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【大相撲】

久々に気迫あふれる万全の豪栄道を見た

2019年3月18日 紙面から

◇北の富士評論「はやわざ御免」

 今日はラジオの実況放送。テレビ5回、ラジオ3回の計8回が私の仕事である。どちらかというと、楽しいのはラジオの方だ。画面に映らないだけに行儀が悪くても平気だし、多少脱線気味でも許されると思い込んでいるので、平素は言いづらいことでも言えることがある。

 特に、タクシーの運転手さんはよく聞いてくれているようだ。だから私もタクシーの運転手さんを意識してしゃべる時もある。私の数少ないファンというところだ。今日もホテルから会場まで送ってくれた運転手さんは、もう3回も乗せてくれたらしい。最も聞かれるのが「今場所の優勝は誰?」と「貴景勝は大関になれるのか?」。このところ豪栄道の優勝を期待する声が多くなっている。だからご当所、地元はありがたい。

 その期待通り、豪栄道は素晴らしい相撲で1敗を守った。立ち合い左から張って玉鷲の出足を止め、すぐに左右の前みつをがっちり引きつけた。そして迷うことなく前に出て玉鷲に反撃の隙を与えず寄り切った。豪栄道の気迫あふれる万全の相撲を久しぶりに見た思いだ。

 大栄翔との一番では引いて不覚を取ったが、その後は見事に立ち直りを見せている。これは、今まであまり見られなかった現象である。白鵬とは1差あるものの、今場所こそチャンス到来である。優勝して地元の期待に応える絶好のタイミングといえる。くれぐれも悪い引くクセだけは注意してほしい。

 全勝で中日をターンした白鵬だが、九死に一生を得たような薄氷を踏む相撲。誰もが白鵬の負けを信じて疑わなかったほどの大ピンチ。完全に後ろに回られては、反撃はとても無理である。ところが、体の柔らかさと抜群の相撲勘の良さを見せて奇跡的に残したのだから驚いた。

窮地を脱した白鵬は余裕すら見せ、小手投げで栃煌山を仕留めてみせた。さすがは白鵬。まだまだ天性の勘は衰えを見せていない。42回目の優勝に向かってまっしぐらである。

 貴景勝も負けずに大関へまっしぐら。巧者の遠藤も、何もできないまま土俵外にはじき飛ばされた。一片の迷いなし。覚悟のほどが見て取れる相撲だった。高安も正代に相撲を取らせなかった。鶴竜も強さを見せた。この分では、今場所の優勝争いは近年にない激しい争いになると思われる。

 今、原稿催促の電話が入る。実は、先に飯を食べてしまったのが失敗であった。やはり、仕事が終わってから飯を食うべきであった。今後、注意します。それではお休みなさい。 (元横綱)

 

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