漆黒の英雄譚   作:焼きプリンにキャラメル水
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アウラとマーレ

一同が森の中を歩いている。

 

そんな中、モモンは強烈な気配を感じ取った。

 

(この感じ、敵意は無いが・・・強い!!)モモンは背中の大剣を瞬時に抜いて構えた。

 

視界の端で何者かが木の枝から降りたのだ。

 

「やるねぇ・・・アンタ」そう言って木の枝から降りたのは一人の少年・・・いや少年の恰好をした少女であった。性別を判断できたのは声からだ。

 

「アンタたち、ここに何しにきたの?」少女の声を聞いて改めて確信する。彼女は少女である。

 

「私たちは冒険者だ。ここには依頼で来たんだ」

 

「冒険者・・依頼・・もしかしてアンタがモモン?」

 

「そうだが・・・君は?」

 

「私はアウラ・ベロ・フィオーレ。アインズ様の・・・従者って所かな」

 

「フィオーレは一体ここで何をしているんだ?」

 

「あれ?アインズ様から聞いていないの?」

 

「いや何も?」

 

「私はアインズ・ウール・ゴウン様の命でトブの大森林の調査をしているの」そう言って少女は自慢げに自身の胸を叩く。

 

「・・ここに冒険者がやってこなかったか?」モックナックが尋ねる。

 

「何か『英雄になる』って言っていた男がいたけど、もしかしてアレ?」

 

「恐らく・・そうだ」(間違いない・・イグヴァルジだ)アウラの応えにモックナックは確信する。

 

「ふーん」そう言ってアウラは興味なさげに返事をする。

 

「所で彼がどこに行ったかは分かるか?」

 

「あっちに行ったよ」そう言ってアウラは指を指す。

 

「すまないが・・この辺りに希少な薬草があると聞いたんだが心当たりはないか?」続いてアウラに尋ねたのはベロテだ。

 

「ん・・・多分アレのことかな・・アレならあっちにあったよ」

 

そう言ってアウラが指指した方向はイグヴァルジが向かった方向と同じであった。

 

 

 

 

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森の奥に入っていくと先頭を歩いていたモックナックが口を開く。

 

「さっきのダークエルフ、両目の色が違っていたな・・」

 

「もしかしてエルフの王族なのか?」その言葉を聞いてベロテが応える。

 

「可能性はあるか・・・・だがかのエルフ国ではエルフの王族はその証として両目が異なるとは聞いたことがあるが、ダークエルフについては聞いたことが無いな」

 

それを聞いてモモンは思う。

 

(そうなのか・・・・両目の色が異なるのはエルフの王族の証なのか?そういえばアケミラは両目とも同じ色をしてたな・・)

 

「モモン殿はどう思う?」モックナックがモモンに話を振ってきた。

 

「私は知らないので何も言えませんが・・・王族でなくとも両目の色が異なることはないのですか?」真っ先に思い浮かんだのはその可能性だ。

 

「可能性はあるか・・・・となると・・・・」モックナックは真剣に考えた。ただモモンの言う可能性を考慮するなら、両目の色が同じエルフの王族がいるかもしれないということもありうる。

 

「まぁ・・考えても仕方がないこともあるか。このことは終わった後に考えていけばいいだろう」そう言ってベロテはこの話題を終わらせる。

 

一同は森の奥をさらに進んでいく。

 

 

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「ヤバいよ!!ヤバいよ!!行っちゃ駄目だよ!」

 

何やら誰かが騒いでいるようだ。モモンたちは互いに顔を見ると頷く。

 

(何かがある!)

 

モモンたちがその場の様子を見る。

 

そこにいたのは見覚えの無い種族の誰かと、その誰かの胸倉らしき部分を掴んでいたイグヴァルジだった。その周囲には『クラルグラ』の他の仲間たちがいた。

 

「おい!止めとけよ!・・イグヴァルジ!」イグヴァルジの周囲に散らばる『クラルグラ』の仲間たちが止めようとする。

 

「うるせぇ!」そう言ってイグヴァルジは仲間の一人を殴りつけた。殴られた仲間が地面に倒れこむ。その仲間を心配して駆け寄る別の仲間がイグヴァルジを睨みつけて叫ぶ。

 

「どうしちまったんだよ!イグヴァルジ!」その叫びには怒りが込められていた。

 

「うるせぇ!やっと『英雄』になれるチャンスが巡ってきたんだ!誰か文句あんのか!?」

 

「君ィ!彼は仲間なんじゃなかったの!?どうして!!?」胸倉らしき部分を掴まれている誰かが言う。

 

「うるせぇ!お前は『ザイトルクワエ』の所へ俺を案内すればいいんだ!!」

 

「だから『ザイトルクワエ』はヤバいんだって!!」

 

「俺は『英雄』になる男だ!『十三英雄』に出来て俺に出来ないことなんか無ぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの・・・いい加減にしてくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、空気が凍り付いた。だがモモンだけ冷静にその殺気の出所を探した。

 

(この重圧(プレッシャー)。彼か・・・)

 

モモンの視線の先にはイグヴァルジから離れた位置に立っているダークエルフの少女がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕・・すごく怒っているんです」杖を持った少女が彼らに歩み寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから僕は皆さんを・・・・」そう言って少女は杖を大きく振り上げて・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マーレ!そこまで!」

 

その言葉がその場に届いた瞬間、少女の身体から放たれた重圧(プレッシャー)は消えた。

 

「お・・・お姉ちゃん」少女マーレは突如現れたアウラを見て悪戯をバレた子供の様に怯えていた。

 

(この二人・・・『姉妹』だったのか?)

 

「アンタはいつもやり過ぎる所あるからね」

 

「でもこの人たち・・・・全然話を聞いてくれなくて」

 

「問答無用」そう言って少女アウラはマーレの頭に拳骨を食らわせた。

 

「い・・痛いよ・・お姉ちゃん」

 

「少しは反省しなさいよ。見てみなさいよ。あいつらを」

 

そう言ってアウラはマーレに周囲を見渡すように促した。

彼女の周辺にいた『クラルグラ』の全員や胸倉らしき部分を掴まれていた誰かも呼吸を乱しながら地面に倒れていた。

 

「ほら!ピスニンも巻き込んでるじゃんか!ダメでしょ!マーレ」

 

「ご・・・ごめん」

 

(ピスニン?・・・・恐らくあの胸倉?を掴まれていた者のことか)そういったことを考えていたモモンであった。

 

 

 

 

 

 

「何だ?先程のの『殺気』は・・」

 

「あのダークエルフの少女から出たのか?」

 

ベロテとモックナックが殺気の出所について話していた。私たちの方には殺気が当てられていなかったが重圧は感じ取ったのだ。

 

(彼女・・・マーレと俺が戦えばどっちが勝つかは分からないな)モモンはそう結論づけた。無論戦う理由も無いのに戦うつもりは無い。

 

「あの倒れているのはドライアード?どういう状況だ?」モックナックのその言葉でモモンは次にどう行動するべきか決めた。

 

(まずは状況の『正しい』把握だ。依頼を果たすのはそれからだな・・・)

 

モモンはナーベと共に歩き出した。

 

 

 

 

 

「すまない・・・一体どういう状況でこういうことが起きたんだ?」

 

モモンは状況を把握する為にマーレたちに話を聞くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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