挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
謙虚、堅実をモットーに生きております! 作者:ひよこのケーキ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
44/299

44

 塾は、今までのところが小学生専門の進学塾だったので、中学からは別の進学塾に通うことになった。

 ここもお兄様が昔通っていた塾。秋澤君と蕗丘さんとは離れてしまったけど、葵ちゃんとはなんと一緒だった!

 葵ちゃんは国立付属小学校に通っていて、同じ付属小学校といっても私のようなエスカレーター式ではなく、基準に満たなければ容赦なく篩い落とす内部入試だったそうで、新年明けてからは、目の下にクマを作って頑張っていた。

 無事、付属中学に進めた今は、前のように私ととろろん芋タロウの話で盛り上がってくれる。とろろんグッズは新商品、手ぬぐいが出たそうだ。ハンドタオルでもハンカチでもなく、なんで手ぬぐい?

 蕗丘さんとはメールや電話で連絡を取り合っている。いそうでいない、毒舌友達なので大事にしたい。

 今度休みの日に外で会おうかという話も出ている。おぉっ友達っぽい!でも秋澤君と過ごさなくていいのかな?と思ったら、秋澤君が用事でいない日だって。ですよねー。



 中学生になって、私はひとりで外を出歩けるようになった。ただし昼間のみ。

 平日は習い事があるから、自由な時間なんてほとんどないけど、休日に数時間でもひとりでふらふら出来るのは、かなり嬉しい。

 コンビニでお菓子を買うのも、塾を隠れ蓑にする必要がなくなったからだ。大き目のカバンを持って、その中にスナック菓子を入れて帰れば、お母様に見つかることもない。

 お母様は美肌に命を懸けているので、安い油でギトギトのスナック菓子なんて絶対に許さないだろう。

 しかも次なる私の野望はファーストフードだし。

 食べたいなぁ。ザ・ジャンクフード。フライドポテトってなんであんなにおいしいんだろう。ケチャップはぜひ付けてもらいたい。

 瑞鸞は私立で通ってくる生徒が広範囲だから、家から離れたお店でも目撃されそうでまだ迂闊に入れないんだけど。

 そしてお祭りの屋台も行きたい!こっちは夜なのでさらにハードルが高くて、当分は夢のまた夢っぽい。屋台の焼きそば、おいしいよね~。あ、たこ焼きも食べたい。いか焼きもいいよな~。

 夢はふくらむばかりだ。




 中等科に進学して解放されたと思っていたのに、また副委員長に指名された。

 そして相方は、またもや同じクラスになってしまった委員長。なんだかセットのようにされているけど、私は委員長と違って学級委員キャラではないはずなんだけどなー。

 委員長はもう、生まれながらの委員長って感じだ。みんな当たり前のように委員長と呼ぶ。委員長、本名なんだっけ?



 5月には恒例の遠足があって、しかも山登りだ。

 げー、山登り。行きたくないなぁ。

 山登りのような苦しい体験を一緒にすることで、内部と外部の距離を縮めようというコンセプトらしいが、はぁはぁぜいぜいいって、ろくに会話も出来ない山登りより、どこかのキャンプ場で飯盒炊爨やバーベキューでもしたほうが、よっぽど仲良くなれそうだと思うんだけどな。

 残念ながら、私には山登りの魅力が全然わからないので。

 委員長は結構山登りは好きなんだって。何が楽しいのか聞いてみたら、自然の景色やおいしい空気、登りきった達成感などがあるらしいけど、ごめんねやっぱりわからない。

 車移動ばかりでひ弱な足腰のお嬢様ばかりなのに、山登りなんて過酷なことさせないで欲しい。

 そういえば、初等科時代に一時期やっていたスクワットも、いつの間にかやめちゃってたなぁ。寝る前の柔軟体操はやってるけど。

 なんだか最近、前より足が太くなってきた気がしないでもない。いや、前世に比べれば全然細いんだけども。

 前世では中学に入って身長が止まったら、途端に栄養が横に広がるようになって恐ろしい思いをした。

 口の悪い男子に「練馬」と呼ばれた。京都に行ったら「聖護院」と言われた。あいつらには全員、身長が止まる呪いをかけてやった。

 私より太ってた子はいっぱいいたのに!私は標準体重だったのに!足は太いんじゃなく、むくみなのに!

 なんで中学生くらいの男子ってあんなに無神経なんだろう。バカだからかな。きっとバカだからなんだ、うん。

 あいつらにはモテない呪いもついでにかけてやった。こっちの呪いの効果は絶大だった。けけけ。

 足痩せダイエットもしてみたけど、まるで効かなかったな。ちっ、どんどんヤなこと思い出してきた。

 今度の休みに青竹踏みを買ってみようかと思う。




 遠足の山登りでは、早々に私達のグループは遅れをとった。委員長、あとはまかせた。私は自分のことだけで精いっぱいだ。肺から変な音がします。

 つらい。転ばないように足元しか見ていないので、景色なんて見ちゃいない。これの一体何が楽しい。

 後ろを振り返れば、私と同じように死にかけの顔の子達がちらほらいる。…良かった、ビリじゃない。

 どうにかこうにか山頂にたどり着けば、とっくに登り切っていた子達はお弁当を食べていた。


 山登りを通じて団結力を深めるんじゃなかったのか、おい。


 疲れすぎて、お弁当を食べる気力すらない。軟弱グループの私達は背中を丸めてげっそりとしていた。

 そんな中、向こうに座っている鏑木、円城に纏わりつく女子達のはしゃぐ声が聞こえてきた。

 私達はいまだお弁当箱を開けてもいないのに、彼らはすでに食べ終わっているらしい。

 中学生になって、なんだか妙にギャル化しつつある女子グループの子達は、なぜだかほとんど子が運動神経がいい。羨ましい。

 しばらく休んでやっとお弁当を食べられるだけの体力が戻ってきたところで、ふと周りをみたら、数人の外部生の男子と内部生の女子が仲良くしゃべっていた。

 なんと!私達がひーこら言ってる間に、一部の外部生と内部生の距離が縮まっていた!山登り効果か?!

 私にはそんな素敵なイベントは起こらなかった。巻き髪にジャージという微妙な姿だからか。

 あら?あそこにいるのは美波留ちゃんじゃないか?

 美波留ちゃんは別のクラスの副委員長をしている。美波留ちゃんも副委員長というイメージにぴったりの子だよなぁ。

 そんな美波留ちゃんが外部の男子と話していた。あ、笑った。

 委員長、あれみてやきもきしてるんじゃないかなぁ。ただでさえ、美波留ちゃんが円城と同じクラスになって焦っていたのに。

 これは近いうちに、また委員長が相談にくるな。



 あー、帰りは吉祥院家のヘリが迎えに来てくれないかなぁ。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。