4度目の世界タイトルの防衛戦にして、田中が初めて“大黒柱”として上がるリングだった。父親の斉(ひとし)トレーナー(51)が、会社員を辞めてサポートに専念するように。「勝つと負けるとでは、話が変わってくる。いい意味の緊張感にもなっている。負けられない理由の一つになった」とつぶやいた。
2人が「貧乏でしたよ」と口をそろえる幼少期。誕生日プレゼントや家族旅行はなし。散髪も斉トレーナーの役目だった。それでも、親心は田中にしっかり届いていた。「ボクシングの道具は、最新のものを用意してもらってましたから」
1月の試合発表会見後に3階級制覇の王者は「そこだけを目指しているわけではないんですけど…」と前置きした上で正直な思いを言葉にした。「最初の夢としては有名になりたい、お金持ちになりたいという気持ちはもちろんあった」。拳を頼りにビッグになる-。そんな思いを今回の結果につなげてみせた。斉トレーナーが「恒成はまだまだこれからや」と話したように、目標の5階級制覇へ折り返したばかり。家族の思いも力に変え、チャンプはさらなる高みを目指す。 (志村拓)