試合終了のゴングが鳴ったとたん、12回の死闘を戦い抜いた田口が抜け殻になった。田中と抱き合い、健闘をたたえ合うと、体に力が入らず体重を預けてしまう。敗れはしたが、田口はすべてを出し尽くした。「もう動けなかった。相手が強かった。実力不足でした」
見せ場はあった。3回開始早々、最高のタイミングで右ショートフックを突き刺すと、田中の腰がガクンと落ちる。試合を通じ、最もダウンに近づいた場面だったが、直後のラッシュで仕留めきれない。息をついたところで逆襲を受け、その流れで4回から主導権を奪われた。
本格的なボクシングは高校卒業から。そんな雑草がWBAライトフライ級を7度防衛、IBFと王座統一する名王者となれたのは気持ちの強さと練習量に裏付けられた体の強さだった。だが、その2つともに田中を上回れなかった。
今後への気持ちは定まっていない。「去年負けたときは引退だと思っていたが、今は『今後どうしよう』というのが正直なところです」。死闘を終えた32歳が、ボクシング人生の岐路に立っている。 (藤本敏和)