【単刀直言】古屋圭司氏 著作権法改正、極端な規制は漫画文化委縮: 古屋圭司(自民党衆議院議員、元国家公安委員長)インタビュー=14日午前、東京都千代田区(宮川浩和撮影) © 産経新聞 提供 古屋圭司(自民党衆議院議員、元国家公安委員長)インタビュー=14日午前、東京都千代田区(宮川浩和撮影)

 インターネット上の海賊版対策として、政府が今国会中に目指していた著作権法改正案の提出は、見送られました。文化庁が作った改正案は自民党文部科学部会や知的財産戦略調査会が了承し、政調審議会(政審)も承認していました。3月1日の総務会を通れば閣議決定、国会提出という流れでした。

 違法ダウンロード(DL)の規制範囲を現行の音楽・映像から漫画やゲーム、雑誌、写真集、学術論文などすべての著作物に広げることが盛り込まれていることを、政審の直前に知りました。

 超党派の「マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟」(MANGA議連)の会長として漫画文化の振興や海賊版対策に取り組んできたので「大変なことになる」と思い、総務会で「規制の範囲が広すぎる」と主張しました。文化庁の担当者に一番の権利者である日本漫画家協会にヒアリングをしているのかと尋ねると、「パブリックコメントで募集したが協会からは意見がなかった」とお茶を濁そうとした。問題ですよね。加藤勝信総務会長も理解して文科部会に差し戻されることになったんです。

 漫画はパロディーやオマージュなど原作を基にした二次創作によって文化の裾野を広げてきました。7~8割が二次創作といわれるほどです。違法DLの規制拡大は漫画家をはじめ次世代のクリエーターを萎縮させ、創作活動の基盤である表現の自由に支障をきたしかねない。ネット利用に影響が及べば経済活動にもマイナスです。

 安倍晋三首相にも伝え、理解していただきました。規制範囲を全著作物に広げるという極端なことをすると、違法DL対策という名目で投網で一網打尽にされるリスクがあるのです。守られるべきものは守るべきですが、そうでないものまで取り締まる必要はないんですよ。

 実際、文科部会が改正案を了承した後の2月27日、日本漫画家協会が懸念を表明する声明を出しました。その後、全国同人誌即売会連絡会や日本建築学会、日本学術会議の有志らが次々と規制範囲の拡大に反対の声を上げました。

 法案を担当した赤池誠章文科部会長や甘利明・知的財産戦略調査会長は英断を下してくれたと思います。問題点があれば真摯に受け止めて再出発する。これが自民党の強さですよ。政治がこの問題に気付くことができてよかった。あのまま通していたら、間違いなく厳しい批判が出て国会運営やこれから続く統一地方選や参院選にも影響していたかもしれません。

 もちろん、海賊版対策は急務です。これからが本当の勝負。超高速通信が可能となる「第5世代(5G)移動通信方式」の導入を控え、IT業界にも変化の波が訪れています。改正案には海賊版サイトにネット利用者を誘導する「リーチサイト」の規制なども盛り込まれ一定の評価はできますが、まだ問題もあります。専門家を交え、しっかりと議論する必要があります。

 政府が昨年6月に策定した経済財政運営の指針「骨太の方針」にも海賊版対策の強化や、漫画やアニメの情報拠点の整備促進が盛り込まれています。漫画文化の育成は国策なのです。法律で推進のための環境を整えることが大事です。

 そのために自民党が主導してネット時代にふさわしい改正案を提言していきます。(長嶋雅子)

こちらもおすすめ

東京福祉大 所在不明は過去3年1400人

東京福祉大(東京都豊島区)で留学生約700人が所在不明になっている問題で、大学側が文部科学省に「所在不明」ではなく「除籍」と報告していたため、文科省の把握が遅れたことが18日、分かった。所在不明者は過去3年間で約1400人に上ることも新たに判明。文科省は全国の大学で他にも同様の事例がないか調査する方針。 文科省によると、各大学には毎月、在籍しなくなった留学生について「退学」「除籍」「所在不明」に分類して報告を求めている。基準では3カ月以上大学で活動実体のない学生を所在不明に分類するという。 だが、過去の東京福祉大からの報告では退学と除籍はあったが、所在不明はなかった。産経新聞が入手した内部資料では、除籍者のリストには理由として「所在不明のため」と記載されており、大学側は所在不明者を除籍した上で報告していたとみられる。このため、文科省が所在不明問題を把握したのは今年に入ってからだったという。 同大が正規の学部に入学する前の準備課程として「研究生」の受け入れを始めた平成28年度以降、除籍者が計1441人に上ることも分かった。大半は所在不明者だという。同大によると、除籍者は28年度は1150人中260人、29年度は1890人中493人。30年度については2627人中、少なくとも688人が所在不明になっていることが分かっている。 ...

産経新聞 ロゴ 産経新聞
国内

マネー吸引力高める中国、日本に危機

巨額の投資マネーを引き寄せる国際金融拠点として世界に冠たる力を誇る米国に中国が迫ってきた。英国の欧州連合(EU)離脱の動きがロンドン金融街に影を落とす一方、中国の習近平政権の政策も追い風に、香港が急速にマネーの吸引力を強めている。米中のはざまで、東京証券取引所を核とする日本は存在感を守れるのか、分岐点に来ている。 ■NYと並ぶ金融センターに 「中国と世界を結びつけ、アジアの取引時間帯で世界のリーダーを目指す」 香港取引所の李小加最高経営責任者(CEO)は2月28日、2021年までの3カ年経営計画を発表。この中で中国本土との株式や債券の相互取引を一段と強化すると宣言した。 上海や深●(=土へんに川)の取引所に上場する国有企業など、中国を代表する「A株」の先物商品を新たに提供し、海外投資家の中国株投資の利便性を高める一方、中国本土の投資家が、アジア企業の新規公開株や債券など香港取引所が扱う金融商品を円滑に売買できる仕組みを整備。高成長が続くアジア地域と巨大市場の中国、そして世界の投資家の3つを結ぶ「結節点」としての取引機能を拡充することで、ニューヨークに比肩する国際金融センターの地位を固めようという戦略だ。 ...

産経新聞 ロゴ 産経新聞
ビジネス

橋下氏と対立、柳本氏が大阪市長選に

〈統一地方選・大阪〉 大阪府知事・市長のダブル選で自民党は元大阪市議の柳本顕(あきら)氏(45)を市長候補に擁立した。直前までは今夏の参院選の自民公認候補。叔父の地盤を受け継ぎ、国政進出に意欲を燃やしていた。「考えに考え抜いた」。知事、市長の辞職表明から1週間の葛藤を経て決断。16日の会見では「使命感に燃えている」と吹っ切れた表情で語った。 「だめでも参院選に出られるといった気持ちで市長選に出馬するなら、そもそも出る資格がない」。会見で柳本氏は、政界引退をかけて2度目の大阪市長選に挑む覚悟を明かした。 大阪維新の会を率いる松井一郎知事と吉村洋文市長(維新政調会長)が、入れ替えダブル選で大阪都構想への民意を問うと表明したのが今月8日。自民府連内では当初から柳本氏を推す声が強かったが、本人は「参院選で職責をまっとうしたい」と固辞していた。 しかし告示日が24日に迫り、人選が難航する中で「不戦敗はあり得ない」と苦悩も。そんなとき知人から「あなたは何をやりたいのか。大阪を変えるのであれば、市長のほうが近いのでは」とメールをもらい、14日に出馬要請を受け入れることを決めたという。 ...

産経新聞 ロゴ 産経新聞
国内

党内で浮上、安倍氏4選「反対」が6割

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)は16、17両日、合同世論調査を実施した。自民党内に浮上している安倍晋三首相の党総裁連続4選論に関連し、3期目の総裁任期が終わる平成33年9月以降も安倍首相が続投することについて、「反対」が59・3%を占め、「賛成」の31・1%を上回った。 ただ、首相にふさわしいと思う現職の国会議員で、安倍首相の実績を超えることができると思える議員について、具体的な名前を挙げられる議員がいるかどうか質問したところ、「いる」と答えたのが21・3%だったのに対し、「いない」は68・4%だった。 安倍内閣の支持率は、2月16、17両日に行った前回調査比で1・2ポイント減の42・7%、不支持率は0・1ポイント減の42・8%となり、支持と不支持がほぼ並んだ。 親による子供への体罰については、法律で「禁止する方がよい」が55・9%を占め、「禁止しない方がよい」は31・3%だった。「虐待」と「しつけ」を明確に線引きすることができるかどうかに関しては「できる」が45・5%で、「できない」の44・9%をわずかに上回るにとどまった。 ...

産経新聞 ロゴ 産経新聞
国内
フィードバック

興味のあるストーリーが見つかりましたか?

Facebook で「いいね」を押すと、似たようなストーリーをご覧いただけます


MSN にご意見ご感想を送信します

ご入力いただき、ありがとうございました!

サイトの全体的な評価をお聞かせください: