省文"
 ええと……。私の勝負馬券は、馬体重発表の時点で終わってしまいました……(半泣)。
 それに、マンハッタンカフェに勝たれちゃった時点で、私は何もいう事が出来なくなりました。勉強不足で
した。また、来年ゼロから出直したいと思います。
 本当に反省文になっちゃいましたね(苦笑)。 
 

 


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12月21日(金)法学(一般教養)
「日本国女帝誕生へ向けての諸問題」(4)
 
 え~、この一週間というもの、ギャンブル社会学から始まりまして、工藤兄弟、マンガ時評、珠美ちゃんの
ショートストーリー、そして今日は皇位継承権問題で、明日は有馬記念予想。
 まぁ、何と言いますか、我ながら色んな事をよくやるな、と(笑)。と言うか、お前に節操は無いのか、と
(苦笑)。……まぁそんな事を、徹夜続きでクラクラする頭で思ったりもするわけですが、とにかく命続く限
りやるしかないな、と。そう覚悟を決めたりしてるわけです。

 さて、今日は1週間振りに「一般教養・法学」の講義です。もう内容を忘れてしまってる人もいるかと思い
ますので、レジュメ(第1回/第2回/第3回)で復習してから受講して下さい。

 では、講義に移ります。前回からヨーロッパの皇位(王位)継承権事情について述べていっていますが、今
日はフランスの皇位・王位継承権事情について解説しましょう。この「法学」は、長期に及ぶ事が確定してい
ますので、じっくりと話を進めてゆきたいと思います。
 ……
 フランスは現在、大統領制の共和国ですが、他のヨーロッパの国のご多分に漏れず、かつては王制を採って
いました。現在のフランスに、国王という最高権力者が君臨していた期間は、間に中断を挟みつつ、約1300年
に及びます。
 古代ローマ帝国の衰退と、アジアからフン族という強固な民族が西進して来た事に伴って、4世紀から始ま
ったゲルマン民族の大移動。その影響は、今もって北西ヨーロッパの人々が"ゲルマン系"という名称で括られ
るほど大きなものになっています。
 そのゲルマン民族の内、現在のフランス北部に定住した人々がフランク族。現在のフランス人の祖先にあた
ります。フランク族の成立には諸説ありますが、その地方に分散していた中小民族が、リーダーシップを持っ
た一勢力の下で結集したもの、という説が有力とされているようです。
 その初代リーダー、即ち初代国王とされているのがクローヴィスという人です。彼がフランク族の盟主の地
位に就いたとされている481年をもって、フランク王国が成立した、というのが現在の世界史の常識です。受
験にも出ます。あ、ここは大学ですから、そんな事は関係無いですね。
 注意してもらいたいのは、この時点ではフラン"ク"王国であって、「フランス」という言葉は、まだ無かっ
た、ということです。どこから名前が変わったのか、というところも気にかけながら、話を進めてゆきましょ
う。
 さて、フランク王国時代の王位継承ルールですが、これはゲルマン民族大移動時代からの伝統が引き継がれ
ていました。
 それは、「領土などは、後継者の数だけ分割して相続させる」というもので、言ってみれば、男子の数だけ
王国を頭割りして配分する、という随分乱暴なものでした。所謂「分割相続」というやつです。
 このルールですと、相続争いが起こらない代わりに、相続した後に兄弟、伯叔父・甥、従兄弟同士で血を見
る争いが発生する、という大きな問題を抱えてしまいます。そして、争いが無かったら無かったで、今度は領
土がどんどん細かくなっていって、弱小国の集合体になってしまう、なんていう事にもなりかねません。こ
の、「分割相続→国全体が弱体化」という道を辿って、衰退していったのが、日本の鎌倉幕府だったりしま
す。
 しかし、この不便な制度を、フランクの国王たちは守り続けます。もっとも、幸か不幸か、フランクの兄弟
たちは仲が悪く、分割相続が行われるや、たちまち争いが発生して、いつの間にか領土が再統一されていると
いうパターンが続きました。
 フランク王国はその後、クローヴィスが始めたメロヴィング朝にかわって、カロリング朝が成立します。こ
れは、"宮宰"と呼ばれる王の側近が、教皇の支持を受けて、メロヴィングの王位を奪ったものでした。
 このカロリング朝の2代国王・シャルルマーニュ(カール大帝)の時、フランク王国は全盛期を迎え、今の
ドイツやイタリアを含めた広大な領土を手に入れます。その力を認めたローマ教皇は、自分のボディーガード
兼パートナーとして、476年に滅亡して以来、空位になっていた西ローマ帝国の皇帝位にシャルルマーニュを
推挙します。これが西暦800年のことでした。
 そうして、一躍強大国となったフランク王国=西ローマ帝国だったのですが、それも長くは続きませんでし
た。そう、「分割相続」の発動です。
 これには、シャルルマーニュが築いた大帝国が余りにも広大すぎたために、領土を一つの国として維持する
事が出来なかった、という物理的事情もあったのですが、それにしても勿体無い話ではありますね。
 結局、フランク王国は3つ(西フランク、東フランク、イタリア)に分裂。やがて分裂した王国の後継者も
途絶え、とうとう987年を最後にカロリング朝フランク王国は滅亡します。
 カロリング朝が滅亡した後の旧フランク王国は、西フランクがフランス、東フランクがドイツとなって、新
しい国としてリスタートします。『裏ニュース!』が『連邦』になったようなものと理解してもらえれば結構
です。
 西フランク王国改め、フランス王国として再出発したこの国の最初の仕事は国王決めでした。プロレスに喩
えれば、空位になった王座を巡っての大バトルロイヤル大会開催、みたいな感じでしょうか。"伯"と呼ばれた
旧王国の地方長官の中で新国王選びが行われ、その結果、「最も派手に異民族をやっつけた」という理由で、
パリの"伯"だったユーグ=カペーという人が国王に選ばれました。これがカペー朝フランス王国の誕生です。
何だか"「立会演説会でキメたギャグが上手かった」という理由で当選した生徒会長"みたいで有り難味が無い
ですが、それは当時のフランス人も同じことを考えていたようです。初めの数百年間は、国王が直営地のパリ
から一歩出た途端、普通の人と大して変わらなくなってしまう……などといった、京阪神からはみ出た日本共
産党のような悲しい状態だったらしいです。
 フランス王国になってからの王位継承ルールは、前回とりあげたイギリスのルールとほぼ同じ。違う点とい
えば、王制が無くなるまで女子の王位継承が実現しなかった事くらいでしょう。これには、フランス王家は比
較的子宝に恵まれていた、ということが大きな理由になっていたのではないでしょうか。
 それでも、「王家断絶→臨時ルール発動」というケースも無かったわけではなく、カペー朝→ヴァロワ朝→
ブルボン朝、という2度の王家交代劇が発生しています。特に、カペー朝断絶の際には、イギリス国王のエド
ワード3世が、「臨時ルール」を口実にフランス王位の継承権を主張し、ヴァロワ朝との間に百年戦争が発生
した、というドラマも起きています。
 フランスの王制は、ブルボン朝第3代国王・ルイ14世の時に絶頂を迎えますが、やがて革命の時代に、押し
流されるように力を失い、1848年を最後に消滅します。その後、紆余曲折を経て、現在は「第五共和政」と呼
ばれる民主主義政府によって、フランスは統治されています。
 余談ですが、フランスは2度(1804~14、15/1852~70)にわたって、「フランス帝国」と呼ばれる時代が
ありました。あのナポレオン=ボナパルト(ナポレオン1世)と、その甥・ナポレオン3世が皇帝に君臨した
時代です。しかしこの帝国は、2度とも初代限りで終わってしまっているため、皇位継承のエピソードはあり
ません。
 と、いうわけで、フランスは「分割相続制」→「イギリス式長子(男子限定)相続制」という変遷を遂げて
いったのでした。
 ……
 さて、次回はフランク王国から分かれたもう一つの国、ドイツの王位継承制度についてお話を進めていきた
いと思います。それではまた、来週の「法学」の時間に。(この項続く)
 

 


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12月20日(木)馬事文化学特論
ステイゴールド号・G1制覇記念企画
ショートストーリー・「Stay Gold Forever」
《作:栗藤珠美 監修:駒木ハヤト》
 
 私、那須千草が、その馬──ステイゴールドと出会ったのは、5年近く前の阪神競馬場だった。
 私はその時大学2回生で、ちょうどその頃付き合っていた彼氏とのバレンタインデー・デートで競馬場に行
った時だったから、季節もちょうどその頃だったんだと思う。
 大学生が競馬場でデートだなんて、ちょっと変に思われるかもしれないけれど、それには少しばかり特別な
事情がある。
 と、いうのも、その彼氏が通っていた大学というのが「仁川経済大学」というトコで、日本で唯一、競馬を
カリキュラムに取り入れているという、ちょっと、いや、相当ヘンな学校だったのだ。
 この仁川経済大学──正式名称は長いので、「仁経大」と略して「にけだい」と呼ぶのだそうだ──の学生
は、男も女も、果ては付属高校の生徒までも、週末のレジャーはもちろん、デート、アルバイトに至るまで、
大学近くにある阪神競馬場で済ましてしまうらしい。で、私たちもご多分に漏れず、事あるごとに競馬場でデ
ートをしたっていうわけ。ま、初めは驚いたけど、それなりに楽しいデートばっかりだったから、今では少し
良い思い出になっている。
 で、そのステイゴールド。
 どうして私がこの馬を克明に覚えているのかといったら、ステイゴールドはその日のレースで、最後のコー
ナーを曲がりきれずにあさっての方向へ飛んでいって、騎手を振り落としてしまったのだ。
 ただ1頭、文字通り別次元の走りを繰り広げるステイゴールドと、周りの人たちがあげるどよめき、そして
この馬の馬券を握っていた彼氏の悲鳴……。
 これが、私の頭の中に、このステイゴールドという馬を強く印象付けたきっかけだった。どれだけ彼にレク
チャーを受けても、競馬の専門的なことは全然覚えられなかった私だったけど、こんな事があったら1頭の馬
の姿と名前くらいは覚えてしまうってものだ。
 その後、競馬場デートの時にステイゴールドが走るたび、私は本当なら買っちゃいけなかった馬券を、ステ
イゴールドから少しだけ買った。どういうわけか、私が馬券を買った時のステイゴールドは強かった。あのア
クシデント以来、決してステイゴールドの馬券を買わなかった彼の羨望の眼差しを浴びながら、嬉々として払
戻しの機械に並んだのをよく覚えている。
 でも、私のステイゴールドにまつわる記憶は、一旦そこで途切れる。その年の夏ごろに、仁経大生の彼氏と
別れてしまったからだ。その別れについて、特別なドラマがあったわけじゃない。ごく普通の2人の若い男女
がごく普通に出会って、ごく普通にお付き合いをして、ごく普通にお別れした、ただそれだけのこと。
 彼と会わなくなって、私の生活は色々と変わったけれど、その変化の1つとして、私は競馬場に行かなくな
った。私にとって、競馬や競馬場は、あくまでもデートの手段や場所でしかなかったのだ。ステイゴールドと
いう馬もその"付属物"に過ぎなかったということになる。ただ、それはあくまでもその時のお話だけれど─
─ 

 それから私は間もなくして、他の人がそうするように就職活動を始めた。なけなしのバイト代と親からの援
助で揃えたリクルートスーツを着て、慣れない敬語と"面接用語"を駆使し、かなりたくさんの会社で入社試験
を受けた。私が高校生の頃からずっと続いていた不景気のせいで随分苦労させられたけれど、1年弱の"戦い"
の戦果は、私なりにソコソコ満足の行くものだった。
 その後は、これも就職活動を終えた大学4年生にお決まりの、ゼミ旅行、卒業旅行、海外旅行。まるで何か
に憑りつかれたように、親しいんだか親しくないんだか分からない同じゼミの女友達と、それこそ世界中至る
所を半ば意地になって巡り歩いた。今から考えたら、香港とかオーストラリアとか、競馬が盛んなところにも
行ったのだけれど、ステイゴールドのことすら忘却の彼方に見送ってしまっていた当時の私には、「旅先で競
馬」なんて発想は、それこそ微塵も思い浮かばなかった。
 そうやって私は、どこにでもいる普通の女子大生と同じように青春を謳歌し、そして貸衣装の袴姿で卒業証
書を受け取った。記念写真を撮りながら「また、会おうね」と約束し合った、同じゼミの女の子たちとはそれ
以来一度も会っていない。ま、それもありがちなことだ。
 そして、私は社会人になった。決して甘く見ていたわけではなかったけれど、それからの日々は、本当に辛
いことばかりだった。
 新入社員なら誰もが憧れる"花形部署"に配属された女子"総合職"の私。でも、そんな言葉に酔うことが出来
たのもほんの一瞬で、研修期間が終わってからというもの、来る日も来る日も「9時5時? 有給休暇? そ
れって何?」って感じで、雑用と社内外の苦情処理に忙殺される日々が私を待っていた。
 それだけじゃない。同じ課の先輩社員が口説いて来たのをあしらった翌日以降、私を誹謗中傷する根も葉も
ない噂が会社中を駆け巡ったりとか、ミーティングで私が提案したアイディアが好評で喜んでいたら、いつの
間にか、それが直属の課長が次長へ昇進する決め手になっていたりとか、マンガやTVドラマでお馴染みの経験
は3ヶ月弱で一通り済ませてしまったりした。
 朝起きて、仕事に行って、夜帰って寝る。毎日がその繰り返し。今から考えたら、よくそんな生活に耐えて
こられたものだと思うけれど、多分その時は、今が辛いとかどうとか、そんなことを考える気力すら奪われて
いたのだと思う。
 そう、そう言えばあの日も。
 あの日も、そんな辛い日々の中の出来事だった。

 入社して約半年経った10月下旬のある日曜日。その日の私は、遠い昔に神様が決めた休日なんてお構いなし
で、クレームのあった顧客の会社へお詫びに出かけ、その足で帰社して会議に(雑用係として)出席、という
無茶苦茶なスケジュールを強いられていた。
 元々ギリギリの時間設定だったのに、訪問先の会社でクドクドと苦情をぶつけられたせいで、そこを出た時
には既に"手遅れ"の時刻になってしまっていた。かと言って、それで遅刻していいという理由になれば苦労は
しない。私は泣きそうになりながらタクシーに飛び乗った。手取り15万ソコソコの私のお給料から考えると、
多分経理に回したって落ちないタクシー代はかなり痛い出費だったけれど、その結果得られる数千円の金額が
プリントされた領収書は、遅刻の言い訳ができる"武器"になりそうな唯一の物だったのだ。
 私が「なるべく急いで下さいね」と言ったにも関わらず、運転手さんはヘラヘラと笑うだけで一向に車の速
度を上げようとしなかった。それどころか、「ちょっと失礼」なんて言ってラジオのスイッチを入れ、おまけ
にボリュームまで上げたりするものだから、私は思わず、「ちょっと! 私が上げて欲しいのはラジオのボリ
ュームじゃなくて、車のスピードなんだってば!」って叫びそうになった。
 『……さて、いよいよ天皇賞・秋の発走時刻が迫ってまいりましたが……』 
 しかも、ラジオから流れていたのは競馬中継だった。「何、この人? 仕事中に競馬なの?」とは思ったけ
れど、もうここまで来ると、怒りを通り越して呆れかえると言うか、すっかり体中の力が抜けてしまった。私
はただ、後部座席に身を任せながら、「ああ、なんて私は運がない女なんだろう」なんて、自分自身を嘆くし
かなかった。
 と、その時──
 『…そして、今度こそ1着の欲しいステイゴールドなんですが……』
 その馬名を耳にした瞬間、記憶の奥の奥へと追いやられていた1頭の馬とその思い出が、私の頭の中で一気
に蘇った。そう、それはまだ私がどこにでもいる普通の大学生だった頃の──
 気が付いたら私は、後部座席から身を乗り出して、ラジオに耳をそばだてていた。
 「え? ステイゴールド…?」
 その途中で、私が思わずポロっと口にした言葉を運転手さんは聞き逃さなかった。彼はルームミラーで私の
様子を窺いながら話し掛けてきた。
 「あれ? お客さんも競馬やるんですか? 若い女の人なのに、珍しいねえ」 
 「あ、いや、その……知ってる馬の名前が出てきたもので…」
 「へえ、ステイゴールド? 渋いなあ」
 私には何がどう渋いのか分からなかったけれど、この運転手さんが、私が唯一名前と姿を記憶している馬を
知っていることが単純に嬉しかった。
 「でも、どうやろね。どうにもパッとせえへん馬やから…」
 「え? ステイゴールドって弱いんですか?」
 「いや、そういうわけやないけどね。でも、何て言うかなぁ。イマイチって言うか、パッとせえへんて言う
か…」
 運転手さんの話こそ、何だかパッとしなかったけれど、どうも今のステイゴールドは、私が直に見ていた頃
の強いステイゴールドじゃないことだけは、何となく分かった。
 それから間もなくして「天皇賞・秋」のレースが始まった。運転手さんは「頼むで、セイウンスカイ」なん
てブツブツ呟きながら、ソワソワしていた。
 『…セイウンスカイは伸びないか? ちょっと苦しそうだ! セイウンスカイ、ピンチ! 先頭はステイゴ
ールドか、ステイゴールド先頭か? ……大外からスペシャルウィーク! スペシャルウィークが一気に追い
込んで来た! 武豊だ、スペシャルウィークだ! スペシャルウィークかステイゴールドか、スペシャルウィ
ークだ! スペシャルウィークが交わして1着ーッ!!』
 ラジオの向こうで何があったのか、私にはあまりよく把握できなかったのだけれど、ステイゴールドは惜し
いところで負けてしまったらしい、ということだけは判った。
 「あぁ……これで昨日、今日とタダ働きやがな…」
 運転手さんはハンドルを握ったまま、ガックリと肩を落とした。フロントガラスにボンヤリと映った運転手
さんの表情が暗かったのは、最近勢いを増した不景気のせいではなさそうだった。
 間もなく、タクシーは会社の前に到着し、私は財布の中を確かめつつ、領収書を要求した。
 運転手さんは不景気な顔をしたまま領収書を切り、少し憮然とした声で、
 「やっぱり、ステイゴールドはアカンかったね。1着が獲れずに2着とか3着ばっかりや。これやと、ステ
イ"ゴールド"やなくてステイ"シルバー"かステイ"ブロンズ"に改名せんとアカンで」
 と、言って私にお釣りと領収書を手渡した。馬券が外れた恨み言だったんだろうけれど、その運転手さんの
言葉は、やけに私の耳に堪えた。
 そのせいもあったんだろう、その日の会議で私はいつも以上にミスをして、いつも以上に怒られた。もちろ
んタクシー代は経費で落ちず、領収書は遅刻の言い訳にはなったけど、他の人から白い目で見られることには
変わりは無かった。
 すっかり空が暗くなって、ようやく地獄のような会議から解放された私は、今度は電車に乗って、一人暮ら
しをしているワンルームマンションへ帰ろうとしていた。その電車の中で不規則な振動に揺られながら、いつ
の間にか私はステイゴールドのことを考えていた。
 別にとりたてて感慨があったわけじゃなかった。多分、懐かしさとその日に起こった出来事がない交ぜにな
って、その結果、どうにもステイゴールドのことが気になって仕方が無かったんだと思う。
 もしも、私がそこでその気持ちをやり過ごし、また仕事ばかりの日常に帰っていたら、もう私の人生の中で
ステイゴールドが出て来ることは二度と無かったかもしれない。けれど、自分でも不思議なことに、その日の
私はなぜかステイゴールドにこだわった。気が付いたら私は、1年浪人して仁経大に通っている友人の香織─
─実は、例の元・彼氏はこの子の紹介だった──に電話をかけ、ステイゴールドについての資料を見せてもら
う約束を取り付けていた。

 「……ごめんね、急なお願いで」
 そんなことを言いながら部屋を訪れた私を、香織は不思議そうな顔をして出迎えた。
 「いや、資料とかは、どうせ大学で使ってるから別にええけど。でも、いきなりどうしたん?」
 「いや、ちょっとね」
 理由を話さない私──そりゃそうだ。理由なんて私だって知らない──を見て、香織はいかにも腑に落ちな
い表情をしていたけど、それでも「競馬四季報」という、漢和辞典みたいな分厚い本を私に差し出した。
 香織曰く「中央競馬で走っている馬の成績が全部載ってる」というその本の、ちょうど真ん中辺りのページ
に、ステイゴールドの成績一覧が載っていた。
 「………あ」
 思った言葉が、そのまま口を突いて出た。
 「これ、私だ……」
 「え? 『私』がどうしたって?」
 近くで見ていた香織が、もっと不思議そうな顔をして話し掛けてきた。でも、私はそれに答えないまま、ず
っと同じ言葉を繰り返していた。
 「これ、私だ……」
 私が競馬場に行かなくなってからのステイゴールドは、「阿寒湖特別」というレース──香織の説明によれ
ば、"校内快足ナンバーワン決定戦"程度のレースだそうだ──を勝って以来、全く勝てなくなってしまってい
た。私がタクシーの中で聴いた「天皇賞・秋」が22連敗目のレースだった。
 一所懸命、どれだけ頑張っても結果が出ない。誰も認めてくれない……。「競馬四季報」の成績表が語るス
テイゴールドは、ちょうどその頃の私と同じように、必死にもがいて苦しんでいる姿を映し出していた。

 それ以来、ステイゴールドという1頭の競走馬は、私の、かけがえの無い心の支えになった。
 私は、それまで存在すら知らなかった競馬雑誌を買い、ステイゴールドが次にいつレースに出るのか調べる
ことが習慣になった。そして、ステイゴールドがレースに出るたびに馬券を買うようにもなった。素通りする
事はあっても、中に足を踏み入れることは決してなかった、「ウインズ」という馬券売り場にも入るようにな
った。昔みたいに、私が馬券を買ったらステイゴールドが活躍する、なんてことはなく、相変わらずステイゴ
ールドは、あの10月に"再会"したステイゴールドのままだったけれど、私はそんなステイゴールドに自分を投
影し、親近感を覚えていたわけだったから、それはそれで良かった。
 ステイゴールドはその後、泥沼のような連敗を28で止めて、ついに「阿寒湖特別」以来の勝利を収めた。も
ちろん私は、我が事の様にそれを喜んだ。的中した馬券で儲けたお金でシャンパンを買い、1人、部屋で祝杯
をあげる、なんてことまでした。そんな私は、相変わらず職場でもがき苦しんでいた。
 そんな私とステイゴールドとの"蜜月"が、一転して崩壊の危機を迎えたのが今年、2001年の春のことだっ
た。
 1月の「日経新春杯」というレースで、約8ヶ月ぶりの1着を獲っていたステイゴールドは、私がそれまで
聞いたことの無かった、UAEのドバイという都市で開催された国際招待レースに参加した。ステイゴールド
はそこで、世界中から集まったチャンピオン・ホースを抑えて1着を獲ってしまったのだ。
 電話でこの報せをくれた香織は、
 「良かったね、これでステイゴールドも世界チャンピオンよ」
 と祝福してくれたけど、そんな声とは裏腹に、私はなぜだか酷い虚脱感を感じていた。嬉しいはずなのに、
ステイゴールドの快挙を喜ぶことが出来なかった。
 私は、この自分の心について、どうしてこんなことになったんだろうと一晩自問自答した結果、1つの答に
行き着いた。
 私はステイゴールドに嫉妬していたのだ。
 その頃になっても、私は相変わらず職場では苦しみ続けていた。不景気で新規採用が滞ったために、私はい
つまでも最年少のままだったし、会社の体力低下はストレートに社員の待遇低下を招いていた。待遇低下は社
内の人々にストレスを積もらせ、そのはけ口は立場の弱い人間に向けられていた。当然、私はその"はけ口"の
1人だった。
 私がそんなふうに苦しんでいたのに、一方のステイゴールドは、知らない間に世界チャンピオンになってし
まっていた。いつも私のそばにいてくれたはずの存在が遠くへ行ってしまった。私が行けない所までスイスイ
と行ってしまった。……そんな事実を突きつけられて、私は嫉妬心を抱いてしまったのだった。
 幸か不幸か、この後のステイゴールドは、また以前の惜敗続きのステイゴールドに戻ってしまって、私とス
テイゴールドとの関係が切れてしまうことはなかった。それでも、自分の分身にも似た存在に嫉妬心を抱いて
しまったという事実は、私の心に深い影を落としていた。

 始まりがあれば、いつか終わりがある。ステイゴールドが年内で引退すると聞いた時、私はそんな当たり前
のことを再確認させられた。ステイゴールドはもう7歳。私が学生時代に出会った時は、前途有望な若馬だっ
たステイゴールドも、今では大ベテランになってしまっていた。
 それよりなにより、私を驚かせ、そして失望させたのが、引退レースは日本ではなく、香港の国際レースで
迎えるということだった。引退レースは年末の「有馬記念」だと確信し、親戚・祖父母の1人や2人を死人扱
いしてでも中山競馬場に駆けつけるつもりだったのに、香港ではどうしようもない。「観戦ツアー」なるパッ
ク旅行もあるにはあったけど、入社以来、減ることはあっても増えることのない無いお給料とボーナスでは、
とてもじゃないけど海外旅行は無理な話だった。
 どうにかレースを観る方法は無いかと香織に尋ねると、どうやらレース当日の競馬場とウインズで、衛星生
中継するみたいだと教えてくれた。その日もまた、日曜日だというのに、みっちりと仕事の予定が入っていた
けど、私はどうにかしてステイゴールドの引退レースを見届けることに決めた。それは、もちろんステイゴー
ルド最後の雄姿をリアルタイムで見ておきたい、という素直な願望もあった。でもそれよりも、春、ステイゴ
ールドが世界チャンピオンになった時、私が抱いてしまった嫉妬心と決着をつけたいという気持ちの方が強か
った。
 引退レース・「香港国際ヴァーズ」でのステイゴールドは、1着馬の最有力候補になっていた。もう一度、
ステイゴールドが私に手が届かない存在になった時、その時、私はどんな心境になるのだろう─? 
 もしも、また私がステイゴールドの活躍を妬むようなことがあったなら、その時は、私なりに"罪"を償うた
め、勤めている会社を辞めるつもりでいた。自分が心の支えにするようなかけがえの無い存在に、一度ならず
に二度までも醜い感情を抱いてしまったなら、それは私のこれまでの生き方が間違っていたということなんだ
から……

 レース当日、例によってスケジュールは遅れ、仕事が全て終わった時には、最寄りのウインズまで駆け足で
行っても厳しい時刻になってしまっていた。それでも私は諦めず、懸命に走った。今日だけは遅れちゃダメ
だ。今日だけは絶対に……。私はついに道の途中でパンプスを脱ぎ、ストッキングを履いただけの裸足で街中
を駆けた。みるみるうちにストッキングは破れ、かかとからは血もにじんで来たけど、その時の私に、そんな
ことを気遣っている余裕なんて無かった。
 火事場の何とやら、というのだろうか、奇跡的に私は「香港国際ヴァーズ」の発走に間に合った。ぜぇぜぇ
と息を切らしながら、両手に持っていたパンプスを履き直し、既にモニターの前に集まっていた10数人の中に
混じって、ステイゴールドのラスト・ランが始まるのを待ち構えた。
 それからすぐにゲートが開き、レースが始まった。ステイゴールドは全馬一団となった馬群の真ん中辺りに
待機して、スパートのタイミングを図る展開になっていた。先頭との差もそんなに開いていなくて、ステイゴ
ールドにしてみれば、いつでも射程圏に捉えることのできるポジションをキープしていた。「これなら多分…
…」私の心の中で期待感が大きくなっていった。
 ところが、第3コーナーから第4コーナーにかけて、逃げていた馬がスルスルと馬群との差を広げ始めた。
 「え? え?」
 狼狽する私をよそに、逃げている馬とステイゴールドとの差は開く一方。最後の直線に入った時には、7~
8馬身くらいの大きなビハインドになっていた。まだ、ステイゴールドが差を詰める気配は無い。どう見たっ
て、大ピンチだった。 

 その瞬間、私の頭の中で何かがバチンと弾けた。 

 「頑張ってえ~~~! ステイゴールド、頑張ってえぇ~~~!!」
 こんな大きな声が出るんだ、と自分でびっくりするくらいの大音量で、私は絶叫していた。それと同時に涙
が溢れ出して止まらなくなった。私の中で、色々な感情がグチャグチャになってしまっていた。ただ一つだ
け、確かなこと。私はただ純粋に、ステイゴールドの勝利を願っていた。あの忌々しい嫉妬心は、もうどこに
も無かった。
 「ステイ……ゴ…ル…ド……がんばっ……」
 もう、言葉にならない。私は口元を押さえながら、その場にうずくまった。周囲の視線が痛いほど突き刺さ
るのを感じる。そりゃそうだ。若い女の子が裸足で息を切らしてやってきたかと思ったら、今度は絶叫した挙
句に号泣だ。こんなのを見て、おかしいと思わない方がおかしい。
 「あ! 来た! ステイゴールド!!」
 その時、観衆の1人、私と同い年くらいの男の人が声を上げた。涙で視界は霞んでいたけど、確かにモニタ
ー画面には、逃げ馬を単騎で追い詰めるステイゴールドの姿があった。まるでステイゴールドの背中に羽根が
生えたような凄いスピード。その姿はまさに空駆ける天馬、黄金の翼のペガサスだった。
 「よし! 頑張れ!」
 「ほら、差せ差せぇ!!」
 「よっしゃ、行けるぞ!」
 いろんな人が、私の代わりをしてくれるようにステイゴールドを応援していた。それに応えるように、ステ
イゴールドはグングン差を詰めてゆく。そして────
 「よし! やったぁ~~!」
 「差したよな、差し切ったよな!」
 「おい、オネエチャン、良かったな、勝ったぞ! ステイゴールド、勝ったぞ!」
 周りにいた人が、歓喜の声をあげながら私にステイゴールドの勝利を伝えてくれた。近くでは万歳三唱まで
始まっていた。
 「…ありがとう………ありがとう……」 
 号泣の後のひきつけを堪えながら、私はただただ、「ありがとう」と言い続けていた。
 もちろんそれは、私の分までステイゴールドを応援してくれた、モニター前の人たちに対しての感謝の言葉
でもあったけれど、それ以前に、それ以上に、私はステイゴールドに「ありがとう」と言っていたのだ。
 私は、走っても走ってもどうしても勝てないステイゴールドを見て、「私と同じだ」と思った。でも、それ
は大きな間違いだったのだ。
 ステイゴールドは、頑張っても頑張っても結果が伴わず、周りから正当な評価されない状況にあっても、そ
んなことはお構いなしだとばかりに、一所懸命努力していた。いつか勝とうと頑張っていた。その名の通り、
黄金のように輝き続けようと頑張っていたのだ。そして、今、ステイゴールドは本物の輝きを手に入れたの
だ。それも、永久に目映く光り続ける黄金の輝きを。そう、ステイゴールドは、本物の"ステイゴールド"にな
ったのだ。
 それに引きかえ、私はどうだっただろう? 自分の不甲斐なさを棚に上げ、不遇を恨み、それを嘆くばかり
の日々。それどころか自分と似た存在を見つけて慰みものにしていたのだ。自分の力で、苦境をどうにかしよ
うなんてことは全く考えずに……
 ステイゴールドは教えてくれた。苦労することだってある。すぐに報われないこともある。でも、大切なの
は、諦めないこと、自分を磨き続けることなんだと。そうすれば、近くはなくても遠い将来、必ず報われるの
だと。

 ──レースが終わってどれくらい経ったのだろう?
 ステイゴールドの雄姿を映し出していたモニターは、本来の仕事である阪神競馬場のレース放映を始め、私
と一緒にステイゴールドの優勝を祝ってくれた人たちもまた、思い思いの方向へ散らばっていった。
 私は、まだ目尻に残っていた涙を手でぬぐい、しっかりとした足取りで歩き出した。いつもは痛い位に感じ
る冷たい北風も、今日は何だか心地良い。明日から、また辛い日々が始まるのかと思うと、ちょっぴり憂鬱に
なるけれど、でも、もう私はそれを嘆いたりしない。さあ、胸を張って歩こう。今は苦しいかもしれないけれ
ど、その苦しみを糧にして、私もいつかは誰もがうらやむ輝きを手に入れてみせるんだ。
 そう、遠く海の向こうで、黄金の羽根羽ばたかせ駆けていった、あの努力家のペガサスのように──  
(完)

参考資料・ステイゴールド号・全成績(略式) 
日付 レース名 着順 騎手 1着馬(2着馬) 
96.12.1
 新馬戦
 3/14
 ペリエ マキハタスパート
 
96.12.21 新馬戦※1 16/16 ペリエ オースミサンデー
 
97.2.15 未勝利戦※2 止/12 熊沢 ハリアップスキー 
97.3.22 未勝利戦 2/13 熊沢 パルスビート 
97.4.19 未勝利戦 2/18 熊沢 タマモイナズマ 
97.5.11 未勝利戦 1/18 熊沢 (トップラダー) 
97.6.7 すいれん賞(500万下) 1/10 熊沢 (ビンラシッドビン) 
97.6.29 やまゆりS(900万下) 4/13 熊沢 ナムラキントウン 
97.9.6 阿寒湖特別(900万下) 1/14 熊沢 (ミナミノフェザント) 
97.10.12 京都新聞杯(G2) 4/12 熊沢 マチカネフクキタル 
97.11.2 菊花賞(G1) 8/18 熊沢 マチカネフクキタル 
97.11.30 GホイップT(1600万下) 2/13 武豊 ファーストソニア 
98.1.17 万葉S(オープン) 2/14 熊沢 ユーセイトップラン 
98.2.8 松籟S(1600万下) 2/16 熊沢 アラバンサ 
98.2.21 ダイヤモンドS(G3) 2/16 熊沢 ユーセイトップラン 
98.3.29 日経賞(G2) 4/12 熊沢 テンジンショウグン 
98.5.3 天皇賞・春(G1) 2/14 熊沢 メジロブライト 
98.6.13 目黒記念(G2) 3/13 熊沢 ゴーイングスズカ 
98.7.12 宝塚記念(G1) 2/13 熊沢 サイレンススズカ 
98.10.11 京都大賞典(G2) 4/7 熊沢 セイウンスカイ 
98.11.1 天皇賞・秋(G1) 2/12 蛯名 オフサイドトラップ 
98.11.29 ジャパンC(国際G1) 10/15 熊沢 エルコンドルパサー 
98.12.27 有馬記念(G1) 3/16 熊沢 グラスワンダー 
99.2.14 京都記念(G2) 7/10 熊沢 エモシオン 
99.3.28 日経賞(G2) 3/13 熊沢 セイウンスカイ 
99.5.2 天皇賞・春(G1) 5/12 熊沢 スペシャルウィーク 
99.5.29 金鯱賞(G2) 3/15 熊沢 ミッドナイトベット 
99.6.20 鳴尾記念(G2) 3/10 熊沢 スエヒロコマンダー 
99.7.11 宝塚記念(G1) 3/10 熊沢 グラスワンダー 
99.10.10 京都大賞典(G2) 6/10 熊沢 ツルマルツヨシ 
99.10.31 天皇賞・秋(G1) 2/17 熊沢 スペシャルウィーク 
99.11.28 ジャパンC(国際G1) 6/14 熊沢 スペシャルウィーク 
99.12.26 有馬記念(G1) 10/14 熊沢 グラスワンダー 
00.1.23 AJCC(G2) 2/14 熊沢 マチカネキンノホシ 
00.2.20 京都記念(G2) 3/11 熊沢 テイエムオペラオー 
00.3.26 日経賞(G2) 2/10 熊沢 レオリュウホウ 
00.4.30 天皇賞・春(G1) 4/12 熊沢 テイエムオペラオー 
00.5.20 目黒記念(G2) 1/15 武豊 (マチカネキンノホシ) 
00.6.25 宝塚記念(G1) 4/11 安藤勝 テイエムオペラオー 
00.9.24 オールカマー(G2) 5/9 後藤 メイショウドトウ 
00.10.29 天皇賞・秋(G1) 7/16 武豊 テイエムオペラオー 
00.11.26 ジャパンC(国際G1) 8/16 後藤 テイエムオペラオー 
00.12.24 有馬記念(G1) 7/16 後藤 テイエムオペラオー 
01.1.14 日経新春杯(G2) 1/11 藤田 (サンエムエックス) 
01.3.24 ドバイシーマクラシック(国際G2) 1/16 武豊 (ファンタスティックライト) 
01.6.24 宝塚記念(国際G1) 4/12 後藤 メイショウドトウ 
01.10.7 京都大賞典(G2)※3 失/7 後藤 テイエムオペラオー 
01.10.28 天皇賞・秋(G1) 7/13 武豊 アグネスデジタル 
01.11.25 ジャパンC(国際G1) 4/15 武豊 ジャングルポケット 
01.12.16 香港国際ヴァーズ(国際G1) 1/14 武豊 エクラール 
 ※1…レース中、故障を発症したため、1着馬より約6秒遅れでゴール
 ※2…4コーナーを曲がりきれずに逸走、騎手が落馬して競走中止
 ※3…最後の直線で、他の馬の進路を妨害し、落馬させたため失格。 

 
 

 


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12月19日(水)演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(12月第4週分)
 
 さて、水曜日は演習(ゼミ)・「現代マンガ時評」。
 いよいよ年の瀬ということもあって、合併号期間が始まりました。今週は「週刊少年サンデー」など数誌が
お休みですので、「週刊少年ジャンプ」関連を中心としたゼミになります。

 それでは、まずレビューの前に、「週刊少年ジャンプ」の月例新人賞・「天下一漫画賞(01年10月期)」の
受賞者、受賞作を紹介しておきましょう。実は先週号で発表されていたのですが、見落としてしまっていたの
でした。申し訳ありません。

第63回天下一漫画賞(01年10月期)
 
 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=該当作無し
 審査員・編集部特別賞=2編
  ・『ハンコ的英雄リンシャン』(小畑健賞)
   板倉雄一(19歳・神奈川)
  ・『デビルローン』(編集部特別賞)
   伊藤寿規(23歳・東京)
 最終候補(選外佳作)=6編
  ・『テンシとショウネン』
   天野洋一(20歳・岡山)
  ・『REAL HERO』
   原作:金沢陽嗣(24歳・神奈川)
   作画:内田朝陽(24歳・東京)
  ・『おじいさんの機械』
   亀野善寛(27歳・愛知)
  ・『雪ざんげ』
   根津愁(21歳・神奈川)
  ・『B-BOY』
   小田浩司(23歳・神奈川)
  ・『貫く者(スルー)』
   田川真理(18歳・東京)
 

 さて、それではレギュラー企画・『新連載・読み切りレビュー』です。レビューの最後に出てくる評価につ
いてはこちらを参照のこと。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年新年3号☆

 ◎新連載第3回『サクラテツ対話篇』(作画・藤崎竜)《第1回掲載時の評価:B》

 どうやら、一話完結型のドタバタギャグマンガ、というのが現在のスタイルみたいですね。『封神演義』か
らストーリー部分を抜いたような雰囲気、と言えば良いかと思います。
 読んでいて不快感はありません。爆笑も無い代わりに、つまらないと感じる事も有りません。なので、"ア
クは強いのに影が薄い"という、珍しい作品になってしまいました。
 藤崎竜氏とその作品群は、一般ウケはしない代わりに、女性同人誌サークルを中心としたコアな固定ファン
層を抱えています。しかし、この『サクラテツ対話篇』が、これまでと同じように固定ファン層へ受け入れら
れるかというと、やや疑問です。近いうちにテコ入れをして、『ジャンプ』内での存在感を増す努力をしてゆ
かないと、意外と短命な連載になるかもしれません。
 最後に評価ですが、第1回の時と同じくB。良くも悪くも平均点、といった感じでしょうか。

 ◎読み切り『まげちょん』(作画:浅上えっそ)

 先週の『SAVE THE WORLD』に続いて、赤塚賞佳作入賞作の掲載です。例によって代原なのですが、いつも
の『HUNTER×HUNTER』休載対応ではなく、なんと"落ち"たのは『ホイッスル!』でした。珍しい事もあるもの
ですが、これが連載終了への伏線にならないようにしていただきたいものです。
 さて、この『まげちょん』ですが、同じく赤塚賞佳作に選ばれた『SAVE THE WORLD』よりはレヴェルが高
いと思います。が、ギャグマンガにしては、肝心の笑いの要素がイマイチであり、インパクト不足は否めませ
ん。
 それは赤塚賞の審査をされたマンガ家さんたちにも共通の思いだったらしく、審査結果発表の記事に掲載さ
れた講評はこんな感じでした。


 テンポがよい。テーマを短く、もっと絞り込んで(赤塚不二夫氏) 


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 キャラをちゃんと作れる人だと思う(小栗かずまた氏)


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絵はキレイで上手いかも。でも、全体の空気が妙に古い(うすた京介氏)

 

 ……誰一人「面白い」とか「笑えた」とか言ってないんですよね。マンガとしては良く出来ているが、ギャ
グマンガとしてはどうか、といったところなのでしょうか。
 この作品を読んだ直後、「ピューと吹くジャガー」を読んだのですが、やはり歴然たる才能の差が有るな、
と感じてしまいましたね。
 評価はBに近いB-というところでしょうか。作者の浅上さんには精進してもらいたいですね。

 ………
 今日はちょっと短いですが、これで講義を終わります。本当は、「ジャンプ」の次回打ち切り作を予測・検
討してみたかったのですが、次回以降に延期、ということでご了承ください。
 さて明日は、競馬の香港国際ヴァーズに勝ち、デビュー50戦目の引退レースで晴れてG1馬となった、ステ
イゴールド号に関しての特別企画です。何と、いつもの講義に代わって、助手の栗藤珠美ちゃんによるショー
ト・ストーリーをお送りします。お楽しみに。(本日の講義終わり)
 

 


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12月18日(火)メディア・リテラシー概論
「ニュース購読・『あの人は今こうしている 工藤兄弟』」(2)
 
 さて、昨日は突然の休講失礼しました。
 前回の内容ですが、詳しくはレジュメを読んで頂くとして、ここではごく簡単に振り返って、足早に話を先
へと進めましょう。

 消えかけの双子タレント・工藤兄弟のデビューから今後の展望について書かれた記事を取り上げ、それが実
はツッコミ処満載の提灯記事だった、というのが前回の内容でした。
 今回は前回の講義の最後で言った、この記事の欠陥についてのお話をしましょう。

 結論から先に言いますと、この記事は、「どうして工藤兄弟は『ガクンと露出が減った』のか書いてない」
のです。だから中途半端な印象が否めないんですね。

 芸能界で露出が減るのには、必ず理由があります。
 例えば「キャラが被った」という理由。この類型の中でも有名なものには、「池谷幸雄が出てきたら森末慎
二が消えた」件や、「浜崎あゆみが出てきたら華原朋美が消えた」件など。中には、「吉野紗香が出てきたら
上原さくらが一旦消えたが、吉野紗香が未成年喫煙発覚で自滅したので、また上原さくらが復活した」という
特殊なケースもあります。
 その他よくあるのは「一時的に上がった知名度ほど実力が伴っていなかった」と言うパターンなど。……
あ、あんまり深く採り上げるのはアレですが、ご老人タレントに多いのは、「実はいつの間にか死にかけてい
る、またはボケている」というパターンですね。MLBに詳しいヅラの人や、○森のオバチャマなどがそうで
す。この場合、再登場するのが先か、訃報が先か、という状態でありまして、えも言われぬ寂寥感に囚われて
しまいます。

 では、彼ら工藤兄弟が露出度を減らした理由とは何でしょうか?
 それは「認知されているキャラが変わってしまった」というパターンです。もっと簡単に言うと「ヤンキー
だとバレた」というわけですね。
 芸能界に元犯罪者ヤンキーが多いのは周知の事実ではありますが、だからといってヤンキー丸出しでTVに出
られると、それはそれで活動が限定されてしまうわけです。「前科モンに『サライ』歌われても、感動でけへ
んよなあ」ということです。そういう意味から考えたら、今年の研ナオコは色々な意味でギリギリでした。
 これで演技力や貫禄が有れば、Vシネマ路線もアリなのですが、現実世界でチンピラだった人間には、Vシネ
マの世界でもチンピラ役しか回ってこないんですよねえ……。
 …と、閑話休題。
 さて、工藤兄弟がヤンキーだとバレてしまったのは、とある番組がきっかけでした。
 その番組とは「オールスター大運動会」。70年代に誕生して以来、中断を挟みながら幾度も実施されてい
る、定番のスポーツバラエティー番組です。
 この番組、昔から芸能界の裏事情と深くリンクするという、ある種の業を抱えた番組です。"徒競走でジャ
ニーズのアイドルに勝ってしまって、他の出番もろとも消されたお笑い芸人"など、多くの悲劇が生まれては
公式データから抹消されてきたのは余りにも有名です。
 しかし、今回の件で問題となったのは、徒競走ではなく、学校の運動会でもお馴染の"男子棒倒し"でした。
 この競技に参加した事がある男子受講生の方は分かると思いますが、この競技、"吉野家の在るべき姿"のよ
うに殺伐としておりまして、本当にいつケンカが始まってもおかしくない危険な競技なのです。
 学校では小学生・中学生同士なので大事には至りませんが、これを大の大人、しかも経歴に問題の多いタレ
ント連中でやってしまうと、たちまち"リアル『特攻の拓』の修羅場"的様相を呈してしまいます。一番酷い時
には、現役プロレスラーや元・グリーンベレーの外国人タレントが混じってしまい、テンションが嫌な方向性
で最高潮。そこへ職務を全うしようとした某お笑い芸人が茶化した態度をとったところ、その元・グリーンベ
レーに身柄を制圧され、

 「俺はヴェトナムで人殺した事あるんや。お前も殺したろか!?」

 などと凄まれた、という笑えない話もあったりします。
 ちなみに、この元・グリーンベレーの人は、一時期、某・年2回開催の超長時間クイズ特番で、プロレスラ
ーの藤原喜明"組長"と、ガチンコ相撲勝負をしていたことで有名です。しかし、この勝負、ヴェトコン・ヴェ
トミンを多数刺殺・絞殺して来た男と、数多の道場破りを2級障害者にしてきた男との一騎討ちなわけで、言
ってみれば残虐超人同士の戦いです。まるで第20回超人オリンピック1回戦Bブロック第1試合・ラーメンマン
VSブロッケンマンのような試合でして、よくよく考えてみればTV、しかも生なんかでは放送しちゃダメで、ひ
っそりとラジオ放送に止めておくべき試合だったのですが……。いやはや、知らないという事は恐ろしいです
ね。
 おっと、またも話が逸れました。まぁそんな危険な状況下でしたから、まさに一触即発。ちょっとした事が
原因でケンカが始まってしまいます。ですから工藤兄弟も、オヤジ狩り仕込みの打撃技を繰り出すという事態
に陥ってしまったわけです。
 しかもその抗争相手が何と坂本一生。そう、あの元・"新・加勢大周"です。元なんだか新なんだかハッキリ
させてもらいたかった、あの彼です。消えたタレント同士で潰しあいしてりゃ世話ないですが、彼ら3人は小
競り合いの後、よしゃあいいのに工藤兄弟が「ウチの事務所はデカいんだ。お前なんか芸能界から干してやる
からな」という、器の小ささ丸出しの捨て台詞を吐くに及んで、とうとう収拾のつかないところまで事態は悪
化してしまいました。
 この3人の因縁の対決は、テレビ東京系「浅草橋ヤング洋品店」で数回に渡り放映されたので、覚えている
受講生の方も多いと思いますが、僕自身、とてもバラエティー番組とは思えない異様な雰囲気に、大層面食ら
ったものでした。
 結局この一連の抗争が続く中、工藤兄弟は突如「笑っていいとも!」から降板します。まぁ、そりゃあ、こ
んな状況下で「お昼休みはウキウキウォッチング」と歌われても、聴いてる方は「お前らが歌うと、ちっとも
ウキウキしねえよ」と、ささくれ立った気分になるだけですから仕方ありませんが……

 と、まあ、工藤兄弟のマス・メディアへの露出が減った理由を述べてきました。
 で、今回の記事に話を戻しますが、この"「露出がガクンと減った」理由"を知っているのと知っていないの
とで、記事の解釈が随分と変わってくると思いませんか? ひょっとしたら、最初に記事を読んだ時には、
「ふ~ん、工藤兄弟も頑張ってるじゃん」と思った人もいたかもしれません。が、あらゆる角度から記事の検
討を進めてきて、今、改めて記事を読み返してみるとどうでしょうか? 最終的な解釈は皆さんにお任せしま
すが、「何を眠たいこと抜かしとるねん、ボケ」と、『ナニワ金融道』の桑田はんのような一言を口走りたく
なった人も多いのではないでしょうか?
 そうです。これこそ、メディア・リテラシーなのです。正しい知識を身に付け、歪んだ報道に惑わされる事
無く、世の中を逞しく生きてゆきましょう。よろしいですね?
 とりとめのない講義になってしまいましたが、これで今回の講義を終わりたいと思います。(この項終わ
り)
 

 


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12月16日(日)メディア・リテラシー概論
「ニュース購読・『あの人は今こうしている 工藤兄弟』」(1)
 
 今日の講義では、"メディア・リテラシー"という耳馴染みの薄い言葉を使いましたが、これは簡単に言うと
"情報判断"ということです。使い古された言葉ではありますが、現在日本では情報が氾濫しています。しかし
それは、文章力も無いのにエリート面して断片情報を垂れ流す連中が過半数を占めていると思われるマスコミ
から一方通行で提供されたものばかり。我々はこれを鵜呑みにするのではなく、きちんと受け手の側でそれを
噛み砕き、吟味して、真に有用な部分だけを吸収する──言わば、情報の消化活動が大切になって来ます。い
ざ、こちらから情報を出す時に、コーンの原型が残ったウ○コが出てきては困るから、ちゃんとよく噛んで食
べましょうね、ということです。
 以上の目的で実施しますこの講義では、マスコミが報道したニュースをピックアップし、それについて様々
な側面から検討を加えてゆく、という形式で進めていきたいと思います。

 さて、今日採り上げるニュースは、12月15日付の『日刊ゲンダイ』紙ウェブサイト・『ゲンダイネット』に
掲載されていた、『あの人は今こうしている 工藤兄弟』です。では、まず早速冒頭の部分を紹介しましょ
う。

 ちょうど10年前、「ホリプロTHE1991オーディション・飛び出せ!日本男児」で発掘された一卵性
双生児がいた。順一郎・光一郎の工藤兄弟だ。「笑っていいとも!」のいいとも青年隊でデビューしたふたり
は女子中学生や女子高生に圧倒的な人気を誇ったが、最近はガクンと露出度が減った。今どうしているんだろ
う。
 

 所謂「消えたタレント」は、光る素材を発掘しては使い捨てする、流行り廃りの激しい芸能界には付き物と
言えるでしょう。
 確かに数年前は我が物顔で芸能界を闊歩していたはずなのに、今では姿どころか名前も聞かない。「名前を
聞かないなあ」などと言われ、「恐怖の追跡」さんで"捜索依頼"が出る人はまだマシです。
 例えば、ユースケ・サンタマリアとキャラが被ってしまい、一気に露出が減ったルー大柴。
 あるいは「ニュースステーション」のレギュラーだったのに、(少なくとも番組内では)天下の久米宏に喧
嘩を売ってしまい、マスコミ業界から抹殺された"ニュース界のアル・カイーダ"こと若林正人氏。
 さらには、人気や仕事量がネットバブル期の光通信の株価みたいな経過を辿った猿岩石。
 …彼らは消えた、消えた、などと言われても、未だローカル局でレギュラーや準レギュラー番組を持ってい
て、一応は現役のタレントとして命脈を保っています。
 本当に「消えたタレント」と言うのは、偶然残っていた10年前のビデオを再見した時になって、ようやく
「あ~、いたなこんなヤツ」と言われるようなタレント、例えば一時期「笑っていいとも!」に出ていたもの
の、当時売り出し中の某アイドル女優と白昼堂々ゲーセンでディープキスをかましているところを見咎めら
れ、業界内"軍法会議"により芸能界から追放されてしまった荒木定虎のような人です。今ではそのお相手だっ
た某アイドル女優も消えかかっており、実はここで実名を明かさないのも、ただ単に、すぐ名前が出てこない
だけだったりする、というのが悲しいですが。
 そして、今回のニュースに登場する工藤兄弟、彼らも間もなく「消えたタレント」の仲間入りをしようか、
という人たちです。しかし幸いな事に、こうして消える寸前にもう一度、鯨の息継ぎのように我々の前に姿を
現してくれました。今回はこの機会を逃さず、彼らの人物像を探る事で、この記事のメディア・リテラシーを
すすめて行きたいと思います。10代の頃の趣味が「場外馬券売り場でオヤジ狩り」だった彼らですから、やや
身の危険を感じてしまったりするのですが、言論の自由を謳った日本国憲法を盾代わりにして、断固としてこ
の企画を進めてゆきたいと思います。

 さて、彼ら工藤兄弟は「ガクンと露出度が減って」しまってからどうしていたのでしょうか? 
 最近落ち目のフジTV系「ものまね王座決定戦」で、員数合わせ要員として出演していたり、また、「芸能
人競輪大会」に出場したはいいが、これまた消え去る寸前の芸人・ロッコツマニア宿輪(貧相な方)の落車事
故に巻き込まれて本人も落車・転倒。ブチギレて、乗っていた自転車をブン投げて足蹴にしているシーンが日
テレ系「電波少年スペシャル」で放映されていたり、はたまた、TBS系「筋肉番付」特番の芸能人大会でケ
イン・コスギの引き立て役に使われていたりしたのは確認されていますが、彼らがTV番組で、放映時間の全
てで通して出演しているシーンは「笑っていいとも!」以来見ていない気がしますね、確かに。
 まぁ、一言で言うと「干されていた」わけなんですが、では彼らは、持て余した暇をどう使っていたのでし
ょうか? ニュース本文から抜粋してみましょう。


 「ボクらは役者とも芸人ともミュージシャンともいえない、いわゆるタレントでしょ。このままじゃいずれ
先細りしちゃうと思うんです。で、ロックからポップスまで幅広くこなせるミュージシャンになるべく、ふた
りでギターを始めました。正直、ここ1、2年は仕事もそんなに忙しくないし、ふたりして楽曲作りに励んで
ます」(兄の順一郎さん) 
 

 まず、自分自身がタレントとしてまだ先細りしてないと思ってる事が非常に新鮮ですが、それよりも重要な
のはその下です。
 僕は音楽について専門的な知識には乏しいのですが、果たして、「ロックからポップスまで」というのは幅
広いと言えるのでしょうか? 
 例えば、「詩吟からクラシック、果てはデスメタルまで」などと言われれば、「おお、確かに幅広い」とな
るでしょう。しかし、「ロックからポップスまで」というのは果たして……? 何だか、「モー娘。からフォ
ルダー5まで幅広く」と言われているような感じがして、何となく彼の頭の悪さ違和感を感じてしまうのです
が。
 それに、2人でギターを弾いて歌を唄うというのは、果たしてロックやポップスなのでしょうか?
 ギターを弾く2人組としてユニットを想像してみると……、

 和製サイモンとガーファンクル

 又は、

 1人足りないジ・アルフィー

 又は、

 人数が激減したジプシーキングス

 ……彼らが目指すのは、「ロックから(フォーク→音頭調のニューミュージック→ジプシー経由で)ポップ
ス」みたいですね。いや~、この欲張りさん!
 兄のミュージシャン転向宣言に続いて、弟は「地道に頑張ります」と、「これ以上地道やったら消えてまう
で、キミ」と言いたくなるような謙虚な発言で続き、これを耳にした、この記事を担当した記者は「これがあ
の、暴力三昧に明け暮れていた工藤兄弟か!」と、驚きの余り、


 「ナント、実に謙虚な青年じゃないか。」 

 …と、賞賛の声を送っています。
 ここは普通の人ならば、冷静に「そんなことしてる暇があったら道でも掃け」と言うところなのですが、こ
の記者さんは非常に慈悲深いらしく、完全に応援モードに入っています。慈悲深くなるくらい原稿料をはずま
れたのでしょうかね。

 さて、そもそもこの工藤兄弟、どのようにして身分不相応にも芸能界に入ってきたのでしょうか? この記
事ではそれについても言及しています。


 工藤兄弟は東京出身。ともに「芸能界にはさっぱり興味はなかった」が、母親が「ホリプロTHE1991
オーディション・飛び出せ!日本男児」に応募。「オモシロ半分に受けた」ところ、特別賞を受賞した。
 当時、順一郎さんは体育関係の専門学校の2年生。光一郎さんは「JUN」というファッションブランドの
店員だった。
 

 「なんだ、『特別賞』か」と思われるかも分かりませんが、この手の賞レースでは、グランプリや準グラン
プリは、大手事務所の圧力で初めから決まっているのが通例で、彼らのようなコネ無しのヤンキー崩れ一般人
は、「特別賞」と言う名の"裏グランプリ"で芸能界に引っ張られるものなのです。だから、彼らは最大限の評
価を受けてスカウトされた事になります。
 しかし、このオーディションのグランプリ受賞者は誰だったのでしょうか? その名が杳として知れないと
ころを見ると、かなりトホホな実験的なオーディションだったようです。
 まぁ、恒例の「スカウトキャラバン」で、無名時代の椎名林檎を地方予選で叩き落したホリプロのやる事で
すから、何があっても不思議ではありませんがね。

 当時彼らは19歳。兄は体育大学じゃなくて体育専門学校だったり、弟もスポーツ一筋だったのに、高卒後は
全く関係無いショップの店員になっていたりと、彼らの高校時代の評定平均が窺い知れる履歴がナニですが、
まぁ、何はともあれ、彼らは芸能界の住人となりました。しかし……


 「ただ、ふたりとも将来は決まってなくて、"芸能人はおカネが稼げる。面倒見てもらえるなんてラッキ
ー!"って軽いノリでこの世界に入っちゃったんです」(順一郎さん)
 かくして、92年、「笑っていいとも!」のいいとも青年隊でデビュー。
 「"なんでもやります"精神でバラエティー、ドラマ、映画、ラジオ番組と分野を問わずに出ました。ところ
が、これといった自分たちの活動の軸が見つからない。悩みましたね」(光一郎さん)
 

 活動の軸が見つからないとか言う前に、いいとも青年隊でデビューだった時点で、色んな事に気付けよ! 
とは思うのですが、これ以上言うと、本当に場外馬券売り場で襲撃されそうな気がしますので、止めておきま
しょう。
 結局彼らは約2年後、いいとも青年隊を降板した前後から急速にフェードアウト。


 順一郎さんは「芸能界をやめて、好きなサーフィンの仕事を探そうとした」こともあった。
 

 と、暴力芸能人の先輩、真木蔵人の後を追おうと考えた事もあったようですが、


 「だけど、ボクがやめたら弟も引きずり込んじゃうと思ってとどまったんです」
 

 などといった微妙な兄弟関係をほのめかしながら、芸能界残留を決意。しかし、


 「で、モノマネ番組に出てるうちに、音楽活動を軸にしたら、と考え始めた。これからはストリートライブ
も積極的にやるつもり。一日も早く、"ミュージシャン・工藤兄弟"を確立したいですね」
 

 ストリートライブをやるために芸能界に残留、というのは、いかがなものか、と思うのですがね。
 あのですね、ストリートライブ出身の歌い手は、ゆずとサムシングエルスだけで、もう十二分です。いや、
っていうか、歌手になりたかったらボイストレーニングに行かんかい、このボケ。
 ……あ、失礼。取り乱しました。
 道端でギターかき鳴らして下手な歌を歌うくらいなら、まだ手相でも見てた方が金も儲かると思うんです
が、まぁ、職業選択の自由は憲法で保障されてますから、もう何も言いますまい。

 ……と、このように、これから関西空港二期工事のような見通しのつかない事業に乗り出した工藤兄弟、一
応、形だけでも応援してあげたいところです。
 しかし、応援したところで終わってしまってはこちらと同じになってしまいます。これは「メディア・リテ
ラシー概論」ですので、このニュースを分析しなくてはなりません。
 このニュース、これまでの検討に従って、ライターが食い扶持を稼ぐための提灯記事と解釈し、記事そのも
のは適当にあしらっておけば、「工藤兄弟は実は謙虚」とか「工藤兄弟はミュージシャンになるために鋭意健
闘中」などといった誤解を抱かなくて済みます。が、それだけではこの記事の大きな欠陥を見落としてしまう
事になってしまいます。
 そう、この記事には大きな欠陥が存在するのです。
 では、その欠陥とは何か?
 ……もう察しの良い方はお分かりですね。それは明日の講義に、ということで。お時間です。今日の講義を
終わります。 (この項続く)
 

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12月15日(土)ギャンブル社会学
「憲法違反の身分差別規定についての諸問題」
 
 突然ではありますが、世に存在する法律というものは、多くの矛盾に満ちています。
 古代ギリシアの哲学者ソクラテスは、悪法もまた法であるから、と言って自ら死刑の毒杯を仰ぎました。
 ドイツ第三帝国のヒトラーが、国内の全ての権限を掌握して独裁政権を築いたのも、よりによって"最も民
主的"と謳われたワイマール憲法の矛盾を突いて生まれたものでありました。
 そして、現代の日本もまた、数多くの法律が、矛盾を秘めたまま放置されています。

 例えば、"高校生はアダルトビデオが観られないけれども、正月の深夜などに夜通しTVでやっている洋物ポ
ルノは観放題"という問題。

 また、田代まさし事件で露呈した"スカート盗撮はパンツ覗いただけで痴漢と同じ罰金刑だけど、風呂場を
覗くのは、いくら風呂場で本番行為が行われていようと軽犯罪法違反に留まる"という問題。

 さらに、"裏ビデオは何本所持しても、ましてや裏ビデオのレビューサイトを立ち上げて、広告収入で飯が
食えるくらい稼いでいても合法なのに、友達にテープ代金と送料だけでダビングしてあげても違法である"と
いう問題。

 そして、"あと1日で18歳なのに男性経験100人を超える、まるで整形前の飯島愛みたいな阿婆擦れギャルと
でも、援助交際したのがバレれたが最後、逮捕されて人生メチャクチャに。しかし、16歳になったばかりの処
女を、結婚を前提で肉奴隷に調教し、陵辱の末に妊娠させ、挙句の果てには中絶までさせてもバリバリ合法"
という正視するに耐えない矛盾まであります。

 ……何だか、喩えがシモに限定されている気がしますが、受講生の皆さんに理解しやすい喩えを列記したら
自然とこうなっただけです。不可抗力ですので、ご了承を。
 しかし、日本の法律には、もっと矛盾に満ちた法律が跋扈しています。それらの法律は、なんと憲法違反の
疑いが濃く、どうして違憲立法審査にかけられないのか不思議で仕方が無いものなのです。

 それは、俗に"3競オート"と呼ばれる公営ギャンブル(競馬、競輪、競艇、オートレース)に関する法規に
ある、「投票券(馬券、車券、舟券)購入に関する制限」です。
 競技によって定められている法律は違いますが、内容は全く同じです、即ち、
 「学生生徒又は未成年者は、投票券を購入し、又は譲り受けてはならない」
 という条文です。(競馬法第28条、自転車競技法第7条の2、モーターボート競走法第9条の2、小型自動
車競走法第10条の2)
 この条文の問題点は、「学生・生徒」と「未成年」が同等に扱われているという点。いくら年齢を重ねてい
ようと、また、職業を持っていようといまいと、高校や大学に籍を置いている人は馬券等を購入する事が出来
ない、というわけなのです。
 例えば、自民党所属の参議院議員でプロレスラー、さらには自ら個人事務所を経営する実業家でもある大仁
田厚氏は、明治大学二部に在籍しているので馬券等を購入する事は出来ません。しかし、20歳以上で学籍が無
ければ、ギャンブルで借金まみれだろうが、強姦魔だろうが、オサマ=ビンラディンであろうが馬券は買えま
す。
 社会的に成功し、さらには国権の最高機関の一員に名を連ねる人がダメで、社会不適合者でも成人で学籍が
無ければギャンブルし放題という現実。これを矛盾と呼ばずに何と呼べばよいのでしょうか?
 加えて、先にも述べましたが、この条文は多分に憲法違反の疑いが濃いのです。

 日本国憲法第14条第一項 
 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又
は社会的関係において、差別されない。
 

 ギャンブルは健全な娯楽とはいえ、場合によっては高額の金銭を扱う行為です。そこを考慮すれば、経済力
の無い低年齢者のギャンブル参加を制限すること、これは公共の福祉の観点からも、合憲とする理由に足るも
のでしょう。
 しかし、年齢・職業や経済力に関係なく、「学生・生徒」なる社会的身分によって、「馬券の購入」という
経済的行為を制限する事は、これは明らかに公共の福祉の範疇を超えた身分差別です。そう、これは明らかに
違憲なのです。

 この"「学生・生徒」差別規定"は、他の合法&違法ながら黙認されているギャンブルと比べると、その矛盾
がさらに浮き彫りになって来ます。以下の表をご覧下さい。

各ギャンブルの年齢・身分規定

  
3競オート 学生・生徒・未成年者が不可 
toto(サッカーくじ) 19歳未満が不可 
宝くじ 制限なし 
パチンコ&パチスロ 18歳未満、または18歳以上でも高校生は不可。(風俗店扱い) 
麻雀(フリー雀荘) 

 3競オートと同じ、「最小100円、100円単位で上限無制限」のギャンブルであるtoto(サッカーくじ)
が、かなり緩やかな制限となっていることが目に付きます。
 さらに恐ろしい事には、賭けの最小額が事実上200円以上で、実質"レート"が3競オートの倍以上である
上、控除率(胴元の取り分)が極めて高く危険性の高いギャンブルである宝くじに至っては、一切の制限が存
在しないのです。事実、僕が塾講師のバイトをしていた時、当時中1の生徒が有り金叩いて年末ジャンボ宝く
じを購入するという暴挙を働いた事がありました。暴挙ではありますが、これは当然合法です。
 受講生の中には、「totoや宝くじはギャンブルじゃなくて、クジだよ」などと言う方がいるかも知れま
せんが、その認識は危険な誤解です。
 totoは「スポーツベッティング」、宝くじは「富くじ」というカテゴリに属する立派なギャンブルで
す。ギャンブルは健全な娯楽ではありますが、他の娯楽と同様に、バカがのめり込むと扱い方を間違えると一
生傷痕が残る"大ヤケド"を負う危険だってあるのです。特に宝くじ。ジャンボ宝くじを10万単位で買う人々の
映像がTVで頻繁に流れますが、あれを競馬場での馬券購入シーンに置き換えてみてください。その行為がど
れだけ恐ろしい行為か、想像がつくというモノです。しかも、改めて言いますが、宝くじの控除率は競馬より
遥かに危険な設定です。
 また、パチンコやフリー雀荘での麻雀についても一言触れておきましょう。これらは、賭け金の最高額こそ
限界がありますが、事実上の掛け金最小額は少なくとも1000円単位。3競オートの10~数10倍なのです。一
応、18歳未満禁止という制限はありますが、普通の学生には少々荷の重いレートと言えるでしょう。

 このように、3競オートと同じ、もしくはそれ以上の危険性のあるギャンブルが、緩やか過ぎるくらい緩や
かな制限に留まっているのに対し、遊び方によってはゲームセンターより健全であるはずの3競オートには不
必要なほど厳しい制限が設けられている。これが現状です。
 それにしても、どうして3競オートだけが不当な"差別"を受けているのでしょうか? 
 実は、これは明治時代にまで話が遡ります。

 明治時代の開国・文明開化と共に、あらゆる西洋文化が怒涛の如く日本に押し寄せて来ましたが、その中に
イギリス生まれの近代競馬の姿がありました。
 始めは外国人居留地のみで行われていた競馬ですが、"世界に通用する良質の軍馬の育成"という目的から、
日本各地で競馬が行われるようになります。
 もちろん、競馬といえば馬券がツキモノ。しかし、ギャンブルが合法化されているイギリスと違い、日本で
ギャンブルをすることは「賭博行為」となり、違法。本来ならば馬券を売る事は不可能です。
 しかし、馬券を売らない競馬では一向に盛り上がりませんし、第一、競馬開催にかかる莫大な費用が捻出で
きません。どうにかして馬券販売を実行しなくてはなりません。正に板挟みの状態。世にも泥臭いハムレット
的状況であります。
 と、ここでさすがは"妥協の国"日本。この難しい状況下で、とんでもない打開策を実行します。
 それは「馬券黙許制度」。
 本来なら馬券は賭博行為でありご法度である。ご法度であるがしかし、馬券を売る事で人々が真剣に馬を見
るようになり、それが相馬眼、つまり能力の高い馬をみる目を養う事になるならば、国は敢えてこれを黙って
見逃す(=黙許する)ことにしよう……という、いかにも日本人が考えそうな制度ですね。 
 そしてこの時、「学生生徒又は未成年者は勝馬投票券(馬券)を購入する事が出来ない」という規定が生ま
れたのです。
 この規定の根拠は、タテマエでは「学徒や未成年者は、相馬眼を養うにはまだ未熟であるから、知的・身体
的に成熟するまでは粛々と学業に専念すべし」というものでしたが、ホンネを言えば、当時売られていた馬券
の最小発売額が、現在の10万円以上にあたる10円だったからでした。「ガキや学生風情が、そんな大金で賭博
を働くなど10年早いわ」というわけです。事実、この時は馬券で身を持ち崩す人間が続出し、あっという間に
馬券黙許は中断の憂き目に遭いました。その意味では、この厳しい規定も的を得ていたということになりま
す。
 それから随分後になって馬券は再び許可、しかも今度は公認されます。その時も馬券購入に関する規定は明
治時代のものが適用され、それが何と2001年の現在まで、しかも競輪・競艇・オートまで巻き込んで生き残り
つづけたのです。
 確かに19世紀の明治時代には有効な規定だったでしょう。しかし今は21世紀の平成時代です。馬券の最小額
も、当時で言えば銭単位の100円になりました。これほど社会や競馬を取り巻く環境が変わったのに、依然と
して法律だけは変わらない。これはおかしい、と言うより異常事態です。数年前の刑法改正と同様に、この規
定も改正する時期を迎えているのです。
 ですが、現在の日本におけるギャンブルを取り巻く極悪な状況の下、この規定が改正される望みは極めて低
いと言わざるを得ません。しかし、1人1人がこの規定の違法性を自覚し、社会における認知度を高めて行け
ば、いつか法改正も実現する時が来るでしょう。今日のこの講義がそのきっかけの1つになるならば、僕は大
変幸せであります。
 予定の時間を大幅に過ぎました。これで今日の講義を終わります。 (この項終わり)
 

 


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12月14日(金)法学(一般教養)
「日本国女帝誕生へ向けての諸問題」(3)
 
 昨日……と、今日も失礼しました。
 せっかく受講者が増えている時に休講するのはもったいないと、自分でも思っているんだけどねえ…。ま
あ、こればかりは二足の草鞋の限界だということで、どうも。

 さて、真面目なテーマをとりあげたこの「法学」の講義もいよいよ佳境です。笑いの少ない文章ですが、も
う一日お付き合いを。

 「法学」前回の講義は、各国の君主継承権事情の途中で時間切れとなったのでしたね。それでは、今日はヨ
ーロッパの続きから話を進めることにしましょう。

 じゃあ、前回、簡単に触れた古代ローマ帝国の事情をもう一度、今度は詳しくお話しましょうか。
 古代ローマは、建国からしばらくの間は王国、その後、国王が追放されて共和国になっていました。あのジ
ュリアス=シーザー(ユリウス=カエサル)が活躍した時代も、実は共和国時代です。彼は共和国のルールに
従って、行政や軍隊の司令官を終身任期で務めていただけの話です。
 ローマが世界史学の上で、共和国から帝国に変わったのは紀元前27年。(前回の講義で後30年と述べました
が、誤りでした。レジュメは既に訂正済みです)シーザーの甥であるオクタヴィアヌスが、シーザーの後継者
争いに勝利し、ローマの実権を握ったところから始まります。
 彼は、アウグストゥス(尊厳者)という称号を得て、広大なローマ帝国のあらゆる統治権を委ねられます。
ただし、この時も国のシステムは共和国のまま。彼は、あくまでも共和国のルールに則って、全ての権限を握
ったに過ぎません。ですからこれを厳密な意味で言う帝政ではないとして、「元首政」と言ったりします。
 普通、君主制の権限は世襲で親から子、孫へとア引き継がれますが、形式上は共和制であるローマに、元首
(皇帝)の権限が世襲で引き継がれる、との規定は無く、君主交代の規定は「先代皇帝の指名、それが無い場
合は有力者の推薦による」という暗黙の了解が成り立っていたのです。
 この状況で選ばれる後継者は、先代皇帝の中で後継者に足る息子、もしくは軍隊の将軍に限られてきます。
その上、隣国と緊張状態にあった当時の状況では、女帝の誕生などは夢のまた夢、といったところでしょう。
 その後、284年から"専制帝政"と呼ばれる、皇帝の権限が極めて強い時代がやって来ますが、皇位の継承規
定は変化が無く、しかも隣国からのプレッシャーが強まる一方と言う当時の状況から、女帝誕生を許すムード
は生まれませんでした。

 古代ローマ帝国はやがて東西に分裂。東に現在のギリシャや中欧を中心とした東ローマ(ビザンツ)帝国、
西欧には短い西ローマ帝国時代の後、ゲルマン系諸民族が築き上げた国家群が成立します。

 まず東のビザンツ帝国ですが、国そのものは古代ローマをそのまま引き継いでいますので、皇位継承のルー
ルも変わりません。ただ、このビザンツ時代には、エイレネ、ゾエ、テオドラという3人の女帝が誕生してい
ます。
 エイレネは息子の目をくりぬいて皇位に登りつめたと言う女傑ですが、他の2人は日本の女帝と同じような
ピンチヒッター的存在でした。結局のところ日本や中国と同様に、男顔負けの女傑が皇位を"強奪"するか、さ
もなければ祭り上げられての形式的な君主になる以外は、女性が君主になる道はありませんでした。

 では、次に西欧諸国。西欧諸国のほとんどは君主国でしたが、その中でも、他国の影響が少なかった君主国
を優先して紹介してゆきましょう。

 トップバッターは、現在も"現役"の王国、イギリスです。現在の正式名称を"大ブリテン及び北アイルラン
ド連合王国"といいます。サッカーやラグビーファンにはお馴染でしょうが、今のイギリスはイングランド、
ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの連合王国なのです。
 さて、イギリス──厳密に言うと、今のイングランド地方のみですが──は古代ローマの影響が無くなって
以来、現地勢力と外部からやって来た民族との攻防戦が数百年続き、現在の王国の前身であるノルマン朝イン
グランド王国が建国されたのは1066年のことでした。
 中世イギリスの王位継承のルールは、現在の日本の皇位継承規定で言うところの「六」にあたる「皇(イギ
リスでは王)兄弟とその子孫」までで、男子限定です。また、王子であっても、王家から独立して諸侯(「~
公」や「~伯」など)になっていた場合は継承権は無くなります(※ただし例外有り)。
 しかしこれだと、王位継承資格者が無くなってしまうケースも発生します。現に、ノルマン王朝は建国から
90年弱で王位継承者がいなくなってしまいました。
 この場合、イギリスでは「王家断絶」ということになり、"臨時ルール"が発動されます。
 この"臨時ルール"は単純明快で、「最後の国王の血縁者の中から最も(血縁的・実力的に)適した人物を選
び、新王朝の初代国王とする」というものです。これにより、新しい王家の下、イングランド王国は生き続け
ることになります。日本で無理矢理喩えると、幕府が変わっても日本という名前は変わらない、みたいなもの
でしょうか。
 こんなややこしいルールになった理由は不明ですが、
 「もともと国王は選挙で選ばれるものだったが、それが段階的に世襲化した。しかし、世襲制は大きく強化
されず、兄弟とその子孫までに限定された。そして世襲が出来なくなった時だけ臨時的に選挙制が復活する
("臨時ルール"発動)こととなった」
 ……という有力な説があり、僕もこれを支持しています。
 このようなルールの下、国王と王朝の交代が粛々と、時には戦争の種となりながら、それでも粘り強く維持
されます。
 しかし、時代が進むにつれて、「男子限定」という規定が歴代国王の悩みの種になって来ます。
 何せ、いくら子どもが生まれても男子でなければ、待っている道は王家断絶。また、男子が生まれたとして
も、まともに育つかどうかは分からない。実際、多くの子どもは夭折してしまう時代です。近親結婚も多いの
で虚弱体質や精神薄弱の子が生まれることも少なくありません。
 これがアジア王朝のように一夫多妻制ならば「数打ちゃ当たる」で済むのですが、ヨーロッパは一夫多妻ど
ころか離婚もままならないキリスト教国家。王家存続への道は絶えず綱渡りだったのです。
 もちろんこの「男子限定」規定は、国を賭けた戦争になれば、陣頭指揮に立って国中の猛者どもを率いる義
務のあった中世のイングランドには必要な規定でした。が、時代が進むと、戦争における戦力が国王・騎士か
ら傭兵・民兵に変わったのです。「国王=最高司令官」の意味合いが薄くなってしまいました。こうなると、
「男子限定」規定は王家存続にとっての足枷以外の何物でもありません。
 その結果、15世紀に成立したテューダー朝の時代、国王の権力がかつて無いほど増したのを利用して、「男
子限定」規定の廃止に成功します。これにより、王女であっても、国王の子や兄弟姉妹であるならば、男子の
後継者がいない時に限って王位継承の権利を得ることになりました。正式なルールとして女王を認めた画期的
な改革の成功です。
 これ以後、イングランド及びイギリスでは6人の女王が誕生します。即位順に、メアリ1世、エリザベス1
世、メアリ2世、アン、ヴィクトリア、エリザベス2世です。イギリスの女王には名君が多く、歴史上でも評
価の高い人物が少なくありません。
 そして20世紀末に王位継承権は男女同権となり、男女に関わり無く長子が王位を相続することとなりまし
た。無軌道に王位継承権を拡大すると、王室費の拡大や争いの火種となり、国家問題化しかねません。が、王
位継承権が直系子孫に限られていて王家の人数が大して増えないことと、イギリス王家が未だ形式とはいえ国
家元首であることなどが、男女同権化の実現に繋がったのだと思われます。

……

 と、次にフランスの事情を説明する予定だったのですが、どうやらこの講義、おそろしく長文になってしま
うことが、ここにきて判明してしまいました(遅!)。
 いつまでもこの堅苦しい話題で受講生の皆さんを引っ張るのは心苦しいので、この「法学」の講義は、次回
以降週1ペースで不定期に実施する、ということにします。皆さんには気長に受講してもらえれば、と思いま
す。それでは、今日の講義はここまでにします。(この項続く)
 

 


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12月12日(水)演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(12月第3週分)
 
 さて、毎週水曜日は「現代マンガ時評」。
 週刊マンガ誌(少年ジャンプ・サンデー中心)の新連載作品と読み切り作品のレビューを行い、マンガ界の
これからを展望すると言う演習(ゼミ)です。
 ところで、先週に第1回の「現代マンガ時評」を行ったのですが、後からレジュメを読み返してみると、突
然口調が「だ、である」口調になっていて、かなり偉そうな感じになってしまいました。ちょっとマンガ家さ
んに失礼だったかと反省しております。今回からは口調を改めますので、ご理解ください。

 では、今回のゼミを始めます。
 まず、今週分のレビューに移る前に、先週・今週で発表された新人賞(少年ジャンプ・サンデー系)の受賞
者・受賞作を掲載しておきましょう。備忘録的なものですが、後々にこの「演習」でレビューする際に役に立
つと思われますので。

第62回手塚賞&第55回赤塚賞(01年後期)
 
 ☆手塚賞☆(応募総数415編)
 入選=該当作なし
 準入選=2編
  ・『戦斧王伝説』(評点28/40)
   イワタヒロノブ(24歳・東京)
  ・『MONONOFU─モノノフ─』(評点25/40)
   ゆきと(22歳・高知)
 佳作=3編
  ・『ゼアミ』(評点25/40)
   小涼あぐり(20歳・兵庫)
  ・『うそごと』(評点24/40)
   結城ゆうき(22歳・東京)
  ・『JET SMASH─ジェットスマッシュ─』(評点22/40)
   守屋一宏(22歳・東京)
 最終候補=4編
  ・『空の下のココロのカタチ』(評点23/40)
   長谷川和志(25歳・兵庫)
  ・『WANNA BE A BE BOY』(評点18/40)
   伊藤史織(18歳・大阪)
  ・『想気獣』(評点18/40)
   中西真智子(16歳・京都)
  ・『ZERO』(評点16/40)
   山田大樹(17歳・埼玉)

 ☆赤塚賞☆(応募総数224編)
 入選=該当作なし
 準入選=該当作なし
 佳作=3編
  ・『まげちょん』(評点19/35)
   浅上えっそ(24歳・東京)
  ・『抽選内閣』(評点19/35)
   田代剛大(17歳・栃木)
  ・『SAVE THE WORLD』(評点18.5/35)
   堀たくみ(19歳・埼玉)
 最終候補=7編
  ・『魔術紳士(マジックジェントルマン)健三郎」(評点17/35)
   中根知之(23歳・愛知)
  ・『パーフェクトデブ』(評点16.5/35)
   佐藤治(22歳・埼玉)
  ・『キンダカートンポップ』(評点16/35)
   新妻克朗(23歳・東京)
  ・『女子高生はエキスパート』(評点16/35)
   高沢圭祐(26歳・群馬)
  ・『マネーイズマネー』(評点15/35)
   坂崎允柄(20歳・栃木)
  ・『Power BOY』(評点14/35)
   川村憲二(23歳・神奈川)
  ・『笑術バキューン!!』(評点14/35)
   大宅教史(24歳・北海道)
 

少年サンデーまんがカレッジ(01年9・10月期)
 
 入選=該当作なし
 佳作=4編
  ・『はりぼて』
   落合博和(26歳・栃木)
  ・『Body Complex』
   なるみなる(26歳・千葉)
  ・『どろんPA!』
   えんとっくん(25歳・埼玉)
  ・『ドリームらんちきゾーン』
   池田結香(25歳・東京)
 努力賞=3編
  ・『けろにょろ』
   深田マシュー(25歳・埼玉)
  ・『スルタンの弟』
   中道裕大(22歳・広島)
  ・『金好きこんちゃん』
   永沢明(24歳・東京)
 あと一歩で賞(選外)=1編
  ・『魔女戦記』
   小川正人(22歳・福島)
 

 ……赤塚賞の審査委員に、4連載3打ち切りの岡野剛が入っているのは、個人的には納得行かないのです
が、まぁ人材難ということで仕方ないんでしょうか……。

 では、レギュラー企画の「新連載・読みきりレビュー」に移ります。文中の7段階評価はこちらを。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年新年2号☆

 ◎新連載第3回『ソワカ』(作画・東直輝)

 このレビューを書くために、改めて第1回から読み直してみたんですが、この第3回の時点で、既に随分と
絵のクオリティが落ちているのが非常に気になってしまいます。このあたりの回数だと、普通はまだ連載前に
書き溜めしている原稿のはずなので、こんなところでクオリティが下がっているのは大問題です。そう言え
ば、作者あとがきで「時間を下さい、お願いします」と懇願していましたね。何かトラブルがあったのかもし
れません。
 しかし、何があろうと一定の仕事をするのがプロのマンガ家であるはずなので、評価は厳正に下します。
 まず、ストーリーがかなり間延びしている印象があります。最初の2回分を圧縮して第1回にするくらいで
ちょうど良かったのではないかと。『ONE PIECE』が最高に面白かった初期の、展開が恐ろしいまでにハイテ
ンポで進む部分と実に好対照なので、単行本をお持ちの方は見比べてみて下さい。
 あと、やはり絵のクオリティ。アクションシーンが多いのに、動きに躍動感が無いのには閉口させられま
す。『忍空』や『幕張』と似たような印象を受けたのですが、どうでしょうか? 例に挙げた2作品は、内容
が良かったので絵のクオリティは目をつぶれましたが、こちらの方は展開が間延びしている上でのことですか
ら、やっぱり読んでいて辛くなってしまいますね。
 と、いうところで7段階評価はB-。今のところ、次回打ち切り候補最右翼、と申し上げておきましょう。
しかし、こんな壮大な設定を打ち上げておいて……。

 ◎読み切り『SAVE THE WORLD』(作画・堀たくみ)

 例によって、『HUNTER×HUNTER』の代原です。今回はなんと、今日の冒頭で紹介した、赤塚賞の佳作受賞作
が掲載されました。異例の本誌デビューです。
 しかし、内容は……(汗)。
 本当ならノーコメントで済ませたい気分なのですが、そうもいきませんから書きますが、「全てにおいて下
手」としか言いようがありませんね。この作品で赤塚賞佳作なら、僕の友人S君が小学生時代に描いたマンガ
で準入選が獲れます。
 とにかく、シュールでもなんでも良いので、1回くらいは笑わせて下さい。評価は当然最低ランクのC。

☆「週刊少年サンデー」2002年新年2.3合併号☆

 ◎新連載『旋風(かぜ)の橘』(作画・猪熊しのぶ)

 スポーツ物少年マンガの主人公は、大きく分けて2つのパターンがありまして、
 「劣等生だが、人一倍努力を重ねるうちに、才能を開花させてゆく主人公。→物語の序盤では負けっぱなし
だが、中盤辺りからメキメキ力をつけ始め、終盤には無敵状態に。」
 ……と、いうパターンと、
 「物凄い才能を持ってはいるが、世間とズレていたりするために、周囲と色々な問題を起こしてしまう主人
公。→物語の序盤から、エリートタイプのライバルを翻弄しまくり、たいした挫折も無く快進撃を続けてフィ
ニッシュ」
 ……と、いうパターンがあります。少年ジャンプでは前者のパターンが多く、サンデーでは後者のパターン
が目に付くのですが、打ち切りまでの回数が短いジャンプで、カタルシスを得るまでに時間のかかる前者のパ
ターンが多いのは興味深い話と言えますね。
 ちなみに、マガジンはこの中間と言えるのですが、マガジンには「ご都合主義」という悪しき伝統があり、
"努力もせず弱いくせに、何故か勝ってしまう"という主人公が多かったりもします。
 さて、閑話休題。この作品は典型的な後者のパターン、しかもコメディタッチの作品です。しかし、実はこ
のタイプの作品、今のサンデーでは飽和気味なのです。特に『ファンタジスタ』と『DAN DOH!! Xi』の2作品
と傾向がダブっていて、読み手を非常に疲れさせてしまいます。しかも現時点では、様々な面で先発の2作品
を上回るまでには至っておらず、これはかなりの苦戦を強いられると言わざるを得ません。決して悪い作品で
はないのですが、連載開始の間が悪すぎたかな、という気がします。7段階評価はB。平均点です。

 ◎読み切り『川口能活物語』(作画・草葉道輝)

 噂をすれば影ではありませんが(笑)、『ファンタジスタ』の草葉道輝氏によるノンフィクション・コミッ
クです。
 しかしこの作品、「スポーツノンフィクションの『○○××物語』に名作なし」と「週刊連載作家が同時進
行で描いた読み切りに名作なし」のジンクスを地で行くような、典型的な凡作になってしまいました。これは
作者の草葉氏が悪いのではなく、企画が悪いのです。仕方ありません。連載、頑張ってください(苦笑)。評
価は、読み飛ばすのに苦ではないのでBということで。

《その他、今週の注目作》

 ◎新連載『サユリ1号』(週刊ビッグコミックスピリッツ掲載)

 主人公の妄想と瓜二つの女の子との出会いや、幼馴染の女の子との恋愛感情も絡んだ軋轢など、いかにもス
ピリッツらしい"ライトにドロドロした"恋愛物語ですね。
 この作品、何かに似ているなと思ったら、初期の山本直樹作品(『はっぱ64』や『あさってDANCE』)と雰
囲気が似てるんですね。ちょっと先が楽しみであり、怖い作品でもあります。
 期待度を込めて、評価はB+。

 ◎読み切り(月イチシリーズ連載)『せんせい・藤本義一編』(週刊コミックバンチ掲載/作画・岸大武
郎)

 岸大武郎氏といえば、かつて週刊少年ジャンプの専属マンガ家でした。しかし、この手の伝記物や、時には
恐竜紀行物などという、どう考えてもジャンプ読者に受け入れられようが無い作品ばかり手がけていて、確か
その後、ジャンプ系列誌に幾つか作品を描いていたのですがいつの間にか姿を消していたように記憶していま
す。
 それが、この『せんせい』という作品でコミックバンチに"拾ってもらって"いたのを発見して吃驚させられ
たのですが、それ以上に、マンガの腕が大層上がっていることに驚かされました。不遇にもめげず、弛まぬ努
力。素晴らしい話ではないですか。
 今回の作品も見事なストーリーテリングで、見せ場の演出等も水準以上の出来。かつての岸氏の失敗でも分
かるように、マンガでは難しい伝記物を見事に描ききっています。あの横柄で偉そうで中身の無い藤本義一
が、岸氏の手にかかったら人情家の好人物に変身してしまうのですから大したものです。
 今回に関してはA-評価。シリーズ全体でもA-に近いB+のランクを進呈します。

 ……

 と、今週は6作品をレビューしました。これからも、物理的事情の許す限り、レビューを掲載したいと思い
ます。それでは今週の「演習」を終わります。明日は「法学」の続きを講義する予定です。(今日の講義終わ
り)
 

 


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12月11日(火)法学(一般教養)
「日本国女帝誕生へ向けての諸問題」(2)
 
 それでは今日も同じ話題で講義を行います。昨日の講義を受けていない人はレジュメをちゃんと読んでおく
ように。(レジュメはこちらに)

 前回は、世界の君主国では独自の伝統的な皇位(王位)継承権を持っている。これらの伝統は、君主の権力
が衰えた今日でも、ごく最近を除いて頑なに守られてきた。日本もその中の一つである……という話をしまし
た。
 今日はその皇位(王位)継承、特に女性の継承について実際に、日本とその他の国の事情を具体的に解説し
ます。その上で、日本の事情と外国の事情を比較対照し、考察を加えてみたいと思います。

 では早速、日本国天皇の皇位継承規定について解説してゆきましょう。
 この講義を受講されている皆さんも、おそらく「天皇の男の子孫が、血縁の濃い順番に継承してゆく」とい
った感じで、大まかには把握されていると思いますが、ここでは厳密なルールを紹介します。
 まず、皇位継承の有資格者は、
 「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」(皇室典範第1条)、
 「皇位は、左の順序により(注:後述)、皇族に、これを伝える」(同第2条)
 …と、以上の規定で、男子の皇族に限ってその資格があるとされています。また、男子が皇族になるための
規定としては、
 「皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王を皇族とする」(同第5条)
 「嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫は、男を親王、女を内親王とし、三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を
王、女を女王とする」(同第6条)
 「天皇及び皇族は、養子をすることはできない」(同第9条)
 「皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族とな
ることがない」(同第15条)
 ……と、いうものがあります。少々ややこしいので詳しく説明しますと、男子の皇族には親王と王がありま
すが、その親王や王になるには天皇の嫡出系の(正式の后から生まれた)子や孫でなくてはなりません。養子
は認められず、一般男性と皇族女子の結婚で産まれた子どもは皇族になれません。さらに、天皇の子であって
も、庶子、つまり后以外の女性から生まれた子も皇族にはなれません。これは、世界の君主国の中でも、かな
り厳格な資格制限と言えるでしょう。
 そして、その有資格者の中で、先に挙げた皇室典範第2条の規定に従って、皇位の継承順位がつけられてゆ
きます。

 一 皇長子(天皇の嫡子で最も年長の男子)
 二 皇長孫(皇長子のさらに皇長子)
 三 その他の皇長子の子孫
 四 皇次子及びその子孫(皇長子の次に年長である天皇の嫡男と、その男子の子孫)
 五 その他の皇子孫
 六 皇兄弟及びその子孫(天皇の兄弟と、その男子の子孫)
 七 皇伯叔父及びその子孫(先代の天皇の兄弟と、その男子の子孫)
特例 各号の皇族がない時は、それ以上で最近親の系統の皇族
 ※同順位の場合は年長者、及び年長者の子孫が優先。

 ちなみに現在(2001年12月11日)で、男子皇族を皇位継承順に挙げてゆきますと、以下のようになります。

1位 皇太子(旧称:浩宮)(皇長子)
2位 秋篠宮(皇次子)
3位 常陸宮(皇兄弟…天皇の弟)
4位 三笠宮《父》(皇叔父)
5位 三笠宮《子》(皇叔父の長男)
6位 桂宮(皇叔父の次男)
7位 高円宮(皇叔父の三男)
 

 人数が殊のほか少ないのは、皇位継承の有資格条件が厳しく、また、戦後すぐに遠縁の皇族は身分を返上し
ているためです。このことも今回の女帝待望論に大きな影響を与えているのですが、それはまた次回以降の講
義で詳しく扱いたいと思います。
 ちなみに、現在と戦前との規定の違いとして、嫡子が存在しない時に限り、庶子にも継承権があったことな
どがありますが、現在の社会通念上、天皇が側室を持って、事実上の重婚をすることは考えられませんので、
これは考慮しなくても良いと思います。

 ……と、いうように、日本の皇位継承に関する規定は、天皇の権威に価値を持たせるためか、厳しい規定が
千数百年の永きにわたって維持されてきました。確かに、激しい政治的争いなどの有事には、継承順位がない
がしろにされたりしたこともありました。数少ない女性天皇も、そのような時に、緊急避難的措置で実現した
ものでした。ですが、それでもこの厳格な規定が、根本から大きく揺らいだことは無かったのです。

 では、日本の皇室の比較対照となる、他の君主国の事情はどのようなものだったのでしょうか? ここは思
い切って古代まで戻って、世界各国の皇位(王位)継承の規定と女性君主の有無について振り返ってみること
にします。 

 まず、同じ東アジアの中国から話を始めましょう。
 中国は黄河文明発祥の頃から1912年の辛亥革命に至るまでの約4000年間、皇帝による専制君主制度が維持さ
れました。後継者は一貫して男子限定であるなど、皇位継承の規定そのものは日本のそれに似ています。(と
いうか、こちらが本家です)
 しかも中国の皇帝は多くの妻(后、側室)を抱えることが常でしたから、後継者は余ることはあっても不足
することはありませんでした。また、数年~数百年に一度のペースで戦争・侵略による王朝の交代があり、皇
帝の血統が先細りすることも無かったのです。規定に則った女帝の出現などは、夢のまた夢、といったところ
でした。
 しかし、中国の長い歴史の中でただ1人、則天武后(在位690~705)という女帝がその名を残しています。
ただ彼女は、皇帝である夫や我が子から、強引にその地位を奪って皇帝となったため、あくまで例外的存在で
す。むしろ、多くの有力者を向こうに回して、夫や息子から皇帝の座を奪うような女傑でなければ皇帝になれ
なかった、と解釈した方が良いでしょう。
 他のアジアの君主国も、事情は似たり寄ったりでした。中にはモンゴル帝国のように男子末子相続、つまり
君主(カン、またはカァン)の子の最年少者が家督を継ぐ国もありましたが、女性君主が登場した、という話
はほとんど聞きません。かろうじて、古代西アジアの小国家で数名の女王が存在したり、西アジアとエジプト
を拠点としたイスラム国家のマムルーク朝で、臨時的措置で数年間女性君主(スルタン)が存在した程度で
す。
 アジア史における女性君主不在の要因としては、一夫多妻制と男尊女卑思想、さらに目まぐるしい国家の興
亡などが挙げられます。女性が君主になることは状況が許さなかった、と考えて良いでしょう。

 では、アジアから遠く離れたヨーロッパではどうだったでしょうか?
 ヨーロッパでも、紀元前27年から始まる古代ローマ帝国を筆頭に、大小さまざまな君主国が存在しました。
 しかし古代には女性君主は少なく、プトレマイオス朝エジプト(当時エジプトは、ヨーロッパに近い存在で
した)からはクレオパトラという超有名な女王が出たものの、彼女は例外的な存在の上に、(当時頻繁に行わ
れていた)近親結婚の相手である弟との共同国王でした。古代のヨーロッパもアジアと同じような理由で女性
君主が誕生する余地が小さかったと考えられます。
 また、古代ローマ帝国の皇帝位は、そもそも今で言うところの大統領に近い存在でした。世襲によらずとも
実力があれば誰でも皇帝に就けたために、皇帝に就いた人物は軍隊出身の者が多く、その意味でも女性君主の
実現性は薄かったと考えれなければなりません。

 しかし、中世から近世、近代と時代が移り行く中で、事情が変わってきます。やがてヨーロッパには、女性
君主が他国の男性君主を翻弄するという時代が訪れるのです。
 ……が、ここで今日は時間となってしまいました。次回はヨーロッパの君主継承権事情の続き、そしてそれ
を踏まえた上で日本の制度に話を戻し、女性天皇復活に向けての諸問題について追求してゆきたいと思いま
す。
 また、明日は水曜日ですから、「演習」があります。この「法学」の次回講義は木曜日ということになりま
すので、注意してください。
 それでは、今日の講義を終わります。(この項続く)
 

 

12月10日(月)法学(一般教養)
「日本国女帝誕生へ向けての諸問題」(1)
 
 さて、昨日は休講失礼しました。一部で助手よりも影が薄いと評判の駒木です。
 何やら突然受講生が増えたみたいで驚いています。驚いたついでに、一見さん向けでない講義を準備してい
たために、講義内容の差し替えがあってバタバタしております。そんなこともあって、今日はそれなりの講義
しか出来ませんが、そういうわけですのでご了承を。
 ……
 さて、今日からは3回にわたって、最近にわかに現実味を帯びてきた、わが国の女帝──即ち女性天皇──
問題について講義をしてゆきたいと思います。講義の題材の関係上、いつものような毒や笑いの要素は随分と
抑えられてしまいますが、ご理解を。お笑いネタをお望みの方は、アーカイブから僕の著書「今日の特集」で
も引っ張り出して読んでもらえれば、と思います。
 また、この講義は、一応の形式上は、法学・社会学・歴史学に関する学術的なものですので、文章中の敬称
(陛下、殿下等)は、原則的に省略しております。別に駒木はアカでも左翼でも「愛国戦隊大日本」の敵役で
も何でも有りません。読売以上産経未満の中道右派ですので、誤解なきよう。

 では、本題に移ります。
 皆さんもご存知の通り、先日、わが国の皇室に内親王(敬宮愛子さま)が誕生しました。「内親王」とは皇
族の女性でも位の高い皇女に与えられる称号で、現在は皇室典範第6条の中の「嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の
皇孫は、男を親王、女を内親王とし、三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を王、女を女王とする」という条項
に従って使用されています。分かりやすく言えば、「天皇の正式の后から産まれた子、またはその子の正式の
后から産まれた子の中で女性を『内親王』とする」というわけで、正式の皇太子妃雅子さまから産まれた愛子
さまは、当然、内親王となるわけですね。

 ……と、初めから非常に堅苦しい法律の条文の話から始まりましたが、日本の皇室は、全てこの皇室典範と
いう堅苦しい法律によって規定されています。
 この度の女性天皇を認める是非についての問題も、皇室典範第1条「皇位は、皇統に属する男系の男子が、
これを継承する」という条文を巡っての論争に行き着くわけなのです。
 この皇室典範は、昭和22年5月の日本国憲法制定と共に成立した法律なのですが、これは明治憲法成立と同
時に制定された旧皇室典範をマイナーチェンジして作られたもので、そのため、至る所に帝国時代の名残が残
っています。この、天皇を男子に限るとする第1条も、天皇が国家唯一の主権者として君臨していた時代の傷
痕にも似た名残というわけです。男女同権が常識となり、「女は旦那が帰ったら三つ指ついて出迎えろ」など
と言うのは、桂ざこばくらいになった昨今、確かに「天皇を男性に限る」という条項は時代錯誤と言えるかも
しれません。

 しかし、君主制の国において皇位(王国では王位)継承に関するルールというのは、国家の根幹と言っても
良いようなもので、非常に存在そのものが"重たい"のです。
 もちろん、現在の世界では、世襲の君主が国家の支配権を握っている例はごくわずかです。ほとんどの国で
は、君主の主権を大幅に制限する憲法が制定され、事実上の主権は国民や民選の議会・内閣に委任されていま
す。中には、「10代の女性とセックスしてはならない」というトンデモ法律を制定し、しかも自分がその法律
違反で罰金ならぬ罰牛を納める羽目になり、今年B級ニュースマニアの知るところになったスワジランド国王
のような例外的な絶対君主もいますが、まぁ、世界中の"王様"の大多数は既に形式的な存在になっていると言
ってしまってよいでしょう。
 ですが、だからと言って、それらの国で君主継承のルールも形式的でグダグダになっているか、というと決
してそうではありません。確かにここ数年で、ヨーロッパの君主国では王位継承権の男女同権化が相次いでい
ますが、それでも数百年から千年以上も前からつい最近に至るまで、時代錯誤的なルールが厳守されてきたこ
とには間違いありません。
 どうしてこんなことになっているのかというと、これは少し難しい話ですが、君主が権力を失い、不安定な
権威だけを有する存在になったことで、逆に、その権威の源である伝統(時には時代錯誤的な)を守る必要性
が出ていたからではないでしょうか。誤解を恐れず喩えれば、「家庭で威厳の無くなったオヤジほど家族に威
厳を示そうとする」のと似ているかもしれません。やたら電気の消し忘れに五月蝿いとか。

 ですから、我が日本の場合も事情は同じなわけで、権力の無くなった今だからこそ、時代遅れの伝統に固執
してしまう、というわけです。
 よく、"女帝賛成派"の意見として、「昔、日本にも女帝がいたではないか。昔に戻せ」というものがありま
すが、それは歴史を全く理解していない証拠でして、普通の人ならいざ知らず、いかにも「私は勉強してます
よ」とエリート面した社民党のクソババアオバサマがそんな事をのたまわっているのを聞くと、さしもの温厚
な駒木も、「お前ら○○だけやなくて脳味噌も終わっとるのか」と罵りたくなってしまいます。
 かつての日本の女帝に関しては、またこの講義の3回目で詳しく扱いますが、あくまでも例外的な存在でし
て、「出来ることなら女帝はナシで」というのが王朝誕生以来の伝統でありました。ですから、現在の皇位継
承に関するルールは、実のところ明治どころか古墳時代や飛鳥時代からの伝統なのです。これがいかに"重た
い"ルールか、分かってもらえるでしょうか?

 ……
 と、ここで時間が来ました。(実時間で朝の5時を回ってます^^;)今日の講義はここまでにして、次回
(明日)は、日本や各国の"伝統"、君主継承に関してのルールに着いて検証してみたいと思います。
 それでは講義を終わります。(この項続く)
 

 


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12月8日(土)集中講義・競馬学特論
「G1予想・朝日杯フューチュリティS編」
 
 ええと、まず今日の講義に入る前に……。
 受講記録(アクセス解析)を見てて気になったんですが、皆さんは昨日の後期試験の時に配布したプリント
(リンクをつなげたページ)4枚を読みましたか? 読んでくれていればいいのですが、そうでない場合は、
こちらの出題の意図が全く伝わらないと思いますので、絶対に読んでください。よろしいですか?
 ……
 では、今日の講義です。G1レースのある週の土曜日は「競馬学特論」。G1レース予想です。ただ、いつも
なら、珠美ちゃんと一緒に出馬表を見ながらじっくりと予想をしてゆくのですが、今日は諸事情により時間が
ありません。ので、出馬表を省略し、印を打った馬とその解説にとどめたいと思います。ご了承ください。
(明日の夜、出馬表を追加して補完したいと思いますが、それまでは新聞等に掲載された出馬表を参考にし
て、講義を受講してください)

 さて、それでは早速、予想に移りましょう。
 このレースは、各地の地方チャンピオンが集合してのグランドチャンピオン決定戦のような意味合いが強い
レースです。今日行われた、K-1グランプリの決勝大会みたいなものですね。
 こういうレースは、かなりギャンブル性が強くて、推理ゲームというよりもクジ引きと言った方が良いかも
しれません。各馬の強さを直接比較する材料が限りなく少ないので、それぞれの前哨戦の中で、どのレースを
重視するかにかかって来ます。実は、僕はこういうレースの予想が一番苦手だったりします(苦笑)。まぁ、
それでも目一杯脳細胞を動員して頑張ってみることにしますね。
 このレースは18頭が出走するのですが、その中で重賞レース勝ち馬が5頭、さらにオープン特別を勝った無
敗の馬が2頭います。馬番だけで失礼しますが、1番・6番・7番・10番・11番・14番・15番の7頭です。ま
ず、これを第1集団としましょう。余程のことが無い限り、この中から勝ち馬が出ると思って良いでしょう。
 次に、第1集団の7頭と同じレースに出て2着や小差3着の経験がある馬たち。この敗者復活を期す馬たち
を第2集団としましょう。馬番が3番・4番・5番・9番・12番・13番の6頭ですね。ここからも2着に滑り
込んだり、大番狂わせを演じる可能性のある馬がいると考えて良いでしょう。
 有力候補がこの13頭(多!)。あとの5頭は残念ながら、力が若干足りないかな、と思われます。
 で、この多くの有力候補から、さらに絞っていったのですが、僕の予想は以下の通りになりました。

◎ 10番 ヤマノブリザード 
○ 1番 アドマイヤドン 
▲ 6番 カフェボストニアン 
△ 7番 シベリアンメドウ 
× 14番 バランスオブゲーム 
× 13番 スターエルドラード 

 ……まず第1集団からは、体調に問題がある15番を切り、また、デイリー杯2歳Sはレヴェル的に問題があ
ると考え、11番も除外しました。これで5頭。
 後は展開予想などを加味して序列を付けました。では、1頭ずつ簡単な紹介を加えましょう。
 本命はヤマノブリザード。北海道競馬からの転厩緒戦になります。第1集団の中で、最も展開的に恵まれそ
うだという点を買って抜擢しました。ここ2年で、地方競馬所属馬が2着、3着していますので、地方競馬出
身という点もマイナスにはならないでしょう。
 対抗に1番人気が予想されるアドマイヤドン。日本競馬界でも有数の良血馬で、オープン特別の京都2歳S
を圧勝して勇躍参戦してきました。この馬の問題点は、「果たして能力の絶対値がG1クラスかどうか?」の
1点に尽きます。圧勝か惨敗かどちらかが予想されるため、安定性という面を考慮して本命から外しました。
 3番手にはカフェボストニアン。どのような作戦でレースに臨むか分からないのですが、差し脚に賭けるレ
ースに出た時に、台頭する可能性が十分あります。
 シベリアンメドウとバランスオブゲームは先行馬。超ハイペースが予想されるレースだけに、バカ正直なレ
ースをしていては勝ち目は薄いでしょう。また、シベリアンメドウがダートや芝の不良馬場でしか走っていな
いことを不安視する向きもありますが、デビュー2戦目のプラタナスSのタイムを見る限り、スピード勝負に
出ても通用するだけの能力を持っていると思われます。全ては展開次第です。
 第2集団からは1頭、スターエストラードだけに印を打ちました。これは、第1集団と第2集団の力量差
が、ことのほか大きいと解釈したからです。スターエストラードだけ印を打った理由は、前走の大敗からの立
て直し気配が見えることと、ノーマークの馬にはうってつけの、後方一気の展開が望めそうだということで
す。騎手のデムーロJKも魅力ですね。
 買い目は1-10、6-10、1-6の3点を中心に、7-10、枠連の5-7を押さえに買うかどうか、といったところで
す。

 ちなみに助手の珠美ちゃんにも予想をしてもらってます。彼女の予想も掲載しておきましょう。

◎ 1番 アドマイヤドン 
○ 10番 ヤマノブリザード 
▲ 7番 シベリアンメドウ 
△ 14番 バランスオブゲーム 
× 3番 アグネスソニック 
× 11番 ファストタテヤマ 
× 6番 カフェボストニアン 

 ……彼女は、かなり手広く馬券を買うみたいですね。さて、今週はどうなることか、皆さんもご注目くださ
い。それでは今日の講義を終わります。(この項終わり)


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 ※駒木博士の"勝利宣言"
 ジャパンカップダートと同じような、○-◎の的中でした。先行するはずのシベリアンメドウとバランスオ
ブゲームが差しに回って、中位から差すだろうと思っていたカフェボストニアンが先行した時はどうしようか
と思いましたが、何とか形だけは整ってくれました。辛勝だったので、勝利宣言も湿り気味ですね(苦笑)
 残る平地G1は有馬記念。良いフィナーレを飾れるよう、今から研究に取り掛かりたいと思います。 

 ※栗藤珠美の"喜びの声"
 やりました♪ ◎-○の完全的中です。スターエルドラードが伸びてきた時はちょっと怖かったですけど、
それでも上位2頭の力を信じてましたよ。
 この調子で有馬記念も頑張ります。応援してくださいね♪ 

 
 

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12月7日(金)後期試験
「続・或るモー娘。ファンからの手紙」(出題篇)
 
 さて、今日は一風変わった講義をやりたいと思います。
 既に、私の著書である「今日の特集」を読んだ受講生の方は、もうご存知だと思われますが、僕の研究室に
は不定期で、少し変わったメールが到着します。
 なぜかコンピューターウィルスが猛威を振るっている時期に、しかも送付ファイル付きでメールが来るのが
困りモノなのですが、それでも内容が面白いので、迷惑どころか楽しみにしている始末なのですが……。
 それがどういうモノか、というのは、実際見てもらえれば面白さが分かると思います。では、ちょっと珠美
ちゃん、プリントを皆さんにお配りして下さい。

 (プリント1/プリント2/プリント3)

 ……さて、読んでもらえましたか?
 まぁ、初めてこのメールを受け取った時、僕がどれくらい困惑したかは容易に想像できるかと思います
(笑)。これをどう扱ったらよいのか? そもそもこれはどのような意図で書かれたものなのか? ……と
ね。
 始めは「ちょっとアブない人からのメールかな?」とも思ったんですが、読んでみると、なかなか練られた
構成になっている。少なくとも、"電波"を受信して書き殴ったものではなさそうだと思われるんですね。
 では、良質のパロディなのか? ……まぁ、これが一番確率としては高いんでしょう。モー娘。とプロレス
の話をリンクさせたパロディだと…。ちょっと詳しく見てみますと、既存の女子プロレス団体・アルシオンの
設定と似通っている点も有りますしね。「レスラー(個人)の強さ=タレントとしての活躍度・つんく♂のお
気に入り度」と考えたら、合点が行きますし。
 でも、現実のモー娘。とリンクしていない点もある。例えば、現実では天然ボケの大人しい女の子キャラで
あるはずの石川梨華が、悪役のリーダーになっていますし、細かい話ですが、売れ線でないユニット(メロン
記念日・シェキドル)が勝手に追放処分になったりもしてます。これはどう解釈すればよいのか?
 ……とまあ、謎だらけではあるんですが、とにかく面白いから良いかな、と思っています。もし、SFみたい
に異世界からのメールが、何らかの理由で紛れ込んできた、なんて話だったら、それはそれで楽しいですし。
浅田次郎さんの「地下鉄に乗って」で、地下鉄と過去の世界がリンクする、という設定がありましたが、イン
ターネットと電話回線を通じて、異世界とリンクしている、なんてのも、想像してみれば楽しいものですし
ね。

 さて、ここまで長い前振りをしたわけですから、もうお分かりでしょう。そう、今回また、僕の手元に"彼"
からのメールが届いたのです。またしてもウィルスが流行っている時に送付ファイル付きで(苦笑)。
 今回のメール部分は以下の文面でした(一部編集)。

 まずはサイト新設、おめでとうございます。何かとお忙しいでしょうが、これからも頑張ってください。
 また、先日は「今日の特集」で破格の扱いをして頂き、ありがとうございました。喫茶店の店員に睨まれな
がら、深夜までかかってレポートを書いた甲斐があったと、大変嬉しく思います。

 さて、今回もまた、ハロープロジェクトの大イベントについてのお知らせです。添付したHTML文書の方に詳
しい情報が載っていますが、今回も駒木さんに興味を持っていただければ幸いです。もしよろしければ、今回
も観戦レポートを提供させて頂きますので、またメールにてお知らせください。

 それでは、「社会学講座」のますますの発展を期待しています。
 

 この通り、常識的な文章です。少なくともアブない人だとは思えませんよね。
 そして、肝心の「お知らせ」はこちらのプリントです。珠美ちゃん、また皆さんに配ってください。

 今回のプリント

  ……さて、読んでもらえましたか?
 今回もなかなかの"力作"です……と言ってよいものかどうかは分かりませんが、よく出来ているとは思いま
す。
 それでですね、今回はこれを使って、少し早めの後期試験を行いたいと思います。まぁ、当講座には単位認
定はありませんので、自由参加としておきますが……。
 試験の内容はもちろん、この"リーグ戦"と"試練の七番勝負"の勝敗と内容の予想です。メールや談話室など
で発表してもらえれば、と思います。締め切りは2週間後の21日までとします。それでは皆さん、頑張ってく
ださい。 (数週間後の解答篇へ続く)
 

 

 

12月6日(木)演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(12月第2週分)
 
 え~、まずはこの2日間、予告無く休講してしまったことをお詫びします。
 今後も、諸事情により休講することが少なからずあるとは思いますが、その時は、可能な限り前日までに予
告させてもらいますんで、どうぞご了承を。
 ……
 さて、毎週水曜日──今週は水曜休講だったので木曜日ですが──はゼミを開講します。僕の本来の専門分
野は競馬学とギャンブル社会学なんですが、土曜日に競馬学の講座を既に開講してますので、ゼミは別のテー
マを設定しました。
 当講座のゼミは「現代マンガ時評」と題しまして、日々発行されるマンガ雑誌に掲載されたマンガの時評を
してゆきます。現在はまだ、通常の講義形式ですが、近い将来には双方向のゼミが出来れば、などと考えてい
ます。
 このゼミのコンセプトは、"これからのマンガ界を担うマンガ家と作品を発掘する"こと。その週の雑誌に掲
載された、読み切り作品や新連載の作品をレビューして、その作品や作者の今後を占ってみたいと思います。
 もちろん、主な週刊マンガ誌の読み切り&新連載作品を網羅することが理想ではありますが、物理的な事情
もありますので、当面の間は「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年サンデー」に掲載された作品を中心に、その
他の雑誌でも、特に注目すべき作品があれば随時取り上げてゆきたいと考えています。
 もしも、「マガジン」「チャンピオン」や青年各誌の読み切り&新連載作品のレビューを寄稿してくれる受
講生がいらっしゃったら、是非申し出てください。詳しくはメールか談話室(BBS)にて。
 
 さて、それでは早速、今週分のレビューを行います。対象は読み切り作品と、新連載第1回ですが、さらに
新連載第3回の作品についても"後追いレビュー"を掲載します。これは、新連載第1回で抱いた印象を修正す
る機会を得ると共に、第3回──ちょうど連載を打ち切るか否かを決定する分岐点とされている──の時点で
総括することによって、その作品の今後を占う意味も含んでいます。
 また、それぞれの作品には、「A+」から「C」までの7段階評価を付け加えます。それぞれの評価の基準は
こちらの通りです。
 最後に、レビューは出来るだけ客観的な姿勢で臨みますが、当然のことながら、若干の主観が混じることは
否定できません。あくまでも一方向の角度から見たレビューと受け取ってもらえれば、と思います。

 ☆「週刊少年ジャンプ」2002年新年1号☆

 ◎新連載作品『サクラテツ対話篇』(作画・藤崎竜)

 前作『封神演義』で、メジャー作家の仲間入りを果たした藤崎竜の新連載。病的なまでにハイテンションな
登場人物たちによるドタバタ劇、という、いかにも藤崎竜らしい作品。タイトルを決めた時点で一般ウケは諦
めている節が無きにしも非ずだが、これが果たして支持基盤のマニア層に受け入れられるかは、現時点では疑
問。……というか、初回で51ページも貰っているのに、話のコンセプトすら見えてこないのだからレビューの
しようが無い(笑)。とりあえず、話の道筋が見えるまで詳しい評価は保留させていただく。とりあえず、読
んでいて不快感は無かったので、7段階評価はB。

 ◎新連載第3回『もののけ! ニャンタロー』(作画・小栗かずまた)

 どうやら前作の『花さか天使テンテンくん』と違い、完全なギャグマンガではなくストーリー(コメディ)
路線で話を進めていくようだ。
 しかし、どうも『テンテンくん』と『地獄先生ぬ~べ~』を足して2で割った印象がするのだが、どうだろ
うか? まぁ、それはそれで構わないのだけれど、この作者が様々な意味において、前作から全く進歩が見ら
れないのは大きな問題と言わざるを得ない。
 3週前からの連載3作品入れ替えで、前回の入れ替えで新連載になった作品が全て討ち死にしたように、現
在のジャンプ連載陣はかなり粒が揃っている。このまま大きなインパクトを与えられないと、この作品も当然
打ち切りの対象になりかねない。作者には前作の成功に奢らず、更なる進歩を強く求めたいと思う。7段階評
価は、Bに近いB-。 

 ◎読み切り『桃太郎の海』(作画・吉田真)

 今や当たり前になった『HUNTER×HUNTER』休載に伴う"代原"。しかし、これまで多くの代原が掲載されてい
るが、そこから連載作家に出世した作家が皆無というのも寂しい話だ。
 さて、この作品はというと、題名のとおり、おとぎ話『桃太郎』のパロディなのだが、この作品は一体どう
解釈すればよいのか? 
 ギャグマンガとしては、あまりにもギャグがお粗末だし、幼年向けの"絵本マンガ"としては、ちょっと対象
年齢が高すぎる気がする。
 それ以上に問題なのは、一度通読しても、ストーリー(特にラストの辺り)がよく理解できないというこ
と。こう言っては何だが、駒木に理解できないマンガが子どもに理解できるはず無いぞ。しかし、代原とはい
え、よくデスクや編集長が本誌掲載にゴーサインを出したものだ。この作者には、『まんが道』に出て来る、
つのだじろうのデビュー秘話のくだりを読んで出直して来い、と申し上げておく。7段階評価は、甘めでB-。

☆「週刊少年サンデー」2002年新年1号☆

 ◎読み切り(前後編)『II(ツヴァイ)』(作画・石渡治)

 読み切りなのに異様に多い登場人物、収拾不可能と思えるくらい大きなスケールのストーリー、説明セリフ
を多用しないと解説しきれない膨大な設定etc……。
 石渡治ともあろう大ベテラン作家が、これほどまで読み切り作品における禁忌(タブー)を犯しておいて、
それでもギリギリ読める作品に仕上がっているというのが凄い。無意味に凄い。何というか、キャッチャーが
決して捕れない140km/hのナックルボールのような作品だ。ベテランだからこそ許される、という微妙な作品
で、恐らくこんなところで扱わない限り、あっという間に記録からも記憶からも消されてしまうのだろう。そ
ういう意味では貴重なレビューとは言えまいか(笑)。7段階評価はB。

 ……

 と、いうわけでいかがでしたか? 今週は辛口のレビューが続きましたが、本当に良い作品であれば、どん
どん褒めてゆきたいとも思っています。
 また、「私は駒木博士と違ってこう思った」というような意見をお持ちの受講生は、どうぞ談話室に書き込
んでください。それでこそゼミというものですので。
 それでは、今日の講義はこれまで。(この項終わり)
 

 


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12月3日(月)比較文化論
「ヒステリックブルーのギタリスト、自殺未遂」(3)
 
 比較文化論のこのテーマも、今日で3回目。一応、今日で最終回にする予定でいます。
 ちなみに、過去2回分のレジュメは、こちら(第1回)と、こちら(第2回)にあるので、欠席していた人
は読んでおくように。

 さて、前回までで、最近ギター担当が自殺を図ったことで、かなり久しぶりに一般マスコミに大きく扱われ
たバンド・ヒステリックブルー(以下:ヒスブル)は、ジュディマリの模倣をしたら「パクりだ」と顰蹙を買
い、リンドバーグ風味を加えたら「でもやっぱり声はジュディマリ風。技量は比べるまでもないけど」と、呆
れられ、心機一転レベッカの模倣をしたら「お前ら、ものまね王座決定戦か」と怒りを買い、その結果、完全
に人気を失ってしまった、というところまでお話しました。今日はその続きからとなります。

 ……

 さて、昨日までで、いかにヒスブルが多くの人の顰蹙や嫌悪感や怒りを買っているか、ということを、真剣
に彼らを応援している人に刺されそうな勢いで皆さんに語ってきました。
 要は、デビュー以来ずっと、他のバンドの真似ばっかりやってるから嫌われた、ということなのですが、で
も果たしてそれだけでしょうか?

 と、言うのはですね、日本のミュージックシーンで、他のアーティストの模倣をしている人は、ヒスブル以
外にもかなりの数に上るのです。
 ヒスブルと同じように、"パクリアーティスト"として非難を浴びた経験のある倉木麻衣や矢井田瞳はもちろ
ん、あのB'zも「エアロスミスとそっくりじゃないか」という指摘を再三受けていますし、某大物歌手に至
っては「ああ、あの曲? 作曲は実は俺じゃないよ。作曲・ボブ=デュラン」と豪語しています。ましてや、
つんく♂の作った一連のアイドルソングなどは言わずもがなです。
 しかし、彼らはヒスブルほど叩かれたり、人気が下がったりしていない。これはどうしたことでしょうか?

 その理由を導き出す資料が、以下に挙げるものです。これは、「パクリ」と叩かれた経験のある、ヒスブル
を含む3組のアーティストに対する巷の声で、多いもの上位3つをそれぞれ挙げたものです。(資料は駒木研
究室調べ)

 ★矢井田瞳の場合

1位  椎名林檎のパクリだった人だよね。最近は似てないけど。 
2位  最近は椎名林檎より頑張ってる気がする。歌も下手ではないし。いや、むしろ上手い方? 
3位  どうして実力あるのにパクリなんかしてたんだろう? 

 ※少数意見……楽曲と歌はともかく、作詞はまだ椎名林檎に全然及ばないんでは?

 ★倉木麻衣の場合 

1位  宇多田ヒカルのパクリやってた人だよね。最近はあんまりそう感じないけど。 
2位  やっぱり宇多田と歌唱力比べると、ちょっと可哀想かなあ? でも、下手ではないよね。 
3位  お父さんが監督したAVキボンヌ 

 ※少数意見……立命館大学入学って、エレベーターじゃねえか。

 ★ヒスブルの場合

1位  ジュディマリのパクリじゃねえか。実力は遠く及ばないけど。 
2位  レベッカのパクリでヒットしたバンドだ。実力は遠く及ばないけど。 
3位  リンドバーグのパクリもやってたよね。声はどう聞いてもジュディマリだったけど。 

※少数意見……よく聞いたら、ジッタリンジンのパクリもやってる。/よく聞いたら、ELTのパクリっぽい曲
まである。

 矢井田瞳と倉木麻衣は、未だ"前歴"を引きずりながらも、その後は独自の路線を歩みだし、また、歌唱力な
どで一定の評価を得ています。倉木麻衣は比べられている相手が相手ですので、若干損をしているように思え
ますが、それでも、もう彼女をただのパクリ歌手と言う人はごく少数でしょう。
 模倣から始め、やがて一歩先の創造を。これはこの「社会学講座」が目指す道でもあります。
 一方、問題のヒスブルはというと……あらら、こりゃまた随分無残な結果になったもんですね。
 結局のところ、彼らは他人の模倣から脱皮できず、実力の方も頭打ちになったために、曲を聴いた印象が
「他のアーティストに酷似」としか残らないからなんでしょうね。この辺り、デビューまでがトントン拍子に
行き過ぎた反動が出てしまっている、と取れないことも無いかと思います。

 では、そもそもヒスブルは、実力もオリジナリティも無いくせにどうしてトントン拍子にメジャーデビュー
出来たのでしょうか?
 この「比較文化論」の第1回で、ヒスブルは、恐ろしいまでの豪運を発揮して関係者にデモテープを聞いて
もらった、という話をしました。しかし、よく考えてみれば、たとえデモテープを聞いてもらえても、アマチ
ュアに毛の生えたようなレヴェルの、ジュディマリのパクリバンドプロとしては未熟な発展途上のバンドが、
アッサリとメジャーレーベルからデビューできるなんて、よく考えてみたら普通はあり得ない話です。当然、
この話には裏があるのです。

 ここまで敢えて伏せてきましたが、ヒスブルの編曲とプロデュースを務めているのは、佐久間正英氏。なん
と、ヒスブルとは余りにも因縁のあるジュディマリ(JUDY AND MARY)のプロデューサーでもある、業界の大
物です。
 さらに、これも伏せてきましたが、ヒスブルはアマチュア時代、ジュディマリ好きが高じて、ジュディマリ
のコピーをやっていた、という過去があります。もちろん、佐久間氏にデモテープを送ったのは偶然ではあり
ません。それどころか、「僕たちはジュディマリが大好きなんです」という手紙を添えてテープを送ったとい
う話もあるくらいです。
 そしてもう1つ伏せてきましたが、ヒスブルが佐久間氏に見初められた1998年後半というのは、ちょうどジ
ュディマリが、メンバーの仲が悪くなりすぎて活動休止していた時で、担当のアーティストが1つ空白になっ
た佐久間氏が、"ポスト・ジュディマリ"を探していた時でもありました。
 ついでに1つ付け加えますと、業界の噂では、この佐久間氏、「1人のミリオンセラーを出すよりは、10人
の10万枚クラスの歌い手を売り出した方が確実」と考えるタイプの人だそうです。

 ……ハイ、よろしいですか? 
 以上の事をまとめますと、こうなるわけです。
 「佐久間氏は、1998年当時、活動休止中だったジュディマリの代わりをしてくれるような、売上10万枚クラ
スのバンドを探していた。そこへたまたまジュディマリの廉価版のようなバンド・ヒスブルが目に留まり、と
りあえず中継ぎとしてデビューさせることにした」 と。
 ちょっと飛躍し過ぎた喩えかもしれませんが、
 「四国で讃岐うどん屋のオーナーをやっていた人がいた。しかし雇っていた店長から休業の申し出があり、
仕方ないので東京で『本場の味・讃岐うどん』の店を開いた。新たに雇われた店長は、讃岐うどん好きの若
者」
 といったところでしょうか。もっとも、ヒスブルは肝心のジュディマリ調の曲が売れなかったわけですか
ら、
「『讃岐うどんの店』として出店したが、肝心のうどんはサッパリ売れず、うどん屋なのにカレーライスと中
華そばが主力になってしまったうどん屋。しかもレシピが他の評判店から盗んだものだったので、業界から大
顰蹙」
 ……と表現した方が的確でしょうけど。 

 しかし、こういう喩えをしておいて何なんですが、これは別に恥ずかしいことでもなんでもありません。矢
井田瞳も倉木麻衣も、ここからスタートしたのです。
 彼女たちは、外野から「パクリだ」と叩かれながらも地力の強化に努め(うどん屋の喩えで言うなら、やが
て独立するために、和食全般の腕を磨き)、しばらく後には独自の路線を切り開いて、自分の力だけで大ブレ
イクを果たしたわけです。
 ですから、ヒスブルも、ここから自力でブレイクするように精進を重ねなければならなかったのです。
 特に彼らは、「ジュディマリが戻ってくるまでの代役」というキャラでデビューしたわけですから、そこか
ら脱皮しない限りは、ジュディマリの復帰後には"御役御免"で退場、という末路が待っています。そういう意
味ではタイムリミットまでも設定されていた、ということなのです。
 でも、彼らはどうだったか。結局、目立った技術向上は果たさぬまま、既成アーティストの模倣にばかり走
って目先の利益を追い続けました。まさに「アリとキリギリス」のキリギリスです。キリギリスが冬の到来と
共に息絶えたように、彼らもまた、ジュディマリの活動再開と共にJ-POP界からフェードアウトしてゆく運命
に立たされたのでした。(現に、ジュディマリが復帰した途端、CDセールスは激減しています)
 先刻のうどん屋の喩えで言い表せば、
 「肝心のうどんがちっとも売れないまま、他店のレシピで作ったカレーとラーメンで食いつないでいたら、
すぐ近所に元祖の『讃岐うどんの店』が復活してしまい、客を根こそぎ奪われた。次第に頼みのカレーとラー
メンも売れなくなって、店は閑古鳥」
……と、なりますね。

 結局、ヒスブルが売れなくなったのは、実力不足と努力不足、という至極当然の結果に落ち着いてしまうわ
けです。
 もちろん、だからといって自殺未遂したナオキに向かって、「自業自得なんだから、死にたきゃ死ね」と言
って良いわけではありません。ただ、他の音楽を志す若者たちに比べて、格段のチャンスを得ておきながら、
それをみすみすフイにしたことを考えると、どうしても同情心が薄れがちになってしまいますよね。

 さて、講義の残り時間も少なくなってしまいました。

 先日、TVを見ていましたら、エンディングテーマがヒスブルの新曲でした。
 売れない時期を耐え忍んで、少しは彼らも変わったかな、などと考えつつ曲に耳を傾けますと、Aメロから
ジュディマリの曲に酷似したメロディーラインが流れてまいりました。
 頭の中で、いかりや長介の「だめだこりゃ」と、愛川欽也の「ハイ、消えた!」が交錯して、非常に陰鬱な
気分にさせられました。

 ……

 この「比較文化論」では、これからもヒステリックブルーを追いかけてみたいと思いますが、次に取り上げ
る時、彼らが芸能界にいるかどうか分からないというのが、何だか生々しくて嫌ですね。
 とにかく、日々精進、オリジナリティこそ命。このことを僕も皆さんも心がけて、一日一日を過ごしてゆき
たいものです。
 と、そんな教訓めいたことを口にしたところで、今日の講義を終えたいと思います。(この項終わり)
 

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12月2日(日)比較文化論
「ヒステリックブルーのギタリスト、自殺未遂」(2)
 
 それでは、30日(土曜日)の続き、比較文化論の2回目の講義を行います。
 前回欠席している人は、レジュメだけでも読んでおくように。
 ……
 さて前回は、最近自殺を図ったメンバーのいるヒステリックブルー(以下:ヒスブル)が、"友達が全くい
なくて、来た年賀状がメガネ屋のDMだけだったのに、クジで1等当たってしまったオタクのような豪運"を発
揮してメジャーデビューしたはいいが、買ってもらったのはCDじゃなくて顰蹙だった、という話をしたところ
で時間が来てしまいました。今日はその続きから進めましょう。

 ………

 1stシングルの失敗から約3ヶ月、ヒスブルは1999年の1月に2ndシングル・「春~spring~」をリリース
します。タイアップは、テレ朝系「目撃! ドキュン」のエンディング曲。今から考えると、かなり意味深な
タイアップです。
 前作「Rush!」が、余りにもジュディマリ(JUDY AND MARY)に似ていると罵られた反省からか、この
「春」では、アレンジを変えて勝負に出ました。その結果、オリコン最高位5位・100位以内ランクイン19週
のロングヒットで、66万枚のセールスを達成します。いきなりのブレイクです。
 では、この時の巷の声を聞いてみましょうか。 

 ジュディマリに似てると聞いてたけど、この曲は似てないと思う。むしろ、リンドバーグに似てる。
 

 あれ?

 でも、やっぱり声はジュディマリだよね。歌の上手さは数段劣るけど。
 

 あれあれ? 

 ジュディマリに似てるけど……ボーカルの顔は似てませんね。ダメです。
 

 イタタタタタタタ。

 ……確かにヒットはしましたが、CDが売れた分だけ、叩かれ方も半端じゃありませんでした。というか、パ
クった相手を変えただけじゃ、顰蹙買って当たり前です。
 べた褒めしてる人もいないではないですが、そういう人は、ジュディマリとリンドバーグを知らなかった、
または、まるで「元AV女優・しかも村西とおるの愛人」という過去を持つ野坂なつみと、全てを受け入れて結
婚した野村義男のような慈愛に満ちた人たちだけだったみたいです。

 ですが、どういう形であれ、ヒスブルは一気にJ-POPのメジャーシーンに登場し、知名度も一気に上がりま
した。
 その余勢を駆ってリリースされた1stアルバム「baby Blue」も売上53万枚と、大きめのスマッシュヒット
を達成します。
 では、このアルバム発売に際しての巷の評価を紹介しましょう。

「春」を除くと全部ジュディマリ。
「春」が好きな人はシングル買った方が正解かも。
ジュディマリ好きは正解かも。
 

 もはや、当時活動休止中だったジュディマリの代用品扱いです。 しかも、しれっとアルバム不要論まで囁
かれていたりしてます。

 ただしこのアルバムには、「春~Spring」以外にそれほど目立った作品はありません。粒選りな曲が揃って
いますが、「春~Spring」以外には、際だった個性を感じる作品がありません。
 

 要約すると、「1曲除いてジュディマリのパクリ」ということでしょうか。まぁ、その1曲もリンドバーグ
のパクリなんですけど。

 ヒットしてもヒットしても、いや、ヒットすればするほど叩かれてしまうヒスブル。しかし、当の本人たち
は余りそんな自覚が無かったみたいで、この1stアルバムから「Little Trip」をシングルカット
して、3rdシングルとして発売します。
 しかし、この曲はオリコン最高位27位、売上3.5万枚と大不発。ジュディマリ路線の限界を露呈する結果と
なったのです。
 さすがにここに至って学習能力が働き出したのか、ヒスブルはここで慣れ親しんだジュディマリ路線と決
別。全く新しい試みで4thシングル「なぜ……」をリリースします。路線変更が功を奏したのか、この曲は58
万枚のヒットを記録。再びメジャーシーンへ復帰します。
 さて、それでは、また例によってこの頃の巷の声を紹介しましょう。 

 ジュディ風バンド・ヒスブル、今度の曲はレベッカ風です。「フレンズ」が流行ったからレベッカ風、、、
まあ、いいんすけどね。
 歌い方もレベッカなりきってます。
 作曲の「たくや」(ドラム。どうでもいいけど名前までジュディマリ風)曰く、「ぼくドラム以外の楽器出
来ないから鼻歌で作るんですよ」・・・ま、まあいいや。
 まあ、個人的にはレベッカ的アレンジは嫌いじゃないんでギリギリ赤点セーフって感じ。
 

 

 なぜ・・・、ヒスブルはあんなことするんだ。「春~Spring~」を聴いたとき、歌い方、声はジュデ
ィマリの真似だと、多くの人が思ったはずだ。(曲は「リンドバーグ」そっくりと私は思った。どうでしょう
か。)現に「J-POP批評」にもそう書かれてある。そっくりでも、しっかりとポリシーをもっていればよ
い。ところが、「なぜ・・・」である。すっかり変わってしまった。これは「レベッカ」ではないか。「フレ
ンズ」のリバイバルヒットに便乗したのか、あきれた限りである。(怒っているので文体は「常態」となって
威張っている。)ものまね大賞じゃないんだから、おいしいとこばっかりつまみぐいしてCDをつくるのはよ
してほしい。きっと数多くの人がそう思っているはず。
 

 

 ジャケット写真は、なんかブリグリっぽい。 

 最低です、こいつら。

 この「なぜ……」という曲、確かにサビの部分のコードが、レベッカの「フレンズ」のサビと酷似していま
す。まるで「ビックリマンチョコ」と「ガムラツイスト」の関係みたいです。

 結局、どう転んでも先発アーティストと酷似した楽曲しか出せないことが白日の下にさらされたヒスブル。
これ以後は、とある大きな理由(次回で触れます)もあって、一気に人気は下降線の一途をたどります。CDを
いくら出しても売れなくなり、次第にプロモーションもさせてもらえなくなります。
 そして、ブレイクから2年半後にあたる今年の10月に出された11thシングル「フラストレーションミュージ
ック」に至っては、発売週にオリコン53位に顔を出したっきりで売上枚数4200枚。まさに地に墜ちた、という
凋落振りを露呈させてしまいました。
 そして、ギタリストのナオキが自殺を図ったのは、ちょうどこのCDの出る直前あたりになります。きっと、
全てが行き詰まった感じ、つまり人生に対する閉塞感が彼を自殺衝動へと追い込んだものと思われます。
 ……
 さて、今日も時間が来ました。次回はこの話題の最終回。どうしてヒスブルはダメなのか、というところを
もう少し掘り下げてみたいと思います。
 では、また明日。  (この項続く)
 

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12月1日(土)集中講義・競馬学特論
「G1予想・阪神ジュベナイルフィリーズ編」
 
駒木:「G1レースがある週の土曜日は、競馬学特論として、レースの予想をやることにします。オープンキ
ャンパスの時と同様、競馬学特論では助手の珠美ちゃんと一緒に講義をやってゆきます」
珠美:「ハイ。皆さんよろしくお願いします♪」
駒木:「さて今週のG1は、中央競馬唯一の2歳牝馬G1・阪神ジュベナイルフィリーズだね」
珠美:「阪神競馬場の芝1600m、来春の桜花賞と全く同条件で争われますので、その行く末を占う上でも重要
なレースになりますね。事実、去年の勝ち馬は、後の桜花賞馬・テイエムオーシャンですし」
駒木:「でも、波乱に終わる年も多いから、扱いが難しいレースでもあるよね。当然、予想も難しいレースで
もあるね」
珠美:「ハイ。では、出馬表をご覧頂きましょう」

阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神・1600・芝
 
駒 珠 枠 馬 馬  名
 騎手
 
    1 1 シーバスビコー エスピ 
    1 2 アローキャリー ファロン 
  × 2 3 オースミコスモ 常石 
    2 4 チャペルコンサート 熊沢 
    3 5 ミニーチャン 松永幹 
    3 6 ワイドパッション 渡辺 
△ ○ 4 7 ヘルスウォール デムーロ 
× × 4 8 タムロチェリー ペリエ 
◎ × 5 9 ブライアンズイブ 幸 
    5 10 シェーンクライト 福永 
○ ◎ 6 11 キタサンヒボタン 須貝 
    6 12 カネトシディザイア 池添 
    7 13 オメガグレイス 蛯名 
▲ △ 7 14 マイネヴィータ 中館 
    7 15 テイエムハーバー 宝来 
    8 16 フォルクローレ 四位 
    8 17 マイネノエル 河内 
× ▲ 8 18 ツルマルグラマー 武豊 

珠美:「あら、私と博士では、印をつけた馬はほどんど一緒なんですけど、印の種類が全然違いますね」
駒木:「うん。今回はかなり"狙って"印を打ったんでね。珠美ちゃんの印はオーソドックスな打ち方をしてる
みたいだから、珠美ちゃんの印の順に展望していこうか」
珠美:「ハイ。では私の本命、6枠11番のキタサンヒボタンから。デビュー以来4戦4勝、前走の重賞・ファ
ンタジーS(G3)を勝っての参戦になります。出走馬の中ではダントツの実績と勢いがあると思うんですが、博
士は○印なんですね」
駒木:「確かに、常識的に言えば、◎を打たなきゃいけない馬だとは思ってるんだけどね。でも、どうにも騎
手が気になって仕方が無い」
珠美:「須貝騎手、ですね?」
駒木:「そう。正直言って、大きなレースでは、あまり活躍していない騎手なんだ。大レースの人気馬にマイ
ナー騎手っていうパターンは、波乱が起きるケースがとても高い。やっぱり平常心じゃいられないんだろう
ね。それに前走のファンタジーSは、騎手の技量が関係ないくらい楽に勝たせてもらってるだけに、今回シビ
アな戦いになった時、余計に不安がつきまとう。まぁ、実力は文句ナシに最右翼だから、今回も楽勝してしま
う可能性も十分あるよ。でも、こればっかりはギャンブルだから仕方が無い。僕は勝てない方に賭ける」
珠美:「…分かりました。では、次はヘルスウォール。私が○印で、博士が△印です。私は休み明け2走目で
の変わり身に期待しました。前走は調教不足気味のようでしたし」
駒木:「問題は地力だね。2走前のオープン勝ちをどれだけ評価するか。どうもそれほど強調できるレースで
もないような気がするんで、評価を下げたんだ」
珠美:「印が違うから当たり前なんですけど、今日は全然意見が合いませんね(苦笑)。では次はツルマルグ
ラマー。絶対不利の大外枠ですけど、私は前走2着を評価して▲に。博士は×印ですね」
駒木:「一応印は打ったけど、多分馬券は買わない。まず、阪神1600mの大外18番枠は致命的。それに、どう
も前走は上手く行き過ぎた感じがするんだ。人気している割には、ちょっとリスクが高すぎる感じがする」
珠美:「私のお奨めの馬、全部文句をつけられてしまいました(苦笑)。では、次からは立場逆転。私よりも
博士の評価が高い馬が続きます。まず、私が△印で、博士が▲印のマイネヴィータ。物凄く強い馬かも知れな
いですけど、不安定な要素が多すぎるので、私は順番を下げたんですが……?」
駒木:「本当は◎にしようかとも思ったんだよ。でも、珠美ちゃんの言う通り、確かに不安定要素が多すぎ
る。かなり前の方で競馬をする馬だから、展開もちょっと向かない感じだし。ナリタブライアンの仔だから頑
張ってほしいんだけどねえ」
珠美:「では、次は博士の◎印、ブライアンズイブです。私は、念のため、という感じの×印なんですけど、
これはどうして?」
駒木:「さっき、ヘルスウォールの時に、地力を疑問視して評価を下げたって言ったけど、今度は逆。前走の
3着をかなり重く見た結果がこの印につながったということ」
珠美:「でも、デビュー間もない頃の成績が随分悪いように思えるんですけど…?」
駒木:「夏場の成績が悪いことなんて、ブライアンズタイム産駒では頻繁にあることだし、しかも厩舎は、レ
ースを使いながら仕上げていくことで有名な大久保正陽厩舎だからね。あのナリタブライアンとは、同じ父馬
で同厩舎の関係なんだけど、あの馬だって、2歳の夏から秋にかけては随分といいかげんなレースをしてる。
それが一変して、一躍、一流馬へのステップを踏み出し始めたのが、12月の朝日杯3歳Sだった。そういうこ
とを考えると、この馬だって、ここからサクセスストーリーが始まっても全然不思議じゃない」
珠美:「なるほど、そういうわけなんですね」
駒木:「もっとも、サクセスストーリーが始まらなくても全然不思議じゃないんだけどね(苦笑)。ま、イチ
かバチかの穴狙いということで」
珠美:「分かりました。それでは私と博士が共通して印を打った最後の馬、タムロチェリーです。騎手は先
週、博士がベタ褒めしていたペリエ騎手。私は騎手の名前で印を打ったようなものなんですけど」
駒木:「厳密な意味で言う差し馬の中では、一番力がある馬でね。開幕週の芝だから、なかなか追い込みは利
かないと思うけど、やっぱり怖いね」
珠美:「では、有力馬最後の1頭、オースミコスモはどうですか? 博士は無印ですけど」
駒木:「怖くないといったら嘘になるけど、でも多分来ない気がするね。条件戦とG1じゃあ、何もかもが違
うはずだし。典型的な『消える穴人気馬』とみている」
珠美:「ハイ、ありがとうございました。では最後に、私たちが実際に買う馬券を紹介しましょうか。私は7
-11、11-18、7-18、11-14、9-11、8-11、3-11の7点です」
駒木:「外れる可能性が高いから、あまり買いたくないんだよね(苦笑)。まぁ、とりあえず、9-11、9-
14、11-14の3点。あとは枠連4-5と、9-18を押さえるかどうか。悪いけど、自信無いね、今回は」
珠美:「というわけで、予想をお送りしました。皆さんも頑張ってくださいね♪ 博士もお疲れ様です」
駒木:「はい、珠美ちゃんお疲れ様。では、今日の講義はここまでにします。それでは、また明日」 (この
項終わり) 


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 ※駒木博士の"敗戦の弁"
 ブライアンズイブのサクセスストーリーは、やっぱり始まりませんでした(苦笑)。狙いすぎだったかな、
と反省。しかし、もっと反省しなくちゃならないのは、「多分買わない」と言ってた9-18の馬券を買ってし
まったこと。
 ま、キタサンヒボタンを◎から蹴飛ばしたのだけは正解でしたね。ここぞという時には、やっぱり騎手の差
が出ちゃうよなあ…

 ※栗藤珠美の反省文
 私が上位に推薦した馬、全滅状態になってしまいました……。
 今から思えば、博士から指摘されたウィークポイントが全部当てはまってることに気付いて、愕然としてい
ます、私。
 でも、その博士も的中には程遠い成績ですから、やっぱり今日のレースは難しかったんですよね……。
 また来週、頑張ります。
 

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11月30日(金)比較文化論
「ヒステリックブルーのギタリスト、自殺未遂」(1)
 
 さて、2日目の講義を始めます。
 いやぁ、昨日の講義は、助手の珠美ちゃんに文句言われちゃいましたよ。いきなり一発目からあんな講義は
どうか、と。……え? 違う? そんな下品な言い方してませんって? ああ、「1回目の講義から、このテ
ーマはどうかと思いますけど」か。ゴメンゴメン。
 …まぁ確かに、ちょっと砕けすぎた話題だったかもしれませんね。今日はもう少しだけ真面目な内容にしよ
うと思います。
 ……
 え~、J-POPに詳しい方も、そうでない方も、"ヒステリックブルー"なるバンドの名前くらいは聞いたこと
があると思います。そう、"音楽業界の「アトランティス」"と異名をとるあのバンドです。
 この3人構成のバンド、まぁ、メジャーデビュー前に抹殺されたメンバーがいそうな生々しい人数なんです
が、そのギタリストのナオキが自殺を図って未遂に終わった、という報道が2週間ほど前にありました。その
時の、サンケイスポーツ11/16付の記事を以下に引用します。

 3人組ポップバンド「ヒステリック・ブルー」のギタリスト、ナオキ(22)が自殺未遂騒動を起こしてい
たと、16日発売の写真週刊誌「フライデー」が報じた。

 目撃者の話として同誌が報じたところによると、ナオキは10月上旬に都内の自宅内にガスを充満させ、左
手首を切り、自ら119番通報したという。この報道に関して、所属事務所とレコード会社は、「やかんをか
けていた火が消え、ガス漏れふうになった。さらに室内で転倒し、ケガを負ったため119番したと聞いてま
す」と説明している。
 

 ご覧の通り、事務所サイドは、イメージダウンを恐れてか、自殺未遂を否定しています。しかし、もしもこ
の釈明通りの行動をしていたとしたら、それはそれで「お前はマンガに出てくる、家事がサッパリダメなヒロ
インか」という恥ずかしいツッコミを受ける事は必至なので、ここは本人の名誉のために自殺未遂と言う事に
しておきましょう。
 しかし、それにしても自殺未遂とは穏やかではありませんね。確かに、ここしばらくヒステリックブルー
(以下、ヒスブル)をTVで観ていないとは思っていましたが、その陰でこういう事が起こっていようとは…
…。

 一体、彼とヒスブルに何があったというのでしょうか? ……それを分析するためにも、まずはヒスブルの
経歴を振り返るところから始めましょう。

 ヒスブルことヒステリックブルー(Hysteric Blue)は1997年7月に、当時17~18歳だったメンバー3人
(tama、たくや、ナオキ)が出会って結成。翌月から、あのシャ乱Qを生んだ大阪城公園前でストリートライ
ブを開始し、活動をスタートさせます。
 彼らは身分不相応にもプロ志向が強く、間もなくデモテープ作りを開始します。普通、この手のデモテープ
は何十本、何百本作ろうとも、聞いてもらえずに燃えないゴミと化すものなのですが、ここで彼らは恐ろしい
までの強運を発揮。テープが音楽関係者の耳に届き、彼らはプロへの階段を歩み始めることとなります。
 それから準備期間を置いて、メジャーデビューを果たしたのが翌1998年の10月31日。なんと結成から1年3
ヶ月でのメジャー進出です。まるで春風亭小朝の真打ち昇進のようなゴボウ抜きっぷり。恐らく、マンガ『無
頼男』(梅澤春人作画)も真っ青のサクセスストーリーを見て、思わず殺意を抱いたアーティスト予備軍は数
百人じゃ利かなかったと思います。
 そんな彼らのデビューシングルは「RUSH!」。これからJ-POPシーンにラッシュをかけてゆくぞ!
 という意気込みが感じられる題名です。
 しかし、この1stシングルは、TV番組のタイアップを得たにも関わらず、オリコン最高位61位、推定売
上約2万枚(記録は全て2001年11/30現在)と、ラッシュどころか、かろうじてジャブが当たっただけに終わ
ります。
 しかも、セールスが伸びず、一般層には名前すら知ってもらえないような状況でありながら、マニア層には
「ジュディマリのまんまパクリじぇねえか」と罵詈雑言を浴びせられるという散々な内容で、まさに音楽業界
の「アトランティス」の面目躍如。この時点での彼らの前途は、福留功男の腹の中くらい真っ暗だったので
す。

 しかし、この後、彼らはまたも持ち前の強運を発揮する事になります。

……

 と、いったところで今日は時間が来てしまいました。
 この続きは次回の「比較文化論」で。カリキュラムの都合で、次回の比較文化論は日曜になります。それま
でに復習をちゃんとしておくように。では、今日の講義を終わります。 (この項続く)
 

 


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11月29日(木)マス・コミュニケーション論
「マンガ新人賞の新しい姿」 

 突然ですが、栗藤珠美です。
 この日の講義内容には、人によっては著しい不快感を感じるような内容(特に性に関する話題)が扱われて
いる箇所があります。その点をご承知の上で受講してくださいませ。 
 
   では、第1回目の講義を始めます。
 記念すべき1回目ということで、何をテーマにしようかと迷いました。しかしまぁ、いきなりお堅いテーマ
から入ってもね、皆さん息が詰まってしまうでしょう? ですから、今日はライトな路線で、マンガ業界のお
話でもをしてみようと思います。だから、肩の力を抜いて受講してもらって結構ですよ。
 第1回ということで超ロングバージョンとなりますので、どうぞ時間をかけて受講してください。
 では、始めます。
 ……
 さて、日本には膨大な数のマンガ雑誌がありますが、そのほぼ全ての雑誌でいわゆる新人賞が行われていま
す。
 これは、日本全国に埋もれている有能な新人作家を発掘し、その雑誌の将来に繋げたい、という出版社・雑
誌側の思惑の表れというわけです。例えば、創刊当初から新人発掘に力を注いでいる「週刊少年ジャンプ」で
は、月例の「天下一漫画賞」、入選すれば即デビュー確実の「手塚賞」「赤塚賞」(年2回)、さらに最近で
は、ネーム部門を設置して原作者の発掘も図る「ストーリーキング」(年1回)など、複数の賞を設置して、
数多くの新人を発掘しているわけです。まぁ、発掘した新人の9割以上は飼い殺しですが。

 しかし、この各種新人賞、特にマイナーな雑誌ほどそうなのですが、"大賞"の賞金と副賞がやたらと豪華な
割には、賞金5万円と副賞・原稿用紙セットの"奨励賞"しか出ない、という傾向があります。しかも、その"
奨励賞"からのデビュー率が著しく低く、何を奨励しているんだか皆目分からない、という悲しい現実も見え
隠れします。
 こんな様子を見た時、我々の脳裏には「マイナーな雑誌だから、高い賞金が払えないんじゃないか」なんて
疑念が湧いてきたりするのですが、それは大部分正しいとしても一応は間違いのようです。それを証拠に、創
刊以来、休刊と存続の境界線を「キャプ翼」の滝くんのようなライン際ドリブルで駆け抜けているマンガ雑誌
「コミックビーム」編集長の奥村氏は、以前新人賞の講評でこのようなことを述べられています。

 あー。あかん。べつによぉ、俺はゼニけちってんじゃねえぜ。俺のハートのビーンときた新人にゃあ、ポー
ンとゼニ払ってやろうと思ってんのよ。挙句の果てにゃあ、ソープ1回くれえオゴっちゃおうとまで思ってん
のよ、マジで。次回は頼むよ、ヨロシク!!
 

 そのソープは大衆店なのか、高級店なのか。また、女性が受賞者の場合は出張ホストに変更になるのかどう
かは分かりませんが、奥村氏の意気込みはビンビン伝わって来ます。伊達に慰安旅行のたびに沖縄のソープに
行ってません、この人。
 …とまぁ、雑誌側には、少なくとも「本当に凄い新人だったら、街金から金借りてでも大賞を出す」という
考えはあるようです。ただ、その場合は、大賞を受賞した新人が、いつの間にか手形の裏書人になったりしな
いかと、また余計な心配が沸いてきたりするのですけれども。

 ただ、雑誌側にどれだけ意気込みがあったとしても、結果的に「大賞、入選、佳作に該当作なし、奨励賞2
作品」では、いつまで経ってもソープご招待大物新人発掘は、ままなりません。受賞者が少ない、または出な
い賞では、どうしても応募者側のモチベーションが維持できず、ますます有能な人材は大手雑誌に流れていっ
てしまいます。これでは悪循環です。

 しかし、そんな冬の時代に、厳しい現況を打破しようとするマイナーマンガ雑誌が現れました。
 その雑誌名は「カラフルBee」。実用性に富んだ成年向マンガ雑誌として定評があり、また、ストリップ劇
場で言うところの幕間コントにあたる、ショートギャグマンガの「ゲノム」が、ごく一部で絶大な人気を誇っ
ています。競馬場で喩えれば、笠松競馬場、プロレス団体で言えば大日本プロレスのようなポジションでしょ
うか。
 そんな「カラフルBee」が、今年からスタートさせた新人賞が「カラフルトライアル」です。この賞は年3
回実施され、必ず1作入選作(しかも本誌掲載)を出すことが公約されています。つまり「該当作なし」を撤
廃した画期的な新人賞と言うわけです。
 もちろん、これにはカラクリがありまして、この賞には賞金が存在しません。入選作が掲載される際に支払
われる原稿料が賞金の代わりとなります。
 原稿料の相場は、残念ながら詳しく知り得ませんが、小学館や講談社といった大手出版社では「新人は1ペ
ージ1万円」という相場らしいですので、マイナー誌ではページ数千円というところでしょう。ですから、こ
の「カラフルトライアル」入選者に支払われる原稿料は、ページ数にもよりますが、平均して5~10万円程度
だと思われます。マンガ新人賞の賞金としてはかなり低いランクであると思われますが、その代わりに、雑誌
掲載と掲載作のアンケート調査という貴重な体験をさせてもらえるのですから、賞金が低くても応募する価値
は高いと言えるでしょう。

 また、この「カラフルトライアル」の素晴らしいポイントとして、受賞作に対する講評が異様に懇切丁寧で
ある、ということが挙げられます。
 普通、雑誌に掲載される受賞作の講評は、あくまで簡潔にまとめられてしまうものです。例えば、先日「週
刊少年ジャンプ」51号に結果が掲載された「第7回ストーリーキング」では、他の新人賞で言うところの大賞
にあたる「キング」が1作品選出されたのですが、この作品に対しての講評は以下のようなものでした。


 アメフトという、スポーツ漫画ではわりと手垢のついていない競技を題材に選んだのが正解。しかも荒々し
い競技に挑む主人公の軟弱少年にも味がある。完全に原作者のレベルに達しているという好評価。
 

 確かに、選者が言いたいことは分かるのですが、文字数の関係か、どうしても抽象的な印象が否めません。
「味がある」というのは一体何をもって「味がある」とするのか、この講評だけでは全く理解出来ないので
す。
 その点、「カラフルトライアル」の講評は、その辺りが一味違います。
 まずは第1回の受賞作の講評をご覧頂きましょう。受賞作は2作品ありますが、1つずつ取り上げていきた
いと思います。(講評は、明らかな誤字を除いて原文ままですが、赤字強調は駒木によります)


作品名:「正しい合格の祝い方」

 子どもっぽいし、料理も不得意、それほど美人でもないけど、可愛くていつもそばにいてくれる…。そんな
女の子との「純情」で「ひたむき」なHが、ありがちな設定ながらも強く下半身にうったえて、編集部内での
高い評価につながりました。ただ、もう少し挿入シーン以外のHシーンに力を入れ、「ついに彼女を手に入れ
たんだ!」という勢いがあれば、もっと良くなったと思います。
 

 …非常に具体的ですね。受賞の決め手が「理屈抜きで下半身を反応させた」こと、問題点は「前戯の描写を
もっとしつこくする」ことだと一目瞭然です。この際、「審査員を勃たせたら、内容はどうでもエエんかい」
というツッコミは差し控えましょう。
 また、もう1作品の講評は以下のようなものでした。


作品名:「僕 hold out!」

ページ数が4ページと短いものの、とにかく女の子のキャラクターの可愛さが目を惹きました。また、4ペー
ジの中に、大きなリボンの巨乳の少女、エレベーターガール、肉球つきのロリコン少女など「これでもか」と
いうほど萌え要素の高い女の子が登場し、それが入選の大きな材料となりました。次は、このキャラクターの
魅力を生かした長編を期待しています。
 

 これも非常に具体的な講評です。審査員諸氏の「よくぞ萌えさせた!」というスタンディングオベーション
が聞こえてきそうな名文だと思います。これも、「萌えさせたら後はどうでもエエんか? あぁ?」と、ヤカ
ラを入れたくなりますが、そんな瑣末な事を気にしていては、物事の本質を見失ってしまうので、これも差し
控えておきましょう。

 そして4ヵ月後、第2回の「カラフルトライアル」では、この具体的な講評がさらにグレードアップしま
す。


作品名:「ましゅまろ☆はねむ~ん」

二人きりでの温泉旅行。そこで妹のような女の子とHする…。精一杯奉仕してくれる彼女と、可愛すぎる彼女
に欲情を押さえきれない主人公。ストーリーから「彼女にこういうHな事をしてもらいたい、したい」という
欲情が素直に感じられ、またその主人公の欲情に読者も感情移入しやすく、素直に「ヌケル」マンガになって
いたのが非常に良かったです。こういう「こんな女の子(妹、メイド、猫耳、コスプレ、などの萌え要素)
と、こんなH(処女貫通、アパートの自室で、などH行為の状況・場所)をしたい、させたい!」という具体
的な物(夢)が見える作品は編集部での好評価につながります。ただ、途中でいくつか挿入されているCG作
画の部分が、絵にぼやけた印象を与えてしまいました。また、Hシーンでは、「妹のような女の子」という設
定をよりいかすために、「彼女の方からもっと甘えるシーン」があれば、さらに萌えたと思います。
 

 凄いですね。

 まず、作者に「いつもこんな事考えて欲情してるんだぁ。いよっ! このスケベ!」とチャチャを入れつ
つ、返す刀で選者自身も「思わずトイレに持ち込んでオカズにさせて頂きました」とカミングアウトしていま
す。マリナーズ・イチロー選手のレーザービーム送球も真っ青の、見事な言葉の連携と言えましょう。
 また、見逃せないのは、この講評は次回以降に応募する人に対しての指針を示していると言う事です。つま
り、
 「アパートに一人暮らしの兄の下へ妹がやってきて、猫耳メイドのコスプレをして処女貫通」
 というストーリーで応募すれば、入選間違いなしというわけです。こんな親切な講評、これまでにあったで
しょうか? 素晴らしいの一言ですね。

 しかしこれもまだ、つい先日発表された第3回の「カラフルトライアル」講評の前奏曲に過ぎません。
 この第3回の講評は、もう講評の域を越え、散文詩の世界に突入していると言っても過言ではありません。

 まず、全体の講評から。今回はかなりの接戦だったらしく、審査が難航した様子が伝えられています。


 5人の方の作品は、入選作と一緒に、どれを掲載するのか最後まで編集委員の意見が分かれました。これら
の作品は「H度」「ストーリー性」「画力」などにおいて、入選作をしのぐ部分も多かったのですが、「最後
に全ての作品を思い浮かべたときに、すぐにキャラクターの絵が浮かんだ」というところで「Sugar S
UGAR」を入選とさせて頂きました。本当に僅差でしたが、やはり「Hで印象に残るキャラクター」の強さ
が最後の最後で発揮されたと思います。
 

 なんと決め手は念写です。

 ううむ、この人たちなら、あの「マインドシーカー」も一発クリア出来そうな気がします。

 しかし、これからが本番です。では、究極の講評の世界をご堪能あれ。


作品名:「Sugar SUGAR」

 編集部員全員の一致した意見が「とにかく猫耳召使いがかわいくてH」ということでした。ふさふさの猫耳
や、裸エプロンに近い格好は、「こんな召使いが欲しい! Hしたい!」と思わず叫びたくなりました
(笑)。それに、SEXの最中の感じている顔、半開きの口から突き出た舌、流れ落ちる唾液、涙ぐんだ瞳が
イヤラシサを倍増させています。この「猫耳召使い」が、今回の入選の最大の理由になりました。
 ただ、錬金術師と猫耳召使いのドタバタHは、前半部分(Hではないシーン)が「料理失敗→おしおきH」
というパターンの割にはいささか冗長になってしまいました。もっとはやくHに持っていき、その分Hシーン
を濃厚にした方が良かったと思います。また、「どじな召使い」を「おしおきする」タイプのHですので、
「スライムH」などよりも、もっと猫耳召使いを「いじめる」Hが欲しかったです。例えば「乳首を強くつま
む」とか、「お尻の穴に指を入れる」「挿入をじらして、猫耳召使いに挿入を懇願させる」など、「カワイイ
娘を思うがままに蹂躙する」快感があれば、もっともっと読者にサービスできたと思います。
 その他にも「男性キャラクターの描き込みをもっと丁寧に」とか、「性器の描写をもっとリアルに」などが
反省点として挙げられます。
 このように修正すべき点も多かったのですが、「キャラクターのかわいらしさ」がそれらの欠点を圧倒する
力を持っていました。これからは、「キャラクターの良さが、どうしたら最大限に生きるか」にこだわって作
品を作っていってほしいと思います。
 

 いかがでしたでしょうか。まるで夜中に1人で、リモコン片手にアダルトビデオを見ながら呟いているよう
な思いの数々。これこそ、人間の本能と欲望の赴くままに劣情を爆発させた芸術大作、まさしく公私混同の極
みであります。某大麻常習犯の父親は「不倫は文化だ」とのたまいましたが、ここに至っては、この講評こそ
文化だと言えはしないでしょうか、ねぇ皆さん。

 不況にあえぐマンガ業界に現れたウルトラスーパーデラックスマン救世主、「カラフルトライアル(の講
評)」。この出来て間もない新人賞が、これからのマンガ業界の未来を作り上げてゆく、そんな予感がする…
…と、そうまとめたところで、今日の講義を終わりたいと思います。長時間、お疲れ様でした。 (講義終
了) 
 

 

 

11月25日(日)競馬学特論
「G1プレイバック」
 

駒木:「さて、オープンキャンパスの講義だけれども、仁川経済大学らしく、競馬学でいこうと思います。今
週は、ちょうどG1が2つあるジャパンカップウィークだったし、その2レースを振り返ってみよう、と。な
お、競馬学特論の講義の時には、助手の珠美ちゃんにも手伝ってもらいます。それじゃ、挨拶して」
珠美:「ハイ。助手の栗藤珠美です。皆さん、どうかよろしくお願いします♪ でも、博士。実はこの講義で
は、昨日のお昼にジャパンカップ2レースの予想をする予定だったんですよね」
駒木:「そうなんだ。でも結局、昼は時間的に間に合わなかったし、夜もサーバーの不調で講義が出来ない状
態になってしまったんだ。」
珠美:「2レースとも予想が的中したのに残念でした」
駒木:「でもまぁ、当たったって言っても、配当は安いしねぇ。人気サイドで終わったレースの予想記事ほど
面白くない記事も無いから、結果的には良かったんじゃないのかな?」
珠美:「そうなんですか?」
駒木:「そういうことにしておこう。でないと、あまりの幸先の悪さに泣けてくるじゃないか」
珠美:「………ハイ…(涙)」

ジャパンカップダート 東京・2100・ダート
 

 珠
 着順
 (馬番)馬名
 着差
 

 ◎
 1
 (9)クロフネ
 ─
 

 △
 2
 (8)ウイングアロー
 7
 
 
 ×
 3
 (1)ミラクルオペラ
 1/2
 
 
  
 4
 (3)ノボトゥルー
 3/4
 
 
  
 5
 (4)プリエミネンス
 1
 
 
  
 6
 (11)リージェントブラフ
 1
 
 
  
 7
 (2)ワールドクリーク
 1 1/2
 

 ○
 8
 (14)リドパレス
 1 3/4
 
 
  
 9
 (10)ジェネラスロッシ
 3/4
 
 
 ×
 10
 (16)ハギノハイグレイド
 3/4
 
 
  
 11
 (7)ディグフォーイット
 クビ
 
 
  
 12
 (5)ミツアキサイレンス
 3
 
 
  
 13
 (6)オンワードセイント
 4
 

 ▲
 14
 (15)レギュラーメンバー
 9
 
 
  
 15
 (12)アエスクラップ
 6
 
 
  
 16
 (13)キングオブタラ
 10
 

珠美:「2分05秒9のレコードタイムでクロフネの圧勝でした。強かったですね」
駒木:「強かったねえ。武豊JKも、全然上手に乗ろうと考えてないもの。外、外を回って、しかも早仕掛け。
馬の走る気さえ損ねなければ勝てるって確信してたんだろうね。全盛期のホクトベガを髣髴とさせる圧勝だっ
たね。…って、珠美ちゃんは世代的に知らないか」
珠美:「いえ。リアルタイムで見てたわけではないですけど、学生時代に講義で観ましたよ、ホクトベガの南
部杯。アナウンサーが興奮して『女王様とお呼び!』って叫んだレースですけど」
駒木:「…………」
珠美:「……? 博士、どうかしました?」
駒木:「……あぁ。いや、女の子から『女王様と…』って言われると、ちょっとね(微笑)」
珠美:「……コホン(ちょっと赤面)。話を戻しましょう。
博士はクロフネに、本命じゃなくて対抗の○印だったんですね。これはどうしてだったんですか?」
駒木:「ん~、同じように圧勝してた前走の武蔵野Sがね、ちょっと相手が弱過ぎたんじゃないかな、と。格
下相手にレコードタイムで圧勝した馬が、次のG1で惨敗するって、結構あることだからね。まぁ、ここでも
圧勝されたから、説得力は皆無になっちゃったけど」
珠美:「なるほど。…ええと、クロフネはこれからはどうなるんでしょう?」
駒木:「来年はドバイWCとブリーダーズCクラシックが目標だろうね。スピード競馬にも対応できるし、何よ
り来年4歳で、まだ若い。ひょっとするとひょっとするかもしれないよ」
珠美:「そうですか。期待大ですね♪ ……それじゃ、次いきます。2着には、熾烈な競り合いを制してウイ
ングアローが滑り込みました」
駒木:「ん~、2着争いにはシビれたね。たかだか5倍チョイの配当のために大声が出た(笑)」
珠美:「私は、配当が安い方が(2着に)来ちゃって、別の意味で声が出ちゃいましたけど(苦笑)。ああ、
そっか。博士はこの馬が本命だったんですね。私は他の馬に目移りして△印しか付けてなかったんですが…」
駒木:「本当の意味での実績は、やっぱりこの馬が一番だったからね。明らかにこのレースを目標にして仕上
げてきたような感じだったし。ただ、今回は相手が悪すぎたとしか言いようが無いね。去年このレースを勝っ
た時のパフォーマンスは見せているんだから。去年はクロフネがいなくて、今年はいた。それに尽きるね。こ
の馬も強いよ」
珠美:「ハイ。じゃあ次に行きますね。3着はミラクルオペラでした。個人的に残念な着順です(苦笑)」
駒木:「典型的な昇り馬というやつだったね。実績は足りないけど、勢いが物凄いって馬。この手の馬は、大
抵G1だと頭打ちになっちゃうんだけど、やっぱり少し足りなかったね。健闘はしてるから、これ以降の成長
力如何では、ウイングアローと互角以上に戦えるようになるかもしれないよ」
珠美:「次は2頭いっぺんにいきましょう。4着はノボトゥルー。春のフェブラリーSを勝った後、不振が続
いてましたけど、今日のレースは見せ場十分でしたね。5着のプリエミネンスも2着争いに参加してました
ね」
駒木:「ノボトゥルー、調教も悪かったんだよね。2100mの距離も長いし、最後に失速したのは当然といえば
当然なんだけど、やっぱりこの馬も力があるよね。プリエミネンスもよく頑張ってるけど、ゴール前に突き放
された辺りに、格の差が出てる気がしないでもない」
珠美:「次は人気を裏切った有力馬について。アメリカ最強ダート馬と言われたリドパレスは8着でした。こ
れはどうしたんでしょう?」
駒木:「クロフネが仕掛けて行った時に付いていけなかったものねえ。敗因としては、やっぱり日本と外国の
ダートの違いがあるでしょう。日本の場合、名前こそダートだけど、実際は砂、サンドコースだから。アメリ
カとかドバイのダートはスピード優先で、日本のダートはパワー優先。求められてるものが違うんだよ」
珠美:「あらら、それは可哀想でしたね」
駒木:「でも、クロフネは、そういう馬場で芝並みのタイムを叩きだしてるわけだからねえ。リドパレスの関
係者も言ってたらしいよ。『13馬身も負かされたら、何も言う事はありません』って。本音じゃないかな、そ
れが。アメリカの馬場で同じレースをやったとしても、1着クロフネ、2着リドパレスだね」
珠美:「馬場が半分、実力が半分ってことですね。それじゃあ、次は14着に惨敗したレギュラーメンバーなん
ですけど、これは実力負けじゃないですよね?」
駒木:「うん。3コーナー手前でバテてたからねえ。中途半端な位置取りになったとはいえ、いくらなんでも
負けすぎだ。これは度外視して良いね。事実上のノーカウント」
珠美:「最後に、他の外国馬を総括してください」
駒木:「ジェネラスロッシは、力不足以前にデキ不足。調整の失敗だね。鼻出血も発症していたようだし。あ
との2頭はダート適性かな? ヨーロッパの芝馬だから、力の要る日本のダートは向くかも、と思われたんだ
けど、全然ダメみたい。やっぱり馬場適性は一筋縄じゃ行かないね」
珠美:「ハイ。ありがとうございました。次は芝のジャパンカップの回顧に移ります」

ジャパンカップ 東京・2400・芝
 

 珠
 着順
 (馬番)馬名
 着差
 

 ×
 1
 (6)ジャングルポケット
 ─
 

 ◎
 2
 (4)テイエムオペラオー
 クビ
 
 
 ×
 3
 (10)ナリタトップロード
 3 1/2
 

 △
 4
 (8)ステイゴールド
 クビ
 

 ▲
 5
 (1)メイショウドトウ
 3/4
 
 
 ○
 6
 (7)ゴーラン
 ハナ
 
 
  
 7
 (11)インディジェナス
 1/2
 
 
  
 8
 (9)ホワイトハート
 1 1/4
 
 
  
 9
 (13)ウィズアンティシペイション
 3
 
 
  
 10
 (2)アメリカンボス
 1
 
 
  
 11
 (15)ダイワテキサス
 2
 
 
  
 12
 (3)ギャグニー
 2 1/2
 
 
  
 13
 (14)パオリニ
 ハナ
 
×
  
 14
 (5)トゥザヴィクトリー
 大差
 
×
 ×
 15
 (12)ティンボロア
 2 1/2
 
 
珠美:「なんと、日本調教馬が掲示板(上位5頭)を独占しました。これは史上初ですよね」
駒木:「そうだね。でもまあ、今年の外国勢のレヴェルとかを考えてみれば、それも納得できる結果なんだけ
れどもね」
珠美:「そうですか。それでは、また上位から1頭ずつ振り返ってください。まずは、1着のジャングルポケ
ットから」
駒木:「なんだかんだ言って、結局、この馬の実力がオペラオー級だったってことに尽きるんだろうけど、1
着になった要因とすれば、チャレンジャー精神だろうね。自分から勝ちに行かずに、勝ちに行った馬を負かす
レースをしたんだ。それと、ペリエJKの騎乗技術。やっぱり凄いわ、この人」
珠美:「つまり、馬にも勝てる力はあるけれど、今回勝てたのは、騎手の力と時の運ってことですか?」
駒木:「そういうこと」
珠美:「では次、宝塚記念、天皇賞・秋に続いて、G1レース3連続で2着になったテイエムオペラオーで
す。私たち、2人とも◎印を打ってました。私は、素直にこれまでの実績を評価したんですけど、博士は?」
駒木:「こっちも似たようなものだけれど、敢えて言うなら、皆がオペラオーから浮気をし始めた頃だから、
その逆を突いて。ギャンブルは、他人の裏をかくことが鉄則だからね。まぁ、一番人気だから、そこまで力説
できるわけでもないんだが」
珠美:「それにしても、勝てなくなりましたね、オペラオーは」
駒木:「そうだね。でも、よく考えたら、今年春までの危なっかしい勝ち方よりも、随分と安定したレースを
しているんだよ。確かに、ほんの少しずつ全盛期から衰え始めてるのかもしれないけれど、それでもまだまだ
G1を勝てる力は充分持ってるさ。ここしばらくは時の運に恵まれていないだけ。有馬記念に期待だね」
珠美:「分かりました。では、次は3頭まとめていきましょう。3着ナリタトップロード、4着ステイゴール
ド、5着メイショウドトウ」
駒木:「ナリタトップロードは……。確かに3着なんだけど、全然勝ちに行ってないんだよねえ。言い方は悪
いけど、オコボレを貰っただけってところ。それならむしろ4着のステイゴールドの方が見せ場十分だった
ね。ナリタは、渡辺JKがあんなレースをやってる内は、いくら頑張ったって勝てないね。2着も無理。あと、
5着のメイショウドトウは、かなり道中で不利があったみたい。あれでリズムを狂わせたのなら、災難としか
言いようが無いね」
珠美:「ナリタトップロードに関しては、ちょっと辛口の分析でしたね。じゃあ、あとは外国馬を。最高位は
6着のゴーランでした。私は○印を打っちゃったんですけど、全然ダメでしたね」
駒木:「いくらなんでも体調が悪すぎたね。10年位前の日本馬なら、それでも相手になったんだろうけど、今
の日本馬のレヴェルだったら、ちょっとお話にならないってところだろう。やっぱり凱旋門賞からジャパンカ
ップってのは鬼門なのかな」
珠美:「他の外国馬はどうでしたか?」
駒木:「ほとんどが流れ込みだね。外国の準一流馬が、まともなレースをさせてもらえないなんて、日本の競
馬のレヴェルが上がったんだなぁと、しみじみ思うよ。あと、ティンボロア、あのベイリーJKの騎乗は何だっ
たんだろう? 引っかかった馬を追いかけて行くなんて正気の沙汰じゃないよ。ちょっと酷すぎだね。何か原
因があったのかもしれないけれど」
珠美:「ハイ。以上で終了ですね。博士、ありがとうございました」
駒木:「珠美ちゃんもお疲れ様。さて、今日は『競馬学特論』として、真面目に競馬のレース回顧をやったわ
けですが、これはあくまでも色々ある講座の1つにすぎません。正式開講の折には、もっとバリエーションに
富んだ、様々なカリキュラムを組んでゆきますので、どうぞよろしく。では、今日の講義を終わります」
(終) 
 

2003年第90回講義
11月28日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(11月第5週分・合同)
 
 またしても遅くなりましたが、今週のゼミを始めます。「ジャンプ」の発売日からほぼ1週間経って「今週
のレビュー」なんて言ってるのもアレなんですが……。

 さて、そういうわけで時間がありません。まずは先週から溜め込んだ分もある情報系の話題から。

 まずは受講生の皆さんも注目しているであろう、「ジャンプ」年末(雑誌的には04年新年)新連載シリーズ
のラインナップが発表されましたので、こちらでも改めて紹介しておきます。

新連載シリーズ・今回のラインナップ

 ◎第1弾・新年1号(次週発売)より新連載
 …『DEATH NOTE』(作:大場つぐみ/画:小畑健)
 ◎第2弾・新年2号より新連載
 …『銀魂』(作画:空知英秋)
 ◎第3弾・新年3号より新連載
 …『LIVE』(作画:梅沢春人)
 

 ネット界隈の噂では、今年2回目の新連載4本か…という説もありましたが、とりあえずオフィシャルでは
"標準モード"の新連載3本ということに。
 ただ、だからと言って打ち切りも3本で断定できるかと言うと微妙な所なんですよね。前回の改変では新連
載3本で打ち切り2本でしたので、今回はその逆で打ち切りが1本多くなるかも知れませんし。掲載順などを
見ても、今期の新連載の生き残り2本(『サラブレッドと呼ばないで』&『神撫手』)が"瀕死状態"なのは明
白ですし、場合によると4本打ち切りもあり得ます。まぁ3本入れ替えで片方が生き残るにしても、ぶっちゃ
け『闇神コウ─暗闇にドッキリ─』と同じパターンになるのは目に見えてますが……。

 で、新連載のラインナップですが、有り体に言えば、「『ジャンプ』の僅かな"残弾"を惜しげも無く投入し
て来たなぁ…」という感じですね。小畑健さん、梅澤春人さんといった固定ファンの多いベテラン作家さんに
加えて、ネット界隈でも評判の高い若手・空知英秋さんをぶつけて来るとは思い切ったモンです。
 しかし、現在のラインナップの中に初連載の若手作家さんが飛び込んでいくのは大変ですよねぇ。ライバル
が小畑&梅澤両氏に加え、『ごっちゃん』、『ミスフル』あたりになりますから……。生き残るにはハンパじ
ゃないパワーが必要になると思いますが、新人・若手が育たないと「ジャンプ」はどうにもなりませんので、
そういう意味でも空知さんには頑張ってもらいたいものです。

 なお、次週発売の「ジャンプ」新年1号には、読み切り『ダー!!! ~便所の壁をブチ破れ~』(作画:吉
田慎矢)が掲載されます。
 吉田さんは03年6月期『十二傑新人漫画賞』で最終候補まで残ったのが"最高位"の新人さんで、勿論これが
デビュー作。6月時点で17歳ということですので、現在は現役高校生でしょうか。題名や次週予告のカットで
は一体どんな作品か全く判らないのですが、ページ数から言ってストーリー系作品のようですね。

 ……さて、先週のゼミで扱う予定だった「ジャンプ」系の新人賞・「ストーリーキング」03年下期の審査結
果が発表になってしますので、こちらの受賞者・受賞作を紹介しておきましょう。

第10回ストーリーキング(03年下期)
 
 ◎マンガ部門
 キング=該当作無し
 準キング=1編
 ・『みえるひと』=「赤マル」掲載決定
  岩代俊明(25歳・東京)
 《講評:とにかく見やすいのが印象的。コマ割りもキッチリされていて絵柄にも好感が持てる。前半のスト
ーリー展開が淡々とし過ぎているのでリズムに気をつけて欲しい。迫力ももっと欲しいところ》
 奨励賞=該当作なし
 最終候補(選外佳作)=7編
  ・『FANNY STORY』
   森田将文(23歳・東京)
  ・『蹉跌』
   雪田鉄蔵(26歳・京都)
  ・『HIGH SPEED GIRL』
   福代ゆりか(18歳・島根)
  ・『僕とお面』
   佐倉茶太郎(19歳・千葉) 
  ・『料理や』
   西誠(17歳・千葉)
  ・『one armed abyss』
   西島麗(17歳・宮城)
  ・『ぶ霊んますたあ』
   岸のりこ(19歳・栃木)   

 ◎ネーム部門
 キング=該当作無し
 準キング=1編
 ・『いのちやどりしは』
  高野勇馬(25歳・兵庫)
 《講評:文楽という馴染みの薄いジャンルに挑戦し、その面白さを演出出来ていた点を大きく評価した。あ
とは主人公が文楽に興味を持つ理由の弱さ等、キャラクターをじっくり描く意識を高めて欲しい》
 ・『桐野佐亜子と仲間たち』
  二戸原太輔(21歳・福岡)
 《講評:「能力バトル」という設定自体はそれほど新鮮ではなかったが、戦闘場面におけるレベルの高いア
イディア力と、キャラの"強さ"を確実に演出する力を感じさせた。ただし「能力とは何か」という部分の説明
が不足していたのが残念》
 奨励賞=該当作なし
 最終候補(選外佳作)=6編
  ・『羽ばたく音楽』
   大館貴子(33歳・埼玉)
  ・『ROGUE』
   陽祐(20歳・兵庫)
  ・『一つ結び』
   山本春助(18歳・長崎)
  ・『霊飼いの宿』
   赤羽潔(27歳・東京)
  ・『鬼丸王』
   黒犬のしっぽ(36歳・東京)
  ・『長靴を履いた猫』
   宮田英俊(23歳・兵庫)
 

 受賞者の皆さんのキャリアは以下の通りです。

 ◎マンガ部門最終候補の森田将文さん…01年11月期、02年1月期、02年7月期、03年1月期の「天下一漫画
賞(現:十二傑新人漫画賞)」で計4回最終候補。
 ◎ネーム部門最終候補の黒犬のしっぽさん…02年度、及び03年上期「ストーリーキング」でも最終候補。

 なお、マンガ部門準キングの岩代俊明さんは、活発に同人活動もしていたようで、Googleで名前を検索する
と所属サークルのウェブサイトに飛べたりします。
 そこでは18禁マンガも描いた事があったような記述が載っていましたが、まぁ「ジャンプ」では成人誌出身
の真倉翔さんが活躍していたりしてますので、これは問題にならないでしょう。大事なのは、これから商業媒
体で優れた少年マンガが残せるかどうかです。講評を見る限りでは、まだまだ課題が残っているような感じで
すが、恐らく来春の「赤マル」に掲載されるデビュー作の出来映えに注目してみたいところですね。


☆「週刊少年ジャンプ」2003年52号☆

 ◎読み切り『ぷーやん』(作画:霧木凡ケン)

 今週の読み切りは、知る人ぞ知るベテラン下積み作家・霧木凡ケンさんが登場です。
 間もなくデビュー12周年となる霧木さんのデビューは1991年、霧木さんが弱冠15歳の時。これまでのキャリ
アは『シェルター』さんの『霧木凡ケン作品リスト』に詳しいので、そちらを参照して頂ければ…と思います
が、これまでに「ホップ☆ステップ賞(現:「十二傑新人漫画賞」)」入選、「赤塚賞」準入選、増刊号に作
品掲載6回、週刊本誌に作品掲載2回…というキャリア相応の実績を残しています。
 そして今回は3年ぶり3度目の本誌掲載。悲願の連載獲得へ向けて、文字通り三度目の正直なるか…といっ
たところでしょうか。

 まず絵についてですが、どうも全体的にシックリ来ません。致命的なミスは無いのですが、所々でデッサン
が崩れている所があったり、表現が上手くいっていない所があったりします。「赤マル」春号で初めて霧木作
品をレビューした際には、「これも霧木さんの"味"なのかな……」とも思いましたが、今作の絵柄を見てみる
と、それだけで片付けてはいけないような気がしてきました。
 デビュー12年にして、まだ絵の技術的な面で課題が残っているというのは、やはり頂けませんね。正直な
所、「同期・後輩がどんどん追い抜いて行ってる中で、一体これまで何やってきたんだ」という話になるわけ
ですから。

 スト-リーにも問題がありますね。
 話の展開は最初から最後まで不条理そのものなんですが、作中の登場人物全員が(そして恐らくは霧木さん
も)、全くこの筋書きを不条理だと実感していないんですね。本来ならツッコミ役を配置してギャグマンガに
ならなきゃおかしいくらいの不条理な筋書きなんですが、スタイルそのものは純然たるストーリー作品なんで
すよ。だから読み手にとっては得も言われぬ違和感を感じてしまうわけです。作品世界に没入していけないん
ですね。
 ストーリーテリング力が云々…ということよりも、むしろ作者視点が読者視点と大きく乖離している事の方
が問題ですね。これは作者の霧木さんが気付かない限りは、そして気付いたとしても12年分のノウハウを放棄
してゼロからリスタートしない限りは修正出来ないものだけに、非常に辛いところでしょう。
 あ、あと作風が「週刊ビックコミックスピリッツ」の『π』に似てしまってるのもヤバいですね。「スピリ
ッツ」も読んでいるような高年齢層読者──おそらくこの作品で最も支持を集める可能性の高い読者層──
は、「あ、似てる」と感じた時点で、この作品を二番煎じ扱いしてしまうでしょうから。

 評価はギリギリでB-というところでしょうか。正直言って、連載に耐えられるクオリティとは思えませ
ん。

 

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントについて箇条書き形式で雑感。

 ・稲垣理一郎さん…ジャンプフェスタとクリスマスボウルが日程と時間帯まで一致した事に大ショック。そ
りゃショックでしょうなぁ(苦笑)。ていうか、誰かスケジュール調整してやれよって話なんですが。
 まぁアレですよ、鶴の一声でジャンプフェスタの日程がズラせるくらい偉くなって下さい、稲垣さん。
 ・つの丸さん…分裂前の全日って、何度目の分裂なんだろう…とかマニアな疑問を抱いたんですが、まぁ先
週に三沢モドキのキャラを出してる所から考えると2度目の分裂(現ノア勢離脱)なんでしょうね。でも、良
い環境で仕事してるなあ(笑)。 
 ・高橋和希さん…で、ここにもプロレス・格闘技ファンが1人(笑)。今年は駒木の地元神戸で猪木祭があ
るんですが、こっちも他のイベントが気になって生観戦なんて行ってられませんからね(笑)。
 ・うすた京介さん…「うまい棒の人」とか言われてますね、多分(笑)。コンビニの店員さんって、それほ
どお客さんの顔を覚えてないって話を聞いた事ありますけど、大の大人が頻繁にうまい棒を買いまくってた
ら、さすがに覚えられてるでしょう。

 あと、今週は『BLACK CAT』の人気投票結果発表があったんですが、発表された票数が全て4の倍数だった
という事が2ch掲示板で話題になりました(笑)。確かに偶然にしては出来過ぎですなぁ、これは。
 まぁ、この手の人気投票が実勢を現していないというのは以前から指摘されている所ではあるんですが、編
集部ももうちょっと気遣えよと(苦笑)。

 ◎『戦国乱波伝 サソリ』(作画:内水融)【現時点での評価:B/連載総括】 

 残念ながら1クール打ち切り。いわゆる"突き抜け"となりました。
 数話完結のエピソードがそれぞれ盛り上がりきる前に終わってしまったり、キャラクターが立つ前に一旦退
場してしまったりと、全般的に非常に勿体無い展開に終始しましたね。もし早い段階で打ち切りが確定してい
たのなら、それも仕方ないと思うのですが……。
 ただ今回の作品は、元々からして内水さんの持ち味が出せるような題材では無かったですからね。ミステリ
要素を交えた"知能派"のストーリーで実績を得て連載を獲得したのに、連載でいきなり"肉体派"ストーリーに
転向ですからね。上手くいく方がおかしいです。
 とりあえず次回作は自分の持ち味を遺憾なく発揮できるような題材で勝負してもらいたいものです。
 最終評価はBということでいいでしょう。読み流すだけなら不満は無い作品でしたので、これくらいが妥当
でしょう。

☆「週刊少年サンデー」2003年52号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「今までで一番怖かった体験は?」。
 やはり答えがバラけましたね。ただ、出題者が一番期待していたであろう、オカルト的な恐怖体験はほとん
どゼロで、多くは物理的な命の危機と締め切りの危機についてのエピソードになったようです。
 個人的に「うわ、怖ぇ!」と思ったのは、「締め切り1日前にネーム未完成」のモリさんと、「インコがサ
サミ状になって生きてる夢を見た」田辺さんの各エピソード。あ、でもモリさんの場合は、締め切りって言っ
ても「モリさんが聞かされてる締め切り」ですからね(笑)。ひょっとしたら本当にギリギリの締め切りから
考えると数日余裕があったかも知れません。
 「ジャンプ」とかどうしてるんでしょうかね。いくら編集が「先生、明日の朝イチで印刷所に突っ込まない
と落ちます!」って言っても、冨樫義博さんに電話で問い合わせられたらオシマイのような気がするんですが
(笑)。「え? もう来週号の原稿やってるの?」とか言われたりして。

 
 ◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A-/雑感】

 この作品の面白い所は、体育会系の部活を舞台にしていながら、キャラクターの人間関係は限りなく文化系
に近いという事ですね。体育会系がベースなので印象は明るくて健康的になりますし、それでいて人間関係が
文化系で等身大スケールなので幅広い支持が期待出来ると。
 ラブコメに偏り過ぎ…という意見も確かにあるんですが、ここまでそういうキャラ構成になったら、そっち
に流れないとむしろおかしいような気がします。あと、恋愛というのは物語を構成する要素としては基本中の
基本ですしね。


 ◎『美鳥の日々』(作画:井上和郎)【現時点での評価:B+/雑感】

 で、この作品も巧い。今回は物凄くコアな題材なんですが、ギリギリの所で一般人の感覚から外れていない
ので(つまり、一般人から見たらおかしい事は、キチンとおかしい事として描けている)、いわゆる"オタク
臭"が漂って来ないんですね。しかも、ディティールもほぼ正確に押さえているので、"そっち系"の人が見て
も「知ったかぶりしやがって」という批判はほとんど出て来ないと思います。
 しかし、この作品で一番の善人は間違いなく高見沢くんですね(笑)。暴走&事後承諾癖があるのは問題で
はありますが。

 
 ◎『からくりサーカス』(作画:藤田和日郎)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】
 
 「彼の人生は死んだのだ。ナルミにとって彼の人生は、もう彼のものではないのだ」
 ……こういう重いフレーズがスッと出て来るところが凄いんですね、藤田さんは。ここまで人の命の価値っ
てのを実感させられる筆力というのはやはり稀有だと思います。
 少年マンガの古典的な設定として、主役に「不殺」を守らせるってのがあるんですが、これは命の価値を重
んじているようで、実はそうでもないんですよね。どちらかと言うと、命の価値について考える事から逃避し
ているわけで、その辺を作者自身が理解していないと薄っぺらい作品になってしまうんです。
 

 ……さぁそして、次週は『ふぁいとの暁』が最終回。ここに来て激しい"大量粛清"の予感がしますが、その
次に打ち切られる作品、そして入れ替わる新連載は一体誰なんでしょうか。注目ですね。

 さて、今週で11月分のゼミは終了。これで今年の「仁川経済大学コミックアワード」の審査対象期間(02年
12月~03年11月)が終了した事になります。
 そこで、次週のゼミでは評価保留中の作品に暫定または最終評価を下し、ノミネート予定でまだレビューが
済んでいない作品についての「読書メモ」を実施します。そして最後に、各部門のノミネート資格保持作品を
発表する予定です。
 なお、今年の「コミックアワード」は12月中旬(場合によっては下旬)に開講2周年式典として実施予定で
す。そこで改めて最終ノミネート作品(=各部門の優秀作品賞)を発表した後、各部門の最優秀賞&グランプ
リを選出したいと考えています。部門によっては、駒木の頭の中では既に内定が出ている作品もありますが、
イベント当日までのお楽しみ…ということで何卒。
 

 


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2003年第87回講義
11月21日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(11月第4週分・合同)
 
 いつもながら想定外の時間的"押し"が入っております。どれくらい押しているかと申し上げますと、この冒
頭部分を準備している時点で、既に次号の「ジャンプ」がコンビニに並びつつある……という有様です。最終
回になった作品名とか次期新連載のラインナップも言えますが黙っときます(苦笑)。
 今週号(月曜発売)の『H×H』のトビラに描かれている絵が先週号の『ボーボボ』だったことで、「"落ち
る""落ちない"の瀬戸際って本当にギリギリなんだな」と判明したわけですが、当講座もそんな所は見習わな
いように頑張らなければいけません。最近毎日謝ってる気がしますが、本当に申し訳ありません。

 そういう事情もありまして、今日は情報系の話題は割愛させて頂きます。「ストーリーキング」の受賞者と
過去の履歴紹介は次週分に回させてもらいます。
 あと、次号(土曜発売)の読み切り『ぷ~やん』(作画:霧木凡ケン)は、今年の「赤マル」春号に掲載さ
れた『少年青春卓球漫画ぷーやん。』のリメイク作品です。これも詳しくは次週分のゼミで紹介しますが、霧
木凡ケンさんは来月でデビュー丸12年を迎える"マンガ家版・永遠の若手"。念願の連載獲得なるか、注目の読
み切りと言えるでしょう。

 ……それでは、今週は「サンデー」が合併号休みのため、レビューとチェックポイントは「ジャンプ」のみ
となります。レビュー対象作は読み切り1本のみ。
 ただし、それだけではアレですので、一部翌日振替になる事を覚悟で『読書メモ』をお送りしたいと思いま
す。今回は、年末予定の「第2回仁川経済大学コミックアワード」に"ワイルドカード"としてエントリーさせ
るための簡易レビューを行います。慌しくて恐縮ですが、最後までどうぞ宜しく。

 
☆「週刊少年ジャンプ」2003年51号☆

 ◎読み切り『家庭教師ヒットマン REBORN』(作画:天野明)

 今週の読み切りは、これが「ジャンプ」本誌初登場となる天野明さんの新作が登場です。
 天野さんは、「ジャンプ」ではルーキー扱いながらも、既に01~02年にかけて「週刊ヤングマガジン」の本
誌や別冊で短期ながら2度も連載を経験しています。キャリアだけならば、中堅に足を踏み入れかけの若手と
いうことになるでしょうか。
 天野さんの「ジャンプ」でのキャリアは、02年11月期の「天下一漫画賞」で最終候補(ただし別ペンネー
ム)が最初。翌々月に「最終候補まであと一歩リスト」に名を連ね(てしまっ)た後、「赤マルジャンプ」03
年春号で「ジャンプ」デビューを果たしました。今回はそれ以来の新作発表となります。
 しかし、青年誌とはいえ他誌で連載まで持った人を月例新人賞の予備選考で叩き落すとは、さすがマンガ家
の世界はシビアですよね。

 それでは、内容についてお話をしてゆきましょう。

 まず絵ですが、とりあえず大きな問題点は無いと思います。さすが連載経験者だけあって、ディフォルメ、
特殊効果、背景なども含めて普通のルーキーに比べると一枚上手の実力を認める事が出来ますね。
 敢えて注文をつけるならば、主役級のキャラにもう少しアクが欲しいところですね。特にヒロインなんか、
何だか鈴木央さんの作品に出てくる脇役女子キャラみたいでしたし(苦笑)。

 続いてストーリー&設定について。
 「赤マル」に載った前作は、「ジャンプ」を意識しすぎたのか、先週紹介した"王道フォーマット"をなぞっ
ただけで終わってしまった感があったのですが、さすがに今回は独自色を出して来ましたね。
 シナリオのスタイルは、古くは『ドラえもん』などの藤子F作品、「ジャンプ」では『まじかる☆タルるー
とくん』(作画:江川達也)などで見られた、"異世界からの訪問者"タイプですね。ダメ主人公がその訪問者
の力を借りて強く生まれ変わってゆく…というお話がセオリーです。
 で、この手の作品では、いかにその"訪問者"を自然に作品内の現実世界に取り込むかが大きな関門となるわ
けですが、この作品では若干の強引さが否めないものの、何とかギリギリでクリア出来ているように思えま
す。主人公のダメっぷりや、それを改善するための手段もなかなかよく練られています。このアイディアなら
連載化されても十分対応可能でしょう。巧いです。

 ただ、惜しむらくは主人公のライバルの設定ですね。ハッキリ言いますと、この作品はここで物凄く損をし
てます。ウチの評価で言うなら2段階以上の減点材料です。
 というのも、ライバルの器量と実力って大事なんですよ。主人公が乗り越えるハードルが高いほど、それを
乗り越えた時のカタルシスが大きいわけで、この作品のように、姑息なだけで実力の無い小悪人が相手だと、
主人公がそんな奴を乗り越えた所で全然爽快感が得られないんです。
 あと、『BOYS BE…』じゃあるまいし、学園の高嶺の花がアッサリと主人公に振り向くってのも、ちょっと
ご都合主義じゃないですかね。まぁ、あのシーンを無くしちゃうと作品として成立しなくなってしまうので、
難しいところではあるんですが……。

 評価はB+。設定を練りに練れば、ひょっとすれば連載で大化けする可能性のある作品ですが、現時点では
完成度が低いのが残念です。ただ、今の天野さんの実力で、その「設定を練りに練る」事が出来るのかと言う
と、ちょっと疑問なんですよね。今後の奮起に期待したいところなのですが……。


◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 今週も巻末コメントについて箇条書き形式で雑感。

 ・久保帯人さん…「ルキア強いなー」って、何を今更(笑)。でも、作家さんは案外読者の好きなキャラっ
て読めないものらしいですけどね。
 ・長谷川尚代さん…足が攣ったのは、年のせいじゃなくて運動不足だと思います…って、同じような事を少
し前にも内水融さんに言った気が(笑)。やっぱり週刊連載始めると引き篭り気味で運動不足になるんでしょ
うなー。
 ・冨樫義博さん…こんなところにも加治佐修さんの名前が! うーむ、神出鬼没だなぁ。これからもあちこ
ちの作家さんのコメントに登場したら面白いですね。


 ◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A-/雑感】 

 あー、いかん。この作品、楽しすぎる!
 「テイクアウト」の部分に精一杯の自己主張をするアルバイト店員さんに少し萌え(笑)。

 しかし今回は、カズキやその周辺の人たちの"ローカル常識"は、この作品世界の中でも常識の埒外にある事
が判明して少し安堵しました。一般人まで皆が皆、蝶野やキャプテン・ブラボーを平然と受け入れられても困
りますんでね(笑)。

 
 ◎『ごっちゃんです!』(作画:つの丸)【現時点での評価:B+/雑感】 

 函館商船大学の先輩の1人が、どうみても三沢光晴なのに爆笑。しかし、そこまで似せるなら、「ハッキリ
言って」とか「異様に」とかの口癖までパクって欲しかったなぁ。「アレ」だと長州力になっちゃいますよ、
縁起でもない(笑)。


 ◎『神撫手』(作画:堀部健和)【現時点での評価:B-/雑感】 
 
 うわー、凄ぇ分かり易いテコ入れ!(苦笑)
 こんな露骨なやり方、『旋風の橘』以来久々に見ましたね(笑)。
 しかしなぁ、この中途半端な絵柄でお色気路線やられても、セックスレスに悩む奥様がダンナの気を引くた
めにエッチな下着とスケスケのネグリジェを着て誘惑しているような感じで、逆に痛々しいんだよなぁ(苦
笑)。もっとエロを追求するのか、それとも寸止め感を追求するのか、どっちかにしてくれと言いたくなっち
まいますね。


 ◎『神奈川磯南風天組』(作画:かずはじめ)【現時点での評価:B/連載総括】 

 少しは粘ったんですが、敢え無く2クールで打ち切り。やっぱりこの人、長編連載になると脆いですよね
ぇ。

 結局のところ、この作品は確固たるテーマが不在のままダラダラと続いてしまったのがマズかったですよ
ね。なので、読者が作品世界に感情移入出来ないまま、いつの間にか終わってしまったと。
 最後のエピソードも、何だか敗戦処理感が滲み出ていて、ちょっと読むのも辛かったです、正直。
 最終評価はB-ということにしておきましょう。最後のページに「次回作にご期待下さい」の文言もありま
せんし、どうやら週刊本誌のかずはじめ作品はこれが見納めですかね。


◇駒木博士の読書メモ(11月第4週)◇ 

 ◎『ツバサ』(作画:CLAMP/「週刊少年マガジン」連載中)

 高校や大学で漫研やそれに近い部活に所属していた人ならばよく分かるでしょうが、その年代のマンガ家・
小説家志望の中には、筆力も無いのにやたら意欲だけが空回りしたヤツってのがいます。で、そういうヤツに
限って、必要以上にキャラクターや世界観の設定に凝りまくった、"(自称)独創的かつ壮大なスケールのフ
ァンタジー"を描き始めます。
 しかし所詮は力量不足のアマチュアの悲しさか、そういう作品の大半は途中で頓挫してしまうのがオチで、
よしんば描き上がって公募の新人賞に投稿されたところで、第1次選考でハネられて終わりです。何故なら、
その手の作品というのは、作り手側の思い入ればかりが強くて、読み手の意思を無視した自己満足に終始して
しまうからなんですね。
 『なぁゲームをやろうじゃないか』(作画:桜玉吉)の単行本2巻の中で、わざとそんな"独創的なオリジ
ナルファンタジー"が描かれているのですが、まさにアレがそんな感じですね。

 ……で、前置きが長くなりましたが、この『ツバサ』。この作品は、そんな"独創的かつ壮大なオリジナル
ファンタジー"を、プロとして水準以上の技量を持った作家さんがやってしまったモノです。しかも、本来な
らば一読の下で読み捨てられるようなクオリティに終わるはずが、プロの力業によって、とりあえずは"読め
てしまう"デキになってしまったという、極めてレアな作品なのです。
 ですから、これは俗に言う「駄作」とはちょっと違います。映画で言うなら、「根本的にダメな脚本を、豪
華キャストや演出で必死にフォローしよう頑張ったものの、結局は頑張りきれなかった準A級ハリウッド映
画」みたいな感じでしょうか。「ゴールデンラズベリー賞」にノミネートされそうな作品…と言えば分かり易
いですかね。駒木は以前から「この作品は『ラズベリーコミック賞』の候補です」と公言して来ましたが、ま
ぁそれはそういうわけなんです。

 作品の内容について具体的な"ダメポイント"を挙げるとすると、まずはキャラクターですね。
 名前と外見を他の作品から流用(パラレルワールドという設定らしいですが)するのは別に構わないんです
が、やり方が不味過ぎます。次から次へとキャラクターを出しまくったために、"ご新規さんは"キャラクター
の名前と顔が一致できないわ、"常連さん"は「え? このキャラがこういう設定?」と混乱するわで、せっか
くの試みが完全に裏目に出ているんですよね。
 また、登場人物が多過ぎるために、各キャラの描写が消化不良に終わってしまっています。見えて来るのは
作者の自己満足的"オリジナルな"設定ばかりで、ちっとも感情移入出来ないんですよね。

 またシナリオも、愛着のあるキャラを苛めきれないのか知りませんが、どうも起伏が緩くて平板なんですよ
ね。初めから主役ご一行様が強すぎて、シナリオ上に設定された"障害"が全然障害になってないんですよ。
 勿論、「ジャンプ」式の能力インフレバトルをやられても辟易するしか無いのですが、それでも"実質ゼロ
成長"では、シナリオを楽しめと言われても楽しめないわけです。ゲームでも、いきなり最強装備から始めた
ら、あっという間に飽きが来てしまいますが、それと同じですね。 

 そして、何よりも世界観や設定の諸々が、全然読者の感情移入を促す方向に働いていないんです。駒木の価
値観が歪んでいるせいなのかもしれませんが、この作品を読んでいると、つまらないアイドルタレントがつま
らない話をして一人で笑って、「これって面白くないですか、キャハハ」とやっている所を見ているような、
そんな錯覚を覚えてしまうんですよね。 

 ただ、繰り返して言いますが、これだけ致命的な欠陥を抱えていながら(そりゃそうです、本来なら新人賞
1次選考落選するような題材ですから)、一応は最後まで読み切れるだけの作品になっているのが恐ろしいと
いうか、何と言うか。同種の作品に『きみのカケラ』(作画:高橋しん)がありましたが、地力のある作家さ
んは、"負け戦"が確定してからも、実際に敗北宣言をするまでに長期間引っ張れてしまう分だけ、後から来る
ダメージも大きくて悲劇的ではありますよね。
 まぁCLAMPさんの場合は、並行して多種多様な雑誌での活動している分だけ、この失敗で喰らったダメージ
も分散出来てまだマシですよね。高橋しんさんなんて、「体調不良のため休載」とやってしまった以上、他の
雑誌で連載始めるわけにも行かず、エラい事になってますから(苦笑)。 

 『ツバサ』の評価ですが、作品全体のクオリティをデジタルに総合するとB-寄りBあたりになりますかね。
先に言った通り、単なる駄作では終わっていませんので、評価もそれなりのモノになります。勿論、読者の立
場としての「面白い、面白くない」は、また全然別の話になりますが。

 ……というわけで、今日のゼミはこれまで。本当はまだ「読書メモ」で採り上げるべき作品が残ってるんで
すが、それは次週以降の宿題とさせてもらいます。
 

 


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2003年第84回講義
11月13日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(11月第3週分・合同)
 
 ……気がついてみたら、1週間ぶりの講義になってしまいました。開講以来初。本当に申し訳ありません。
 講義をしていなかった1週間も、講義の内容は色々と練っていたのですが、プライベートでの多忙も重な
り、今一つまとまり切らずに時間だけが過ぎておりました。これが以前ならとにかく見切り発車で講義を開始
していたのですが、さすがに2周年ともなるとモチベーション維持も辛くなっている我が身を痛感します。
 今後は、ボリュームは小さくとも、可能な限り週2回は講義を実施するよう心掛けますので、どうか何卒。
講義休止中も毎日来校下さった3000人以上の皆さん、申し訳ありませんでした。

 ──それでは、無理矢理気を取り直して今週のゼミを始めましょう。まずは情報系の話題から。「週刊ジャ
ンプ」の月例新人賞・「十二傑新人漫画賞」9月期の審査結果発表がありましたので、こちらでも受賞者等を
紹介しておきます。

第6回ジャンプ十二傑新人漫画賞(03年9月期)
 
 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=該当作なし
 十二傑賞=1編
 ・『ストリンガー』(=本誌か増刊に掲載決定)
  田中顕(27歳・東京)
 《村田雄介氏講評:今回の応募作品の中では一番"揺ぎ無い主人公像"が描けている。見開きや雑誌面のよう
な演出も効果的》
 《編集部講評:写真で悪人を倒すアイディアが面白い。だが展開が早すぎるために、その爽快感があまり伝
わらないのが難点。作品を客観視し、意図を判りやすく、効果的に伝える工夫が必要)
 最終候補(選外佳作)=5編
  ・『One Summoner』
   高岸彰(24歳・埼玉)
  ・『LOVE IS! BATTLEFIELD』
   鬼団子(19歳・大阪)
  ・『からくり地蔵』
   船津雄史(19歳・大阪)
  ・『サンタクロース物語』
   門脇由(17歳・鳥取)
  ・『ストリゴイ』
   佐野正明(22歳・愛知)
 

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご
指摘下さい)

 ◎十二傑賞の田中顕さん…「週刊少年サンデー超増刊」01年9月号より『スクープ!』(原案:池上正樹)
を短期連載の経験あり。
 現在、村田雄介さん(今回の審査員!)のスタジオでチーフアシスタント。また、『ろくでなしBLUES』連
載時から森田まさのりさんのスタジオで、『ARMS』連載時には皆川亮二さんのスタジオでもアシスタント。
 ◎最終候補の船津雄史さん…01年5月期&02年3月期&03年3月期「天下一漫画賞」で最終候補(今回4度
目の最終候補)


 ……今回最高評価を獲得してデビューの権利を掴んだのは、アシスタント歴(最低でも)7年以上、しかも
月刊連載経験もアリという異色のキャリアを持つ田中顕さんでした。
 しかし今回気になるのは、受賞者が審査を担当したマンガ家のチーフアシスタントという事ですよね。とん
でもなく密接な人間関係です(苦笑)。実際のところは判りませんが、あまり見ていて気持ちの良い話ではあ
りませんねぇ、これは。
 元々「ジャンプ」の月例賞は、その受賞者の多くが既に担当もついている人だったりしますので、公募の新
人賞と言うより内輪のコンペテイションを公開でやってるようなモノだったりします。ただ、さすがに受賞者
が審査員のチーフアシというのは……。まぁもっとも、この件で一番可哀想なのは、外野から邪推の対象にさ
れてしまう田中さん本人なんですが……。

 せめて編集部サイドも、審査員のアシスタントの作品は翌月回しにするとか、その位の配慮があって然るべ
きだと思います。実際に審査結果が人間関係に左右される事が有るのか無いのかは別にして、「コネで受
賞?」と受賞者が疑われてしまう風評被害だけでも防止する必要があると思います。(それとも、こんな考え
を抱くのは駒木だけでしょうか^^;;)

 ──次に読み切り等の話題を手短に。
 まず、「週刊少年ジャンプ」の次号(51号)には『家庭教師ヒットマン REBORN』(作画:天野明)が掲載
されます。作者の天野さんは「週刊ヤングマガジン」系列の雑誌で短期連載も経験した"中途採用組"の若手作
家さん。「ジャンプ」系列では今年の「赤マル」春号以来2度目の登場となります。
 「週刊少年サンデー」では新連載・読み切りの情報はありませんでしたが、早めの年末進行突入で今週号が
合併号のため、次号の発売は2週間後になります。購買読者の受講生さんは、どうぞお気をつけて。


☆「週刊少年ジャンプ」2003年50号☆

 ◎読み切り『KING CRIMSON』(作画:西公平)

 今週の読み切りは、これが1年5ヶ月ぶりの登場となる西公平さん。毎週のように読み切りが掲載される
「ジャンプ」でも、こうも"順番待ち"の若手・新人さんが多いとなると、なかなか再登場もままならないよう
ですね。
 「赤マルジャンプ」ですら、掲載を賭けたプレゼンにも相当数の作品がエントリーされると聞いた事があり
ますし、西さんのように本誌に複数回読み切りを載せられるだけでも、まだ恵まれている方なのかも知れませ
ん。

 そんな西さんは、この秋でデビュー3年目に突入したばかり。00年9月期の「天下一漫画賞」で最終候補に
残って"新人予備軍"入りした後、受賞歴の無いまま「赤マル」01年夏号でデビュー。その後、「赤マル」同年
冬号にも作品を発表、そして翌02年31号で初の本誌進出を果たしました。
 ここまでは順調な"出世"を果たして来たのですが、残念ながらそのチャンスを連載獲得に活かす事が出来
ず、今週に至るまでの長いブランクを経験する事になってしまいました。なお、現在は『神奈川磯南風天組』
連載中のかずはじめさんのスタジオでアシスタントをしているようです。(今号のかずさんの巻末コメントに
て確認)

 ……では、作品のレビューを。

 絵に関しては、「若手作家さんとしては」という限定付になるでしょうが、及第点はつけられるでしょう。
一部で「『H×H』のようだ」と言われた白っぽい画風も、決して手抜きではありませんので、これで良いと思
います。
 ただ、集中線の使い方がマズいのでしょうか、「ここが見せ場!」というコマに限って動きや迫力が感じら
れず、何だか止め絵っぽく見えてしまった場面が多々有りました。これは残念でしたね。
 また、今回は話の性質上仕方ないのですが、魅力的な女の子キャラもデザイン出来るようになってもらいた
いところです。(この先ずっと横山光輝『バビル2世』的な超硬派路線で行くと言うなら別ですが……)

 ストーリー・設定では、「意識して「ジャンプ」の王道路線のアンチテーゼを目指すぞ」…という意欲的な
試みが成されていて、これは興味深いです。

 今年の「赤マル」夏号レビューの際にも指摘しましたが、実は「ジャンプ」の(特に若手・新人さんの)読
み切りには一種のフォーマットのようなものがあり、大半の作品はそれに乗っかってプロットが作られていま
す。
 具体的に説明すれば、こんな感じですね。

冒頭:モノローグで作品世界の大雑把な紹介等があり、次の見開きで扉絵とタイトル。
     ↓
序盤:"掴み"になるような"事件"発生、それが一段落ついた後には、ギャグ等も交えながら、キャラクターと
世界観の設定説明がしばらく続く。
     ↓
中盤:ところが平和な一時もここまで。先の"事件"よりも深刻かつ、作品の核となる"大事件"が起こって一気
にクライマックスへ。
     ↓
終盤:主人公、又は主人公の身近な人物が命の危機に晒されて大ピンチ。敵役、得意の絶頂。しかし、そこか
ら何らかのきっかけで主人公が一気にパワーアップ(超サイヤ人化)し、一気に問題が解決。
     ↓
エピローグ:基本的には大団円。しかし、カッコよく決めた主人公が最後の最後でズッコケて、これがオチに
なる。
 

 ……まさに王道、まさに起承転結といった感じですね。このフォーマットを使うと、どんな出来の悪い作品
でも流し読む分には"読めて"しまうので、特に「絵は上手いがストーリー考えるのは苦手」という若手・新人
さんに重宝されています。
 ただ、それはぶっちゃけ「グダグダのシナリオを誤魔化しているだけ」だったりしますので、このフォーマ
ットはある意味「駄作製造機」になっていたりするのです。もっとも、このフォーマットをベースに独自色を
出して成功している実力派作家さんも多数いらっしゃるので、一概に悪いとは言えないんですけどね。

 ──で、この『KING CRIMSIN』では、このフォーマットが、完全にとまでは言いませんが、かなりの部分
で無視されているんですよね。特に"終盤"では安直な「大ピンチ→超サイヤ人化」を全く使わず、それどころ
か主人公サイドが全くピンチに陥らないままで、読者にカタルシスを与える事に成功しています。これはナニ
ゲに凄い事だったりします。
 また、主人公の設定も非常に巧みです。根っからのアンチヒーローでありながら、"絶対的な強さ"という要
素で読者に魅力を感じてもらえるような工夫が成されています。最後に正義感を少しだけ萌芽させて救いを持
たせるのも憎い演出ですね。(ただ、『こんなやつの血で刀を汚す必要はない』は少しやり過ぎだと思います
が)

 ただ惜しむらくは、1年5ヶ月前の前作にも見られた、ストーリー展開の強引さが未だ改善されていない点
でしょう。
 まず序盤で不良相手のケンカと兵法を結びつけたのもかなり強引ですし、終身刑以上の罪人が子供にホイホ
イと従う所に至っては相当な無理があると言わざるを得ません。また、敵役が余りにも簡単に主人公・一徳の
平凡な兵法にハマってしまうのも、ややご都合主義ではないかと思われます。
 これらの失策のため、せっかくの絶妙なプロットやキャラクター設定が上手く活かせずに終わってしまいま
した。非常に勿体無いと思います。今後はプロットからネームに落とし込む時に、もっともっと練りこんで欲
しいところです。

 評価は非常に迷うところですが、短所が長所を上回ってしまっている…と見なしてB+にしておきます。個
人的には、"王道フォーマット"を無視しているという時点でかなりポイントが高いんですが、こればかりは仕
方ありませんね。その分、次回作に期待したいと思います。

 

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 今週から時間の許す限り「ジャンプ」でも巻末コメントについて雑感を少々。箇条書きで失礼。

 ・澤井啓夫さん……駒木の経験上、喫煙率の高い職場は労働条件が過酷である確率が極めて高いのですが、
やはりここのスタジオもそうなんでしょうか?(笑)
 ・稲垣理一郎さん……連載1年にして初の栄養ドリンク(しかも効き目弱いヤツ)というのは健全すぎて凄
いですね。大抵の作家さんはユンケル中毒、エスタロンモカ中毒だったりするんですが。分業制は作者の健康
維持にも貢献するようですね。
 ・つの丸さん……アシスタント募集に関する御礼ですか。と言う事は、「アシスタント新規採用=連載まだ
まだ続行」という判断で良いんでしょうかね。
 ・武井宏之さん……う~む、加治佐修さんの居酒屋ぶっちゃけ発言が聞いてみてぇ(笑)。
 ・内水融さん……辞書的な意味で冷徹に判断すればするほど、あなたの作品の掲載位置は打ち切り濃厚なん
ですが(涙)


 ◎『いちご100%』(作画:河下水希)【現時点での評価:B/雑感】

 皆さんが注目したであろう、新キャラ・ちなみの"あざとさハイパーインフレ"は敢えて放置。それよりも文
化祭で上映した映画のストーリーが知りたい駒木だったりします(笑)。だって凄く面白そうじゃないです
か。いや、河下さんも全く考えてないと言う事は薄々判ってますけれども(苦笑)。


 ◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A-/雑感】 

 恥ずかしながら、今回は読んでる最中、ずっと顔がニヤケっ放しでした。斗貴子さん、苦手のギャグ部分で
大活躍! ブラボー!
 しかし、「ののしって下さい!」/「このブタ野郎 !!」のコンボにはシビれたなぁ(笑)。「僕にも『ブ
タ野郎』とののしって下さい」と言い出したヤツが全国で1万人はいるはず。いや、駒木は言いませんよ?
 ストーリーの方は、まさに怒涛の展開。一見安易に見えた蝶野(孫)の蘇生は、カズキの錬金戦士エントリ
ーの動機付けに繋がってたんですね。ここからどう見せていくのか、純粋に楽しみです。


☆「週刊少年サンデー」2003年50.51合併号☆

 巻末コメントのテーマは、「自分で法律が作れるなら、どんな法律を作りますか?」。
 答えがバラけるかな……と思いきや、「1週間を8日に」という"週刊連載締め切り延長法案"が雷句誠、青
山剛昌、福地翼の3氏から提出されました(笑)。似たようなニュアンスの法案もいくつか出されており、や
はり週刊連載最大の敵は、アンケートでも編集者でもなく締め切りである事をヒシヒシと痛感してしまいまし
た。
 しかし、恐れながら申し上げますが、今でも締め切りに追われている人は、1週間を8日にしようが10日に
しようが、また必ず締め切りに追われると思います(笑)。えぇ、人間ってそんなもんですよ。
 駒木の希望する法案は、やはり「ギャンブル全面解禁」でしょうかね。少なくとも公営ギャンブル関連法の
「学生・生徒・未成年者は投票券の購入・譲受が出来ない」という憲法違反の条文はどうにかしたいところで
す。

 
◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A-/雑感】

 ミウラさんとベリ子のキスシーンを目撃した皮村の発想の飛躍し具合が、まさにリアル男子高校生そのもの
で大爆笑でした。「どいつもこいつも、陰ではヤリまくっとんやー!」みたいなね(笑)。
 ここでは何度も言っていますが、本当にモリさんって高校生キャラ心境描写は天才的に上手いですよね。た
とえそれがこのマンガのクオリティに直接には結びついていないとはしても(笑)。


 ◎『結界師』(作画:田辺イエロウ)【第1回掲載時の評価:A/雑感】 

 先週の第3回後追いレビューで、「主人公が甘党だという伏線が張られていない」と言ったんですが、その
後受講生さんから「卵焼きが砂糖入りの方が好きだったり、メシと一緒にコーヒー牛乳飲んだりしてますけ
ど?」……というご指摘を頂きました。確かにそうですね(苦笑)。
 しかし、見落としてた人間が言う事じゃ無いですが、それをキャラ付けに発展させるなら、もっと極端な演
出をするべきだと思うんですよね。先週にも同じような事言いましたが、コーヒー牛乳にガムシロップをドボ
ドボかけるとか、砂糖入り卵焼きに更に砂糖をまぶすとか、そこまでしてようやく読者全員に気付いてもらえ
ると思うんですが、どうでしょうか。


 ◎『モンキーターン』(作画:河合克敏)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 キター! 河合"ムッツリスケベ"克敏流・寸止めセミヌードキター!
 その上、回りくどく波多野と接触する理由を探す青島さんにメチャ萌えであります。こういう男好きのする
葛藤(笑)を、ファンサービスも兼ねてアイドルキャラに裸で独白させるというのは、さすがとしか言いよう
がありませんな!(←何を興奮してんだ)


 ……というわけで、今週のゼミは以上。最後がアレですが、目次の順番でチェックポイントを採り上げてい
るので気にしないように。
 来週は「サンデー」が合併号休みですから、「読書メモ」でもやってみましょうか。ボチボチとご期待を
ば。
 

 


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2003年第83回講義
11月6日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(11月第1~2週分・合同)
 
 今年も早いもので11月に突入。今月末には当講座も開設2周年になるわけですね。我ながら(呆れる意味
で)よくやったもんだと思いますが、これもひとえに受講生の皆さんのお蔭です。改めまして今後とも何卒。
 で、"周年記念"となると、当然やらなくてはいけないのが「仁川経済大学コミックアワード」。昨年に引き
続き、今年もこの"世界で最も権威もヘッタクレもないマンガ賞"を実施予定です。まだ構想段階ですが、今回
からは部門賞の数も増やし、より内容の濃いイベントにしたいと考えています。ご期待下さい。

 ──さて、ではゼミを始めましょう。まずはいつも通り情報系の話題から。今週は「ジャンプ」の読み切り
情報が入っていますので紹介しましょう。
 「週刊少年ジャンプ」の次号(50号)に掲載されるのは『KING CRIMSON』(作画:西公平)。西さんはデ
ビュー3年目の若手作家さんで、02年31号以来の本誌登場となります。それ以来、何人も連載レヴェルの有望
若手・新人作家さんが登場していますし、西さんとしては"先輩"として負けられないところでしょう。新作の
出来に期待したいところです。

 なお、「サンデー」関連の情報で、特にここで採り上げるべきモノはありません。ただ、今年分下期の「新
人コミック大賞」の1次選考結果発表が掲載されたり、早くも来週から合併号だったりと、年の瀬を感じさせ
るあれやこれやが見受けられたのが印象深かったですね。

 …それでは、今週もレビューとチェックポイントをお送りしましょう。今週は新作の掲載が無く、「サンデ
ー」の新連載第3回後追いレビューが1本のみという、少し寂しい内容になりますが、その分チェックポイン
トでいくらか補完できれば…と思います。


☆「週刊少年ジャンプ」2003年49号☆

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 今週は巻末コメントが"豊作"でしたね。作品が行き詰まった上に担当交代でぶっ壊れ、井上和郎さんの作品
世界に迷い込んでしまったような人とか、車上荒らしを捕まえて自分がハンターになってしまった人とか、娘
が『ボーボボ』のサービスマンのモノマネをするようになったのを真剣に悩む父親とか、下手な読み切りより
も面白かったような気が(笑)。でもまぁ、息子ならまだしも娘が「サービス!」ってやらかした日にゃ、確
かに気が気じゃないですよね。
 あ、あと少食になっても体重が減らないという内水融さん、原因は運動不足だと思います。余った時間で踏
み台昇降など如何でしょうか。


 ◎『NARUTO』(作画:岸本斉史)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 

 ちょっとここ数回、個人的には不満が残るんですよね、この作品。
 というのも、敵がわざわざ最弱の刺客からよこしたり、わざわざ手加減状態から戦い始めたり、更には敵が
それを後になっていちいち言い訳したり…って、コレって20年以上前の「ジャンプ」セオリーじゃないですか
(苦笑)。駒木、『キン肉マン』のキン肉マンVSステカセキングの辺りを思い出しちゃいましたよ(笑)。
 まぁ王道と言えば王道なんですが、もうちょっとヒネっても良かったんじゃないかと思うんですが。普段か
ら期待している作品だけに尚更そう思ってしまいましたね。

 
 ◎『HUNTER×HUNTER』(作画:冨樫義博)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 

 いやー、それにしても電波な人の描写をさせると上手いですなぁ、冨樫さん。喫茶店でコーヒー飲みながら
会話させるだけで、そのキャラがどれだけ異常か判るようになってるってのは、やっぱり凄いですよ。良い作
品っていうのは、こういう技術の積み重ねから出来上がるもんだとしみじみ思います。
 で、巷で話題のネフェルピトーが開発しようとしてる"修理"の力。一見、「ジャンプ」王道の"ドラクエ式
蘇生路線"導入を思わせる話ではあるのですが、冨樫さんの作風から考えると、どう考えても一筋縄ではいか
ない気配が(苦笑)。そもそも、生き返すのが目的じゃなくて、何度でも殺すのが目的なんですから、それを
考えただけでも"黒い"ですよね。
 しかし驚いたのは、ネット界隈の論調を俯瞰してみても、既に「ただ生き返すだけとは思えない」という意
見が主流になっている事。ようやく冨樫さんの思惑が読者に浸透しつつあるようですね(笑)。


 ◎『いちご100%』(作画:河下水希)【現時点での評価:B/雑感】 

 この期に及んで第5のヒロイン登場。どうやら唯の二軍降格に伴う人事のようで、駒木はショボーンです
(苦笑)。でもまぁ、とりあえずの打ち切りは逃れたと言う事なんでしょうから、お喜び申し上げなくてはな
りませんか。
 で、今度の名前は端本ですか。真中の対極として端本…ということなんですね、きっと。個人的には東南西
北に続く三元牌シリーズ(白発中で、中は真中)を期待していたのですが、残念でした。
 

 ◎『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(作画:秋元治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 

 確かに深夜とかCS放送ならウケそうです、「冥曲ノ調」。現実にマンガのようなコアなチャレンジャーが集
結するかは別にして。
 ところで、以前は確かに「民放各局で放送を自粛すべき曲(=要注意歌謡曲)リスト」という意味での放送
禁止歌というものはあったんですが、最近は解禁傾向にありますよね。かけた瞬間に抗議が殺到するような曲
でない限りは、ほぼフリーパスになりつつあるようです。(とは言え、ゴールデンからプライムタイム辺りで
は「金太、マスカット切る、痛そう」あたりからアウトになりそうですが)
 この流れで嬉しかったのは、カラオケでも放送禁止歌が歌えるようになった事ですね。例えば、なぎら健壱
の『悲惨な戦い』とか。この調子で、映画スター時代の梅宮辰夫が若気の至りで出した『シンボルロック』と
かも解禁になってもらいたいもんです。


☆「週刊少年サンデー」2003年49号☆

 ◎新連載第3回『結界師』(作画:田辺イエロウ)【第1回掲載時の評価:保留】 

 「サンデー」で今年開始の新連載3本が掲載順ワースト3を独占する中、そろそろ身の上がヤバくなって来
た編集長派社員の皆さんも期待する(?)、新鋭・田辺イエロウさんの新連載・『結界師』が第3回を迎えま
した。お約束通り、後追いレビューを実施します。


 ──それにしても、この作品は隙が無いですねぇ。敢えて回を改めて採り上げなくてはならないようなポイ
ントが見当たらなくて困ってしまいます(苦笑)。
 絵にしても、全くクオリティが落ちていませんしねぇ。また、単なる画力だけじゃなくて、コマ割の構成も
十年選手のように手馴れているのが末恐ろしいです。むしろ手馴れが過ぎて画面が淡白になり、逆にそれで損
しているぐらいかも知れません。
 ストーリー面にしても、丁度痒いところに手が届くというか、展開の緩急のつけ方が絶妙なんですよね。読
者が刺激を求め始める3回目から数話完結型に移行したりとか、ちょっとミステリ風味を絡ませて次週への"
引き"まで上手くまとめるとか。この辺の感覚が天才的なのか、それとも良い担当さんやブレーンに恵まれて
いるのか、そのどちらともなのか、いずれかでしょうね。
 ただ惜しむらくは、伏線の使い方が苦手なのか、新しい設定を提示する際に、どうしてもとってつけたよう
な感じになってしまう所でしょうか。例えば主人公・良守が超甘党なんて部分は、前2回でいくらでも伏線を
張る機会があったと思うんですよね。学校で食う昼メシを大量の菓子パンにしたりとか、休み時間にチョコレ
ート食わせたりとか。キャラ設定を立てる時に、あらかじめそういう"遊び"の部分を作っておけば、いくらで
もストーリーの導入に使えたと思うんですが。 

 ただ、全体的に見れば、この作品は(少なくとも現時点では)十分秀作の範疇に入ると思います。評価はA
-寄りA。
 勘案すべき問題としては、最近の「サンデー」の新連載が、どれもこれも回を追うごとにヘタれていく傾向
にある事くらいでしょうか。特に最近に『ダイキチ』がフリーフォールしたばかりですので、ちょっと心配で
す。今回のエピソードはまだ良いとして、この次のエピソード辺りが今後を占うカギになって来そうですね。


◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントのテーマは、「ストレスが溜まってきたら何をしますか?」。
 一見して良い質問だと思ったんですが、それ以上に難しい質問だったようで、作家さんたちの回答は抽象的
な答えでお茶を濁すかボケに回るかに分かれてしまいました。まぁ、あだち充さんの「溜まるたびに何かして
たら仕事になりません」というのが正鵠を射ている気がしますね。
 駒木の場合は、やはり「麻雀を打つ、又は普段やらないギャンブルをする」と「格闘技の生観戦をする」で
しょうか。これをダブルでやって、しかもギャンブルでプラス収支になった日には、ストレスなんか初期状態
に戻っちゃいますね(笑)。あと最近は「東京へ貧乏旅行へ行く」が加わりましたか。あ、でもやってる事は
一緒だな(笑)。
 でも、一番ストレスが溜まっていたであろう去年の今頃は、貧乏暇ナシでそれどころじゃなかったんですよ
ね。確かあの頃は「甘い物+コーヒー大量摂取しながら読書」で代用してたのかな。そりゃ、踏み台昇降で5
~6kg絞れるくらい太るわな。


 ◎『モンキーターン』(作画:河合克敏)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 やはり「特報」はアニメ化決定のニュースでしたね。しかし、紹介されたアニメ版のキャラデザインは……
(涙)。何か、何か顔の輪郭がみんな変だよぅ……

 そしてマンガ本編では"女の戦い"ついに決着。ナニゲにこの作品の中でも屈指の名勝負だったような気がす
るのは駒木だけでしょうか。まぁ何はともあれ、青島優子選手、優勝&SG出場決定オメデトウございます。つ
いでに、ペア旅行の権利を獲得した3着の櫛田千秋選手もオメデトウございます(笑)。
 しかし、優子&クッピー先輩の海外旅行って、いかにも珍道中になりそうなんで、是非見てみたいところで
す。河合さん、単行本巻末のオマケ企画とかでやってくれないもんでしょうか。


 ◎『うえきの法則』(作画:福地翼)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 

 今週の内容はスッキリしていて、それでいて読み応えもあって良かったと思います。こういう展開なら、ず
っと応援したくなるんですけどね、この作品も。
 せめてもうちょっと例の、「あーなってこーなってこうだ!」系バトルが影を潜めてくれれば良いんです
が、それやっちゃうと、もはや『うえきの法則』じゃなくなっちゃいますからねぇ。 


 ◎『売ったれ ダイキチ!』(作:若桑一人/画:武村勇治)【現時点での評価:保留中/解説など】 

 3週に渡って続いたカシノ編も終了。最後まで、現実感皆無のストーリー展開でしたね。特に最後の「風が
吹くかどうかの確率は1/2」って、何ですかそれ? 

 あと、博識な皆さんは既にご存知でしょうが、現実世界ではルーレットの出目をコントロールできるような
ディーラーは存在しません。というより、そんな技術は全く使い道が無いので、身に付けよう思うディーラー
さえほとんど存在しないはずです。
 だって考えてみて下さい。出目を自由に操れるディーラーがいるカシノで大金を賭けるバカがいると思いま
す?(笑) カシノに利益が出るどころか、「あそこでルーレットは賭けるな」って風評が伝わって、たちま
ち閑古鳥が鳴いてしまいますよ。ですから、もし奇跡的に出目を操れるスキルを持てたとしても、その瞬間、
そのディーラーは永遠の失業が確定してしまうのです。
 カシノを運営する側、そしてゲームの進行を担当するディーラーが最も気を使う事は、"ゲームの公正確保"
と"悪質な客の見極めと管理"です。また、それがカシノ側にとっても、客の側にとっても一番望ましい事なん
ですよね。

 ……しかし、本当にこのマンガってトンデモ系に針が振れちゃったんですね。連載当初のノリなら、ここは
確率論に基づいたギャンブルの攻め方をネコ先生が講義するような形になったと思うんですが、いやはや。 


 ……というわけで、今週のゼミを終わります。
 ところで、今週辺りから再来週前半まで身辺が慌しくなりますので、あまり頻繁に講義が出来なくなると思
います。ご了承を。
 

 


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2003年第81回講義
10月31日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第5週分・合同)
 
 今週は久々にレビュー対象作ゼロか…という感じでしたが、ネット界隈のネタバレ情報の通り、『スピンち
ゃん』が本誌再登場となりました。
 しかし謎なのが、代原でもないのに前号の「次号予告」で告知が無かった事ですよね。これまでは、取材休
み分穴埋めのための"準代原"でもキチンと告知がされていたんですが……。
 ひょっとして、『風天組』の取材休みが急遽決まってしまい、次号予告の締め切り時点では掲載作品が決ま
ってなかったとか……? 『スピンちゃん』作者の大亜門さんによる巻末コメントも大人の事情を匂わせるモ
ノでしたし、そんなドタバタ劇が起こった可能性もゼロじゃないと思うんですが、どうなんでしょうか。

 さて、それでは情報系の話題から……なんですが、先週に引き続いて今週も確定情報は無し。ちょっと寂し
いですね。
 ただ、「サンデー」次号予告にあった、『モンキーターン』の"スーパー特報"予告は、どうやらアニメ化の
告知になりそうですね。ちょっと前にスポーツ新聞でフライング情報が流れていたこともありますし、多分間
違いないと思います。これで「"純"、痛恨のフライングでパパに!」とかだったら、それはそれで大爆笑なん
ですけど。
 ……しかし、このマンガ、主人公の憲二はもう25歳なんですが、結構モテるクセに全然その手の出来事があ
った雰囲気を感じられないのは、直接的なエロ表現はご法度の河合克敏作品(笑)だとしても、さすがに不自
然な感じがしますよね。まぁ、悪い先輩に色々な遊び場に連れ回されている情景は容易に目に浮かぶので、そ
の道のプロのお姉(以下自粛)。


 ──などと、つまらない事を言ってないで、レビューとチェックポイントへ参りましょう。先に述べました
が、今日のレビュー対象作は「ジャンプ」からの"準代原"読み切り1本のみです。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年48号☆

 ◎読み切り『超便利ロボスピンちゃん』(作画:大亜門) 

 「赤マル」春号の2本立てで颯爽とデビューした『スピンちゃん』も、細かくタイトルを変えつつも今回が
本誌2回目・都合3回目の登場。前回の登場から2ヶ月しかたってませんし、読み切りって感じがしません
ね。
 で、そういう事情もありますので、作者の大亜門さん("大"が苗字で"亜門"が名前みたいです。
『BASTARD!!』の登場人物・ダイ=アモンの当て字でしょうか)のプロフィールは、9月2日付講義での前作
『超便利マシーンスピンちゃん』のレビューを参照してもらう事にして、今回は割愛させて頂きます。 

 それでは本題へ。しかし、今回の作品は果たしていつ描かれたのか判らないので、前作との比較対照がし難
いですね(苦笑)。下手すりゃ前作執筆前に描かれた原稿かも知れませんし、ここは「前作に比べると」云々
という言い方は止めた方が良いかも知れません。

 そう言った事も踏まえながら、まずは絵についてから。普段は「ギャグマンガにしては許容範囲だが改善の
余地アリ」という感じで素っ飛ばしていますが、今日は少し詳し目に述べる事にしましょう。
 1コマ1コマ丹念に眺めてみますと、とりあえず感じるのは作者のスピンちゃんに対する愛情ですね
(笑)。まぁ笑いをとる手段として、という意味合いもあるんでしょうが、他のキャラクターと比べると表情
の変化などの描き込みが全然違います。「どんな社会性のないダメ人間でも、ロボットと小さい女の子は大好
きですから」というセリフは、作者が読者経由で自分自身へ向けて放った、ブーメランのようなセリフなので
しょうか。
 ただ、そうなると他のキャラクターの描き方が物足りなく感じてしまうわけで……。特に12ページ目の5コ
マ目のような、同じコマで表情の変化を表現する所などには、まだまだ技術が不足している所が露呈されてい
ます。
 また、画力不足によって絵が全体的に止め絵っぽく見えてしまうのも、今後の改善の余地でしょうね。部分
部分では動的表現も出来ているのですが、さりげない会話シーンなどで口を止めたまま喋っているように見え
てしまうのです。作者本人もそれを判っているようで、意識的に正面を向いて喋るシーンを少なくしたりして
いるのですが、そういう"逃げ"の姿勢は余り好ましくないですね。
 代原作家スタートでせっかくここまで頑張ったのですから、来るべき連載獲得に向けて、もうちょっと画力
の向上を目指してみては如何かと思うのですが……。

 しかし一方、ギャグについては、ほとんど文句のつけようのない良いデキになっています。連載作品級で
す。完全に主役級の3人(スピン、じいさん、透瑠)のキャラを掴んでいるようで、今後もネタ切れの心配も
無さそうですし、既に熟練の域に達しようとしています。また、ギャグの"命"である間も絶妙で、相変わらず
高いセンスを窺わせてくれますね。
 それに加えて今回は、「違和感で笑わせる」という、ギャグにおける基本というべきスタンスから出て来た
ネタ(簡単に言えば"ベタ"なネタ)を中心にまとめられており、非常に好感が持てます。「ジャンプ」の旧作
からのマニアックネタも良いんですが、やはり元ネタを知らないと素直に笑えないギャグというのは諸刃の剣
ですからね。
 ただ、惜しむらくは今回も最後のオチが弱かった事でしょうか。ラストが決まるか決まらないかで印象度が
大分違ってくるはずですので、ここはもっと力を注いで欲しいポイントです。

 評価は少し甘いかも知れませんが、今回もA-ということにしておきましょう。これだけの作品、もうボチ
ボチ連載化も考えないと、ちょっと可哀想な気もします。もう少し画力がついたらゴーサインを出しても良い
んじゃないでしょうか?

 

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 今週の掲載順、『BLACK CAT』の直後に『HUNTER×HUNTER』ですか。ほんの数ページ差でシビアさ違い過ぎ
ですがな(苦笑)。
 最近は『NARUTO』や『武装錬金』もシビアな命の遣り取りを展開していましたが、やはりこういうシーンっ
て、作者の個性と言うかポリシーのようなモノが一番ハッキリと現れますよね。 

 ◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A-/中間まとめ】  

 今回で第1エピソード・"蝶野編"が終了。分量的には、これでピッタリ単行本2巻分になるんでしょうか?

 それにしても、自他共に認める"ハッピーエンド至上主義者"の和月さんらしく、カタルシス十分のエンディ
ングでしたね。"ラスボス"の蝶野攻爵にまで救いを与えて、主人公側の主要キャラには犠牲者ゼロ。ハリウッ
ド式エンターテインメントの王道ですね。
 あと、今回のラストシーンですが、本来なら「斗貴子さんが助かるかどうか」という部分にスポットを当て
がちなんですが、どうせミエミエの展開になるなら…と、敢えて先にハッピーエンドを確定させたのが成功で
したね。これで読者が何の邪念も無くカズキに感情移入する事が出来るようになりました。さすがです。

 さて、以前お約束した通り、"蝶野編"終了時点での中間暫定評価をしておきましょう。
 世界観やキャラクターの設定は文句無しの満点レヴェル。先述したラストシーンも大変素晴らしいです。た
だし、戦闘シーンが冗長であること──最後の蝶野との戦闘シーンを大幅カットするなどして改善の兆しが窺
えますが──と、ギャグの挟み方がやや過剰過ぎ、肝心なシーンでの緊張感を欠いてしまった…などの問題点
もあります。
 結局はそれらの長所と短所、どちらを重く見るかという話ですが、当ゼミとしては「長所の素晴らしさが短
所を何とかフォローしている」という見解のもと、A-の評価を出す事にしました。ただしこれは作品の持つ
ポテンシャルからすれば最低ランクの評価であり、今後短所が改善された場合は大幅な評価アップをする余地
も残されています。なので、この作品については今後も"要観察"ということにしておきたいと思います。

 
 ◎『ごっちゃんです!!』(作画:つの丸)【現時点での評価:保留/現時点での評価確定】  

 さて、こちらもどういった作品かが固まって来たようですので評価を出しておきましょう。
 全体的には、派手さは無いものの、ソツの無いスポ根マンガに仕上がっていると思います。この辺は、『み
どりのマキバオー』時代に鍛えられた重厚なストーリーテリング力が、今なお活きているということなのでし
ょう。『マキバオー』の後、短期打ち切りが続いたにも関わらず、根強いファンが多く残っていると言うのも
この辺に理由があるのかも知れませんね。
 しかし、この作品のネックは主人公の"ごっちゃん"こと後藤で、彼だけが作品の世界観から完全に浮き上が
ってしまってるんですよね。まぁ、ここで正統派の熱血系主人公を配置したらしたで、今度は平凡なだけのス
ポ根になってしまうので難しいところなんですが……。ホント、つの丸さんという作家は、自分から敢えてハ
ンデを背負うのが好きですよね。 

 ……そういうわけで、まとめです。基本的には地味ながら重厚なストーリーを評価できるものの、主人公の
設定に大きな構造的欠陥を抱えている…ということで、評価B+としておきます。 


  

☆「週刊少年サンデー」2003年48号☆ 

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントのテーマは、「住んでみたいと思う国」。
 圧倒的支持を受けたのは日本でした。皆さん現実的過ぎ(笑)。まぁ気持ちは判りますけどねー。日本に住
んでいるけど、気の向いた時に海外へ行って長期滞在も……っていうのが一番の理想かも知れません。ただ、
日本は税金高いですよね(苦笑)。登記上の本社はグランドケイマン諸島に……って、それはソフトバンクBB
のダミー子会社でしたか(笑)。


 ◎『金色のガッシュ !!』(作画:雷句誠)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 

 作品最強のギャグメーカー・ナゾナゾ博士&キッドが一転して感動の嵐の中、永遠の別れ。
 こういうシーンを見ていると、雷句さんは"泣かせ"のテクニックをデジタルに理解しているんだな…とつく
づく思いますね。読者の喜怒哀楽を自由自在に操れるっていうのは正に天賦の才能だと思います。最近、やっ
とこの作品がクオリティに見合った評価をされるようになって、駒木個人としても嬉しく思いますね。 


 ◎『売ったれ ダイキチ!』(作:若桑一人/画:武村勇治)【現時点での評価:保留中/解説など】 
 
 先週に引き続いて、デジタルな観点からギャンブル講座を。 

 今回出て来た、「ルーレットで6回赤が出た後に、もう一度赤が出て7連続になる確率」は2分の1か2の
7乗分の1か…という話について少々お話を。まずこの場合、単独の結果はその前後の出目と全く関係が無い
はずですので、確率はダイキチの言う通り、2分の1が正解です。ディーラーさんは何か言ってますが、少な
くともデジタルな観点からは答えは出ています(笑)。
 また、7回ルーレットを回して7回連続で赤が出る確率は1/128。確かに珍しいと言えるかも知れません
が、この程度の確率の出来事は当たり前のように起きてますので、賭けるのを躊躇するような場面ではありま
せん。30回連続で赤、とかだったらさすがに気色ばみますが、それならそれで「このルーレットは赤に出目が
偏るようになっているのではないか?」と疑わなくてはならない所です。 

 まぁこの作品では、"運の流れ"のようなオカルト的視点からギャンブルを描いていますので、あんまり口を
挟むと逆に興醒めですかね。でも、このマンガって、商売のノウハウをデジタル的な観点からレクチャーする
マンガだったような気がするんですが(笑)。 


 ……それでは今日はここまで。今週は明日に「ジャンプ」が発売になりますので、皆さん買い逃しの無いよ
う。「あれ? もう『ジャンプ』出てたの?」とか思ってる内に、ネタバレ話に巻き込まれたら不幸ですもん
ね(笑)。
 

 


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2003年第79回講義
10月24日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第4週分・合同)
 
 今週もゼミは前・後半合同版でお送りします。また、今後も他の講義との兼ね合いで、こういうケースが増
えそうな感じですね。以前からの受講生さんは、今年の春までのパターンに戻ったものだと考えて下さっても
結構です。

 さて、そういうわけで、今日も今週発売の「ジャンプ」と「サンデー」両誌の内容について、ゼミを実施し
ます。
 で、まずは情報系の話題……といきたいところなんですが、今週は両誌とも読み切り、新連載ともに公式の
告知がありませんでした。一応、2ch経由の情報として、次号の「ジャンプ」に大亜門さんの『スピンちゃ
ん』が再登板…という話を聞いているのですが、駒木が実際に確かめたわけではありませんので断言は避けて
おきますね。(まぁほぼ確実な感じですけど)

 ──では、無駄に引っ張ってもアレなんで、早速レビューとチェックポイントに行きましょう。今週のレビ
ュー対象作は「ジャンプ」から読み切り1本、「サンデー」から新連載1本の計2本です。チェックポイント
も一緒にどうぞ。


☆「週刊少年ジャンプ」2003年47号☆

 ◎読み切り『NOW AND ZEN』(作画:加治佐修) 

 今週の「ジャンプ」読み切り枠は、初の週刊連載が1クール打ち切りに終わってしまった加治佐修さんの復
帰作です。
 加治佐さんは「赤マルジャンプ」99年夏号でデビュー。その後「赤マル」00年冬(新年)号、本誌00年45号
に読み切りを発表しますが、その後は岸本斉史さんのスタジオでアシスタントを務め、キャリアが一時中断さ
れます。
 しかし、加治佐さんは昨02年の年末新連載シリーズで突如抜擢され、03年2号から『TATTOO HEARTS』の連
載を開始します。2年も前に発表した読み切りの連載化ということで注目を集めましたが、残念ながら14回で
打ち切りに。"粋"をテーマにした作品でありながら、粋じゃない結末を強いられる屈辱に甘んじてしまいまし
た。
 そして、先ほど述べましたが、今回のこの作品がそれ以来の復帰作。リスタートはどのような塩梅になった
のでしょうか? 

 まず絵については、全く問題ないですね。先の連載の時から画力は「ジャンプ」連載作家の水準に達してい
ましたので、当たり前と言えば当たり前ですが。また、今回は"岸本斉史色"が若干薄れたような感じで、加治
佐さんオリジナルの味が出て来て良いんじゃないでしょうか。
 敢えて注文をつけるなら、全体的に言って絵柄がやや華やかさに欠けるところでしょうか。特に今回はキャ
ラクターの大半が男(しかも非美男子系)だった事もあって、それがより一層際立ってしまった気がします。
次回作では、読者の目を惹き付けるようなヒロインが見てみたいですね。 

 ストーリー&設定についても、大きな減点材料は有りませんね。プロット自体は「ジャンプ」の読み切り王
道パターンなんですが、そこに色々な設定や伏線を散りばめて、"ありきたり感"を和らげる事に成功していま
す。特に、この手のプロットで最も描き方の難しい"擬似超サイヤ人化"の部分を、ただ主人公が激昂するだけ
ではなく、工夫を凝らしてまとめたのは高ポイントです。
 欠点を挙げるとすれば、タイムスリップの描写に既存の作品の影響が色濃く現れている点や、集中力という
地味な能力を強さの指標にしてしまったために、今一つインパクトを欠けさせてしまった点が挙げられるでし
ょう。
 ただ、これらが作品の完成度を大きく損ねているかと言えば、それは違うと思います。いくら既存作品の影
響が濃いって言っても、タイムスリップを絡めた話はどうしても藤子F作品っぽくなってしまいますし、「ジ
ャンプ」で秒単位のタイムワープの描写をすると、絶対に「キング・クリムゾン」って言われてしまいますし
ね(笑)。 

 ……そういうわけで、評価は少し高めにB+寄りA-ということにしておきます。ぶっちゃけた話、駒木の個
人的な「面白い、面白くない」で言ったら後者の方になってしまうんですが、それで評価を落とさないのが当
ゼミのスタンスですので、この評価を献上いたします。


◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 
 
 今週号、本当はこの作品のネタで平和に盛り上がって終わって欲しかったんですけどねぇ(苦笑)。 

 しかしまぁ、今回も恐ろしいくらい芸が細かくて中身の濃い19ページでした。以下、見所を箇条書きで。 

●最近またグングン絵が上手くなってますね、村田さん。
●テレビ中継がBSデジタル放送だったり、「(観客が)すごい入ったね」と栗田に言わせる割に、客席後方が
空席だらけだったりするあたりが、悲しいくらいアメフト界の現状を表現しててリアリティ満点(苦笑)。
●まもり姉ちゃん、さりげなく各所で萌え担当。
●グルービーだぞ、『取り返しのつかない入れ墨』!
●ヒル魔とアポロ監督の悪口合戦を、映画の字幕風に意訳するとこうなる↓
 「まー、お前の小っちぇえナニじゃあ、ションベン垂れ流すくらいしか使い途無ェか!」
 「何だと? 我が"アポロ号"は、日本の発射も出来ない貧相なロケットと違ってモノが違うんだよ!」
 「ほー、じゃあよ~く見せてもらおうじゃねぇか!? そのペンシルロケット"アポロ号"とかをよォ!」
 「ふざけるな! クソしてる時に勢い余ってナニが便器に"着水"する悩みも分からんくせに偉そうな口叩く
な!」
 「何言ってんだ、そこのメス蟻さんも『アンタみたいな短小なんて願い下げよ』っておっしゃってるぞ、オ
イ!」
 ……ちょっと長すぎますが、こんな感じでしょうか。しかしヒル魔、結構英語出来るんですな。ただし、実
用性は高いようで低そうですが。 

 
 ◎『いちご100%』(作画:河下水希)【現時点での評価:B/雑感】 

 少年誌ラブコメの定番、寸止めキター!(笑) いやー、やっぱりコレがあってこその少年誌ですよ。え
え。

 昔、コージィ城倉さんが「近代麻雀」で描いたマンガで、ラブコメを描いている作家とアシスタントが、麻
雀で次回分のシナリオ制作権を争う……という話がありました。
 主人公とヒロインを早いところHさせたいアシスタントが暴走させたシナリオを、作家がギリギリのところ
で寸止めに持っていく…という筋で話が展開していくんですが、最後の最後、もうどうにも"イン"を阻止出来
ないような所でバトンを受け取った作家がとった寸止め作戦は、「2人がHしようとしている所にセスナを墜
落させる」でした。ラストシーンは、呆然と自分の家の消火活動をを眺める全裸に毛布だけの主人公とヒロイ
ン…というシュールな絵。

 ……で、何が言いたいのかと言うと、河下さんも、どうせやるならそこまでやってくれと(笑)。東城との
H阻止するためなら空襲警報鳴らすくらいの覚悟でお願いしたいと思います(笑)。


 ◎『HUNTER×HUNTER』(作画:冨樫義博)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】
 
 まぁ、アレですよ。ポンズが死んだか死なないかで騒いでた我々は甘かったと。自分の好きなアイドルがま
だ処女だと言い張るくらい甘かったと。トルコ風アイスクリーム・メイプルシロップ&練乳かけくらい大甘だ
ったと。そういうわけですよ、ええ。

 とにかくこの作品が異様なのは、"キャラクター生死のボーダーライン"が極めて低い事ですね。普通のお話
なら間違いなく死なない、もし死なせるならストーリーのヤマ場で感動的に死なせるキャラを、いとも簡単に
舞台から消してしまうんですよ。なので、危機一髪の場面で助っ人が現れて命が助かる…という、"ご都合主
義だけど、カタルシスの大きさ故に許されるお約束"も一切ありません。「普通に考えたら、死ぬよな」とい
う場面で本当にキャラクターを殺してしまうんですね。
 以前の"ポンズ生死不明事件"や今回のポックル虐殺が話題になっているのは、知らず知らずの内に我々読者
が抱いている、「ポックルくらいの"ランク"のキャラクターなら、命だけは助かるだろう」という固定観念み
たいなものを、冨樫さんが本気で揺るがしにかかっているからなんでしょうね。言ってみれば、普通のエンタ
ーテインメント系のお話に、スプラッタやホラー専用の特殊な"ボーダーライン"──主人公を含めて全員死亡
も厭わない──を持ち込もうとしているわけです。
 でも多分冨樫さんは、「何を今更。このマンガがそんなマンガだって事は前々から作品の中で言ってきたで
しょ」とか思ってるはずですよ、きっと(笑)。何のために、これまであれだけ人をバタバタ殺したと思って
るんだ…とかボヤいているかも知れません。

 でも普通、こんな危ない事を考える作家さんはいないんですけどね(笑)。作家にとって頭痛めて考えたキ
ャラっていうのは、言ってみれば女の人がお腹痛めて生んだ赤ちゃんみたいに可愛いものですし。もし"割り
切り上手"な人がそんな危ない考えをしたとしても、そんなシナリオ作りのための"切り札"を1つドブに捨て
るような芸当、なかなか出来るものではないんですよ。
 そういう意味では、冨樫さんは本当の天才なのか頭脳回路の配置がおかしい人なのか、どちらかだと思いま
す(笑)。まぁ、包丁で一刀両断される瞬間のポックルの手の描き方なんかを見ると、恐らく両方なんじゃな
いかとか思ってしまいますが。

 で、以上の点から推測すると、今後はゴンとキルア以外のキャラクターは、いつ誰が死んでもおかしくない
と思います。
 キルアはゴンというキャラを引き立たせるために便利過ぎる存在ですので簡単には殺せないでしょうが、現
在大ピンチのカイトは勿論、「グリードアイランド編」に登場しなかったクラピカやレオリオ、さらにはヒソ
カや旅団メンバー、ハンター協会のお歴々なんかも"危ない"ですね。
 この作品の世界観が"そういうモノ"だと分かった以上はもう、何があっても驚けません。そもそも「ジャン
プ」という雑誌の初代看板作品の一角が、主人公含む小学生を大量虐殺して救いようの無いエンディングを迎
えた『ハレンチ学園』だったわけなんですから、何でもアリと言えばアリなんですよね。 


「週刊少年サンデー」2003年47号☆

 ◎新連載『結界師』(作画:田辺イエロウ)

 さて今週の「サンデー」は、これがこの雑誌、今年の新連載第4弾になる『結界師』の登場です。
 田辺さんは昨年の「ルーキー増刊」でデビューした後、増刊と本誌で今回の連載のプロトタイプとなる同タ
イトルの読み切り作品を発表し、その実績が認められての連載獲得となりました。サンデー作家の連載獲得ま
での道のりとしては、トントン拍子と言って良いでしょうね。
 あ、詳しいプロフィールは、もうすぐ田辺さんのページが出来るであろう、「サンデー」公式ウェブサイト
内の「まんが家バックステージ」で公開されると思います。

 では、内容へ。
 絵については、読み切り版の時にも言いましたが、田辺さん、本当に達者です。無駄な線が全く無く、新人
ながら絵の法は既に完成の域ですね。とりあえずは減点材料全くナシです。
 しかもこの作品、キャラクターの表情が穏やかなせいでしょうか、いかにも「サンデー」っぽい絵柄に感じ
るんですよねぇ。何だか、初日からクラスに溶け込んでる転校生を見てるみたいで、妙な感覚に陥ります。

 設定は、過去2回の読み切り版をほぼ踏襲して来ましたね。特に問題のあるモノではなかったので、変にイ
ジるよりは逆に良かったんではないかと思います。というか、主人公がまたショタ笑顔だったらどうしようか
と思いましたが、杞憂に終わって幸いです(笑)。
 ストーリーの方は、読み切り版では回想シーンとしてしか描かれていなかった"過去編"からスタートさせて
来ましたね。登場人物のキャラ立ちには過去を語らせるのが一番手っ取り早いんですが、それをプロローグを
兼ねて、ストーリーに絡ませるアイディアは秀逸だと思います。
 シナリオそのものも、既に形としてあったものに肉付けしたわけですから、高い完成度に仕上がっていま
す。「敵を倒す」という目的のその先にヤマ場を持って来たのは、盛り上げ方としても良いやり方だと思いま
すし、また、登場人物の行動や動機付けに全く無理な点が見られなかったのも素晴らしいんじゃないでしょう
か。

 とりあえず今回は、読み切り版で作った"貯金"を非常に上手く活用して最高のスタートダッシュが切れたの
ではないでしょうか。勿論、マンガ家としての基礎能力の高さも特筆すべき物だと思います。
 ただし気になるのは、この作品の世界観のスケールが非常に小さい事で、これからどうやって話を長編向け
のシナリオへ広げて行く事が出来るのか、現状ではそれが心配です。
 よって、今回限りという区切りでは十分A評価に値するだけのデキではあるものの、第3回以降まで慎重に
様子を見るという意味も込めて、ここでは評価保留としておきます。
 

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントのテーマは、「むちゃくちゃ眠くなったらどうしますか?」。
 ほとんど皆さんが「寝ます」という回答。まぁごもっともですね。
 これは駒木も毎日朝5~6時まで研究室で講義の準備やってるから分かるんですが、そういう状態になった
ら寝るしかないんですよね(苦笑)。「ここで寝たら人生終わり」という時以外は、眠気と戦うよりも少し寝
た方が結局は効率的だったりします。
 では「人生終わり」の場合はどうするか。これは安西さんの「モカ(=眠気覚まし薬「エスタロンモカ」)
飲んだ後に熱い緑茶」でしょうね。薬の効き目が切れた後には倍増した眠気地獄が待ってますので多用は禁物
ですが……。
 しかしこれが昭和20年代前半とかだったら、やっぱり回答の大半は、「ヒロポン。よい子はマネしちゃだめ
だぞー」…とかになるんでしょうか。

 ◎『売ったれ ダイキチ!』(作:若桑一人/画:武村勇治)【現時点での評価:保留中/解説など】 

 今週から『100万$キッド』というサブタイトルがつきましたこの作品ですが(嘘)、ここでカジノ……じ
ゃなかったカシノ・ミニ講座と参りましょうか。

 今回のクリア条件はチップを5倍に増やすこと。具体的に言えば銅チップ1000枚を5000枚にするというわけ
ですね。当講座の昨年12月18日付講義でも採り上げた通り、元来カシノのギャンブルは"一攫千金"性が低くて
短期決戦に向いていませんから、これはなかなか厳しい条件と言えます。
 この場合、やはり一番大事なのは種目選択ですね。賭け金の回収期待値は勿論のこと、「賭け金を一晩で5
倍にする」という条件に適したギャンブルを選ばなくてはいけません。例えばスロットマシーン。まず他の種
目に比べて回収率が低いですし、"数万倍の大当たりか、あっという間の大ハズレ"という性質のギャンブルは
条件に全くマッチしておらず、この場合では最も選んではいけない種目の1つ、という事になります。

 では、今回の条件に向いている種目は何が挙げられるでしょうか? まず、一番確実にチップが増やせる種
目ならばブラックジャックでしょう。やはりカードカウンティングという必勝法(=期待値が100%を超える
プレイ方法)が存在するというのは非常に大きいです。この必勝法を実践できるだけの技術と知識があること
が前提ですが、まずはこれを選択してチップを増やしておきたいところです。幸いにもバカヅキが来れば一気
にクリアまで狙えます。逆にツキが無くても取り返しのつかない大負けは考え難く、最初のステップとしては
最適の種目と言えそうですね。
 一気に5倍程度までチップを増やすというのなら、最も向いている種目は、恐らく瞳子がチョイスしたクラ
ップスでしょう。実質的な回収期待値99%以上という数字も魅力ですし、カシノ系ギャンブルの中では比較的
チップの変動が激しい(=大勝ちしやすい)のも魅力です。瞳子のようにある程度出目がコントロール出来る
のならば(とは言っても、そんなもんマンガの中だけですが。)、今回のチャレンジに最も向いた種目と言え
るかも知れません。
 で、大吉が選んだルーレットはどうでしょう? ネコ先生が「これだけはダメ」と言うように、回収期待値
はカシノ系種目で最低ランク(95~97%)な上に戦術性に乏しく、ギャンブルとしてはかなり分の悪いモノと
言えそうです。しかし、ルーレットは最高で36倍の配当が望める、つまり賭け金次第では課題の一発クリアが
狙える"ハイリスク・ハイリターン"な種目でもあります。大吉のように知識も技術も無いプレイヤーにとって
は、下手に無い知恵を絞るよりはルーレットでイチかバチかの勝負に出た方が良いかも知れません。
 そういうわけで、一見無謀にも思える"ルーレット36倍一点勝負"というのは、実は意外に有効な作戦だった
りします。ただし、この作戦は1回の大当たりでクリア出来なければ意味がありません。期待値の低いギャン
ブルで勝つには超短期決戦しか道は無いのです。(そういう意味では、チマチマと賭ける大吉のやり方は最悪
です)
 36倍狙いを実行するとして、配当チップ5000枚を受けるのに必要な賭けチップは139枚。1000枚の"軍資金"
では、チャンスは7回しかありません。理論上の勝率は18.42%(17.03%の間違いでした)さぁ、皆さんなら
どうしますか? 

 ……え、駒木ならどうするか、ですか? そうですねー。自分はギャンブルをプレイする事以外でチップを
増やす事を考えますね。ルールはあくまでも「チップを増やす」ことであって、「チップをギャンブルで増や
す」ことではないのですから、いくらでも方法はあるはずですよ(ニヤリ)

 
 ◎『モンキーターン』(作画:河合克敏)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 トビラの女子王座ベスト6揃い踏み、現実の競艇でもこんな美人揃いなら、もっとお客さん増えると思うん
ですけどねぇ(禁句)。

 
 ◎『かってに改蔵』(作画:久米田康治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 「ちなみにサンデー編集部でも編集長派と副編集長派ってのがいてね、骨肉の権力争いをしてるのよ」
 ……って、本当に生々しい!(笑) いや、これはマジでシャレにならんような気がするんですが、大丈夫
なんですか久米田センセイ(と、その担当さん)!


 ──ふう。今日は疲れました(苦笑)。カリキュラムが遅れに遅れてご迷惑おかけしていますが、出来れば
懲りずに明日も来校して頂ければ幸いです。
 

 


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2003年第76回講義
10月17日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第3週分・合同)
 
 今週の「サンデー」の表紙と巻頭を飾った星井七瀬さんが、その勢いで「うたばん」にまで進出して1st
シングル・「恋愛15シミュレーション」を唄いましたが、いやぁ強烈でしたね皆さん。
 何て言ったら良いんでしょう。浅田美代子二世と言いますか、安倍麻美・ザ・グレートと言いますか、歌の
形を借りた合法ドラッグと言いますか。もう、とにかく凄かったですね。また、楽曲のクオリティまで歌い手
の歌唱力に合わせてメルトダウンしてるのも脅威的でした、ハイ。
 コレはもう、星井七瀬がもっと売れっ子になった後、バラエティ番組で"恥ずかしい過去"としてネタにされ
るためだけに発売されたCDと解釈した方が良いですね。まぁこんな小ネタのために、莫大な宣伝費用が蕩尽さ
れたり担当者数名が左遷されたりするのかと考えると、思わず般若心経を唱えながら拍手を打ち、十字を切っ
た後に合掌したくなりますが。
 とにかく駒木は、この曲を聴いてたら涅槃へ逝っちまいそうで怖いです。飲食店など、職場で有線放送がか
かる場所でお勤めの方は、しばらくの間警戒態勢をお取りになるよう、忠告申し上げます。

 ──以上、挨拶。今週のゼミを始めます。諸々の事情により、今週分は前後半合同でお送りします。

 まずは情報系の話題から。今週は「ジャンプ」・「サンデー」両誌で月例新人賞の審査結果発表がありまし
たので、受賞作等を紹介しておきましょう。

第5回ジャンプ十二傑新人漫画賞(03年8月期)
 
 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=該当作なし
 十二傑賞=1編
 ・『サクラ前線北上中』(=本誌か増刊に掲載決定)
  森田和博(22歳・岡山)
 《許斐剛氏講評:話の展開、絵も含めてスピード感がピカイチ。バトルシーンに卓球を使ったアイディアも
面白かった》
 《編集部講評:設定は面白いのだが、それを生かしきれずに単なるバトルになってしまっている。何を描き
たいのかハッキリさせて欲しい。画力はあるが、もっと線をソフトにして見やすい絵を)
 審査員(許斐剛賞)特別賞=1編
  ・『聖火』
   大前貴史(22歳・兵庫)
 最終候補(選外佳作)=5編
  ・『レイニーレイニー』
   吉田純也(17歳・福岡)
  ・『APOLLO』
   川田暁生(25歳・東京)
  ・『武心略記』
   高山憲弼(22歳・大阪)
  ・『サッカー』
   松井優征(23歳・埼玉)
  ・『BUTTLE KUN-FU GENERATION』
   成瀬奏(23歳・東京)
 
少年サンデーまんがカレッジ
(03年8月期)
 
 入選=該当作なし  
 佳作=1編
  ・『ハルのアメ』
   田村光久(23歳・埼玉)
 努力賞=1編
  ・『真心 ─マシン─』
   清水元英(17歳・埼玉)
 あと一歩で賞(選外)=3編
  ・『理想はおあずけ。』
   中崎しいな(19歳・福岡)
  ・『to pick a fight』
   牧俊介(25歳・神奈川)
  ・『人がいい人が好き』
   町田哲也(27歳・東京)
 

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご
指摘下さい)

 ※「ジャンプ十二傑新人漫画賞」
 ◎最終候補の川田暁生さん…00年12月期「天下一漫画賞」で最終候補。
 ◎最終候補の高山憲弼さん…03年2月期「天下一」で編集部特別賞
 ◎最終候補の成瀬奏さん…03年1月期「天下一」に投稿歴。本誌の懸賞当選者発表ページのカット描き経験
あり。

 ※「サンデーまんがカレッジ」
 ◎佳作の田村光久さん…99年に「にいがたマンガ大賞」で入選(普通のマンガ賞で言う選外佳作)の経験あ
り?
 ◎あと一歩で賞の町田哲也さん…02年6月期「まんがカレッジ」でも"あと一歩で賞"

 ……「十二傑漫画賞」8月期の審査員は許斐剛さん。先月の矢吹健太朗氏のように、講評で身の程をわきま
えない発言連発か……と思いきや、ギリシアのデルフォイ神殿で"汝自身を知れ"と教わったかのように、全て
の入賞作を徹頭徹尾褒め倒し。それともこの人、本気で「うわー、この人たち本当に俺より上手い」と思った
んでしょうか。
 まぁただ、「許斐先生総評」の「もっと簡潔にすればよりよい作品になるはずです」…という所に何かを感
じなくもないわけですけどね(笑)。

 ──さて、今日は新作の話題も2つあります。まずはおめでたい新連載の話題から。「週刊少年サンデー」
の次号・47号より、田辺イエロウさんの『あやかし方陣伝 結界師』がスタートします。
 この作品は、かつて増刊・本誌に掲載された読み切り・『結界師』の長期連載化。本誌掲載時には、当ゼミ
で"A寄りA-"の評価を出した作品だけに、駒木ハヤト個人的にも非常に期待の一作です。最近の「サンデー」
の新連載のアレがナニで、特に『楽ガキ』が著しくナニだったしする現状、「サンデー」の近未来を賭けた新
連載と言っても過言では無いと思います。初の連載ですからプレッシャーも大きいでしょうが、何とか頑張っ
て欲しいものですよね。

 最後に「ジャンプ」の読み切り情報を。次号・47号に『NOW AND ZEN!』(作画:加治佐修)が掲載され
ます。
 皆さんご存知でしょうが、加治佐さんは今年、長年の苦労が実って『TATTOO HEARTS』で初の連載獲得を果
たすも、1クール突き抜けとなった若手作家さん。さすが「ジャンプ」と言いますか、短期ブランクでの再出
発となりました。
 現在の「ジャンプ」連載陣でも、初連載が短~中期の打ち切りに終わった人が半数くらいいるわけですの
で、加治佐さんにはここからが本当のスタートだと思って、奮起してもらいたいですね。

 
 ──それでは、レビューとチェックポイントへ。今週の対象作は「ジャンプ」から読み切り1本のみです。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年46号☆

 ◎読み切り『人造人間ガロン』(作画:中島諭宇樹) 

 今週の読み切りは、デビュー2作目にして本誌初登場となる中島諭宇樹さんの『人造人間ガロン』です。 

 中島さんは佐賀県出身の24歳。珍しい名前ですが、これが本名とのこと。高校時代から本格的にマンガ家を
志し、同人誌を作るなどしていたらしいですね。
 そして大学進学と共に上京し、大学の漫研を拠点に本格的な創作活動へ。学生生活を続けつつプロを志向
し、01年11月期に「天下一漫画賞」で最終候補に残り"新人予備軍"入りを果たした後、02年度「ストーリーキ
ング」マンガ部門で準キングを受賞。その時の受賞作『天上都市』は「赤マルジャンプ」03年春号に掲載さ
れ、これがデビュー作となりました。このデビューと前後して、つい最近まで村田雄介さんのスタジオで『ア
イシールド21』のアシスタントを務めていたのも一部で有名な話ですね。 

 ……実は、今回のレビューにあたっては、中島さんの学生時代の知り合いとおっしゃる方が2人も情報を提
供して下さいました。非常に興味深いエピソードや履歴も教えて下さったのですが、この中には"作家・中島
諭宇樹"というよりも"人間・中島諭宇樹"についての、いわゆるプライバシーに関わったものが多く、今回は
紹介を見合わせて頂いた情報もありました。
 しかしこの手の情報は、知名度が上がって"公人度"が増してゆくに従い、なんとなく解禁されてゆくもので
すので、時期を見計らって紹介してゆければ…と思います。中島さんはそれくらい(=有名になってゆく)だ
けのポテンシャルを持った作家さんだと思いますしね。 

 ……では、作品の内容へ話を進めてゆきましょう。 

 絵は、最近流行の作風からは外れているものの、それがかえって独特の雰囲気を生み出していてプラスに働
いているのではないかと思います。
 キャラの顔の表情とアングルが単調、また所々で雑な箇所が見受けられる…など、未完成な面もまだいくつ
かありますが、一応基礎的なスキルが出来上がっているのと、巧みにカモフラージュされているのとで、大き
なキズにはなっていません。ただ、欠点が目立たないからといって、「もういいや」と現状に甘える事なく、
更なるスキルアップを目指してもらいたいものです。
 あと、これは個人的な印象なのかも知れませんが、ヒロインはもう少し可愛い(美人系でも可)キャラにし
た方が作品の雰囲気が華やかになって良かったんではなかったと思います。どうもこの作品の主役級キャラ
は、外見・性格共に、他の作品のキャラをモデルにしているみたいなんですが、少なくとも外見は若干ミスマ
ッチだったような気がしないでもありません。 

 次にストーリー・設定に関して。
 中島さんの最大の持ち味と言えば、前作『天上都市』で見せつけた、他の新人・若手とはスケールの違う"
世界観構築能力"ですが、今作もこれが見事に発揮されています。「世界観」と言っても、なかなか判り辛い
ところがあるでしょうが、誤解を恐れず端的に言えばそれは「物語世界におけるオリジナルな常識」というヤ
ツです。ヘンな世界観が舞台ではヘンな話でも大丈夫…みたいなもんで、世界観は使い方によっては凄まじい
武器になります。ただし、これを「設定の集合体」と誤解してしまうと、いわゆる"設定厨"状態になってしま
うんですよね。
 この作品で言えば、冒頭で人間味溢れる思考回路を持ったロボット(アンドロイド)が、如何に人間の生活
に溶け込んでいるか…という風景が描写されていたりしますが、このシーンが世界観描写の最たるものです
ね。ここで呈示された諸々の"常識"が作品のテーマと直結し、作品全体の魅力に繋がっているわけです。
 ただし、今回に限って言えば、そこまで世界観を構築していても、「アンドロイドにも心がある」という重
いテーマを消化しきれず、結果、作品の完成度が今一つだったような気がします。細かい設定を巧みにセリフ
のやり取りで素っ飛ばし、シナリオ上でかなりの無茶もしたりしているわけですが、それでも散漫な印象が否
めませんでした。特にヒッツァー博士の思考が理解し辛く、クライマックスの盛り上がりを若干欠いてしまっ
た感がありましたね。 

 ですから、この作品は(少なくとも中島さんレヴェルでは)凡作ということになります。もっとも、これが
凡作というのはかなり贅沢な話ではあるのですが。
 評価は迷うところですが、"傑作・良作"とまではいかないとして、A-寄りB+というところにしておきま
す。この中島さんの持ち味が次回作以降、もしくは長編連載になってどう生かされるのか、今後の動向にも注
目ですね。 


◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントでは岸本斉史さんの結婚報告が。披露宴に出席したらしい武井宏之さんからも祝辞コメントが
掲載されました。先週号の休載は結婚準備と新婚旅行休みだったんですかね。だとしたら編集部も粋な計らい
をするものです。
 しかし、超多忙な生活を4年もやっている岸本さんが、どうやって結婚するまで愛を育む余裕があったの
か、下世話な話ながら尋ねてみたいものでありますね(笑)。


 ◎『テニスの王子様』(作画:許斐剛)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】
 
 普段、このコーナーでは極力批判めいた言動は避けるようにしてるんですが、それにしても凄いですなここ
数回は。
 どう考えてもガムじゃなくて本当の風船に見える何かを膨らませたまま、いっこく堂真っ青の腹話術で対戦
相手を毒づく丸井とか、ネットを支えるポールを通過した後、その真横にある審判台を通過して相手コートに
突き刺さる意味不明の魔球を操るジャッカルとか、常勝テニス軍団と言うより大道芸人大集合ですがな、こり
ゃ。
 当講座談話室(BBS)でも話題にしましたように、この作品、実は小・中学生男子人気がメインなのです
が、今のファンが10年くらい経って、本棚から単行本を引っ張り出して来たら、どんな心境になるんでしょう
かね(笑)。


 ◎『Mr.FULLSWING』(作画:鈴木信也)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 ついでにこっちもやっちゃいましょうか(笑)。
 高校野球モノでは、予選の勝ち上がり過程で暴力野球チームが出て来る事はよくあるんですが、ただしこの
作品ではハッキリ言って引っ張り過ぎです。こういう相手は2~3回でチョチョイとやっつけちゃうから爽快
感があるんであって、大層に描かれても間延びするだけだと思うんですがねぇ……。
 まぁこれでアンケートが少し落ちてきたら、嫌でも試合進行は早くなると思うんで(笑)、とりあえずその
辺に期待しましょうか。 


「週刊少年サンデー」2003年46号☆ 

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントのテーマは、「人に言われた心に残る言葉」。結構色々なバリエーションの回答が寄せられ
て、なかなかの良問でしたね。中でも、「おまえが休んでいた間は、本当に授業しやすかった」(あおやぎ孝
夫さん)、「お前と遊ぶなってウチの親に言われたよ」(井上和郎さん)…といった自虐ネタが個人的にヒッ
トでした。
 駒木はやっぱり、生徒から言われた「先生、1年間有難うございました」でしょうね。あと、初任校の教頭
から言われた「PTAの会議で会った保護者の人が、『ウチの子が駒木先生の授業が面白いと言ってます』…っ
て言うとったぞ」でしょうか。教職って努力が報われないのが当たり前の仕事ですので、ごく稀に褒められた
時はとても嬉しいもんです。


 ◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A-/雑感】

 「登場人物のキャラ立ちについて」という、制作現場での最重要事項をネタにしてしまう発想が素晴らしい
ですね(笑)。しかもそこにライトお色気を挟んで人気取りにも抜かりなし、という良い意味でのあざとさが
出て来ました。
 今ふと思ったんですが、今の「サンデー」でアニメ化が一番近い作品って、案外コレかも知れないですね。
元々が『ハイスクール奇面組』のオマージュ的作品なのですから、十分にその素地はあると思いますが……。
 あーあと、今回一番笑えたのは冒頭の「ヘンな夢」でしたね。5日連続モデム配りで死んだ頭では、一瞬、
本当にマイナーチェンジしたのかと錯覚しましたよ(笑)。


 ◎『WILD LIFE』(作画:藤崎聖人)【現時点での評価:B+/雑感】 

 宝生さん、いくら切羽詰ってるからっていっても、
 「このホースをマンコウ(公)に!」
 ……は如何な物かと。そりゃ鉄生も「え…」とか躊躇しますわな。こんな非常時にそんな過激なプレイなん
てねぇ。
 でもそこで「じゃ、ちょっと失礼して」だったら、即日評価をA-に格上げしようと思いましたが、残念で
した(冗談です)。 

 
 ◎『かってに改蔵』(作画:久米田康治)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 

 駒木もあります、ダメフィルター。
 「ラブソングを歌っていても、ちっともラブ感が出ないフィルター」
 と、
 「ジッと瞳を見つめているつもりが、何かの理由で怒ってて睨んでいるようにしか見えないフィルター」
 が。ぶっちゃけ、深刻なフィルターです(苦笑)。特に前者は本気で萎えます。一度、熱唱してる側で女の
子全員に歌本読まれてみなさい。生ビールをピッチャーで注文したくなりますから、ホントに。 

 
 ……といったところで、いつもなら「失礼」になるところですが、今日は久しぶりに「読書メモ」をやって
みたいと思います。採り上げる作品は、ある意味で当講座とよく似た雰囲気のあるあの作品です。 

◇駒木博士の読書メモ(10月第2週)◇ 

 ◎単行本『銭』1巻(作画:鈴木みそ/「月刊コミックビーム」02年11月号~03年8月号収録分) 

 開講当時から左フレームのリンク集に氏のウェブサイト『ちんげ教』を(勝手に)載せている事で既にお分
かりかも知れませんが、駒木は随分以前(中学生の頃)から、まだコラムニスト兼イラストレーターだった頃
からの鈴木みそさんのファンだったりします。本当に凄く面白ぇんですよ、当時のコラム。単行本化されてな
いのが不思議なくらいで。(ちなみに駒木が一番好きなコラムは、「ドンブリ一杯のウンコをいくらなら食う
か」というテーマについて社会学的に考察した一本。しかもイラスト付)
 で、そんな文字書きとしても十分すぎる才能がある人が達者な絵でルポマンガを描いたら駄作になるはずが
ないわけで、この作品も文句無しの傑作に仕上がってます。何と言いますか、「駒木博士の社会学講座」なら
ぬ「鈴木博士の経済学講座&ドラマ劇場」みたいなモンでして、駒木のやってるような単なるウンチク語りだ
けじゃなく、そこにエッセンスとしてドラマが入っているのが凄いんですよね。遥か格下とは言え、似たよう
な事を続けている立場としては、もう感服するしかありません。
 で、また劇中の台詞回しがさりげなく上手いんですよ。特に1巻の最後の方で、グレた娘が仕事中毒の父親
にキツい事言うシーンが秀逸です。よく出来すぎてて、ある意味リアリティが無くなりかける位に素晴らしい
やり取りが展開されていますので、是非単行本を買って確かめて下さいまし。大型書店かマンガ専門店で探し
てみればあると思いますんで。
 連載開始が昨年11月ということで、残念ながら今年の「仁川経済大学コミックアワード」の対象作からは外
れてしまうんですが、評価つけるなら勿論Aです。 

 
 ……というわけで、今週はここまで。今後も木曜あたりに前後半合同でやる機会が多くなると思いますが、
どうぞご理解の程を。
 

 


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2003年第74回講義
10月10日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(10月第2週分・合同)
 
 お待たせしました。今週分のゼミを実施します。もう「ジャンプ」の内容などは既に記憶が薄れている方も
いらっしゃるでしょうが、もう一度古新聞・古雑誌の山の中から引っ張り出して頂ければと。

 ではまず、情報系の話題を1本。日付的には明日発売になる次号(46号)の「週刊少年ジャンプ」に掲載さ
れる読み切り情報です。
 その作品は『人造人間ガロン』(作画:中島諭宇樹)。作者の中島さんは、今年ゴールデンウィーク発売の
「赤マルジャンプ」春号で鮮烈なデビューを果たした期待の新人作家さん。つい最近までは『アイシールド
21』のアシスタントも務めている事で知られていました。「ストーリーキング」マンガ部門の準キング受賞者
でもありますね。
 今回のアンケート結果次第では連載獲得も考えられるでしょうから、非常に重要な意味を含んだデビュー2
作目と言えそうです。果たしてどうなりますか──?

 さて、今日は合同版でやらなければならない事も多いですし、無駄口利かずにレビューとチェックポイント
へ参りましょう。ちなみに今回もチェックポイントはショートバージョンで失礼します。
 レビュー対象作は「ジャンプ」が新連載第3回と読み切りが各1本の計2本、「サンデー」が読み切り1本
の計3本となります。


☆「週刊少年ジャンプ」2003年45号☆

 ◎新連載第3回『神撫手』(作画:堀部健和)【第1回掲載時の評価:B】 

 今回の新連載シリーズ関連のレビューも、いよいよこれで最後になります。
 新連載と言えば、第3話までで続行か打ち切りかの判断が下されるというのは有名な話ですが、アンケート
が誌面構成(掲載順)に反映され始めるのは8話目くらいからなんですよね。なので、ここからしばらくは誰
の目から見ても打ち切り確実な作品が掲載順上~中位をキープするため、色々な憶測が飛ぶ期間でもあるんで
す。
 まぁ、ここは「次回打ち切り作品予想期間」と思って、色々な考察を深めてみてはいかがでしょうか。

 あー、結局余談をしてしまいました(苦笑)。『神撫手』について述べてゆきましょう。

 新連載から3週間。一部で「絵が真っ白になって来た」と言う非難も出ていますが、やはり問題があるのは
ストーリーと設定についてだと思われます。

 とにかく設定とストーリーの整合性が杜撰なのが頂けません。特に第2話で公開された「神撫手の能力は1
日1度まで」という設定と第1話の内容(1日に2回も能力が使用されている)が矛盾している点は、「いく
らなんでも」なボーンヘッドです。
 また、シナリオも大局観を欠いていてダメです。設定を説明するためだけや、脈絡もなく新キャラを1人増
やすためだけにチープな内容のストーリーを組んでおり、既に「2手パス」の状態です。本来なら"怪盗モノ"
の醍醐味になるであろう、攻める方(怪盗)と守る方(美術館・警察)の駆け引きや捕物劇もこれまで皆無に
近く、善悪の概念を超えるような"生涯のライバル"も不在とあっては、前途多難どころか難破寸前といったと
ころではないでしょうか。

 評価はほぼ1ランク落としてC寄りB-とします。まだ結果は判りませんが、結局のところ読み切り版のレビ
ューで警告した通りになってしまいそうですね。


 ◎読み切り『URA BEAT』(作画:田村隆平)

 今週の読み切りは「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の6月期佳作・十二傑賞作品の掲載です。「十二傑」受賞
作の本誌掲載は初とのことですが、秋は「赤マル」が発行されないシーズンですから、時期的にも恵まれたん
でしょうね。
 作者の田村隆平さんは23歳。「ジャンプ」系新人としては遅咲きの部類だと思います。駒木がデータとして
把握できている受賞歴は、この「十二傑」佳作と03年2月期の「天下一漫画賞」審査員(武井宏之)特別賞だ
けなのですが、「ジャンプ」の紹介ページによると以前「ストーリーキング」ネーム部門で最終候補まで残っ
た経験があるとのこと。
 しかし駒木が調べたところによると、一昨年(第7回、『アイシル』がキング受賞)までの受賞者リストに
"田村隆平"の名前はありません。となるとペンネームを変えたか、3年以上前に投稿していたかのどちらかに
なるわけですが……。ひょっとしたら高めのデビュー年齢というのも、この辺りに理由があるのでしょうか?

 謎はさておき、内容についてお話してゆきましょう。

 まず、受賞時から散々指摘されている絵についてからですが……。
 まぁ確かに稚拙な面も多く目立つものの、それほど酷くはない…という印象です。むしろ、マンガ独特の表
現技法は既に連載作家レヴェルと言って良いほど突出しており、総合的に評価すればギリギリ及第点くらいは
出せます。普通の読者ならともかく、プロの編集者が「画力がついていってない」とコメントするのは如何な
物かと思いますが。
 少なくとも田村さんに根本的な絵の才能が無いというわけでは無さそうで、今後アシスタント経験を積み、
一線級のプロの人から知識やテクニックを学べば、少なくとも「連載作家としては下手な方」位のレヴェルに
までは辿り着けると思います。現在画力に定評のある作家さんで、デビュー作の絵がグダグダだった人なんて
ゴマンといますので、ここは次回作以降に期待したいところです。

 次にストーリーと設定について。こちらも判断が非常に難しいですね。評価出来る部分と出来ない部分が複
雑に絡み合っていて、果たして総合的にどのような評価を下したら良いのか、その落とし所が難しい…と言う
のが第一印象です。
 そんなややこしい話の前に、現在の田村さんを一言で表現すると、「才能はあるが、実力が足りない」…と
いう事になります。RPGに喩えて言えば、現在のパラメータは並以下だとしても、"レベル"が上がっていく
につれてグングンとその値が伸びてゆくと予想される人…といったところでしょうか。
 もう既にネット界隈を中心に色々指摘されているように、シナリオにはかなりの穴が見受けられます。張り
っぱなしで処理しきれていない伏線、ご都合主義的な設定など、修正すべき点は多く存在します。
 しかし、田村さんの優れている所は、「良く出来たマンガとはこういうものだ」ということが感覚的に(←
ここ重要)理解&習得出来ている点です。具体的に言えば、ストーリーの展開させ方、演出、台詞回しなどが
天才的に上手い、ということになります。現在はシナリオの不備が目立って「良く出来た作品っぽい作品」に
終わってしまっていますが、これにストーリーテリング力がついてくるようになると、本当の「良く出来た作
品」が描けるようになるでしょう。
 紹介ページによると、好きな作家は冨樫義博さんとゆうきまさみさんという事ですが、確かに玄人好みの作
品を志向しているような感じですよね。

 とりあえず、今回の作品は加点・減点激しく相殺させてB+ということにしておきます。今後に注目の作家
さんがまた1人増えた…というところでしょうか。


◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『武装錬金』(作画:和月伸宏)【現時点での評価:A-/雑感】

 談話室(BBS)でも指摘があったように、この作品、世界観ぶち壊し寸前になるくらいギャグが挟まれて
いるんですよね。
 結局のところ推測するしかないんですが、ひょっとしたら和月さん、『金色のガッシュ』みたいな爆笑ギャ
グと感動的ストーリーの融合を意識しているんじゃないかと思うんですが。ただ『ガッシュ』では、主人公は
基本的にギャグメーカーではなく、"ギャグ担当"のキャラがボケるのを傍観しながら静かにツッコむ…みたい
な感じでバランス取ってるんですが、『武装錬金』は主人公が最強のギャグメーカーになっちゃってますから
ね。そのせいで一番白熱しているシーンに水を差してしまったりと、多少損している部分があるかも知れませ
ん。
 まぁ、最近の掲載順低迷を考慮しても打ち切り候補になるのは次期以降でしょうから、今後の軌道微調整に
期待しましょう。


「週刊少年サンデー」2003年45号☆

 ◎読み切り『大蛇(オロチ)』(作画:夏目義徳)

 さて、今日のメインイベントですね。既に作者の夏目さん実施の"コラボレーション企画"にビックリされた
方もいるかも知れませんが、駒木もビックリしています(笑)。いや、「社会学講座のパロディをやります」
とは聞かされていたんですが、雰囲気似過ぎです(笑)。

 ──では、こちらは"本家"らしく正調・「現代マンガ時評」といきましょう。

 夏目さんの経歴についてですが、今回は夏目さんから"公式"のプロフィールを提供して頂きましたので、そ
ちらを紹介しておきます。

1994年:『ダンクシュートは打てないけれど』が「少年サンデーまんがカレッジ」10月期にて佳作受賞(ちな
みに受賞が発表された号の『MAJOR』は、おとさんがギブソンから頭にデッドボールを受けた回。)
1995年:『雨天笑遊記』が「小学館新人コミック大賞少年部門」で入選受賞。「増刊少年サンデー超」9月号
に掲載され、デビュー。
1996年:『雨天笑遊記 稲穂の章』が週刊少年サンデー8号に掲載/『スパナ』が「増刊少年サンデー超」8
月号に掲載
1997年:『止めれるモンなら』が「増刊少年サンデー超」3月号に掲載

---アシスタント(メインは皆川亮二さんのスタジオ)・大学の卒業制作・就職(コナミ関連企業でTVゲー
ムのデバッグやデザインなど担当)などでしばし活動中断---

2000年:『ひらき屋OPEN』が「増刊少年サンデー超」1月号に掲載/『トガリ』を「サンデー」本誌にて、短
期連載を経て本格連載開始
2002年:『トガリ』連載終了&『ブカツ』を「サンデー」本誌に掲載
 

 ……ここで下手な感想を述べてしまうと、またご本人からご指摘を受けそうなので止めておきますが(苦
笑)、『MAJOR』って、色々な意味で凄い作品だと思いました。

 では、いよいよ内容の方へ。作者ご本人が見ているのを知っててレビューするのはこれが初めてなんです
が、「本人の前で出来ないようなレビューはしたくない」と言う事は以前から考えていましたので、臆する事
なく全力でぶつかっていきたいと思います。

 まずは絵から。明らかに他の掲載作品とは"色"の違う、暗い(黒い?)絵柄が非常に印象的です。こういう
場では目立ってナンボという部分もありますので、こうして差別化を図るのは良い考えだと思います。ただ、
残念ながらやっぱりこの紙質では見難い箇所が出てしまいますよね。
 あと、バックボーンの豊かな作家さんですから、当然画力そのものは問題ないのですが、今回はアクション
シーンで多少分かり辛い場面があったのが気になりました。具体例を挙げれば、"大蛇(オロチ)"が犬を助け
たシーンで肝心の犬をキャッチした瞬間が抜けていた点、または戦闘中に敵がヒロインを狙ったシーンで、ヒ
ロインがコマから外れていたために距離感が掴めず、本当に敵がヒロインを狙っているように見え難い点など
でしょうか。
 この作品はテンポが非常に速く、限られたコマ数で多くの場面の描写をしなければならないので、確かに描
き辛い部分はあったと思います。が、ただでさえ黒が勝った見難い絵柄だっただけに、もう少しその辺に気を
遣ってもらえれば良かったのではないか…と思います。

 次にストーリーと設定について。"原案"は別の人が担当したとのことですが、それでもストーリーに関する
最終的な責任は夏目さんにあると思いますので、ここではそういう扱いをさせてもらいます。
 一読後、まず思ったことは「よくここまで"贅肉"を削ぎ落としたもんだなぁ……」という事でした。「シナ
リオを破綻無く仕上げた」と言うよりも、「シナリオを破綻しようが無い所まで仕上げた」といったところで
しょうか。これは簡単に見えて、実は相当なエネルギーを要する作業ですので、こういった部分は"キチンと
したプロの仕事"として認めなければならないと思います。
 ただ、残念ながら「いくら何でも削り過ぎ」といった感も否めず、序盤は展開が早すぎて戸惑ってしまいま
したし、"大蛇"を追う組織やそのリーダーが全く正体不明のまま終わったのも如何なものかと思います。後者
については、ヒロインの一人称的視点ならそれでも構わないんですが、三人称的視点にしている以上は、ある
程度世界観の呈示をやっておかないと不親切だと思います。
 また、シナリオそのものがオーソドックス過ぎるくらいにオーソドックスな、厳しい言い方をすれば"徹頭
徹尾どこかで見たようなお話"だっただけに、どこかワンポイントでも"これが夏目義徳オリジナルだ!"…と
いうような要素を混ぜる必要があったのではないかとも思います。

 評価の方はB+ということにしておきます。お世辞抜きで、作品の完成度には「さすが」と思わせるモノが
あったと思いますので、今度はもっとスケールの大きさを感じさせるような作品が見てみたい…というのが、
一読者としての願望です。


 時間の都合で「サンデー」のチェックポイントはお休みとします。巻末コメント(「1日だけ他の人に変身
出来るなら、誰になりたいですか?」)は夏目さんの「連載作家になりたい」がMVPでしょうね(笑)。久
米田康治さんのお株を奪うような"自虐ネタ"はお見事でした。
 しかし、他人が変身したいと思うような人物って、実は華やかさの裏で物凄くキツい努力をしているはずな
んですよね。それを考えると、そうそう軽はずみに「○○になりたい!」って言えなかったり。

 以上、1日だけ変身したいのは「仲間由紀恵さんの付き人、またはマネージャー」の駒木ハヤトでした
(笑)。
 

 


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2003年第73回講義
10月6日(月) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(9月第5週/10月第1週分・後半)
 
 前回のゼミでの大失策について、受講生さんからもいくつかの叱咤や激励を頂きました。
 いやしくもメディアリテラシーについての講義を受け持っておいて、自分がそれに失敗したというのは本当
に情けない限りで、穴が有ったら入りたいとは正にこの事でありました。
 今後はこれまで以上に情報の取り扱いには留意して講義を行ってまいりますので、どうか今後とも宜しくお
願い申し上げます。

 では、日付の上では先週となってしまいました、9月最終週&10月第1週のゼミ後半分をお届けします。

 まずは今日も情報系の話題から。
 既に先週のゼミでも簡単にお知らせいたしましたが、「週刊少年サンデー」次号03年45号に、夏目義徳さん
の新作読み切り・『オロチ』が掲載されます。
 「サンデー」の公式ウェブサイトから"夏目義徳"の名前が消え、同誌と夏目さんとの絶縁が取り沙汰された
のが今年の5月。この噂を紹介した当講座に、実は以前から当講座をチェックして下さっていた夏目さんご本
人から、「『サンデー』とは絶縁したわけではなく、一旦距離を置いただけ。専属契約の無いフリーの立場な
ので、他誌での活動も目指しているところなのです」…という旨のメールを直接頂いたのは記憶に新しいとこ
ろですが、その言葉(『サンデー』と絶縁したわけではない)の通り、本誌の読み切り枠で「サンデー」に再
登場ということになりました。
 今回の"復帰"にあたり、またも夏目さんからわざわざメールを頂きました。この件で当ゼミの情報の信憑性
が損なわれるのを懸念されたということで、本当に有り難いお話です。(そうやって守って頂いた信頼を自分
で壊してりゃ世話ないですが)
 ネット上のメールに関するマナー上、夏目さんからのメールの文面全てを紹介するわけにはいかないのです
が、今回の読み切り発表については、
 「フリーの立場で色々な雑誌での活動を模索して来たが、結果として一番早く話がまとまったのが『サンデ
ー』の読み切りだった」
 ……という事だそうです。「サンデー」とは一旦距離を置いたとはいえ、これまでの経緯(夏目さんがデビ
ュー以来『サンデー』一筋だった事など)を考えると、それでもまだ「サンデー」が他の雑誌に比べて関係が
深い雑誌であろうという事は容易に想像がつくところですし、この"復帰"も妥当と言えば妥当な話なのかも知
れませんね。
 まぁ本当に詳しい事情は駒木にも知る由はありませんし、もし知ってても公にする事ではないでしょうか
ら、これ以上の詮索は止めておきますが、とりあえず今は「ブランクを余儀なくされていた元メジャー少年誌
の連載作家さんが、無事活動再開を果たした」という事実を喜びたいと思います。
 なお、駒木が夏目さんに「受講生の皆さんに何かメッセージがあれば」とお願いしたところ、快くコメント
を下さいましたので、紹介させて頂きます。

 漫画は載せるまでは漫画家の仕事ですが、載ってからは読者のものですので自由に判断してください。批判
も結構。だって読んだ人だから。一番イタイのは、やっぱ読まれないことですからねー。
 読者の皆さんの意見を聞いて参考にするので、よろしくお願いします。
 

 駒木にも「遠慮なく自由にレビューして下さい」と言って下さってますので、全力で審美眼を研ぎ澄まし、
ガチンコ勝負させてもらいたいと思います。その上でA評価を出せれば本当に嬉しいですね。期待して発売日
を待ちたいと思います。


 ……それでは今日もレビューとチェックポイントへ。レビュー対象作は読み切り1本のみ。カリキュラム遅
延のため、チェックポイントも少なめでご容赦を。
 

☆「週刊少年サンデー」2003年44号☆

 ◎読み切り『PUMP☆IT★UP』(作画:大和八重子)

 突如として始まった、元連載作家さんによる読み切りシリーズ、今週は大和八重子さんのビーチバレー物作
品が登場です。
 つい先日「まんが家バックステージ」から名前が消えてしまい、詳しいプロフィールが分からなくなってし
まったのですが、大和さんは90年代後半から「サンデー」系雑誌でプロ野球実録モノの読み切りを数作品発表
していたようです。その後は「サンデー」本誌で本格的な創作活動へシフト。00年に柔道マンガ『タケル道』
で短期集中連載、更には長期連載を獲得します。
 しかしこの連載は半年ほどで無念の打ち切り。それからは増刊で散発的な活動をしていましたが、本誌には
『タケル道』の連載終了以来2年半ぶりの登場になりますね。

 元連載作家さんですから当たり前と言えば当たり前ですが、絵に関しては何も問題は無いですね。ただ、顔
の輪郭のバリエーションが乏しくて違和感を感じるのですが、まぁそれは些細な事でしょう。

 しかし、ストーリーと設定はかなり問題が多いような気がしますね。

 まず注文をつけたいのはキャラクターデザインの面ですね。よりにもよって「週刊少年サンデー」で、頭が
悪いジャニーズ系アイドル的な男受けの悪いキャラを主役に据えるのは正直どうなんだろうと。
 しかも、本来なら男子・男性読者の感情移入を引き受けるはずのバレー部主将・山之内が、実は性格が捻く
れてるだけのヘタレで、全く共感出来ない人物になってしまっていますからねぇ……。これでは、「"お近づ
きになりたくない"キャラが勝手に砂にまみれてるだけ」の48ページです。
 
 また、シナリオ面でも大きな問題があります。誰が主役なのかイマイチ分からないボヤけたフォーカス、一
体何を読者に見せたいのか分からない軸の無いプロットなど、ストーリーテリング面ではごく基本的な内容が
出来ていないんですよね。
 多分、大和さん的には「努力」をテーマにしたかったのでしょうが、話を全体的に俯瞰してみると、「チャ
ラチャラした男前のアイドルは、ビーチバレーの天才だった」、「努力してもダメなヤツはダメ」という部分
しか伝わって来ないんですよね。これじゃイカンですよ。

 こんな偉そうな事を言うのはアレだと思うんですが、この作品、もうちょっとネームを練る余地があったん
じゃないかと思います。評価はB寄りB-としておきます。


◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントのテーマは、「学生時代の部活は何でしたか?」。美術部と漫研が多いのは当たり前(しかも
漫研より美術部が多いのが重要)として、運動部経験者が大半だというのは興味深いですね。やっぱり積極的
な学校生活を経験していないと、リアリティのある人間関係はなかなか描けないという事なんでしょうか。
 駒木は、まず小・中とバスケ。旧日本軍の空爆用爆弾のような使い道の無い秘密兵器に終始しました。
 で、高校に入ってからは体力の限界を感じて運動部から離れ、SF研究部という名のマンガ&ライトノベル
&テーブルトークRPG同好会に。週3回の活動の帰りはヲタトークをしながら集団下校…という、我ながら
香ばしさを感じるクラブでした(笑)。
 ……まぁそれだけ仲が良かったって事なんですけどね。女子比率が高いクラブでしたから、ある程度は華や
かさもありましたし。


 ◎『金色のガッシュ !!』(作画:雷句誠)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 

 今週の話、コレ凄いですよ。
 要は「惚れた女のためなら命を張れる」って事なんですが、これは当たり前と言えば当たり前の話だけに、
見せ方が難しいんですよね。で、このお話の場合は、どう頑張っても悲劇にしか辿りつかないんですが、その
悲劇のヒーローとヒロインが他の誰よりも強い。しかも自分の弱さをパートナーを想う力でカバーしているの
で余計に強いんです。
 事前にあったキャラ設定が後から作ったシナリオと噛みあい、しかも優れたネーム力がそれを補強する。ま
さに物語の理想形ですね。

 
 ◎『いでじゅう!』(作画:モリタイシ)【現時点での評価:A-/雑感】

 ヤキチと桃里の"いい雰囲気"描写、上手いなぁ(笑)。バイトの職場とかで必ずありますよね、こういうの
って。
 しかし、ヤキチって28歳で駒木と同い年なんですが、高校生から見たら28歳ってこんな頼もしい感じに見え
るんですかねー。だって、駒木ってこんなですよ?(苦笑) まー、こんなだから自分の家族どころか彼女も
随分長い間いないんでしょうが。

 
 ……さて、今日はこんなところで。次回のゼミは水曜か木曜に実施したいと考えてます。では。
 

 


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2003年第71回講義
10月2日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(9月第5週/10月第1週分・前半)
 
 講義の実施が予定より遅れております。
 折からの体調不良の上に、例の金とネタ目当ての虚業が最近立てこんでおりまして、講義に費やせる時間と
エネルギーが思い切り削られてしまっている現状です。
 そういうわけで、大変申し訳ないんですが、予定していたカリキュラムはしばらく遅延する事になると思い
ます。この状態に満足していないのは駒木も同じですので、どうかご理解下さい。

 で、今日はゼミの今週前半分を実施します。本当なら合同版でお送りしたいところなのですが、今週はレビ
ュー対象作が多くて、なかなかそうも行きません。本当、忙しい時に限ってやらなくちゃいけない仕事量が増
えるんですよねぇ。しかもあんなクズみたいな作品に(ぼそ
 

 まずは軽く情報系の話題から。先の改変で連載枠が1つ増えたものの、今度はローテーションで連載陣に取
材休みを入れて連載枠を確保するようになった「ジャンプ」。次号も新人さんの読み切りが掲載されます。
 次号(45号)に掲載されるのは、03年6月期「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の佳作&十二傑賞受賞作・
『URA BEAT』(作画:田村隆平)です。この回の審査員を務めた冨樫義博さんが「伏線の使い方が分かって
いる」と評した作品だけに、シナリオ面に期待が持てそうですね。
 しかし予告イラストは『テニスの王子様』をちょっと上手くしたような感じですね(笑)。これで編集部の
講評は「せっかくのストーリーが画力について行ってないのが惜しい」なのですから、この回の講評を書いた
編集者は、各方面に色々な意味で余りにも失礼だと思います。まるでかの人気連載作品は、ストーリーがダメ
だから絵がダメでも関係無い…と、言っちゃいけない本当の事を言っているのがバレバレじゃないですか! 

 ──さてここで問題です。この件で一番失礼なのは誰でしょう?

 
 それでは取り急ぎレビューとチェックポイントへ。先ほど紹介した通り、今日のレビュー対象作は3本あり
ます。新連載第3回の後追いレビューと、読み切りレビュー、代原読み切りレビューがそれぞれ1本の構成で
す。

 
☆「週刊少年ジャンプ」2003年44号☆

 ◎新連載第3回『サラブレッドと呼ばないで』(作:長谷川尚代/画:藤野耕平)【第1回掲載時の評価:
B】 

 恐らくここ数年の連載作品の中で、「タイトルだけではどんなマンガか分からない作品第1位」に輝きそう
な柔道マンガ・『サラブレッドと呼ばないで』が連載第3回を迎えました。
 いや、でもこのタイトルは正直イカンですよ。タイトルだけで内容が判らないだけならまだしも、明らかに
別ジャンルの作品と誤解されてしまいますからね、これでは。
 だって、逆に『ジュードーボーイ』という題名の、そういう名前の競走馬が活躍する競馬マンガがあったら
どう思います?(苦笑)

 まぁそれはとりあえずさておき、内容についてです。
 ここまで3回を見る限り、1回ごとのエピソードを構成する力は確かに感じられます。随所に散りばめられ
ているコメディ的パートもなかなかの出来ですし、なるほど、雑誌の1作品として軽く読み飛ばす限りでは、
なかなか好感度の高い作品に仕上がっていると言えるでしょう。
 しかし、その1回単位のエピソードの構成やギャグを成立させようとする余り、作品全体を支える設定や世
界観、更にはシナリオの重厚さを次々にブチ壊してしまっているのは大変な問題です。特に、第1回であれほ
ど「サラブレッドと呼ばないで」と柔道を嫌っていた主人公が、この第3回では既に柔道大好き少年になって
しまっているのが不自然でなりません。これでは「サラブレッドと呼んでくれ」です。

 そういうわけで、現状では「ストーリーキング・ネーム部門出身作品」という肩書きとは程遠い内容になっ
ていると言わざるを得ません。少なくともストーリーテリングの面では、この部門の"先輩"である『ヒカルの
碁』や『アイシールド21』には及ぶべくも無いというのが、この作品の今の姿です。
 よく巷では「ストーリーキング・ネーム部門出身作家の作品は当たる」と言われています。駒木も以前はそ
う思っていたのですが、どうやら違うのではないかと最近思い始めました。
 というのも、この部門出身で成功した原作者さんは『ヒカルの碁』原作者・ほったゆみさんと『アイシール
ド21』の原作者・稲垣理一郎さんだけなのですが、このお2人は"受賞時点で既にプロのマンガ家だった"とい
う共通項があるのです。特に『ヒカ碁』の場合は、ほったゆみ(=堀田かよ)さんと夫──手塚治虫先生のア
シスタント出身でキャリア20年クラスの現役作家・堀田あきおさん──との事実上の合作だったと言いますか
ら、バックボーンの豊かさはケタ違いです。
 (追記:複数のご指摘を頂きまして、上記の情報はガセネタだと判明しましたので、訂正させて頂きます。
関係各位にお詫びいたします。申し訳ありませんでした。)
 ですから、結局のところ凄いのは「ストキン・ネーム部門」ではなく、作品を成功させた作家ご本人…とい
う事になるわけなんですよね。で、この「サラブレッドと呼ばないで」は、その作家ご本人が(少なくとも現
時点では)どないにもならんというわけなのでしょう。

 最後に評価ですが、長所・短所を差し引きしてみると、やはり初回のB-寄りB評価のまま据え置きというこ
とになりますか。初回の評判が良かったので、1クール生き残りはあると思いますが、長期連載となると疑問
符がつくでしょうね。


 ◎読み切り『AX 戦斧王伝説』(作画:イワタヒロノブ)

 さぁ、この時間が遂にやって参りました。当ゼミでは『シュールマン』のクボヒデキ氏と並ぶ"駄作メーカ
ー"・イワタヒロノブさんの登場です(苦笑)。このレビューに関しては、ちょっと私情じみた文言が混じる
かも知れませんが、どうか大目に見て下さいまし。

 イワタさんは01年3月期「天下一漫画賞」で最終候補まで残り"新人予備軍"入りを果たした後、01年下期
「手塚賞」で準入選を受賞。同年末の「赤マルジャンプ」でデビューを果たしています。ちなみにこの時の受
賞作は、今回の作品のプロトタイプとなった作品です。
 その翌年には「赤マル」02年春号と本誌02年49号でそれぞれ読み切りを発表するなど、精力的な活動を続け
ましたが、そこから約1年にもわたるブランクへ突入。今回が復帰作という事になりますね。

 それでは作品について述べてゆきますが、まぁ結論からハッキリ言いますと1年前から進歩ゼロですね(苦
笑)。絵、ストーリーテリング、歴史考証、全てがグダグダなまんまです。まぁ今頃デビュー作の焼き直しを
持って来るという発想からして既に進歩が無いわけなんですけれども……。

 まず絵ですが……どこから指摘してゆきましょうか(笑)。全体的に下手なので、挙げだすとキリが無いん
ですよねぇ……。
 一番いけない部分としては、動きがあるようで特殊効果と絵が噛み合っていないので、ダイナミックさを狙
ったシーンが"チープな止め絵+集中線"になってしまってるところでしょうか。数年前の予算不足な地上波深
夜アニメみたいな感じがします。
 これ以上具体的な話をするのは止めておきますが、出来損ないの『バスタード』みたいな作風はそろそろど
うにかした方が良いでしょうね。

 ストーリー&設定に関しても、満遍なくダメダメです。
 あんまり詳述してしまうのもアレですので簡潔にまとめますが、コメディとギャグの区別がついていない
点、そのために、本来ならシリアスなはずのストーリー全体が吉本新喜劇的な"ドタバタギャグ+申し訳程度
の人情噺"になってしまっている点、意味もなくトリッキーなコマ割りで大ゴマを不用意に乱発している点、"
起承転結"の"起承"が長過ぎてクライマックスの盛り上がりが圧迫されている点(ページ配分の失敗)、キャ
ラクターの行動や動機付けが極端過ぎてリアリティを欠いてしまっている点、バトルシーンが単調な点などが
問題のあるポイントです。
 「自分が面白いと思うものを描いてゆく」という志は大変立派ではありますが、それならもっと他人に伝わ
るように努力するのが商業作家というものでしょう。

 最後に、当講座らしく歴史考証についても言及しておきましょう。

 まず、ドイツの伯爵令嬢だというのに、主人公の名前・マーガレットは英語読みになっちゃってますね。ま
ーたやっちゃってますよ、この人は(失笑)。しかもセリフのあちこちに英語がバンバン出て来ますし。まぁ
映画『ジャンヌダルク』もフランスが舞台の英語劇でしたけれどもね(笑)。

 また、歴史上根本的なミスとして、「祖父・都市エビスハイムの市長/父・伯爵(貴族)」という家族関係
は100%あり得ません。
 都市というのは、そもそも貴族制・封建制から独立した存在として生まれたものですので、都市の市長は有
力市民(大商人など)から選挙等で選ばれます。つまりは庶民代表ですね。都市は市長の指揮による自治を許
される代わり、領主たる貴族や皇帝に忠誠と納税の義務を負いますが、この領主と市長というのは全くの別物
です。日本で言えば天皇と県知事くらい違います。
 で、その庶民の家筋から生まれた子が、いかに戦功を上げたとは言え、たった一代で大貴族の範疇に入る伯
爵にまで出世するなんて、これもあり得ません。庶民出身の傭兵となると、出世街道のスタートラインは食い
詰めた下級貴族(田舎の弱小領主クラス)率いる傭兵隊の平隊員ぐらいになります。で、その隊の中で出世し
て副長になり、さらに隊長が作り話のような活躍をして大出世したオコボレにあずかって、ようやく城代か領
主クラスでしょう。爵位なんて夢のまた夢です。貴族と言うのは生まれ育ちで人を判断するからこそ貴族です
ので、そもそも大出世というのは起こり難いメカニズムになっています。

 次に時代背景から考証を加えてみましょう。「17世紀」、「ヨーロッパ中を巻き込んだ大戦」と言うと、三
十年戦争(1618~1648)以外に有り得ませんから、その2年後ということは、この話の舞台は1650年のドイツ
という事になりますね。
 ここで注目してもらいたいのが、「当時のヨーロッパでは常備軍が確立しておらず、アルバイト制で戦う兵
士…『傭兵』がたくさんいた!!」という言葉です。これが実は高校教科書クラスの初歩的な大凡ミスです。
 この時期はヨーロッパ的には既に絶対主義時代に突入しており、王権が強大だったフランスには強固な常備
軍が存在していました。第一、三十年戦争でドイツを破ったのは、ルイ13世が築き上げたフランス常備軍です
(笑)。もっとも、ドイツは領邦国家(ミニ国家の集合体)だったために常備軍は存在しえず、また三十年戦
争は元々ドイツの内戦だった事もあり、皇帝はヴァレンシュタインら腕利きの傭兵を重用しました。ですから
「ドイツの戦争は傭兵頼みだった」くらいの記述が適当だったと思います。

 また、細かい話ですが、この頃の都市は、人口過剰の為に市街地が城壁の中に収まり切らない事が多々あり
ました。ですから当時の実態を厳密に採用すると、このお話自体が成立しなくなってしまいますね(苦笑)。
 更に細かい話を言うと、傭兵崩れの群盗が都市や村を襲うのは、実は14世紀の百年戦争からの日常茶飯事的
出来事だったりします(この辺は佐藤賢一さんの歴史小説に詳しいです)。ですから、マーガレット嬢も、普
通に暮らしていれば傭兵がただそれだけで危険人物だというのは判ってるはずなんですけどね。
 まぁそんな事を言い出したら、そもそも1000人規模の群盗なんて存在するはず無いんですが。(普通に暮ら
すだけで、一体どれくらいの食料や消費財が必要になるのか!)

 ──これらの事は、読者である受講生の皆さんは知らなくて良い事ばかりです。が、実在の歴史を扱った作
品を描こうとする作者ならば、必ず勉強しておかなければならない事です。歴史の知識があるからこそ描ける
ディティールの描写が、作品のリアリティやストーリーを際立たせてくれるのです。付け焼刃の知識をバック
ボーンにお話を作っても、結局はそれ相応のクオリティにしかならないのです。現実にそうなっているでしょ
う?

 評価は当然Cです。僭越ながらイワタさんには「マンガ家辞めるか、死ぬほど勉強するかどっちかにしろ」
と言わせてもらいたいと思います。


 ◎読み切り『ハガユイズム』(作画:越智厚介)

 先ほどのレビューで力尽きた感もありますが(苦笑)、今週は『ピューと吹く! ジャガー』が作者都合休
載のため、代原が掲載されました。
 作者の越智厚介さんは、03年上期「赤塚賞」で最終候補に残り"新人予備軍"入りを果たした21歳。今回が代
原ながら暫定デビューという事になりますね。
 今回の作品、「赤塚賞」の応募作と同じ題名なのですが、ページ数が明らかに違うため、同名別内容の作品
と考えた方が自然でしょうね。ひょっとしたら、応募作から"使えそう"な7ページをより抜いたのかも知れま
せんが。

 絵については、画力そのものはギャグマンガなら十分合格点でしょう。ただ、コマ内に余白が多すぎる事が
影響しているのか、画力の割には妙な違和感を感じる回数が多かったように思えます。ちょっと残念ですね。

 ギャグの方は、有り体に言って「まだまだ」といったところでしょう。"オチのコマまで長いネタ振り→ネ
タ振りとのビジュアルの落差で笑わせようとするオチ"のオンパレードで、さすがに最後の方には飽きが来ま
す。また、ネタの構成を考えると、わざわざ1ページ1ネタにする必要は無かったように思えます。前フリを
濃縮して4コマにまとめるか、または前フリを2~3ページまで引っ張ってオチを強調した方が良かったでし
ょうね。あと、オチのバリエーションも増やすべきでしょう。

 一応はギャグマンガの体を成しているので、評価はB-くらいが妥当だと思います。


◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『アイシールド21』(作:稲垣理一郎/画:村田雄介)【現時点での評価:A/雑感】 

 あちこちの「ジャンプ」評論サイトで評判の今回ですが、確かに原作、作画とも良い出来ですよね。パンサ
ーの設定描写はほぼ完璧ですし(アニメの古典・空中走りは少々やり過ぎですがw)、アメリカ人キャラの描
き分けもリアリティが感じられて好感が持てます。アメリカの青春スポーツ物映画って、こういうキャラ出て
きますよね(笑)。
 あと、梅雨時の天気予報並にアテにならない事で有名な巻末の次回予告に、「米戦決戦前夜! 栗田がムサ
シの過去を語る!」などと。さぁ、このエピソードはいつ公開されるのか!(笑)

 
 ◎『BLEACH』(作画:久保帯人)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 ここ最近ずっと思ってるんですが、久保さんの演出力は「ジャンプ」連載陣の中でも目立って来てますね。
シナリオそのものが行き当たりバッタリ&単純&どこかで見たような話であるために、残念ながら傑作までに
は届かないんですが、そういう話をここまで面白く見せるというのは皮肉じゃなくて素晴らしいです。
 レビュアーとしてではなく、一読者としては本当に楽しませてくれる作品になりましたね。かつて打ち切り
候補だったのがウソみたいです。


 ◎『HUNTER×HUNTER』(作画:冨樫義博)【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】 

 で、もっと凄いのがこのお方ですよ(笑)。冨樫さんの凄いところは、上手く演出しているところを「こん
なの当たり前に出来ますよ」という風にサラリとやってしまう事なんですよね。
 更に言えば、そもそも主人公のゴンというキャラクターは、少年マンガの主人公としてはかなり珍しいタイ
プなんですよね。「正義の心を持つ少年」ではなくて、「『正義』という言葉が意味するところに近い性質の
心を持つ少年が、実は正義も悪も意識ぜず天然のまま生きている」という設定なんですよ。こういうキャラっ
て本当に手綱捌きが難しいんですけど、よく矛盾なく動かせてるもんです。駒木も小説書く時は、こういう所
を真似できるようになりたいと思いますね。


 ──というわけで、今回は以上。イワタヒロノブ作品については、今後は原則的にスルーした方が良いかも
知れませんね。史上2人目の逆殿堂入りです。
 次回ゼミは……多分週末になりますかね。どうかしばしお待ちを。
 

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