ソロ作品では、キャロルを手掛けたミッキー・カーチスをプロデュースに迎えた2作目『JOHNNY WILD』でキャロルを意識した作風に寄ったものの、ジョニー&ダーリン名義で発表された作品群ではホーン・セクションや艶やかなコーラスワークを導入したりと、日本人好みのウェットな感覚とは反対の明るく華やかなサウンドメイキングで、アメリカのルーツ音楽を過剰に加工することなくオリジナル化している。また、1977年におこなわれた日比谷野外音楽堂や日本武道館といった大会場でのライヴで、オリジナル曲と共にオールディーズ・ナンバーを演奏したあたりに、本物の古き良きアメリカンロック・ポップスを届けようという意志が感じられる。
しかしながら、同時代を生きたはっぴいえんど、松任谷由実、山下達郎らが多くのフォロワーを生み出し、Yogee New Wavesをはじめとする現在の音楽シーンで頭角を現すバンドへも影響を与えていることに比べると、キャロルやジョニー大倉からの影響を公言するアーティストはその功績のわりには少ない。THE MACKSHOW(彼らは懐古主義にならずロックンロールを時代と共にアップデートしている貴重な存在だ)のような見た目も音楽もキャロル直系のバンドはいるものの、普段着のロック・ポップスにそのエッセンスを感じさせるバンドを見ることはあまりない。本来、山下達郎や大瀧詠一らと同列で語られても決しておかしくないほどのポップスへの愛情と知識を持った音楽家であるはずの彼だが、その功績が語られることはキャロル時代に集中している。それは80年代後期から90年代初期にかけて高橋ジョージ、内海勝利らと結成したThe Pleaseで彼自身がキャロルの再現を試みたことと、90年代以降俳優業に重きを置いていたことで、ソロでの音楽活動のキャリアがぼやけて見えたことも一因ではあるのだが。
ロックバンドが日本語で歌うことが当たり前になる過程で、重要な役割を担ったジョニー大倉の功績は非常に大きい。80年代の日本の歌謡界にまで波及した「日本語詞と英詞を混ぜた作詞スタイル」のオリジネイターとして、アメリカン・ポップスの伝道師として、彼が遺したものが埋もれてしまわないように、キャロル時代の喧騒から離れてリラックスした作風を見せたソロ1stアルバム『JOHNNY COOL』(1976年)や、ブラックな音作りに痺れる名曲「セクシー・ドライバー」収録の『トラブル・メーカー』(1977年)など、この機会にソロ作品に耳を傾けてほしい。
(文=岡本貴之)
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